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1.目的 民間の英知である民間薬は、多くの人体実験によって作られた医薬品である。その他の一般の医薬品は、動物実験等によりその効果の可能性を確認し、それを人体に適用する方法を取って作られた物であるが、それと比べると、最初から人体に使用され、その結果を見た物であり、効果が明瞭にわかることが特徴である。しかし、民間薬にはその効果を期待することによるプラシーボも含まれており、その効果の判定については慎重な検討が必要である。 これまで、徳島県の各地で民間薬調査を行ってきたが、今回、日和佐町の総合学術調査の一環として、日和佐町の民間薬調査を行った。
2.調査日と調査方法 平成8年8月1日から6日の6日間をかけて、民間薬調査を行った。各家を戸別に訪問し、在宅或いはその地で見られた人に対し、民間薬(手薬)について質問し、実際に使用したことのある薬物、人の話を聞いただけで使用したことがない薬物などを、調査用紙に記録した。更に、歩いている人(たとえその人が地域内在住者でなくても)を見つけても調査するように心がけた。 また、民間薬を思い出しやすいように、ケガには何を使いますか、火傷には何を使いますか、海の物で薬になる物は知りませんか、動物で薬になる物は知りませんか、など、具体的に質問をして、聞き取り調査をした。
3.調査結果の集計 得られたすべての民間薬について、出現回数に関係なく、民間薬名別で、更に病名あるいは症状別にまとめた。 4.調査結果 調査対象人数は総計157名であった。調査では、植物130種、動物42種、鉱物その他5種、動物に使用する薬6種の計183種の民間薬が得られた。それらのうち、植物と動物の主な物についてまとめた(表1)。そのうち出現回数の多い民間薬はゲンノショウコ63、ドクダミ57、マムシ53、アロエ51、オオバコ45、ヨモギ44、センブリ30、ウラジロガシ21、ユキノシタ18、ミミズ18、カキ(柿)17、アカネ15、スギナ15、オトギリソウ14、ダイコンソウ13、ウメ12、カンアオイ12、タデ12、フキ12、ムカデ11、ヒジキ10であった(数字は出現回数)。 この調査結果の特徴としては、日和佐町が海岸であることを反映して、アラメ、コンブ、テングサ、トリノアシ、フノリ、ワカメなど海藻類が多く見られた。また、植物ではササクサ、チガヤ、ニシキゴロモ、ニシキソウ、ネコヤナギなど、動物ではアリジゴク、カメノテなど、他地域では見られない珍しい民間薬の使用が確認された。
1)徳島大学薬学部生薬学教室
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