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1.はじめに 三好郡井川町は徳島県の西部に位置し、面積44.5平方キロメートル、人口5,580人、北は三好町、東は三加茂町、南は西祖谷山村、西は池田町に接する。林野面積は3461ha
で総面積の77.8%を占め、うち針葉樹人工林は林野の67.9%、天然林は21.9%である。所有形態別では、民有林97.0%、公有林3.0%、国有林0%となっている。耕地面積は250ha
で総面積の5.6%、うち普通畑は49.2%、樹園地は25.6%、田は25.2%の比率である。 北端部を吉野川が東流し、南東部〜南部には多美(たみ)山の南から日ノ丸山(1240.2m)、水ノ口峠(約1110m)を経て腕山(かいなやま)の西方まで標高1000m
を超える山地が続いている。最低点は吉野川の流れで標高約70m、最高点は腕山で約1280m である。なお、腕山の山頂は西祖谷山村側にあり1332.9m
である。日ノ丸山山頂からは、井川町外であるが、東方へ尾根伝いに風呂塔、火打山、白滝山、石堂山、矢筈山(1848.5m)へとさらに高い山々が続いている。町内の山地から流れ出した谷川の多くは井内(いのうち)谷川としてまとまり、吉野川に注いでいる。 気温、降水量は、すぐ西隣の池田で年平均気温13.6℃、年降水量1401mm
である。井川町もほぼこれに近いと考え、県庁所在地・徳島市の15.9℃、1615mm
に比べると、低温、少雨であり、内陸性気候の傾向が見られる。 鳥類班は、井川町の各環境条件下における野生鳥類の生息状況調査を行った。期日、人員等に制約があり、必ずしも十分とはいえないものの、1997(平成9)年1月3日〜1998年1月3日に現地調査を行った。ここでは、吉野川、集落・農耕地、山地の森林、井内谷川、神社の森などについての調査結果を報告する。
2.吉野川 井川町に含まれるのは吉野川の南岸域である。この地域の北岸域は東部が三好町、西部が池田町に含まれており、このうち三好町については既に1992(平成4)年に阿波学会の総合学術調査を行っている。これとも比較しながら考察してみたい。 適当なポイントで観察を行い、確認種を記録した(表1)。時間の制約などから、調査者個々の判断により、どこにでもいると思われる普通種は記録しなかった場合もある。表の繁雑化を避けるため、接近した複数の調査日は一つにまとめた。
 環境は、河川の流路から陸地に向けておおむね、水域、砂レキ地、ツルヨシ群落や草地、ヤナギなどの粗林・低木林、竹林・樹林帯へと移り変わって行き(写真1)、農耕地、集落と道路、JR線路などに接するようになる。しかし、流れがゆるやかで周囲が高茎草本群落に囲まれた静かな水域や、湿地状になった所はほとんど無い。また、現在、高速道路・徳島自動車道が吉野川を横断する橋が、JR土讃線鉄橋のすぐ東に建設中である。
 確認種は62種に上ったが(ドバトも含む)、三好町より6種類少ない。その内訳は、三好町では確認されなかったが井川町で確認されたものが、カワウ、コチドリ、ヒレンジャク、メボソムシクイ、マヒワの5種類、三好町では確認されていたが井川町では確認されなかったものが、カルガモ、ミサゴ、ノスリ、クイナ、バン、タマシギ、セグロカモメ、アオバト、ツツドリ、アマツバメ、ビンズイの11種類である。共通種は57種であった。カワウは主として冬鳥として訪れると思われるが、最近は県内各地の大きな河川の中流〜下流域で生息数が増加している。井川町で見つからなかったものでは、カルガモ、クイナ、バン、タマシギやミサゴのように湿地や水辺に好んで生息するものが目立つ。その理由は、本流から取り残されたようなワンド状の池や入江状の止水域が無く、周りをヨシ、ガマなど高茎草本群落で囲まれた静かで安定した水辺や、湿地状の草地が形成されないためであると考えられる。本流部分は流れが早く、大雨が降ると増水して濁流となるので、多くの水辺・湿地性鳥類の繁殖活動には適していない。ただ、水辺、砂レキ地、草地、林縁、樹林帯といった割合多様な環境がまとまって連続して存在するので、池沼・湿地的環境に全面的に依存する幾つかの種類を除けば、他の多くの鳥にとってはその生存上重要な役割を果たしている。越冬や渡り途中に立ち寄る種類にとっても重要な生息地である(写真2)。水辺環境を好む種類は、カイツブリ、カワウ、ゴイサギ、ササゴイ、ダイサギ、コサギ、アオサギ、オシドリ、マガモ、コガモ、コチドリ、イカルチドリ(写真3)、クサシギ、イソシギ、タシギ、ヤマセミ、カワセミ(写真4)、キセキレイ、セグロセキレイ、カワガラス、オオヨシキリなどである。
 
 井川町域の吉野川は、三好町域に比べれば水辺環境の内の池沼・湿地的要素を欠く。しかし、だからと言ってこの地域が野生生物にとって重要な生息地でない、とは言えない。このような緩衝地帯が周囲にあるから、三好町域にある池沼・湿地的環境が良好な生息地として保たれているのである。しかし、三好町域の吉野川では、1992年の調査以後、小川谷川との合流点付近がグラウンドに整備されたり、徳島自動車道の建設工事により河川敷が攪(かく)乱され、三好町と井川町をつなぐ橋も建設されている。そのため、水辺・池沼・湿地性鳥類の良好な生息地は分断され、孤立化、縮小化しつつある。
3.農耕・集落地周辺 井川町の農耕地は総面積の5.6%に過ぎず、山あいの斜面に集落と農耕・樹園地が開かれた所が多い。西井川、野住、多美農地の3か所で調査を行った。 1)西井川 吉野川沿い平野の山沿いの集落・農耕地帯でライン・センサス調査を行った(表2)。全長約1.0km、標高約110〜120m。徳島自動車道工事により、かなり環境の攪乱があった。スズメが極めて多く優占し、他にキジバト、ヒバリ、ツバメ(写真5)、カワラヒワ、ムクドリ、ハシボソガラス、ドバトなどが生息する。基本的には、平野部の集落・農耕地の鳥類相である。ただ、山麓(ろく)部であるので、ヒヨドリ、モズ、ホオジロなど、林や林縁部に生息する種類もかなり記録された。
  2)野住(井内) 山あいの集落・農耕地でライン・センサスを行った(表3)。全長約1.0km、標高約530〜600m。西井川地区に比べて、山間地の色合いが濃くなっている。ヒバリ、ムクドリ、ドバトは姿を消し、スズメの占める割合が低い。ハシボソガラスよりハシブトガラスの方が優勢になっている。ヒヨドリ、ホオジロ、アオジ、カワラヒワなど、人里周辺の林縁や林を好む種類が多くなっている。周囲の山地の影響をより強く受けた鳥類相である。サシバ、アオゲラ、ミソサザイ、ヒガラ、ベニマシコ、カケスなど、平野近くの山林では余り見られない鳥も生息する。特にトラフズク(フクロウ科)は貴重である。
