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1.はじめに 穴吹町における読書の状況を把握するために、読書班では、アンケート調査及び座談会を行い、分析・考察をこころみた。
2.調査の目的と方法 現在の穴吹町における読書状況の実態や図書館に関する意識を調査することにより、今後の読書活動を推進していくための参考資料とすることを目的とした。今回の調査では、穴吹小学校、三島小学校、初草小学校、宮内小学校、半平小学校の3年生以上の児童及び保護者、穴吹中学校、三島中学校、口山中学校の生徒及び保護者を対象に、『読書と図書館に関するアンケートを7月に実施した。あわせて、各校の学校図書館を訪問して見学も行った。また座談会を行い、関係者の方々から意見を聞いた。
3.読書と図書館に関するアンケートの結果と分析 1)一般成人対象 このアンケートは、穴吹町内の五つの小学校と三つの中学校の協力のもとに、小・中学校生の保護者を対象に、514通の回答を得た。以下にその結果と分析を行う。 回答者の構成は、表1のとおりである。上段は回答数を、下段は全回答数に占める割合を表している。これらをグラフ化したものが図1、2である。年齢・性別に著しい偏りがあるが、これは小中学生の保護者を主たる対象としていることによる。

 
以下に質問内容と回答を示す。 問1.(余暇の過ごし方について)あなたは、余暇をどのように過ごしていますか。(3つまで○を)
 その他の回答:家事・雑用(7).ガーデニング・園芸(6).出かける(6).音楽鑑賞(5).インターネット・パソコン(3).畑仕事(3).釣り(2).洋裁(2).ボランティア.パチンコ.絵画.子どもと遊ぶ.写真.趣味.書道. 分析:男女ともに、テレビ・ラジオが多くを占めている(図3)。男性の場合はこれに次いで、休息、スポーツとなり、読書は第4位であった。女性は、ショッピング、休息、友人との談話と続き、読書は第5位であった。これは、本班が阿波学会総合学術調査で毎年継続して行っている調査と、ほぼ同様の結果である。
問2.(1か月の平均読書量)あなたは、1か月に平均何冊本を読みますか(雑誌、漫画は除く) 分析:男女ともに、1か月に幾らかでも読書するとした回答が7割を占めている(図4、5)。しかし、その中で1冊以下とする回答が約半数を占めており、量的に多いとは言えない。これも、過去の調査と同様の結果であり、穴吹町民の読書意欲が格別低いとは言い得ない。
 
問3.(1か月の雑誌の平均読書量)あなたは、1か月に平均何冊雑誌を読みますか 分析:書籍の場合と同様に、男女共に、まったく読んでいないとする人の比率は低い(図6、7)。2冊以上とする回答も多く、過去の調査と比較して、より高い比率を示している。
 
問4.(読書の目的)あなたはどんな目的で本や雑誌を読みますか。(主なもの2つに○を) その他の回答:ひまつぶし(2). 分析:男性は、趣味・娯楽のため、楽しみのため、仕事のため、と続くのに対して、女性は、楽しみのため、趣味・娯楽のため、家庭生活のためとなっている(図8)。特に女性の回答者のうち家庭生活のためと答えた人は30%に達するのに対し、男性の回答者は3%にとどまるなど、男女の読書傾向の顕著な特徴にもなっている。

問5.(入手方法について)あなたは読みたい本や雑誌をどこで借りたり購入したりしていますか。(主なもの2つに○を) その他の回答:脇町立図書館(8).山川町立図書館(2).知り合いから貰う.阿波町立図書館.他町の図書館. 分析:書店からとするものが最も多く、ついで、コンビニ、友人、職場の次に、穴吹町立図書館が挙げられている。最近の傾向として、コンビニの利用が増加している。また、特徴的なのは、その他の回答の中で、他の町の図書館を利用している者も少なくないことである。

問6.(図書館の利用頻度)あなたは、この1年間に穴吹町立図書館を利用したことがありますか。 分析:表2に回答をまとめた。表の下段は性別ごとの回答比率を示している。男女ともに大差なく、全回答者の約3分の1しか利用していない。これは、過去の読書調査から比べて極端に低い割合であるといえる。全体の比率を図10に示す。
 
