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1.はじめに 今回吉野川本流のうち井川町の区域、井内谷川等に生息する魚類を調査した。調査方法は、吉野川本流では潜水調査をおこない、井内谷川と中村谷川では調査地点を設定し、投網、さし網を使用して採取をした。また潜水調査をおこない、水中の観察もした。調査は、8月12日〜20日におこなった。支流での網の使用は井川町漁業組合の許可済による。
2.調査の結果 吉野川に生息する淡水魚は自然生息のものが多い。調査場所は、吉野川本流では、井川町区域のすべての場所を潜水調査し、肉眼で生息する魚種を確認して水中ノートに記録した。井内谷川では調査地点を5カ所設定し、投網で採集した。また中村谷川の2カ店で調査し、採集した。調査場所を図1に示す。

 
 
1)吉野川本流 (1)三好大橋〜鉄道橋 岸付近の底は、岩盤になっていて、水深3m
程ある。またブロックが積み重ねられている場所もある。川底は、小さなレキであり、透明度はよい。オオクチバスの大型のものが3〜4匹ずつ群れで泳いでいた。体長は大きいものでは40cm
あり、個体数も多い。また体長20cm
のものも、多数群れをなして泳いでいた。これらの結果から、オオクチバスが増えていることが確認できた。オオクチバスは肉食魚なので、増え過ぎには注意を要する。またナマズの、体長が80cm
程もある、大形のものが生息していたが、頭部を損傷していた。ルアーの針で傷ついたものであろう。魚を大切にしてほしいと思う。さらに体長40cm
のギギが2個体生息していた。ギギは四国では吉野川と仁淀川中流域にしか生息していない貴重な魚である。昼は岩の間にひそみ、夜がくると行動し、底生魚や小魚を主に食べている。 ニゴイは、体長20〜40cm
のものが岩の間などに群れをつくり休んでいた。幼魚で体長1〜10cm
のものは、砂レキ底の場所やツルヨシの群落が根を水中にはっている場所などに生息していた。小形のものは、流れのない、おだやかな浅い所に多く生息しているので、幼魚が育つ場所を川に設定してやることも必要である。 体長25cm
のハスを1個体確認した。ハスは、琵琶湖産稚アユ種苗の放流と共に吉野川に入って来たものである。個体数は少なく、まれに見られる。口器が大きく、への字の形をしているのですぐに識別できる。ギンブナも岩とブロックの間などに群れをなしていて、体長は20〜40cm
ある。個体数は多い。ウグイは体長30cm のものが2個体生息していた。ドンコが岩の間に3個体いて、体長は15〜20cm
あった。ドンコは中流付近の淵(ふち)に生息している。昼は岩陰やテトラポットの下などにひそんでいるが、夜になると外へ出て活動する。動物食であり、生きたものしか食べない。ウグイは体長30cm
のものが2個体泳いでいた。ウグイは、個体数は少ないが、時にはニゴイの群れと一緒に泳いでいる場合がある。雑食性で、水生昆虫や藻類も食べる。 浅瀬の場所では、川岸にツルヨシ群落がある。ツルヨシの水中にはった根元付近では、体長7cm
程のシマヨシノボリが多く生息している。また体長15〜10cm
程のカワムツが多く生息していて、群れを形成していた。川底は砂レキになっていて、シマドジョウが多い。体長15〜25cm
あり、大型のものも多い。コイも生息していて、ニシキゴイも少し見られる。以上三好大橋から鉄道橋付近までに生息を確認した魚種は、オオクチバス、ナマズ、ギギ、ニゴイ、ハス、ギンブナ、ウグイ、ドンコ、シマヨシノボリ、カワムツ、シマドジョウ、コイ、ニシキゴイ、オイカワの15種である。 (2)鉄道橋〜井内谷川口付近 ここは浅瀬が多く、直径30cm
程の岩が多い。岸から川の中央に行くにつれ、流れが早くなる。中央では、人の泳力より水流の方がまさっており、流されるだけである。大きな魚が多く生息しているのは、川の中央で、大きい魚は遊泳力が強いので、早い水流にもたくましく泳ぎまわっている。アユは大きく、体長30cm
のものが10匹程の群れを作り、また単独で泳いでいる。ウグイも大きく、体長30cm
もあるのがいるが、個体数は少ない。オイカワの雄が多く、美しい婚姻色をしていて体が大きい。オイカワの雄は、雌にくらべて体が大きいので、水流の早い川の中央部でも生息できるが、雌の方は川岸近くの水流がゆるやかな場所に生息している。ニゴイも大きく、体長25〜35cm
のものが中央部で、早い水流に抗して泳いでいる。大きなカマツカなども少し見られるが、個体数は少ない。川岸近くの、流れがゆるやかでレキ底の場所では、シマドジョウが生息している。以上鉄道橋〜井内谷川口付近で確認した魚種は、ウグイ、オイカワ(雄、雌)、カマツカ、アユ、ニゴイ、シマヨシノボリ、シマドジョウの7種であるが、大形のものが多い。 (3)美濃田大橋付近 美濃田大橋付近は大きな淵になっていて、水深7m
くらいの場所もある。大きな岩盤が侵食されていて、岩の表面には小さな砂状のものが付着している。大きな淵のため上流から運ばれてきた細砂が、ここにとどまり、岩盤に付着していると考えられる。ケイ藻や緑藻類は、ほとんど繁殖していない。そのため魚の個体数や魚種は少ない。川の表層で、岩盤の上層部付近では、体長20cm
程のオオクチバスが4〜5匹群れをなして泳いでいた。さらに中層部には、体長30cm
のアユが3個体見られ、少し深い所ではギギが6個体程、それぞれ単独で岩盤のくぼみにひそんでいた。体長は25cm あった。体長10cm
程のシマヨシノボリが2〜3匹、岩盤の表面にみられた(図6)。以上生息する魚種は、オオクチバス、アユ、ヨシノボリ、ギギである。川岸近くの浅い場所では、ツルヨシやヤナギの木の根が水中にはっており、川底は砂や泥になっている。水の流れはほとんどなく、おだやかである。こうした場所では、体長の小さい幼魚が群れになって生息している。幼魚から成魚に成長する大事な場所である。砂底の所では、体長3〜5cm
のカマツカが、群れになって生息している。体長20〜30cm のニゴイが多数群れになっている。また体長2〜3cm
のオイカワの幼魚が群れになって生息している(図7)。