 3)多美農地 井川町の東部、三加茂町との境界近くに、通称多美山と呼ばれる高原状の山地がある。近年この地域の標高900m
前後の平坦(たん)地を利用して、大規模な高冷地野菜団地が開発された(写真6)。そのため、ここにあった湿地帯が埋められ、湿原植物群落が大打撃を受けた。現在、湿地はわずかしか残されておらず、さらにすぐ横に日ノ丸山へ通じる林道も作られたため、風前の灯(ともしび)となっている。
この農地を調査し、農地、及び隣接する林縁部で確認した種類を記録した(表4)。群れでかたまっているものはカウントしたが、分散しているものなどはカウントしなかった種類もある(○で示す)。標高約900〜910m。集出荷場などはあるが、人が常住生活する家屋はない。冬期は雪に覆われることが多い。スズメが全く記録されなかった。人が常住せず、近くに集落が無いからであろう。ツバメはヒナが巣立った後、家族連れでやって来て、農地や周辺で飛ぶ虫を捕食して渡り前の体力を養っている。タヒバリ、ホオジロ、カシラダカ、カワラヒワは群れで記録された。タヒバリは昆虫、クモなど小動物を、他は主として雑草など草の種子を食べるが、小動物も捕食する。タヒバリ、カシラダカは冬鳥または旅鳥として訪れ、ホオジロ、カワラヒワは周囲の林縁部や山林で営巣するものもある。雪で覆われる季節もここに留まるかどうかは、今回の調査ではわからなかった。
 高原状の草原や湿地に特有の鳥類相が見られるかどうか関心があったが、カッコウが周囲の林でさえずっていたのみであった。自然の草原ではない農耕地であるのと、湿原の面積が余りにも狭すぎるためである。 なお、この農地から流れ出た水が流入する谷川は、赤茶色に濁り、底に細かい赤茶色の泥が積もり、異臭がした。農地とは関係のない谷川では、そのようなことは全くなかった。
4.山地の森林 徳島県の場合、森林帯はおおむね海抜高度0〜1000m
が暖温帯林、1000〜1700m
が冷温帯林とされる。阿波学会・総合学術調査は、筆者が参加した1980年の上板町から1996年の日和佐町までの17年間で、最高点が1000m
以上あり、しかもかなりまとまった面積があるのは上那賀町と半田町だけであった。しかし、井川町は最高点が約1280m で、1000m
以上の山地も南部に連続している。そこで、今回は冷温帯域の鳥類を調べることに主眼を置き、腕山を調査した。比較のため、1000m
近くの冷温帯と暖温帯の推移帯も調べることとし、多比山〜多美山を調査した。井川町の林野はスギ、ヒノキ、カラマツ植林が多く、伐採跡の若い造林地も多い。本来の鳥類相を出来るだけ把握するため、調査コースは天然性林の多い所を選ぶよう努めた。 1)腕 山 腕山という場合、山頂、放牧場、スキー場の3通りの使い方がある。山頂三角点は西祖谷山村にあり高度は1332.9m
である。放牧場も西祖谷山村で、山頂の南西方にある。スキー場は井川町に属し、山頂の北西方の北側斜面にある。1927(昭和2)年に開場し、地形の関係から、標高(約1100〜1180m)の割に雪質・雪量に恵まれ、根強いファンが訪れていた。大規模な改修工事が行われ、ゲレンデを3面に増やし、リフトと人工造雪機を導入して、1997(平成9)年12月7日、「井川スキー場腕山」として新装オープンした。 ライン・センサス調査コースは、旧腕山ヒュッテ南の池田町との境の南向き斜面を起点とし、東南東へ向かい、谷川に接する石積みの手前を北方へ上がり、尾根状地のススキなどの原の小窪(くぼ)地を抜けて、地形図に記載のある山道と合流する。あとはこの山道を利用し、山頂三角点を終点とした。全長約2.3km、標高約1120〜1332.9m。起点から石積みまでは、ミズナラ、カエデ類、シデ類、ミズメ、ナツツバキ、ハリギリ、クリ、タムシバなど落葉樹が多く、尾根はアカマツが生える。ススキの原を抜けると、左はスギ・ヒノキ植林、右は落葉樹林となり、若い造林地へ出る。右側は谷沿いのサワグルミがある落葉樹林となり、尾根へ上がると1230m
付近でブナが現れる。カラマツ植林があり、西祖谷山村へ入るとヤブ状低木林となり、抜けると落葉樹、アカマツ、カラマツが入り混じる。あとはスギ・ヒノキ植林が多いが、落葉樹二次林もあり、ブナも少ないながら生えている。 調査結果は表5に示す。比較しやすくするため、数字は1km
当たりに換算した。冷温帯性鳥類といわれるものにオオアカゲラ、コガラ、ゴジュウカラ(写真7)があり、いずれも確認された。表には出ていないが、クマタカ、ヨタカ、トラツグミが繁殖期に確認された。逆に暖温帯性鳥類の代表であるヒヨドリ、メジロは少なく、繁殖期には確認されなかった。

秋から初冬にかけて記録数が増えた。シロハラ、ツグミ、アトリ、マヒワ、イスカ、シメなど冬鳥が渡来した当初は、高い山で生活するものが多いからである。木の実、種子や林床の小動物を捕食し、木の実を食べ尽くしたり、地面が雪に覆われると、順次低地へ移動する。ただ、年によって渡来数に変動がある。厳冬期も留鳥性の鳥の幾らかは残留する。全般的に鳥が多かったのは、コース前半であった。谷沿い南斜面の落葉樹を主体とし(写真8)、アカマツが点在し、ススキなどの開けた草地や林縁部があるなど、水が得やすく、多様な植生が見られるからである。後半は、間伐の遅れたスギ・ヒノキ植林が多く、林床が薄暗く腐植層が発達していないため、野生動物の生息には適していない。一斉林的に密生する若い落葉樹二次林も、生息数は少なかった。
 スキー場は、夏期は草原状になるならば、徳島県又は四国で繁殖しないとされている、ヤマシギ、ノビタキ、コヨシキリや、他の草原性鳥類が生息する可能性がある。しかし今回(1997年)は拡張工事中で、地肌がむき出しになるなど調査不可能であった。 2)多比(たび)山〜多美山 大久保集落の上方、ログハウスのある所から車道の分岐を右へ(南西のち東)進むと、新しいコンクリート擁壁があり、そこからは車道が狭く、参道状になる。ライン・センサス調査コースは、ここを起点とし、東進して多比山弘法大師・大師堂に着く。裏山を上がって神社に至り、三角点(930.1m)を過ぎて北東進し、多美農地との境を終点とした。全長約1.2km、標高約720〜930m。参道沿いは、スギ・ヒノキ植林、若い造林地と林縁部、落葉樹二次林、アカマツ林が入り混じり、多比大師付近はケヤキなどの大木が多く、奥には滝がある。裏山は崖(がけ)状の露岩地があり、コナラ、ミズナラ、クリ、シデ類、カエデ類、ミズキ、クマノミズキ、コシアブラ、ヤマザクラ、ホオノキ、タムシバなどの落葉樹林がある(写真9)。尾根筋は、アカマツ、リョウブ、ソヨゴ、アセビ、ミツバツツジ類などが生える。神社から終点まではスギ・ヒノキ植林が多いが、落葉樹二次林もある。