問7.(図書館の利用目的)(問6で「ある」と答えた人に)図書館を利用したのはどんな理由からですか(主なもの3つまで○を) その他の回答:子供の予防注射の際に(2).住宅地図の閲覧.小さな子どもは次から次へと本が要るのでその度に買ってやれないから. 分析:本や雑誌を借りたり読んだりするためが、当然ながら最も多い(図11)。また、その他の回答にもあるが、他の用事で役場や公民館を訪れた際のついでに、あるいは気晴らし・ひまつぶしなどで利用したとするものが若干見られる。

問8.(図書館を利用しない理由)(問6で「ない」と答えた人に)どのような理由で図書館を利用しないのですか(主なもの2つまで○を) その他の回答:めんどうくさい・時間がない(12).本を読む時間がない(11).休日に入り口がわからない・利用しにくい(6).子どもが小さいので(4).他の図書館を主に利用している(2).休館日が多すぎる.読みたい本がない.友人が借りた後貸してくれる.通信販売で買っている.家でゆっくり読みたい. 分析:男女ともに、開館時間中に利用できないとした人が最も多く、ついで、本は買って読む、近くにない、本がないと続いている(図12)。これらは、おおむね他の図書館にも共通した問題であるが、穴吹町の場合、利用していないと答えた人も多いので、さらに迅速な対応が求められる。さらに、その他の回答の中に見られる利用のしにくさ(開館時間が分からない、入り口が分からない、入りにくい)などは、より深刻な問題として受け止められるべきであろう。

問9.(他の読書施設の利用)あなたは、穴吹町立図書館以外の読書施設を利用していますか 他の町の図書館の内訳:脇町立図書館(22).阿波町立図書館(4).山川町立図書館(3).徳島市立図書館.その他の回答:穴吹保育所.貞光町. 分析:利用していないという回答が最も多く、男性で71人(男性回答者の74.0%)、女性で327人(女性回答者の79.6%)あった(図13)。しかし、他の町の図書館や職場の図書館、あるいは県立図書館の利用者も存在し、読書施設の需要は皆無ではない。特に、隣町の脇町立図書館の利用者が多く、相互の図書館利用の実態について比較調査の必要が認められる。

問10.(図書館協力制度の認知度)穴吹町立図書館を通して、県立図書館やその他の公共図書館の本を利用できることを知っていますか 分析:表3、4は、問6での回答を元に、図書館の利用者・未利用者を分け、それぞれのなかで男女別に回答の割合を出している。また、図14はすべての回答に対する割合を元に作成した。この設問は、本年初めて行ったものであるため、他の町村との比較ができないが、意外に広く知られているといえよう。県立図書館は、協力車を運行し、約2週間に1便の割合で県内の公共図書館を巡回し、県立図書館の本を貸し出したり、他の図書館の本を運送している。今回の調査では、図書館利用者の約半数、図書館未利用者においても約4分の1がこの制度を認知していることがわかった。この制度の活用によって、図書館はさらに多様な資料を利用者に提供できることになる。PRを続けて、より多くの人にこの制度を知らせてほしい。
 

