阿波学会研究紀要


このページでは、阿波学会研究紀要論文をご覧いただけます。
 なお、電子化にともない、原文の表記の一部を変更しています。

郷土研究発表会紀要第43号
日和佐町の読書調査

読書班(徳島県立図書館)

   寺井素子1)・桐野芳昭1)・

   立石忠徳1)・岡村素子1)・               

   浜野陵子1)・山崎香奈子1)・               

   濱口佳代1)

1.はじめに
 日和佐町における読書の状況を把握するために、アンケート調査及び座談会を行い、分析・考察をこころみた。

2.調査の目的と方法
 調査の目的は、読書と図書館に関する日和佐町民の意識と実態を調査することによって、今後の図書館活動推進の参考にすることである。今回の調査では、町内の小・中学校生の保護者、町立図書館利用者及び小・中学校の小学3年生以上の児童生徒を対象に、「読書と図書館に関するアンケート」を実施した。また座談会を開催し、日和佐町教育委員会・町立図書館・図書館利用者の方々から意見を聞いた。

3.読書と図書館に関するアンケートの結果と分析
 1)一般成人対象
 このアンケートは、日和佐町内の小・中学校、町立図書館、公民館の協力のもとに、小中学校生の保護者、図書館・公民館の利用者を対象に行い、369通の回答を得た。以下に、その結果と分析を行う。
 回答者は小・中学校生の保護者が多いため、30代・40代の女性の回答が多数を占めている。そのため、統計的には偏りのあるものとなっている。 (表1.図1,2)

 問1.(余暇の過ごし方について) (表2.図3)
    あなたは、余暇をどのように過ごしていますか。 (3つまで○を)
  1.読書
  2.テレビ・ラジオ
  3.休息(ごろ寝)
  4.旅行
  5.スポーツ
  6.ショッピング
  7.友人との談話
  8.映画・ビデオ
  9.ゲーム
  10.その他

 男性回答者の41%(回答者72人中30回答)、女性回答者の38%(回答者281人中109回答)が余暇の過ごし方として読書を挙げている。このことから、潜在的な読書欲求、あるいは図書館の利用度は高いと思われる

 問2.(本の読書量について)あなたは、1カ月間に何冊の本を読みますか。 (マンガ雑誌は除く)(表3.図4,5,6)
  1.1冊以上
  2.2冊
  3.3冊
  4.4冊
  5.5冊以上
  6.読んでいない
 前問の結果に従い、1カ月に幾らかの読書をするとした回答が76%(回答者369人中277回答)に達している。ただしその内訳は、1冊以下の読書がその半数に及んでおり、量的に多いとはいえないであろう。

 問3.(雑誌の読書量について)あなたは、1カ月間に何冊雑誌を読みますか。(表4.図7,8,9)
  1.1冊以下
  2.2冊
  3.3冊
  4.4冊
  5.5冊以上
  6.読んでいない
 本よりも読んでいないとする率が少ない。また、より多くの冊数を読んでいるとする率が高く、1冊以下の読書量との回答も少なくなっている。

 問4.(読書の目的について)あなたは、どんな目的で本や雑誌を読みますか。(主なもの2つに○を)(表5.図10)
  1.楽しみのため
  2.趣味や娯楽に役立てるため
  3.教養を高めるため
  4.子どもの教育のため
  5.仕事に生かすため
  6.家庭生活に役立てるため
  7.その他
 男女共に楽しみのため、趣味・娯楽のためとする回答が多いが、男性は仕事のため、女性は家庭生活のためとする回答がそれに次いでいる。

 問5.(資料の入手方法について)あなたは、読みたい本や雑誌をどこで手にいれますか。(主なもの2つに○を)(表6.図11)
  1.町立図書館
  2.県立図書館
  3.職場
  4.書店
  5.コンビニエンス・ストア(スーパー等)
  6.友人
  7.家族
  8.宅配・通信販売
  9.その他
 書店で本や雑誌を求める割合が最も高い。これに次いでいるのが、町立図書館であるが、全回答者に占める割合は34%にとどまっている。県立図書館の割合が低いのは、距離的条件によるものであろう。また、現代的世相の反映として、コンビニエンス・ストアや宅配・通販による本の入手も増えてきているようだ。