 1km
当たりに換算した調査結果を表6に示す。冷温帯性、暖温帯性の鳥類が共に確認されたが、冷温帯性の鳥は少なくなり、逆にヒヨドリ、メジロは多くなり繁殖期にも生息する。キバシリが記録され、イカルが継続して観察されたのが注目される。腕山と同様、秋冬期に生息数が増えるが、アカハラ、シロハラ、ツグミ、カシラダカ、アトリ、イスカなどが渡来するからである。腕山より全般的に生息数が多い。これは、植生に暖温帯と冷温帯の両方の要素が見られ、開けた林縁部も多く、崖状の露岩地や滝があり、様々な環境があるため、鳥類もそれに対応して多様になり、気候も南向きでより温和であるためであろう。

5.井内谷川 井内谷川で確認された河川・渓流を好む鳥類は、カワセミ、カワガラス、キセキレイ、セグロセキレイであった。ヤマセミは確認されなかった。井内谷川の場合、渓谷の深さに乏しく、川幅が狭く、淵(ふち)や瀬が少なく、家屋が川に迫って建て込んでいる所が多く、道路も流れのすぐ近くを通っているため、山間渓流を好む鳥にとって余り良い生息地ではない。
6.神社の森 各地に残る神社の森には、樹木が鬱蒼(うっそう)と茂る所も多く、大木・古木の幹の裂け目や樹洞は、様々な野生動物が営巣・繁殖やねぐらに利用する可能性がある。そこで神社の森を幾つか調べた所、神社で、アオバズクのさえずり声が確認された。詳しく調べればさらに生息地が見つかるかも知れない。なおフクロウは、下野住と吹峯(共に井内)で確認された。
7.特記すべき種類について 1 クマタカ(タカ科) 全長72〜80cm、翼開長140〜165cm。日本で繁殖する山岳性ワシタカの中では、イヌワシに次ぐ大型のタカである。ノウサギ、ヤマドリ、ヘビなどを捕食し、人が近づき難い、急峻(しゅん)な崖地や露岩地帯の大木に営巣・繁殖する。種族を維持するためには、山岳・森林生態系が、広範囲にわたって良好に維持されていなければならない。しかし、近年の山地の開発、林道工事、人工植林地の増加などにより、イヌワシと共にその生存が危ぶまれている。井川町では、多比山・多美山、日ノ丸山〜腕山で確認された。 2 キバシリ(キバシリ科) 全長13.5cm。山地の針葉樹林を好み、針葉樹の幹をらせん状に上って行っては、次の木の幹の低い所に飛び移り、またらせん状に上って行くという動作を繰り返しながら、樹皮に潜む昆虫を捕食する。広葉樹を利用することもある。樹木の裂け目や樹洞に営巣・繁殖する。徳島県では、暖温帯上部から冷温帯域のモミ、ツガ、広葉樹の混交林や、スギ・ヒノキ植林などに生息し、非繁殖期は低山へ移動するものもある。分布は極めて局地的で、生態はまだよくわかっていない。しかし、阿波学会の鷲敷町(1982年)、上那賀町(1988年)、日和佐町(1996年)の総合学術調査で生息が確認されるなど、次第に分布が明らかになりつつある。井川町でも多美山で見つかった。従来考えられていた分布域からかなり北西方に離れており、注目される。 3 イスカ(アトリ科) 全長約16.5cm。ユーラシア・北アメリカ北部に分布し、北海道や本州中部以北の山地でも局地的に繁殖する。嘴(くちばし)は大きめで太く、先端が、上嘴は下に、下嘴は上に曲がって食い違っているのが大きな特徴である。この嘴を使って、アカマツやモミなどの球果から種子を取り出して食べる。カバノキ科などの広葉樹の種子も食べる。徳島県では冬鳥として訪れるが、渡来は不定期で分布も局地的である。近年、観察者が増え、大川原高原(佐那河内村)や大川(だいせん)山(三野町)などにはよく訪れていることがわかってきた。しかし他の山地ではまれにしか見られなかった。ところが、1997〜98年の冬は当たり年で、各地で見られている。井川町でも、多比・多美山、腕山などで確認された(写真10)。
 4 イカル(アトリ科) 全長約23cm。嘴が黄色く、太くて巨大で、これを使って木の実の果肉の部分は捨て、固い殻を割って中身を食べる。夏期はヤマザクラ、ミヤマザクラ、秋冬期はムクノキ、エノキなどを利用する。徳島県では、非繁殖期は大きな群れで低山・山麓に現れることがあり、繁殖期には余り多くないが山地の森林に生息する。県内でも繁殖しているであろうと考えられてきたが、巣の発見が困難で繁殖確認出来ずにいた。1991年になって太龍寺山で吉田和人氏(阿南市)によって繁殖確認された。井川町では、繁殖期に各地で生息が確認された。他の地域の山地に比べると、かなり広くかつ高密度に生息するようである。
8.その他(哺乳類など) 鳥類の調査中に見つけた他の動物について簡単に列挙してみる。 哺乳類では、ニホンザルが井内谷川沿い(下吹〜安田)、駒倉(井内)、腕山で、ノウサギは、糞(ふん)が吉野川河川敷で、雪上の足跡が日ノ丸山と腕山で、ニホンリスは多比山、多美山、日ノ丸山、水ノ口峠、腕山で、タヌキはため糞が多比山、多美山、日ノ丸山、腕山で、テンが腕山スキー場付近で、ニホンジカは糞が水ノ口峠北東方の西祖谷山村側の谷の源流付近で、それぞれ見られた。 両生類では、アカガエル(ヤマアカガエル又はニホンアカガエル)が、水ノ口峠東方、西祖谷山村側の池〜湿地状の谷川で、雪解けが始まったばかりの1997年2月27日に多数集まって産卵行動中であった(標高1100m)。3月23日にはニホンイモリも見られた。また、腕山放牧場の池(西祖谷山村)でも4月10日にアカガエル類のオタマジャクシが多数見られた(1270m)。なお、地形図には池が四つ記されているが、水があるのは一番北東の北側の池だけである。多美農地の排水が流れ込む貯水池では見つからなかった(3月2・9日、4月13日)。 昆虫では、10月16日に腕山の伐採跡のススキなどの草地(1170m)と、旧腕山ヒュッテ裏の草地〜林縁部(1120m)でカンタンの鳴き声が聞かれ、姿も確認した。 9.まとめと提言 1 吉野川は、井川町域に限れば、池沼・止水・湿地的環境に乏しく、そのような環境に全面的に依存する鳥類にとっては良好な生息地とはいえないが、隣接する三好町、池田町域も含めると、水辺・湿地・原野・樹林など様々な環境があるため、多くの野生生物にとって重要な生息地である。しかし、徳島自動車道の建設工事やグラウンド整備など土木事業により、生息地が分断され、縮小し、孤立化しつつある(写真11)。