問11.穴吹町立図書館や県立図書館への希望があればなんでも書いてください。 分析:多くの意見・希望がよせられ、穴吹町での図書館に対する期待が大きいことがわかる。この期待に背くことのないよう、一層の努力と配慮が求められる。また、すでに実施されていると思われるサービスも希望されており、広報の重要性が再認識させられる。以下、分野ごとにまとめながら、解説したい。 ・休館日および開館時間について 開館時間延長(3).休館日が多すぎる(3).土、日、祝日に利用できるように(2).学校が休みの多い月・火曜日が休みなので他の日を休みにしてほしい. 休館日を減らしたり、開館時間を延長するためには、職員増が不可欠であり、簡単ではないかもしれない。町としての、教育・文化行政への取り組みの度合いを示すものともいえるであろう。 ・資料について もっと新しい本を入れてほしい(9).ビデオ・CDの貸出(2).音楽関係の雑誌を置いてほしい(2).教育関係の本がもっとほしい.趣味や娯楽のための専門書などを多く置いてほしい.童話・絵本の数を増やしてほしい. 穴吹町立図書館の資料費を、全国の同じ人口規模の町村立図書館と比較すると、平均を大きく割り込むというほどではない。むろん、全国の平均値があまりにも低いためではあるが、選書傾向などを見直す必要があるのではないだろうか。 ・施設環境について 役場の中になければ利用したい(8).子供を連れても気楽に出入りできる環境を(2).コンピュータを導入して検索して本が選べるようにしてほしい(2).図書館内の飲食はやめてほしい(2).入館したときにじろじろ見られることがある.学生がうるさい. 『日本の図書館1998』(日本図書館協会刊)によると、穴吹町立図書館は資料の検索・貸出用にコンピュータを導入しているため、利用者用検索端末を導入することは可能なはずである。騒がしい利用者や図書館内での飲食は、職員がこまめに注意し、図書館の利用マナーの周知を徹底する必要がある。役場の2階という設置場所への反発が多いが、これは早急に解決することは困難であろう。が、図書館までの動線ルートの改善や休日の入口をより明確にすることなどが求められる。 ・サービス、職員について 本のあるなし、ないならいつ戻るか等にきちんと答えられる職員を配置してほしい、職員の方はもう少し明るく対応してほしいなど(4).もっと本の整理をしてほしい(3).新刊図書の紹介をしてほしい(2).1回に5冊位借りられるように.2週間くらい借りられるように.週刊誌・月刊誌・季刊誌等の前の分も見えるように並べてほしい.移動図書館を利用したい. 穴吹町は山間部等の利用の困難な地区をもつ町であるため、分館の設置が困難であるならば、移動図書館の導入は、大きな利便性の向上になるであろう。職員の勤務態度への意見が幾つかあるが、これも図書館への期待の大きさの反映と謙虚に受け止めてほしい。 ・県立図書館について 県立図書館で借りた本を町立図書館に返却できたらいい(2).県立は遠すぎる. 現在、県立図書館に分館の設置計画はない。県立図書館の分館網という考えは、現在の図書館界の主流ではなく、それよりも、図書館協力網の充実が主たる論調となっている。県立図書館の情報は、県立二十一世紀館の提供する学術情報検索システム
COMET
によってだれでも検索することが可能である。また、市町村立図書館に対しては、県立図書館の幾つかの業務メニューも公開され、オンラインによって資料の予約もできる。県立及び他の図書館の資料を、図書館協力によって、地元の図書館を通じて利用するというシステムを発展させてほしい。
2)小学3年生から中学生対象 このアンケートは、穴吹町内の小・中学校に御協力をいただき、小学3年生から中学3年生の全員に対して行い、591人から回答を得た(表5)。以下にその分析を行う。
 問1.あなたは、6月1か月の間に、本を何冊読みましたか。(マンガやざっしは除く) 問2.あなたは、6月1か月の間に、雑誌を何冊読みましたか。(マンガざっしは除く) 問3.あなたは、6月1か月の間に、マンガ(マンガざっし、コミックなど)を何冊読みましたか。 問4.あなたは、6月1か月の間に、カセット・AV・ビデオなどをいくつ見たり聞いたりしましたか。 マンガ・雑誌を除く本の読書量は学年が進むにつれて減少する傾向が見られる(図15)。雑誌の場合は、中学1年の時期に急増しているのが特徴的である(図16)。また、マンガについては、他の書籍や雑誌に比べて、平均読書量がどの学年においても多くなっている(図17)。また、AVの視聴量は、中学2年女子の視聴量が飛び抜けて多いが(図18)、1,000以上の回答が2件あったためで、それを除くと約56.3になる。




問5.(資料の入手もとについて)あなたは、本やざっしをどのようにして、かりたり買ったりしていますか。いくつでも○をつけてください。 最大の入手もとは、小学生では家庭、中学生では本屋であった(図19)。また、小学生ではどの学年も3位に学校となっているが、中学生はどの学年も友達が(図9)となる。特に、中学生になると学校という回答が激減している。 なお、その他、「兄・姉などの親類縁者」(8)、「脇町立図書館」(5)、「古本屋」(4)等の回答もあった。

問6.(学校図書館の利用頻度について)6月1か月の間に、学校の図書室に行きましたか。1つだけに○をつけてください。 小・中学校、どの学年とも5回以上行ったという割合が多くなっている(図20)。特に中学3年の利用が多くなっているのが注目される。

問7.(学校図書館の利用目的について)なんのために学校の図書室に行きましたか。いくつでも○をつけてください。 授業で行ったという回答が多い。特に中学校では全学年で1位となっている。図書室を活用した学校教育が活発におこなわれているのであろうか。また、中学3年で会話という回答が3位に急浮上するのは興味深い。問6と併せて考えると、中学校の図書室は、図書を貸し出す所というより、授業の場という側面があり、そして読書やおしゃべりを楽しむ場という状況が浮かび上がってくる。その他、中学生の回答で目立ったものに、「涼みに」(9)がある。

