|
1.自然環境の概況 本町は県の南東部に位置し、北は阿南市・那賀郡相生町、南は牟岐町、西は海南町・那賀郡上那賀町、東は由岐町に接し、他は長い海岸線で太平洋に面している。 年平均気温は16.1℃で年間降水量は2640mm(1961〜1990年,徳島地方気象台調)、と高温多湿であり、それが植物の生育に影響を与えている。 町の中央部を日和佐川が流れ、山河内谷川などの支流がそれに注いでいる。また北河内谷川・奥潟川は、河口で日和佐川に合流している。それらの川によってできた沖積平野に、町の中心部が形成されている(図1)。
 赤松地区は海抜約200m
前後の台地で、中央を赤松川とその支流が流れ、農耕・山林業が発達している。 海岸線は南阿波国定公園にあって、風光明美な観光地になっている。明丸・千羽海崖(がい)はその代表で、南阿波サンラインが海岸線にそって走っている。
2.植物相の概況 亜熱帯植物の指標であるアコウは、海岸線の岩上に点在し、亜熱帯域に多く見られる樹種も、本町の平野部の樹林にごく普通に見られる。 本町の約90%は山地で占められているが、大部分は暖温帯域の植物相でおおわれ、シイ・カシを中心とする常緑広葉樹林である。典型的なそれは、社寺林や防風林などで見ることができる。 本町を取り囲む標高600m
以上の五剣山(638m)・胴切山(883m)・八郎山(919m)・鉢の山(621m)・御世山(639m)の頂上付近は、常緑広葉樹より落葉樹が多くなり、特に胴切山・八郎山の頂上付近は、中間温帯域の落葉する樹種によって占められている。 本町の地形が、海岸から急に山地になっていることが、植物分布にも変化をもたらし、豊富な植物相を見ることができる。
3.暖温帯植物相 1)明丸・千羽海崖周辺の植物相 明丸のモビレージ周辺に、県の天然記念物に指定されているオガタマノキの群落がある。目通り幹周2.82mから幼木にいたるまで数十本が、ツブラジイ、スダジイ、タブノキ、ウバメガシなどと混生している。以下( )内は目通り幹周を示す。 高木層 タブノキ(2.15m)、スダジイ(2.32m)、オガタマノキ(2.82m・1.98m・1.55m・1.92m・1.65m・1.55m) 亜高木層 ヤブニッケイ(0.71m)、タブノキ、ヒメユズリハ(0.70m)、サカキカズラ、イスノキ(1.61m)、ムクノキ(1.31m)。 低木層 ヤブニッケイ、メダケ、タブノキ、マサキ、モッコク、イヌビワ、カクレミノ、タイミンタチバナ、シロダモ。 草本層 ムベ、ネズミモチ、ヤブニッケイ、サネカズラ、ヤブツバキ、ヤツデ、フユヅタ、シロダモ、イズセンリョウ、ツタ、トベラ、イヌビワ、ナワシログミ、エノキ、イタドリ、ツワブキ、ヤブコウジ、ミズヒキ、ハマウド、カミエビ、ハスノハカズラ、タツナミソウ、ヒヨドリジョウゴ、イノコヅチ、タチツボスミレ、ツユクサ、ホウロクイチゴ、ミツバ、ヤブジラミ、イシカグマ、ドクダミ、ホソバカナワラビ、ハマエンドウ、ギンレイカ、ヤブソテツ、ノブドウ、テイショウソウ、オニタビラコ、ハダカホオズキ、モロコシソウ(図2)、シタキソウ、キキョウラン、ヒナギキョウ、ハハコグサ、ニワゼキショウ、アゼトウナ、シオギク、アワギク、タイキンギク、ハマアザミ、ジシバリ、アレノノギク、フシグロ、カナビキソウ、ハマエンドウ、オガルカヤ、アキノキリンソウ、アキノノゲシ、ケフシグロ、セイタカアワダチソウ、ブタナ、ハマハナヤスリ。

2)日和佐八幡神社境内の植物 広大な社叢(しゃそう)林は、古くから植栽されたクスノキ、タブノキ、クロマツなどの防風・防潮林によって、社殿や周囲の民家を風害・塩害から守ってきた。幹周3m