  2 井川町の山地の林野は、針葉樹人工林率が約68%に達しているが、暖温帯上部から冷温帯域で、比較的自然林に近い様相を呈している所や、周辺の林縁的環境では、多種多 様な鳥類が生息する。徳島県の山岳・森林生態系の豊かさを象徴する種類の一つであるクマタカも生息する。しかし、高冷地野菜団地の開発、日ノ丸林道延長工事、腕山スキー場の改修・新装オープンなどにより、生態系が乱される恐れがある(写真12)。 3 山間の集落・農耕地や、神社の森の周辺などで、自然の改変が小規模で、二次的な自然(半自然)が残るような土地利用がなされているような所では、フクロウ、トラフズク、アオバズクなどに代表されるように、比較的多種多様な鳥類相が見られる。 以上のことを踏まえつつ、以下の提言を行いたい。町・県・国、関係各機関・団体や地域の各施策に反映していただければ幸いである。 1 吉野川は、隣接する三好町、池田町も含めて考えると野生生物の大切な生息地である。特に、止水的な流れのゆるやかな水域や池沼があり、周囲がヨシ、ガマなど高茎草本群落で覆われ、湿地があり、人が余り近づけないような場所が必要である。生息地がコンクリート護岸などで分断されず、つながっていなければならない。このような環境が保全され、必要ならば復元されるような施策が望まれる。 2 山地に林道が開設されると、急傾斜な法面、コンクリート擁壁、側溝などにより、野生動物の生息地が分断され、移動・分散できなくなる。山地に道路を建設する時は、野生動物の立場を考慮し、所々に移動可能な場所を設けるなどの工夫が必要である。 3 多比山弘法大師・大師堂の奥にある見事な滝の水は濁っている。多美農地からの排水は、農薬や化学肥料などが混じっている可能性がある。これらの使用は極力控えるか、あるいは排水が谷川に流れ込まないような措置を講ずる必要がある。 4 腕山スキー場では、ゴミ・汚水の処理、化学物質の使用、車の排気ガス、騒音、スピーカーの音量などの面で、周囲の自然や野生動物に配慮した営業を望む。 [調査参加者]市原眞一、笠井正、柴折史昭、曽良寛武、東條秀徳、花岡裕明、増谷正幸、三宅武、八巻吉子(五十音順)
10.井川町鳥類目録 1997年1月3日〜1998年1月3日の現地調査で記録された種類を記載する。具体的な観察例は、紙幅の制約上、分布、行動などで興味深いものに限定し、本文、表などで参照できるものは極力省略した。観察年月日、場所・地名、地図メッシュ番号、標高、個体数、環境・行動、観察記録者名の順である。地名、標高等は主に2万5千分の1地形図によった。地図メッシュ番号は、5万分の1地形図「池田」、「川口」を縦・横それぞれ20等分してできたメッシュ(A〜K、1〜8で表わす)を単位として記録地を示している。さらに細分可能な場合、メッシュを縦・横それぞれ2等分しa〜dで示した(図1参照)。種名の後の◎は井川町で繁殖する種類を、○は繁殖の可能性のある種類を、△は今回の調査だけでは何とも言えないが、現時点では繁殖の可能性が低い種類を示す。

カイツブリ目 PODICIPEDIFORMES カイツブリ科 PODICIPEDIDAE 1.カイツブリ Tachybaptus
ruficollis ○ 1997.1.12 吉野川[A3c]70m 10 淵の部分に〈東條〉 1997.2.20 吉野川[A5b]70m 5 美濃田大橋付近に浮いたり潜ったり〈増谷〉 ペリカン目 PELECANIFORMES ウ科 PHALACROCORACIDAE 2.カワウ Phalacrocorax
carbo 1997.2.2 吉野川[A3c]70m 200+ 上空を上流へ飛行〈東條〉 1997.10.11 吉野川[A3a]70m 4 中州の島の河原に〈笠井〉 コウノトリ目 CICONIIFORMES サギ科 ARDEIDAE 3.ゴイサギ Nycticorax
nycticorax 1997.7.30 吉野川[A6c]70m 7成鳥 岸辺の竹ヤブで休む〈笠井〉 4.ササゴイ Butorides
striatus ○ 1997.5.29 吉野川[A5c]70m 2 岸辺で魚を狙う〈笠井〉 5.アマサギ Bubulcus
ibis 1997.8.9 吉野川[A2]75m 9 川岸でコサギ、アオサギと共に採餌(さいじ)〈笠井〉 6.ダイサギ Egretta
alba 1997.5.17 吉野川[A2]75m 1 中州の浅い掘り跡に〈東條〉 7.コサギ Egretta
garzetta 1997.8.6 西井川[A2b]100m 1 里川谷川の流水中で採餌〈東條〉 1997.8.6 吉野川[A2]75m 1 三好大橋のすぐ上流の川岸で採餌〈笠井〉 8.アオサギ Ardea
cinerea 1997.2.20 吉野川[A3a]70m 7 河原に〈増谷〉 カモ目 ANSERIFORMES カモ科 ANATIDAE 9.オシドリ Aix
galericulata 1997.2.2 吉野川[A3]70m 1♂・1♀ 南岸の淵に〈東條〉 10.マガモ Anas
platyrhynchos 1997.11.2 吉野川[A3]70m 44 淵の部分に〈東條〉 11.コガモ Anas
crecca l998.1.3 吉野川[A5b]70m 4 美濃田大橋付近の流れに浮かぶ〈増谷〉 タカ目 FALCONIFORMES タカ科 ACCIPITRIDAE 12.ハチクマ Pernis
ptilorhynchus 1997.9.23 女法寺(西井川)[A3]1 上空帆翔(はんしょう)後、西へ〈東條〉 13.トビ Milvus
migrans ◎ 1997.7.31 日ノ丸山[H8]1100m 3 西面〈柴折〉 14.オオタカ Accipiter
gentilis 1997.3.27 吉野川[A5]70m 1成鳥 上空旋回し高度を上げ、急降下〈笠井〉 15.ツミ Accipiter
gularis 1997.11.2 下久保(井内)[E6c]400m 1 山腹斜面より舞い上がる〈東條〉 16.ハイタカ Accipiter
nisus 1997.2.20 吉野川[A5c]70m 1 上空旋回。カラスにつきまとわれる〈増谷〉 1997.11.8 多比山[E7d]800m 1 大師堂上方岩場の上空を旋回したり、ハシブトガラスに突っかかって行った後、枯れたアカマツにとまる。その後、2羽になり南方へ飛び去る。うち1羽はツミの可能性もある〈増谷〉 17.ノスリ Buteo
buteo 1997.3.20 腕山[I6d]1100m 1 スキー場入口付近〈三宅〉 18.サシバ Butastur
indicus ◎ 1997.6.14 多比山[E7d〜F7c]750m 1 旋回しながら高度を上げる〈増谷〉 1997.6.26 腕山[J6a]1250m 1若鳥 飛来しカラマツにとまる〈増谷〉 1997.7.25 野住(井内)[F4]550m 3 北東より飛来し南西の山林へ〈東條〉 1997.7.30 上正夫(井内)[C6]650m 3〈柴折〉 19.クマタカ Spizaetus