問8.(町立図書館の利用頻度について)6月1か月の間に穴吹町立図書館に行きましたか。1つだけに○をつけてください。 過去3回の調査と比べて、穴吹町立図書館は児童の利用度がかなり低い結果が出た。特に小学5年では4回・5回以上という回答は皆無である。

問9.(町立図書館の利用目的について)穴吹町立図書館に行った人だけにお聞きします。図書館は何のために行きましたか。いくつでも○をつけてください。 小学校においては、おおむね貸出や読書という回答が多いが、中学になると一変して勉強という回答が上位の座を占める。勉強という回答が全体で2位となっている。現在の公共図書館の在り方からすると好ましいことではない。 その他の回答として、「図書館見学」(6)、「涼みに」(5)等があった。

問10.(読書環境について)つぎのことがらについて、あてはまるものがあればいくつでも○をつけてください。なければつけなくてもかまいません。 小・中どの学年においても、1位が家に本がたくさんある、2位が家族に読んでもらって、となっている。家庭での読書環境はかなり恵まれている様である。

4.学校図書館 町内には小学校5校、中学校3校、高等学校1校がある。小中学校の学級数は各学年1学級というところが多い。蔵書数は、各校とも1万冊以下で、図書費は、先生方からの希望図書(調べ学習に使う資料など)や課題図書をそろえるとほとんどなくなり、全体に古い本が多い。(校舎新築の際、寄付金150万円を図書費として受け入れたところもある。) 各校とも、図書室担当の先生はいるが、学級担任との兼任である。中学校では、小規模校でも校務は大きな学校と同じだけあり、少ない教員で多くの校務をこなさなければならず、図書室の活動にもっと力をいれたいがなかなかできないのが現状である。中学生になると、放課後は、部活動や塾に行く生徒がほとんどで毎日忙しく、家で本を読む子はほとんどいない状況だということであった。それでも、三島中学校では、子どもは本が好きだと思うので、先生が読んで感動した本を勧めたり、図書室の閉室時間でも入口前に本を置いて気軽に手にとって読めるよう工夫したりと、熱心な取り組みもされていた。 各校とも、図書室の雰囲気は、校舎内の位置や窓・照明により、明るく広く感じられた。貸出しは昼休みのみだが、常時開室していて、自由に読めるようにしているところが多い。山間部の小学校は町立図書館より団体貸出を受けている。児童書をもっと多く貸出ししてほしいという要望があるので、今後連絡を密にする必要があると思われる。
5.座談会 日時 平成10年7月28日(火)午後1時〜 場所 穴吹町公民館 参加者 穴吹町立図書館利用者8名、穴吹町立図書館職員1名、読書調査班6名 図書館、公民館の利用者にお集まりいただき、穴吹町の読書と図書館についての意見を出してもらった。 町立図書館をよく利用し、読書を楽しみにしている、図書館を憩いの場と感じているという意見がある一方で、山間地、商業地の人は距離的、時間的にも図書館は利用しにくいという厳しい意見が出されていた。隣の脇町立図書館をよく利用するという人もいた。本がさがしにくいという意見、子どものマナーの悪さを指摘する意見、子どもの本の少なさを指摘する意見、蔵書にふくらみがない等の意見が出された。また、図書館が学校から遠いため、子どもだけで図書館を利用するのは難しいが、幼稚園で絵本の貸出をしているそうで、家庭で子どもに読み聞かせをしている様子がうかがえた。子どもの読書離れがいわれて久しいが、本を読むことによって人間は成長していくものである。読書に対する意欲を育てる土壌を、地域ぐるみで作っていく必要があるとの意見が出された。 今回の座談会では、県内外の先進図書館のサービスや取り組みの現状を紹介し、今後の図書館発展のためにはどうすればいいか討議していただいたが、図書館の現状や問題点を把握できていないので、今すぐにはどうすればいいかわからないという戸惑いの声もあった。しかし、もっと図書館をPRし、利用を促すよう広報活動に力を注いでいってもらいたいという意見が出され、さらに、具体的なアイディア等もいろいろ提案され、今後、穴吹町の実態に則した図書館サービスをしてほしいとの期待が寄せられた。