以上のクスノキは14本、タブノキは5本、ムクノキ、エノキ、スダジイなど幹周1m
以上を加えると、平地の社叢林では、県下有数の樹林で、町民の憩いの場、観光地として占くから親しまれてきた。主な植物は次のとおりである。 クスノキ、タブノキ、スダジイ、ツブラジイ、ムクノキ、エノキ、シロダモ、ヤブツバキ、クスドイゲ、ヤブニッケイ、ホルトノキ、クロマツ、モッコク、バクチノキ、シホウチクなど、樹種は少ない。その林下には、タチツボスミレ、イノコヅチ、カタバミ、ヤブラン、ミズヒキ、ノシラン、ウラシマソウ、ウバユリ、ムサシアブミ、タイキンギク、オニタビラコ、ムラサキニガナ、シャクチリソバ、チヂミザサ、ヤエムグラ、ホウロクイチゴ、ホソバカナワラビ、ヒヨドリジョウゴ、キランソウ、ツルコウジ、ヤブジラミ、ヤイトバナ、ツワブキ、フユヅタ、ノイバラ、イタドリ、クサスギカズラ、ハコベ、ヒメヒオオギズイセン、中でもコナミキは珍しい。 3)薬王寺裏山の植物相 薬王寺は四国23番札所で、参拝者は絶えることがない。その風格を示している一つに裏山の広い自然林がある。シイ林であるが樹種は豊富で、各層の植被率も高い。互いに競合し日照を求めるので、樹高も高い。これらの樹林は、薬王寺の防風林として大きな役目も果たしている。 本堂に向って左側の樹林は、コバンモチの巨樹が中心になっている。幹周2m
前後が6本密生している。幹周2.21m・2.24m は、県内で確認されている限りでは、新記録でないかと思う。またヤマモモの幹周3.19m
は、幹もよく伸び、樹冠もよく拡がってみごとな樹形である。裏山の植物相は次のようである。 コバンモチ、ヤマモモ、イスノキ、スダジイ、オガタマノキ、ナギ、サカキ、ヤマビリ、ヒサカキ、カンザブロウノキ(多い)、タイミンタチバナ、ツブラジイ(多い)、センリョウ、イズセンリョウ、イヌビワ、ネズミモチ、タブノキ、テイカカズラ、ミミズバイ、シキミ、ヤマウルシ、クスノキ、ハゼノキ、サルトリイバラ、ヤブムラサキ、イロハモミジ、アラカシ、アカメガシワ、ヤブニッケイ、ヤマモガシ、カナメモチ、マンリョウ、サネカズラ、ツタ、ヒメユズリハ、ミツバアケビ、カクレミノ、イタビカズラ、ミサオノキ。 その林下には、ベニシダ、コクラン、シュンラン、ウスギムヨウラン、ムヨウラン、オオキジノオ、スイカズラ、ギンリョウソウ、ノブドウ、クサイチゴ、コシダ、トボシガラ、ヤイトバナ、ウバユリ、コモチマンネングサ、ササクサ、ナギラン、イチヤクソウ、ヤブコウジ、ハルザキヤツシロラン。 ミサオノキ、コバンモチ、ヤマモガシ、ミミズバイ、ヤブコウジなど亜熱帯性樹林に多く見られる樹種や、腐生植物のムヨウラン、ウスギムヨウラン、ギンリョウソウ、ハルザキヤツシロランなどが見られることは、樹林が安定していることを示している。 境内ではクスノキ、シイの巨樹と共に、ヒロハチシャノキの植栽は珍しい。 4)玉木神社のムクロジ 西河内字丹前の玉木神社に、町指定天然記念物になっている幹周4.85m・5.30m
の2本のスギがある(図3)。

境内にはそのほかイロハモミジ、タブノキ、クロガネモチ、ムクノキ、ヤブツバキがあり、幹周2.60m
のムクロジは県内では指折りの太さで、ほかにも0.9〜2.6m
のものが6本と10数本の幼木がある。そのほかの樹種は次のようである。 サカキ、スダジイ、ソメイヨシノ、ミミズバイ、リンボク、シキミ、モチノキ、ツブラジイ、イヌガヤ、オガタマノキ(1.75m