nipalensis ○ 1997.1.3 日ノ丸山[H8]1〈市原〉 1997.1.13[G7]582m 2 知行林道〈市原〉 1997.3.23[G8]1200m 1 日ノ丸山北方尾根の上空〈増谷〉 1997.7.19[H8→I7→J6]2 日ノ丸山から稜(りょう)線上を水ノ口峠付近を経て腕山方面へ飛行し、ここで2羽になり旋回しながら高度を上げる〈増谷〉 1997.9.20 多比山[E7]770m 1 下方から旋回し高度を上げ北方へ飛び去る 1997.11.8 多比山[E7]770m 1 南東方から滑空して来て、戻って行く〈増谷〉 キジ目 GALLIFORMES キジ科 PHASIANIDAE 20.コジュケイ Bambusicola
thoracica ◎ 1997.7.30 浜東(辻)[A6d]120m 1 さえずり声〈柴折〉 21.ヤマドリ Syrmaticus
soemmerringii ◎ 1997.3.9[D7b]830m 1♂・2♀ 林から道路端へ出ようとする〈増谷〉 1997.12.27 多比山[E7d]760m 1 ドラミング(落葉樹・アカマツ・スギ林)〈増谷〉 22.キジ Phasianus
versicolor ◎ 1997.5.9 吉野川[A5d]75m 1♂・1♀ 町民グラウンド脇から草地へ〈笠井〉 1997.5.17 西井川[A2]120m 1 南方の山地からさえずり声〈東條〉 チドリ目 CHARADRIIFORMES チドリ科 CHARADRIIDAE 23.コチドリ Charadrius
dubius ○ 1997.5.9 吉野川[A3]70m 1成鳥 河原にできた湿地状の所に〈笠井〉 1997.6.22 吉野川[A3c]70m 3+ 河原に〈笠井〉 24.イカルチドリ Charadrius
placidus ◎ 1997.6.7 吉野川[A2〜A3]75m 1成鳥・1幼鳥 中州に〈東條〉 1997.6.12 吉野川[A3]70m 1巣・3卵・2成鳥 河原に〈笠井〉 シギ科 SCOLOPACIDAE 25.クサシギ Tringa
ochropus 1997.2.20 吉野川[A5b]70m 1 流れのゆるやかな水ぎわに〈増谷〉 26.イソシギ Actitis
hypoleucos ○ 1997.5.9 吉野川[A5c]70m 1 南岸から北岸へ翼をたれた様にして飛ぶ〈笠井〉 1997.6.22 吉野川[A3]70m 2 河原。近づくと1羽は少し飛ぶが、他の1羽はしきりに鳴く〈笠井〉 27.タシギ Gallinago
gallinago 1997.3.27 吉野川[A3]70m 1 中州から飛んで池田町側の湿地に降りる〈笠井〉 ハト目 COLUMBIFORMES ハト科 COLUMBIDAE 28.キジバト Streptopelia
orientaiis ◎ 1997.2.20 大久保(井内)[E6ab]630m 1 日陰に積雪のある畑地に〈増谷〉 1997.4.20 西井川[A2]100m 1 耕起田に〈東條〉 29.アオバト Treron
sieboldii ◎ 1997.5.17[I5]920m 1 駒倉林道でさえずり声〈東條〉 1997.7.31 日ノ丸山[H8]1100m 3 西面〈柴折〉 1997.8.2 腕山[I6d]1100m 2 スキー場周辺の山林〈東條〉 ホトトギス目 CUCULIFORMES ホトトギス科 CUCULIDAE 30.カッコウ Cuculus
canorus ○ 1997.6.7 腕山[I6d]1100m 2+ スキー場周辺山林でさえずり〈東條〉 31.ツツドリ Cuculus
saturatus ○ 32.ホトトギス Cuculus
poliocephalus ◎ 1997.6.7 腕山[I6d]1100m 1 スキー場周辺の山林でさえずり〈東條〉 フクロウ目 STRIGIFORMES フクロウ科 STRIGIDAE 33.トラフズク Asio
otus 1997.3.20 野住(井内)[F4c]600m 1 道路を横切りスギ・ヒノキ林内の斜面を音も無く飛ぶ〈東條〉 34.アオバズク Ninox
scutulata ◎ 1997.7.30 90m
1 神社で早朝4時頃さえずり〈笠井〉 1997.8.6 140m 1 神社の裏山でさえずり〈東條〉 35.フクロウ Strix
uralensis ◎ 1997.6.6 下野住〜花の内[G4c]580m 1 21:15道路沿いアカマツ横枝〈東條〉 1997.7.31 吹峯(井内)[I6b]1080m 1 林内を飛ぶ〈柴折〉 ヨタカ目 CAPRIMULGIFORMES ヨタカ科 CAPRIMULGIDAE 36.ヨタカ Caprimulgus
indicus ◎ 1997.6.7 腕山[I6d]1100m 1 早朝、スキー場下の林の上空を移動しながらさえずる〈東條〉 ブッポウソウ目 CORACIIFORMES カワセミ科 ALCEDINIDAE 37.ヤマセミ Ceryle
lugubris ○ 1997.5.17 西井川[A2b]110〜120m 2 南側山沿いを東から来て西へ、里川谷方面へ鳴きながら飛ぶ〈東條〉 38.カワセミ Alcedo
atthis ◎ 1997.11.2 井内谷川[D5]150m 1 堰(せき)の上に張られた架線にとまる〈東條〉 キツツキ目 PICIFORMES キツツキ科 PICIDAE 39.アオゲラ Picus
awokera ◎ 1997.8.27 腕山[J6c]1120m 1幼鳥 落葉広葉樹の幹にとまる〈増谷〉 1997.9.20 多比山[E7d]750m 1♂型 コナラの幹や太枝をつつく〈増谷〉 40.オオアカゲラ Dendrocopos
leucotos ◎ 1997.8.27 腕山[J6c]1160m 5±(家族群) ♀成鳥は落葉樹の朽ちかけた幹をしきりにつつき、幼鳥はミズナラなどの地面近くの幹にとまって、キャラ、キャラ、……と奇妙な声で鳴く〈増谷〉 1997.10.16 腕山[J5a]1120m 1 朽ちかけた伐倒木から飛び立つ〈増谷〉 1997.12.5 多美山[E7a]920m 1 アカマツ林内のコナラにとまる〈曽良、増谷〉 41.コゲラ Dendrocopos
kizuki ◎ 1997.1.18 腕山[J6c]1180m 1 積雪のある落葉樹とアカマツの林〈増谷〉 1997.4.8 吉野川[A3c]75m 2 中州の島のクヌギにとまる〈笠井〉 スズメ目 PASSERIFORMES ヒバリ科 ALAUDIDAE 42.ヒバリ Alauda