 問6.(町立図書館の利用頻度について)あなたは、この1年間に町立図書館を利用したことがありますか。(表7.図12,13,14)
  1.ある(利用回数 a.週に1回以上 b.週に1回程度 c.月に1回程度 d.年に1回程度)
  2.ない
 前問にも現れたように、町立図書館の利用頻度は、回答者の約半数が利用していないという結果になった。また、利用しているという回答でも、頻繁な利用は少なく、町民の図書館の利用率は低いといわざるを得ない。

 問7.(図書館の利用目的について)(問6で「ある」と答えた人に)図書館を利用したのはどんな理由からですか。(主なもの3つまでに○を)(表8.図15)
  1.本を借りるため(子どもの本を借りる場合も)
  2.本、雑誌、新聞などを読むため
  3.カセット・CD等を借りるため
  4.カセット・CD・ビデオ等を視聴するため
  5.読書会、講演会、映画会、お話会等の行事に参加するため
  6.調査研究や学習のための相談や資料の紹介(案内)を受けるため
  7.気晴らしや時間つぶしのため
  8.図書館の雰囲気が好きだから
  9.その他
 本を借りるあるいは読むためが多く、利用目的の大半を占め、図書館の基本的役割は果たし得ていると思われる。

 問8.(図書館を利用しない理由)(問6で「ない」と答えた人に)どのような理由で、町立図書館を利用しないのですか。 (主なもの2つに○を)(表9.図16)
  1.開館時間中に利用できない
  2.設備や快適さにかける
  3.本は買って読みたい
  4.近くに図書館や公民館がない
  5.利用したい本がない(少ない)
  6.図書館があることを知らなかった
  7.その他
 問6で「ない」としたにも関わらずこの設問に答えていない回答が多い。おそらくは、その他の回答にもみられる「特に理由はない」というものが大半なのであろう。図書館のPRが重要視される。また、回答者の中では開館時間中の利用が出来ないという回答が最も多い。夜間開館あるいは移動図書館などの実施などが必要なのではなかろうか。

 問9.(町立図書館以外の読書施設の利用)あなたは、日和佐町立図書館以外の読書施設を利用していますか。(自由に○を) (表10.図17)
  1.利用していない
  2.県立図書館
  3.他の町の図書館(図書館名)
  4.学校図書館
  5.大学図書館
  6.職場
  7.その他
 町立図書館以外にも公共の読書施設はまったく利用していないという回答が大半を占めている。問8の「本は買って読みたい」にみられる積極的な読書施設の不利用が少ないという結果を踏まえて考えるならば、日和佐町では、なんらかの理由で読書施設が利用できない状況に置かれているといえる。また、他の町の図書館の利用が多くなっている。隣町の牟岐町で昨年開館した牟岐町立図書館の利用が最も多い。日和佐町民が図書館に、新しい豊富な資料を求めていることの表れと言えるのではないだろうか。

 問10.(公共図書館の存在意義)公共図書館を利用する、しないにかかわらず、それが存在していること自体、あなたにとって価値がありますか。(表11.図18,19,20)
 1.非常に価値がある 2.多少価値がある  3.関心がない
 前問までにみられるように、日和佐町立図書館の利用は、決して活発なものとは言えない。にもかかわらず、この設問において、公共図書館に高い存在意義を見いだしている回答が多い。これは、公共図書館制度、ひいては日和佐町立図書館への期待の表れであるといえるだろう。日和佐町立図書館関係者ならびにすべての公共図書館関係者はこれを銘記すべきであろう。

 問11.(図書館に望むこと)あなたは、読書に関して、町立図書館や県立図書館になにを望みますか。
・町立図書館:「蔵書を充実して欲しい(46)」「利用しないのでわからない・現状のままでよい(21)」「利用しやすくして欲しい(6)」「開館時間・貸出期間を長く(13)」「利用マナーが悪い(6)」「行事を増やして欲しい(3)」「子供が利用しやすくして欲しい」「駐車場を増やして欲しい(2)」「CD・ビデオを貸してほしい(2)」
・県立図書館:「駐車場が遠い」「わからない・特にない(9)」「遠い(9)」「蔵書数を増やして欲しい(5)」「開館時間(2)」「日和佐への巡回数を増やして欲しい」「町村の図書館へ年5000冊程度貸し出して欲しい」
 分析:類似の内容と思われるものはひとつにまとめて括弧内にその回答数を示した。日和佐町立、県立ともに多くの改善点や希望が示された。取り入れられるものは取り入れるべきであろう。ただし、既に実施されているもの、あるいはその意図が誤解されているものもいくつかみられる。ここでもPRの重要性が認識される。