6.まとめ(読書と図書館の関わりについて) ここ数年の読書調査は、まったく偶然であるが図書館を設置している自治体を対象にしており、那賀川町、北島町、日和佐町、井川町、穴吹町と続いてきた。 もとより読書は、公共図書館だけが関わっているわけではない。また、読書調査の対象者は地域住民全般ではなく、小・中学校の児童生徒およびその保護者である。当然、地域全住民の総意ではなく、限定された一部の意見である。そのことを前提として、地域住民の読書と公共図書館との関わり方について考察してみたい。 徳島県下の図書館設置状況は50市町村のうち26で(設置率52%)、約半数の自治体が図書館を設置している。その大半は県立図書館が文化の森への移転を計画していた昭和60年(1985)以後に建設した所が多い。図書館を設置している自治体の住民にとって、読書や図書の入手経路に変化があるのか、あるいは図書館がどの程度住民に利用されているのか、様々な興味をもって調査に臨んだ。 これまでの調査で、図書の入手経路は、公共図書館よりむしろ書店や学校などと深い関わりがあることが判明している。入手経路で「書店から」と回答したのは、過去数年の調査では、那賀川町90.0%、北島町84.5%、日和佐町82.1%、井川町83.3%、穴吹町84.0%と圧倒的に多い(複数回答あり)。これに対して「図書館から」を挙げたのは、那賀川町16.9%、北島町45.6%、日和佐町34.4%、井川町30.8%、穴吹町11.2%であった。現在の利用状況から考えると那賀川町の場合、入手経路の「図書館から」の数字が低いことが意外である。これは調査時期が町立図書館開設直後であったことが原因と考えられ、現時点で調査すればおそらく北島町を上回るのではないかと推測できる。 調査の結果、図書館を設置している自治体であっても、図書の入手経路は「書店から」の回答が圧倒的に多く(平均84.8%)、住民の読書に関して書店の果たす役割の大きさがうかがわれる。しかし、「図書館から」の回答については一定でなく、それぞれ地域の実情によってかなり格差がみられた。 ところで穴吹町は昭和62年(1987)に役場庁舎を新築したが、その際、庁舎2階に公民館とともに町立図書館を開館させた。県内の自治体としては11番目の設置である。他町村に先駆けて早い時期に図書館を設置したことは、町民はもちろんのこと、県内外の図書館関係者から歓迎された。 ただ、開館当初から懸念されていたこともある。立地場所が役場庁舎の2階に位置しており、日常的に利用しやすい施設ではないこと、町の中心街からやや離れていること、国道(192号線)を横断する必要があり、幼児や高齢者には少し危険を伴うこと、等々が図書館の利用に悪影響を与えるのではないかと思われていた。 穴吹町立図書館は開館後10年を経過したが、町民の利用は低調で、利用状況は横ばいか、むしろ減少気味である。たとえば、平成9年(1997)度の貸出冊数は7,526冊である。県下で最も利用の多い那賀川町立図書館では278,726冊、次いで藍住町立図書館184,469冊、北島町立図書館181,647冊であった。しかし、貸出冊数だけの比較は、自治体ごとの人口数が異なるのであまり意味がない。そこで図書館界では、利用状況の指標として、人口一人当たりの貸出冊数を使うのが一般的である。平成5年(1993)に徳島県教育委員会が作成した『徳島県市町村立図書館振興計画報告書』によると、「住民一人あたりの貸し出し冊数は少なくても4冊以上、できればその倍の8冊以上を目指していきたい」とある。穴吹町の場合、人口が8,053人(平成9年)なので、一人当たりの貸出冊数は0.93であった。県下の市町村立図書館で利用度の高い順では、那賀川町立図書館の25.8、牟岐町立図書館12.6、羽ノ浦町立図書館9.99、川島町立図書館9.96、海南町立図書館9.43、北島町立図書館9.11と続いている。ちなみに県下の町村立図書館20館の平均は6.68である。 これらの結果から見ても、穴吹町立図書館の利用は必ずしも活発とはいえない。上記のように物理的に利用を阻害する側面もあるので、このままで図書館の利用が増加するとは考えにくい。しかし、町の文化の中心施設として、さらに生涯学習の拠点として、多くの町民から期待されていることも事実である(アンケートや座談会での住民の意見などから)。 図書館の発展のためには、当然、予算や職員数なども考慮すべきであり、また、学校や公民館、社会教育団体などとの連携も必要であろう。さらに、町の総合計画の一環に図書館を位置付けられることも望みたい。将来の飛躍の可能性を含んだ穴吹町立図書館の今後の活動を見守りたい。
1)徳島県立図書館 |