ほか5本)、イヌマキ(1.52m)、クロバイ、ホソバイヌビワ、イヌビワ、シロダモ、クスノキ、ハマクサギ、センリョウ、コクサギ、カナメモチ、ヤブニッケイ、ネズミモチ、イズセンリョウ、ヒサカキ、カクレミノ、クロガキ、テイカカズラ、ナワシログミ、アカメガシワ、ナンテン、ヒノキ。林下には、シオデ、ムサシアブミ、トチバニンジン、アキノタムラソウ、ハナミョウガ、ヒヨドリジョウゴ、オオヌスビトハギ、ミソナオシなどが見られた。 5)赤松神社の樹林 標高約160m
にある赤松神社は、ほとんどが常緑広葉樹である(図4)。標高差が100m
違うと薬王寺裏山で見られた亜熱帯性の樹種は見られず、代わってやや高い所に見られるアカガシ、ツクバネガシ、ヒメシャラがはいりこんでいた。

境内の植栽されたと思う樹種は、次のとおりである。ヤブツバキ(1.00m)、イヌシデ(1.35m)、ウラジロガシ(2.09m)、アラカシ(2.09m)、ヒメシャラ(0.77m)、ツブラジイ(2.42m・2.77m・2.20m)、オガタマノキ(1.02m)。社殿の裏山の樹林は次のとおりである。 高木層 ツブラジイ(3.73m)、アラカシ(1.81m・1.70m・1.32m)、クスノキ(2.75m)、スダジイ(2.20m・2.18m)、アカガシ(0.98m)、ヒノキ(2.18m)、ツガ(1.64m)、ツクバネガシ(1.08m)、スギ(2.20m)、ヒメシャラ(1.23m)、モミ(2.23m・1.90m)、カゴノキ(0.84m)。 亜高木層 オガタマノキ、モミ、シキミ、テイカカズラ、サカキ、ウラジロガシ(1.57m)、アセビ(0.67m)、カナメモチ、ネジキ(2.20m)、オンツツジ(0.34m)。 低木層 アセビ、ヒサカキ、アカメガシワ、タブノキ、サカキ、カクレミノ、シキミ、クチナシ、タブノキ、リンボク、ネズミモチ、ヤブニッケイ、ヤマビワ、モッコク、ヒイラギ、ヤブツバキ、オンツツジ、モミ、モンツキシバ、シャシャンボ。 草本層 センリョウ、アリドオシ、ハラン、タカサゴキジノオ、キツネササゲ、コウヤボウキ、チヂミザサ、コクラン、シュンラン、フユイチゴ、マンリョウ、イヌマキ、ヤブコウジ、モミ、エゴノキ、サルトリイバラ、ヒノキ、シキミ、ウマノスズクサ、トウゲシバ、ハルザキヤツシロラン。 赤松神社の特徴は、樹種も多く、各層の植被率も高いが樹高はそれ程でもない。腐養土の堆(たい)積がよく、腐生ランのハルザキヤツシロランが安定して見られる。 6)円通寺の植物相 赤松にある円通寺は、境内や裏山の樹齢を推測すれば、寺の歴史の古さがうかがえる。 境内の樹種 イチョウ(3.86m)、クロガネモチ(1.52m。フウラン着生)、ムクノキ(2.98m)、サザンカ(0.38m)、モチノキ(2.16m)、エノキ(2.19m)。 裏山の樹林 高木層 ツブラジイ(3.75m・1.77m)、ヒノキ、スギ、モウソウチク、ツクバネガシ(0.96m)、モチノキ(1.96m)。 亜高木層 イスノキ、リョウブ、ネジキ(0.85m)。 低木層 ヒサカキ、ヒイラギ、ネズミモチ、ヤブニッケイ、カゴノキ、モチノキ、イヌビワ、スギ、ツクノバネガシ、カナメモチ。 草本層 サルトリイバラ、センリョウ、アリドオシ、ベニシダ、アセビ、シュンラン、テイカカズラ、イタチシダ、ヤブツバキ、コガクウツギ、ゼンマイ、ハマクサギ、キチジョウソウ、ナンテン、ササクサ、ヤブコウジ、ムベ、チャ、シヤシヤンボ、ナキリスゲ。 7)久望・赤滝の周辺 滝はよほどの干ばつでない限り、水は絶えることがない。岩の色が赤褐色をしていることから赤滝の名がついた。岩場に見られる植物 イシカグマ、イブキシグ、イワガネソウ、ヘラシダ、ウワバミソウ、リョウメンシダ、オオハナワラビ、ミズヒキ、クルマシダ、ワサビ、イワタバコ。