2)小学3年生から中学生対象
 このアンケートは、日和佐町内の小・中学校の協力のもとに、小学3年生から中学3年生の全員に対して行われ、444通の回答を得た。以下に、その分析を行う。
 男女、学年ともにほぼ均等に分布している。(表12.図21,22)

 問1.あなたは、7月1カ月の間に、本を何さつ読みましたか。(マンガやざっしはかぞえないでください)(表13.図23)

 問2.あなたは、7月1カ月の間に、ざっし(学習ざっし・しゅみのざっしなど)を何さつ読みましたか。(マンガざっしはかぞえないでください。)(図24)

 問3.あなたは、7月1カ月の間に、マンガを何さつ読みましたか。(マンガざっし・コミックなどをかぞえてください。)(図25)

 問4.あなたは、7月1カ月の間に、カセット・CDなどをいくつつかいましたか。(図26)(単位・冊、問4は単位・個)
 全体的傾向として、雑誌・マンガを除く読書量は、低学年の方がより高く、雑誌・マンガはその逆となっている。また、男子より女子のほうがよりたかい読書量を示している。ただしマンガの読書量は、中学3年生において顕著に低下している。受験期に向かっての、学校・家庭での指導によるものであろうか。カセット・CD(AV資料)の利用は各学年男女ともに平均した数値を示している。また、中学1年生の女子にのみ読書量が多くなっているが、特別の理由の有無は不明である。

 問5.(資料の入手もとについて)あなたは、本やざっしをどのようにして手にいれますか。いくつでも○をつけてください。(表14.図27)
  1.本屋さんで買う
  2.家にあるものを使う
  3.学級文庫で借りる
  4.学校の図書室で借りる
  5.日和佐町立図書館で借りる
  6.友達から借りる
  7.県立図書館で借りる
  8.その他
 「町立図書館で借りる」が「本屋で買う」、「家にあるものを使う」、「友達から借りる」に次いでいるのは、公共の読書施設としてその有効性が定着している証拠であろうか。ただし、学童にとって最も身近な読書施設であるはずの学級文庫・学校図書室によるとする回答が少ないのは、これらの整備がなされていないことの顕著な表れであろう。

 問6.(学校図書室の利用度について)あなたは7月1カ月の間に、何回学校の図書室に行きましたか。ひとつだけ○をつけてください。(表15.図28)
  1.行かなかった
  2.1回行った
  3.2回行った
  4.3回行った
  5.4回行った
  6.5回以上行った
 1度でも利用したことのある割合は、小学校6年で最高になっているが、おおむね年齢が上がるにつれて、利用率も上がっている。これは図書館の利用指導の成果が徐々に現れてきているものであると思われる。

 問7.(学校図書室の利用目的について)なんのために学校の図書室に行きましたか。いくつでも○をつけてください。(表16.図29)
  1.本を借りたり返したりするため
  2.本やざっし・新聞を読むため
  3.じゅぎょうでいった
  4.本を使って調べるため
  5.宿題や試験勉強のため
  6.友だちと話をするため
  7.図書委員の当番のため
  8.その他
 本の借り出しと共に、授業のためとする図書室の利用が多い。にもかかわらず、先の問6にもみられるように学校図書室の利用が低調であるのは、この授業による利用が平常の利用に結びついていない、つまり図書館教育になっていないのであろう。図書館教育のできる司書教諭、または専任・専門・正規の職員配置が望まれる。

 問8.(町立図書館の利用頻度について)あなたは、7月1カ月の間に、日和佐町立図書館に行きましたか。ひとつだけ○をつけてください。(表17.図30)
  1.行かなかった
  2.1回行った
  3.2回行った
  4.3回行った
  5.4回行った
  6.5回以上行った
 1度でも利用したと回答した率は、小学5年生が最大で、その後利用率は減少している。複数回利用した率も小学校5年生時に最高で、その後同様に減少している。学齢が上がり、行動半径の広がりと共に利用率も増加傾向にあるのが一般的と思われるが、日和佐町には当てはまらないようだ。町立図書館がヤング・アダルト層にとって魅力に欠けるものとなっているのでは無いだろうか。