ツルヨシ群落付近では、水中にはった根の付近にカワムツの幼魚が群れになっている。体長は5〜7cm
である。オイカワの幼魚も群れをなして生息している。オイカワは体長が少し大きくなると、流れの早い瀬付近によく生息するが、小さな幼魚のときは、岸付近の植物が茂っていて、水流がなくおだやかな場所にいる。シマドジョウは体長5〜15cm
の幼魚から成魚までが同じ場所でみられる。ツルヨシやヤナギの根が水中に多く出ている場所は、カワムツやオイカワの幼魚やシマドジョウなどが育つ大切な場所である。コンクリートで護岸を固めると、幼魚が育つことができないので、幼魚が育つための、植物の生育に配慮した護岸づくりが必要である。
2)支流 調査地点1
は吉野川の小さな支流になるが、本流とは河原の石で仕切られていて、直接つながってはいない。コンクリートで固められた三面張りの場所であるが、幅が3m
あり、長さ10m 程にわたり、水深50cm
に水がたまっている。さらに上には堰(せき)があるが上方より水が流れて来ている。ここで投網を使用して採集をし、体長を測定した。アマゴの幼魚が2個体採集できたのは、特筆されるが、放流されたアマゴであろう。付近の吉野川本流にはアマゴがみられないからである。タカハヤが、幼魚も含め5個体もこのような場所で採集できたのは、驚くのみである。タカハヤは、支流でもかなり上流域で、水温の低い所に見られるのが普通である。 調査地点2
は、川幅が3m あるが、川底と岸との高さの差が4m 程あり、投網がうまく打てなかった。採集できたのは体長5〜20cm
のカワムツのみであった。体長の大きな成魚が、多数群れをなして泳いでいるのを上から観察できた。 調査地点3
は瀬になっていて、川底には大きな石があり、レキ底になっている。川の流れは早く、透明度はよい。川岸には、ツルヨシが生えている。投網で採集できたのは体長7〜10cm
のカワムツが5個体あった。 調査地点4 では体長7〜10cm のカワムツを3個体採集した。 調査地点5 では体長7〜10cm
のカワムツを6個体採集した。 調査地点6 は、大きな岩がゴロゴロしていて、水の流れが早い場所である。潜水調査もしたが、体長5〜7cm
のシマヨシノボリが生息していた。またカワムツも採集した。 調査地点7
では、水の流れが早いので潜水調査を行い、体長5cm のカワムツを2個体確認した。

3.まとめ 調査した場所で生息を確認できた魚種は、次に示す17種である。 硬骨魚網 OSTEICHTHYES 真口亜網 TELEOSTOMI ニシン目 Clupeida サケ亜目 Salmonina サケ科 Salmonidae アマゴ(サツキマス) Salmo (Oncorhynchus)
masoumacrostomus(図9)
アユ科 Plecoglossidae アユ Plecoglossus
altivelis コイ目 Cyprinida コイ亜目 Cyprinina コイ科 Cypriniformes ニゴイ Hemibarbus
barbus(図10) カマツカ Pseudogobio esocinus(図11)
 ウグイ Tribolodon
hakonensis タカハヤ Moroco jouyi オイカワ Zacco
platypus(図12) カワムツ(B型) Zacco temminckii(図13) ハス Opsariichthys uncirostris(図14)
 
コイ Cyprinus
carpio ニシキゴイ(飼育品種) ギンブナ Carassius Carassius langsdorfii(図15)
ドジョウ科 Cobitidae シマドジョウ Cobitis biwae(図16)
ナマズ亜目 Silurina ナマズ科 Siluridae ナマズ Parasilurus asotus(図17)
ギギ科 Bagridae ギギ Pelteobagrus nudiceps(図18)
スズキ目 Perciformes ハゼ亜目 Gobiidae ハゼ科 Gobiidae シマヨシノボリ Rhinogobius sp.(図19)
カワアナゴ科 Eleortidinae ドンコ Odontobutis
obscura バス科 Centrarchidea オオクチバス Micropterus salmoides salmoides(図20)

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