arvensis ◎ 1997.3.20 吉野川[A3]70m 1 低草地と上空でさえずり〈東條〉 1997.4.10 腕山放牧場(西祖谷山村)[K6d]1280m 3 草地でさえずり〈増谷〉 1997.4.20 西井川[A2]110m 1 農耕地帯の上空でさえずる〈東條〉 1997.5.18 多美山[E7a]910m 1+ 農地でさえずり声〈増谷〉 ツバメ科 HIRUNDINIDAE 43.ツバメ Hirundo
rustica ◎ 1997.3.2 吉野川[A4]70m 3 川の上空を30分以上飛び交う〈東條〉 1997.3.2 吉岡175の1(辻)[A4]80m 1 昨年の巣(3か所有り)の前の電線にとまる。3月27日には一つの巣を土で修復中〈笠井〉 1997.4.7 吉野川[A4a〜A5c]70m 200+ 水面すれすれに飛ぶ〈笠井〉 1997.4.20 西井川[A2]110m 5 大西電気店南面に5巣。ビニールひも状の巣材を田で拾う〈東條〉 1997.7.30 大森(井内)[D6]600m 10 ニワトリ小屋上空で群れる〈柴折〉 1997.8.27 腕山[I5b]1120m 10+ スキー場周辺上空を飛び回る〈増谷〉 44.コシアカツバメ Hirundo
daurica ◎ 1997.5.17 井内[E5]200m 2 コンクリート建物2階庇(ひさし)下に造巣中〈東條〉 1997.6.7 中津[E5b]220m 1巣 井内小学校2階コンクリート庇に〈東條〉 45.イワツバメ Delichon
dasypus △ 1997.7.25 野住〜花の内(井内)[G4]550m 2 ツバメ3と共に飛行〈東條〉 セキレイ科 MOTACILLDA 46.キセキレイ Motacilla
cinerea ◎ 1997.2.2 西井川[A2b]90m 1 里川谷川に〈東條〉 1997.2.20 大久保[E6a〜b]630m 1 日陰に積雪のある湿った田に〈増谷〉 1997.4.20 野住(井内)[F4]550m 1 民家トタン屋根の上でさえずる〈東條〉 1997.5.18 流堂[B5b]120m 1 井内谷川沿いの集落地でさえずり〈増谷〉 1997.6.6 吉野川[A3c]70m 1♂・2ヒナ 巣立ちビナに昆虫を給餌〈笠井〉 1997.6.7 腕山スキー場[I6d]1100m 2 工事中道路に〈東條〉 47.ハクセキレイ Motacilla
alba 1997.3.6 吉野川[A5c]70m 6+ 河原で採餌〈笠井〉 48.セグロセキレイ Motacilla
grandis ◎ 1997.2.20 女法寺(西井川)[A3a]90m 2 人家の屋根の上で鳴く〈増谷〉 1997.4.20 西井川[A2]l10m 2 工事事務所の屋根の上でさえずる〈東條〉 1997.6.14 馬路[D5b]190m 2 井内谷川沿い〈増谷〉 1997.9.8 吉野川[A3c]75m 1♂・1♂若鳥 河原に〈笠井〉 1997.9.23 多美山[E7a]900m 1 農地の堆肥(たいひ)のそばで採餌〈東條〉 1997.11.8 大久保(井内)[E6c]560m 2 山あいの集落・農耕地帯〈増谷〉 49.タヒバリ Anthus
spinoletta 1997.3.7 吉野川[A3a]70m 6 河原で採餌〈笠井〉 ヒヨドリ科 PYCNONOTIDAE 50.ヒヨドリ Hypsipetes
amaurotis ◎ 1997.1.18 腕山[I6d]1000m 1 積雪のある山林に〈増谷〉 1997.3.20 野住(井内)[F4]550m 2 野菜畑から飛び立つ〈東條〉 1997.3.20 西井川[A2]110m 1 サクランボの花を食べる〈東條〉 1997.7.31 日ノ丸山[H8]1100m 1 西面〈柴折〉 モズ科 LANIIDAE 51.モズ Lanius
bucephalus ◎ 1997.3.6 吉野川[A5d]70m 1♂・1♀ 町民グラウンド北側のニセアカシアの枝にペアでとまる〈笠井〉 レンジャク科 BOMBYCILUDAE 52.ヒレンジャク Bombycilla
japonica 1997.3.27 北内(西井川)[A3c]90m 7+ 竈神社のイチョウにまきついたキヅタの実を食べる〈笠井〉 1997.4.8 吉野川[A3c]75m 7〜11 中州の島のセンダンやクヌギにまきついたキヅタの実を食べる〈笠井〉 カワガラス科 CINCLIDAE 53.カワガラス Cinclus
pallasii ○ 1997.2.20 吉野川[A3a]70m 2 流れの石の上に〈増谷〉 1997.4.20 下吹(井内)[C5]150m 1 井内谷川に〈東條〉 ミソサザイ科 TROGLODYTIDAE 54.ミソサザイ Troglodytes
troglodytes ◎ 1997.1.18 腕山[I5a]950m 1 積雪のある山林に〈増谷〉 1997.5.17 井内[F5d]280m 1 沢沿いのスギ林でさえずり〈東條〉 ヒタキ科 MUSCICAPIDAE (ツグミ亜科 TURDINAE) 55.ノゴマ Erithacus
calliope 1997.10.16 腕山[J6a]1270m 1♂ ヤブ状低木林の地上近くの枝〈増谷〉 56.コルリ Erithacus
cyane 1997.5.18 大久保(井内)[E6b]710m 1 山林でさえずり声〈増谷〉 57.ルリビタキ Tarsiger
cyanurus 1997.1.18 腕山[I5a]970m 1♂ ヌルデの実をついばむ〈増谷〉 1997.2.2 辻[A4b]100m 1♀型 飯裹神社のサクラの下枝にとまる〈東條〉 58.ジョウビタキ Phoenicurus
auroreus 1997.1.12 辻[B5a]90m 1 今宮神社に〈東條〉 59.ノビタキ Saxicola
torquata 1997.11.12 吉野川[A3c]75m 1冬羽 河原のブッシュ状になった所のネムノキの枝に、虫をくわえて止まる〈笠井〉 60.トラツグミ Zoothera
dauma ◎ 1997.6.7 腕山[I6d]1100m 1 夜来早朝さえずり声〈東條〉 1997.7.31 吹峯(井内)[I7d]1100m 1 水ノ口峠付近〈柴折〉 61.クロツグミ Turdus
cardis ◎ 1997.5.17 駒倉林道[I5c]920m 1 ミズナラなど落葉樹林でさえずり〈東條〉 1997.6.7 腕山[I6d]1100m 1 スキー場下の落葉樹林でさえずり〈東條〉 62.アカハラ Turdus
chrysolaus 1997.11.8 多比山[E7d]920m 2+ 尾根筋の落葉樹とアカマツの混交林〈増谷〉 63.シロハラ Turdus