 問9.(町立図書館の利用目的について)なんのために、日和佐町立図書館に行きましたか。いくつでも○をつけてください。(表18図31)
  1.本を借りたり返したりするため
  2.本や雑誌を読むため
  3.カセット・CDなどを借りるため
  4.カセット・CDなどを聞くため
  5.おはなし会・えいが会などに参加するため
  6.本をつかって調べるため
  7.宿題や試験勉強のため
  8.気晴らしや時間つぶしのため
  9.図書館のふんいきが好きだから
  10.その他
 借り出しや読書のためとする回答が最も多い。行事に参加するためとした回答は、低学年に多く、学年が上がるほど少なくなっている。ヤング・アダルト層に対する適切な行事が行われていないためであろう。

 問10.(読書環境について)つぎのことがらについてあてはまるものがあれば○をつけてください。なければつけなくてかまいません。(表19.図32)
  1.小さいころ、家族によく本をよんでもらった
  2.学校でよく先生に本を読んでもらった
  3.家族によく本をよむようにすすめられる
  4.本を読むようにすすめる先生がいる
  5.読んだ本について家族とよく話し合う
  6.読んだ本について先生とよく話し合う
  7・読んだ本について友達とよく話し合う
  8.家に本がたくさんある
  9.プレゼントによく本や図書券をもらう
この設問は、問1、2、3、4で顕著な数値を示した回答との相関によって分析されるべきものであろうが、紙数の関係から詳細な分析を割愛する。各回答の割合はほぼ同じであるが、問1において高い読書量を示した小学校4年生および中学校1年生の回答に着目すると、小さいころ家族や学校の先生に本を読んでもらったとする回答が多く、また家に本がたくさんあるとする回答も多い。これらが、児童の読書量に大きな影響を与えていることは明白であろう。

 問1.(本の読書量について)、問2.(雑誌の読書量について)、問3.(マンガの読書量について)、問4.(カセット・CDの利用度について)

4.日和佐町内の公共読書施設について
・日和佐町立図書館
 日和佐町立図書館は平成3年に町立図書・資料館として開館した。1階が図書館、2階が資料館の複合施設で、平成9年1月現在、蔵書数は約25500冊である。
 図書館の主な活動としては、月2回児童館へ出かけ、子供への読み聞かせを行っていること、毎月1回、赤松小学校、赤松保育所へ各50冊、赤松郵便局、児童館へ各30冊程度の配本をしていることがあげられる。また、年1・2回、屋外でのおはなし会を、10月ごろには図書館フェスティバルとして、映画会や、講演会、絵本原画の展示等を行っている。しかし、アンケートや座談会では、子供向けの本が少ない、子供の利用が少ないという声も聞かれた。ヤング・アダルトを含めた児童サービスの充実が望まれる。
 また、開館時間の延長を希望する声も多かったが、現時点では実現が難しい。蔵書の充実を図るとともに、貸出期間の延長、本のリクエスト制度、相互貸借等のサービスを PR すること、町内全域サービスを図るために移動図書館を実施し、住民の要望に応じられるようにする必要があると思われる。
・学校図書室
 日和佐町には二つの小学校と一つの中学校、二つの高等学校がある。小・中学校には町からの図書費はなく、PTA からの収入のみであり、平成7年度は8万円〜32万円であった。児童・生徒の利用は新しい本に集まるのに対して、図書室の本は古い本が多く、したがってこれらはあまり利用されていない。予算が少ないために、新しい本が買いたくても買えないという現状である。
 高等学校図書室は、平成7年度の予算は56万円であった。1日平均入室者数16人、貸出冊数2冊であり、図書室だよりの発行、本のリクエスト受付などを行なっているが、利用状況はあまり活発でない。図書委員も特に活動はしていない。授業で図書室を利用することはあるものの、図書室利用指導、読書指導などが、現在はあまりできていないので、今後、取り組まなければならない。
 各校とも、最近の児童・生徒の活字ばなれの問題にどう取り組んでいくかということ、小・中学校では専任の担当者がいないため管理ができにくいこと、町立図書館との交流をどのようにするかということなどが課題であると考えている。

5.座談会
 日時 平成8年7月27日(土)午後1時より
 会場 日和佐町公民館
 参加者 18名 読書友の会及び図書館利用者(11)、図書館運営委員(1)、日和佐町立図書館(1)、読書調査班(5)
 “読書と図書館について”の話し合いということで、日和佐町立図書館から、図書館をよく利用している方々に声をかけてもらい、集まっていただいた。日和佐町立図書館について、県立図書館について、また子供の読書離れについて、など様々な意見を語っていただいた。
 まず、地元の日和佐町立図書館について、市町村図書館としてのレベルはどの位のものになるかという質問があった。また、古い雑誌は、廃棄するなら譲ってもらいたいという意見や、山川町と阿波町のように近隣の図書館で相互貸し出しすれば、もっと資料を有効に利用できるので、日和佐町でもそういうことができればいいのにという意見があった。図書館の雰囲気については、汽車の待ち時間に利用する学生が騒がしいという意見や、書架の配置で、閲覧しにくい場所があるなどの意見があった。また、参加者の中には、那賀川町立図書館も利用しているという人がいた。那賀川町立図書館の魅力は、読みたいと思う資料が多いこと、自分でコンピューター検索ができること、たくさんの資料が長期間借りられることなどがあげられた。
 県立図書館については、昭和63年に廃止された“やまなみ号”によるサービス(移動図書館による住民への直接サービス・施設への一括貸出し)を惜しむ声があった。県立図書館は遠い所にあり、なかなか利用できないので、県立からの直接のサービスを行って欲しい、すべての県民が利用できる図書館であってほしいという意見であった。
 子供の読書については、読書は勉強の基礎なので、小学生・中学生のころから読書に親しむよう、図書館から何か積極的な活動をして欲しい、そういうことも図書館の大事な仕事ではないかという意見があった。また、そういう方面で図書館が活動する際に、何かできることがあれば協力したいとの声もあった。
 会の終りに、“読書と図書館について”というテーマだけでは、何を話せばいいのか分からなかった、読書調査班が何を調査したいのか見えなかったという意見があった。アンケートでは調査できないような、自由な意見や意識を聞かせていただくために、小さなテーマや質問を設けなかったが、そのことがかえって、参加者を困惑させたようだった。話し合いの中で、図書館のサービスについて、周知されていないものや誤解があることが明らかになった。また、子供の教育に果たす図書館サービスへの期待が感じられた。

6.まとめ
 日和佐町は、昭和35年に、徳島市・鳴門市に次いで設置条例を持った図書館を開館させ、また、新館ブームの中、平成3年にはJR日和佐駅に程近い好立地に、新館をオープンさせた、県下でも図書館行政の先駆的な町である。
 全国の図書館界には、その数値が低すぎるなど多々意見があるものの「公立図書館の設置及び運営に関する基準(報告)」(平成4年5月21日・文部省生涯学習審議会)なるものが、一応存在する。それに照らし合わせていくと、日和佐町は以下のとおりとなる。
( )が基準の数字
  職員 3人[うち専門職0人](4人[うち専門職2人])
  開架冊数 17100冊(15000冊)年間受入冊数1700冊(3000冊)
  貸出冊数 13690冊(24860冊)登録人数 219人(900人)
  開架冊数以外は低くなっている。
 図書館活動を数字で表わすとき、よく登録率や人口1人あたりの貸出冊数で表わすことがある。県内図書館の上位(県南)と比較すると、平成7年度で次のとおりである。
(「四国の公共図書館」による)
  那賀川町 登録率 80% 貸出冊数 24.4冊
  牟岐町   〃  25%  〃   12.7冊
  海南町   〃  60%  〃     8.2冊
  日和佐町  〃  3%  〃     2.2冊
 設置基準で平均点でも、活動の数値は低いといわざるをえない。
 今回のアンケートを見ても、図書館を利用していない成人が46%、一方図書館の存在を非常に価値あるとした人も48%、こどもたちも小3〜小6までは、町立図書館を利用したものが半数以上で、まだまだ将来に明るい期待を持つことができる結果がでている。
 図書館の活動がすなわち町民の読書を示す数字ではないが、比例はしていると考えられる。折角ある図書館である。町民に利用されてこそである。県南上位3町をみて、運営上に何か取り込むなど、是非工夫をお願いしたい。それが、貸出冊数制限の緩和であれ、貸出期限の延長であれ、こどものいる時間帯に学校へ配本することであれ、出来ることはないだろうか。そして登録率・1人あたりの貸出冊数とも、2ケタになる日が、1日もはやいことを期待したい。

1)徳島県立図書館


徳島県立図書館