pallidus 1997.1.18 乳ノ久保(井内)[H4a]750m 2 所々に積雪のあるアカマツと落葉樹の林の林床をカサカサとかき回して採餌〈増谷〉 1997.2.2 吉野川[A3]70m 2 河原のブッシュに〈東條〉 1997.11.8 多比山[E7d]920m 12+ 尾根筋の落葉樹とアカマツの混交林〈増谷〉 1997.12.19 腕山[J6c]1180m 3 所々積雪ある落葉樹とスギ・ヒノキ林 64.ツグミ Turdus
naumanni 1997.12.19 腕山[J6c]1190m 24+ 落葉広葉樹林に〈増谷〉 (ウグイス亜科 SYLVIINAE) 65.ヤブサメ Cettia
squameiceps ◎ 1997.5.17 井内[F5d]280〜330m 2 沢沿いのスギ林でさえずり〈東條〉 66.ウグイス Cettia
diphone ◎ 1997.1.18 腕山[I5a]950m 1 積雪のある山林〈増谷〉 1997.2.2
吉野川[A3]70m 4 河原のブッシュと南岸の河畔林に〈東條〉 67.オオヨシキリ Acrocephalus
orientalis ◎ 1997.6.6 吉野川[A3]70m 1 河原のヤナギにとまりさえずる〈笠井〉 68.メボソムシクイ Phylloscopus
borealis 1997.5.9 吉野川[A3]75m 2 中州の島の林の茂みでさえずり〈笠井〉 1997.10.16 腕山[J6c]1120m 1 コハウチワカエデなどの茂みで採餌。不完全なさえずり声も発する〈増谷〉 69.センダイムシクイ Phylloscopus
coronatus ◎ 1997.6.7[B5]280m 1 クヌギ、コナラなどの林でさえずり〈東條〉 70.キクイタダキ Regulus
regulus 1997.1.18 腕山[I5a]970m 2+ 積雪のスギ、ヒノキ、アカマツ林〈増谷〉 1997.12.27 多比山[E7d]750m 2 スギに〈増谷〉 71.セッカ Cisticola
juncidis ◎ 1997.5.17 吉野川[A2]80m 1 南岸ツルヨシ原でさえずり〈東條〉 1997.5.22 腕山放牧場(西祖谷山村)[K6d]1280m 1 草地でさえずり〈増谷〉 1997.6.6 吉野川[A3c]75m 1 河原を鳴きながら飛ぶ〈笠井〉 (ヒタキ亜科 MUSCICAPINAE) 72.キビタキ Ficedula
narcissina ◎ 1997.6.7 腕山[I5b〜I6d]1000〜1200m 3 スキー場の上・下の落葉広葉樹林でさえずり声〈東條〉 73.オオルリ Cyanoptila
cyanomelana ◎ 1997.5.18 馬路(井内)[D6d]290m 1♂ エサをくわえて警戒する〈増谷〉 1997.6.14 多比山[E7d]800m 2♂ 一方が他方を追って飛び、さえずり声も発する(なわばり争いか)〈増谷〉 1997.8.27 腕山[J6c]1170m 2♂幼鳥 ウリハダカエデなどの枝に〈増谷〉 74.コサメビタキ Muscicapa
latirostris ○ 1997.8.27 腕山[J6c]1170m 1 ミズナラなどの木の枝にとまる〈増谷〉 エナガ科 AEGITHALIDAE 75.エナガ Aegithalos
caudatus ◎ 1997.1.18 腕山[I6d]1010m 12 積雪のある山林〈増谷〉 1997.3.27 吉野川[A3c]75m 5 中州の島の雑木林のマツなどを枝移り〈笠井〉 1997.5.22 腕山[J6c]1120m 2成鳥 1羽がアカマツでカレハガ科幼虫を捕らえ、振り回したり嘴でつまんだりした後、くわえて飛び去る。他の1羽は後を追う〈増谷〉 シジュウカラ科 PARIDAE 76.コガラ Parus
montanus ◎ 1997.1.12 八ツ石城の西(井内)[E3b]800m 2 尾根の混マツ林〈東條〉 1997.1.18 腕山[J6c]1180m 1 積雪のある落葉樹とアカマツの林〈増谷〉 1997.2.27 吹峯(井内)水ノ口峠の西[I7d]1110m 4 落葉樹低木、ヒノキ、アカマツの枝や幹の裂け目をつついたり探ったりする〈増谷〉 1997.3.2 大久保(井内)[E6b]630m 1 山林に〈増谷〉 1997.4.17 腕山[J6c]1170m 2 ヤナギの花穂の部分をついばむ〈増谷〉 1997.5.18 多比山[E7d]760m 2 落葉広葉樹で採餌〈増谷〉 77.ヒガラ Parus
ater ◎ 1997.1.18 腕山[I5a]970m 2 積雪のあるスギ、ヒノキ、アカマツ林〈増谷〉 1997.7.19 多比山[E7d]760m 4+(家族群) スギに。幼鳥は翼を震わせて親鳥につき回る〈増谷〉 1997.8.2 腕山スキー場周辺[I6d]1100m 3幼鳥 カラマツで採餌〈東條〉 1997.12.5 多美山[E7a]920m 2 アカマツの球果を探りついばむ〈曽良、増谷〉 1997.12.27 多比山[E7d]750m 2 スギの球果をついばむ〈増谷〉 78.ヤマガラ Parus
varius ◎ 1997.1.18 腕山[I6b]1080m 2 積雪のある山林〈増谷〉 1997.10.16 腕山[J6c]1150m 3 エゴノキの実を、樹木の根元の落ち葉の下や、土の斜面のコケの下へ何回も埋め込む(貯食行動)〈増谷〉 1997.12.19 腕山[J6c]1150m 4 林床で落ち葉をはねのけたりして堅い木の実を探し、木の枝の上で足にはさんでつつく〈増谷〉 1997.12.19 腕山[J6c]1120m 1 アカマツ枯木の幹を嘴で掘ったり樹皮をはがしていたが、何かがポロリと落ちたのを身を翻してキャッチする〈増谷〉 1997.12.27 多比山[E7d]750m 2 スギの球果をついばむ〈増谷〉 1997.12.27 多美山[E7a]920m 1 ヤマウルシの実を足で押さえてつつく〈増谷〉 79.シジュウカラ Parus
major ◎ 1997.1.18 腕山[I5a]950m 2 積雪のある山林〈増谷〉 1997.2.27 水ノ口峠の西(吹峯)[I7d]1110m 2 雪の解けた崖地で採餌〈増谷〉 1997.5.9 吉野川[A3]75m 2 中州の島の林から河原のヤナギへ〈笠井〉 ゴジュウカラ科 SITTIDAE 80.ゴジュウカラ Sitta
europaea ◎ 1997.2.27 吹峯(井内)水ノ口峠の西[I7d]1110m 2+ ヒノキ幹を探る〈増谷〉 1997.5.22 腕山[J6c]1120m 2 ミズナラ、ハリギリ、コハウチワカエデ、リョウブなどの幹を上がったり下がったりして採餌〈増谷〉 1997.6.14 多比山[E7d]910m 2 コナラ、リョウブ、ネジキ、アオダモ、イヌツゲなどの幹で採餌〈増谷〉 1997.7.19 大久保[E6b]720m 1 リョウブや枯れたアカマツにとまる〈増谷〉 キバシリ科 CERTHIIDAE 81.キバシリ Certhia
familiaris ○ 1997.7.19 多美山[E7a]910m 2 スギ、ヒノキの幹を上がって行く〈増谷〉 メジロ科 ZOSTEROPIDAE 82.メジロ Zosterops
japonicus ◎ 1997.5.18 多美山[E7a]920m 1 山林でさえずり声〈増谷〉 1997.7.31 日ノ丸山[H8]1110m 20+ 西面。ミズキの実に集まる〈柴折〉 1997.9.8 吉野川[A3]75m 35± 中州の島の雑木林で枝移りして行く〈笠井〉 ホオジロ科 EMBERIZIDAE 83.ホオジロ Emberiza
cioides ◎ 1997.2.27 腕山[I6b]1050m 1♂ 所々積雪ある伐採跡低木でさえずり 1997.3.20 吉野川[A3]70m 4 河原のツルヨシ群落に〈東條〉 84.カシラダカ Emberiza
rustica 1997.2.20 中村東(辻)[A4b]80m 7 吉野川沿い木立ちや畑に接した草地 1997.3.2 大久保(井内)[E6b]650m 50± 林縁部の木立ちや地上〈増谷〉 85.ミヤマホオジロ Emberiza
elegans 1997.1.12 大森(井内)[D6]500m 3 林道沿い〈東條〉 1997.12.27 大久保[E6b]720m 1+ 林縁部のヤブの地上〈増谷〉 86.アオジ Emberiza
spodocephala 1997.3.27 吉野川[A3]75m 7 雑木林の下で採餌〈笠井〉 87.クロジ Emberiza
variabilis 1997.11.8 多比山[E7d]880m 1♀ 落葉広葉樹林の林床に〈増谷〉 アトリ科 FRINGILLIDAE 88.アトリ Fringilla
montifringilla 1997.12.28 腕山[J6a]1250m 9 山林上を飛び回る〈増谷〉 89.カワラヒワ Carduelis
sinica ◎ 1997.3.2 大久保(井内)[E6b]640m 24 人家の木の枝から畑地へ〈増谷〉 1997.4.8 吉野川[A5c]70m 2 ニセアカシアの梢(こずえ)で、下の枝に止まった方(♀か)が翼を下げて震わす(求愛給餌か)〈笠井〉 1997.7.25 野住[F4]550m 1成鳥・5幼鳥 電線にとまる〈東條〉 90.マヒワ Carduelis
spinus 1997.4.8 吉野川[A3]75m 50+ 中州の島でクヌギの花穂をついばむ〈笠井〉 91.ハギマシコ Leucosticte
arctoa 1997.3.2 腕山スキー場[I6d]1100m 40 工事中斜面裸地で採餌〈東條〉 92.イスカ Loxia
curvirostra 1997.12.19 腕山[K6a](西祖谷山村側)1320m 40± ツルの絡まったブナの枝にとまり、しきりに何かをついばむ〈増谷〉 1997.12.27 多比山[E7d]910m 10+ アカマツにとまり球果をついばむ。球果をくわえて移動し、足で押さえ込んで中の種子をついばむものあり(この時、種子の翼がクルクル回りながら辺りを舞う)〈増谷〉 93.ベニマシコ Uragus
sibiricus 1997.1.18 腕山[I5a]960m 1♂ 林縁でイタドリの種子をついばむ〈増谷〉 94.ウソ Pyrrhula
pyrrhula 1997.2.2 飯裹神社(辻)[A4b]110m 3♂ サクラの芽を食す〈東條〉 95.イカル Eophona
personata ◎ 1997.5.18 多比山[E7d]740m 2 少し赤く色づいたヤマザクラの実をくわえ、嘴を少し開いて小刻みに上下に動かす〈増谷〉 1997.7.30 大森(井内)[D6]600m 2 ペアで〈柴折〉 1997.7.31 上野住(井内)[F3]700m 1〈柴折〉 1997.7.31 日ノ丸山[H8]1100m 1 西面〈柴折〉 96.シメ Coccothraustes
coccothraustes 1997.12.19 腕山[J6c]1190m 6+ 落葉広葉樹林に〈増谷〉 ハタオリドリ科 PLOCEIDAE 97.スズメ Passer
montanus ◎ 1997.5.17 西井川[A2]110m 工事プレハブ事務所屋根に巣〈東條〉 1997.6.7 中村東(辻)[A4]2巣 鉄骨プレハブ事務所、鉄骨の中に〈東條〉 ムクドリ科 STURNIDAE 98.ムクドリ Sturnus
cineraceus ◎ 1997.2.2 西井川[A2]110m 60± 電線にとまる〈東條〉 1997.5.17 中村東(辻)[A4]80m 1 民家2階屋根裏へ出入り〈東條〉 カラス科 CORVIDAE 99.カケス Garrulus
glandarius ◎ 1997.1.18 腕山[I5a]950m 2 積雪のある山林に〈増谷〉 1997.5.17 駒倉林道[I5]920m 2 落葉樹の高い枝に造巣中〈東條〉 1997.10.16 腕山[J6a]1250m 1 ミズナラのドングリをくわえ、呑み込んだ後、飛び去る(どこかへ運んで行ったかも)〈増谷〉 100.ハシボソガラス Corvus
corone ◎ 1997.1.12 今宮神社(辻)[B5]90m 1 両翼の大部分が白化した個体〈東條〉 1997.7.25 辻[B5]100m 1 翼が帯状に白化〈東條〉 101.ハシブトガラス Corvus
macrorhynchos ◎ 1997.1.18 腕山[I5a]970m 1 積雪のある山林に〈増谷〉 (野生化種) 102.ドバト(カワラバト
Columba livia
を家禽(かきん)化したものの野生化種)◎ 1997.4.20 西井川[A2]110m 2 耕起田に〈東條〉 1997.6.22 西井川[A2a]80m 8+ 三好大橋にとまる〈笠井〉
参考文献 1)徳島地方気象台・日本気象協会 1991 徳島の気象100年(徳島百年の気象)徳島出版社 2)増谷正幸 1993 三好町の鳥類 総合学術調査報告「三好町」郷土研究発表会紀要 第39号 P.61〜83 阿波学会・徳島県立図書館 3)中村登流・中村雅彦 1995 原色日本野鳥生態図鑑〈陸鳥編〉,〈水鳥編〉保育社 4)中国四国農政局・徳島統計情報事務所 1997 徳島県農林水産統計年報 平成7〜8年(1995〜96) 徳島県農林水産統計協会 |