滝の周辺には、ヤブツバキ、ヒサカキ、ネズミモチ、センリョウ、クリハラン、ノコギリシダ、ムベ、ミゾシダ、キランソウ、イロハモミジ、イスノキ(1.59m。山神を祀(まつ)ってある)、シシラン、シロダモ、ホソバカナワラビ、トキワシダ、ツヅラフジ、マルバウツギ、ヒトツバ、フユイチゴ、イロハモミジ(0.84m)、スギ(1.28m)、ノリウツギ、アリドオシ、ジャノヒゲ、クルマシダ、チヂミザサ、ナツフジ、フユヅタ、タツナミソウ、ビナンカズラ、ホシダ、マムシグサ、ノササゲ、ヌマダイコン、コアカソ、セキショウ、マツカゼソウ、イズセンリョウ、キンバイザサ(図5)。

8)北河内字田井の防風・防潮林 海岸に広がる川井の稲田と民家の防風・防潮林として、ふるくからクロマツが植えられていた。昭和57年を最高に日和佐海岸を襲ったマツクイムシによってクロマツは全滅した。それに代わって混生していた自然樹が成長し、大分傷んでいるが防潮・防風林の役をしている。組成は次のようである。 タブノキ(2.38m・2.20m・2.19m・1.83m・1.65m・1.22m)、ムクノキ(2.98m)、エノキ(1.47m・1.23m)、ヤブニッケイ(0.93m・0.84m)、ヤブツバキ(0.83m・0.81m・0.80m)、ホルトノキ(1.83m)、イスノキ(0.93m)、ウバメガシ、マサキなどが多かった。その林下には、ノシランの大群生やオニユリ、ムクノキ、フユヅタ、イノコヅチ、ママコノシリヌグイ、ノコンギク、ツユクサ、トウバナ、チヂミザサ、オニヤブソテツ、ノブドウ、ハスノハカズラ、クサギ、コセンダングサ、クズ、ヤイトバナ、カエデドコロ、ノイバラ、イワガネソウ、ホシダ、イシカグマ、ヒキオコシ、ヌスビトハギ、ホラシノブ、クスドイゲ、トベラ、ヤブランなどがみられた。タブノキ、ムクノキ、エノキ、ヤブニッケイなどは、防風・防潮樹として大いに役に立っている。 9)白沢・高倉茂氏宅跡の樹林 白沢から千羽海岸を通り、城山に通ずる「四国のみち」と外牟井川の上流とが合う所に、高倉氏宅の廃屋がある。 ヤブツバキ(1.39m)、クスノキ(1.31m・1.75m)、サカキ(0.82m)、カゴノキ(1.18m・2.40m)、タブノキ(1.62m・3.59m)、シロダモ、クマヤナギ、ハゼノキ、ヤブムラサキ、アラカシ、ウラジロガシ、カラスザンショウ、シュロ。その林下には、ヤブツバキ、カクレミノ、ヤブニッケイ、ヒサカキ、ホソバイヌビワ、イヌガヤ、コガクウツギ、ネズミモチ、ナンテン、アリドオシ、ツワブキ、シャガ、ミョウガ、フキ、シュンラン、オオバウマノスズクサ、ウマノスズクサ、ホドイモ、ウコギ。中でも腐生柚物のウエマツソウ(図6)が見つかったのは大きな収穫であった。

10)白沢・向幸弘氏宅の山神の森 10余年程前に、この山神を祀ってある防風林内でムヨウランを見たことがあったが、今度の調査では見ることはなかったが、一部伐採された跡もあって、以前程の茂みでなかった。 ウラジロガシ(2.67m)、クロガネモチ(2.32m)、ツブラジイ(3.84m・2.21m)、カゴノキ(0.90m・0.88m)、イスノキ(1.47m)、ヤブツバキ(1.06m)、オガタマノキ(1.22mほか5本)。その林下には、ナベワリ、ナンカイアオイ、ヒサカキ、サカキ、ナキリスゲ、ヤブニッケイ、カクレミノ、イヌマキ、セキショウ、サネカズラ、ベニシダ、シロダモ、センリョウ、マムシグサ、マルミマンリョウ、マメヅタ、ハゼノキ、イヌツゲ、ヤブムラサキ、マユミ、スイカズラ、ツタ、エノキ、シロダモ、タブノキ、カナメモチ、ヤマウルシ、モチツツジ、アマチャヅル、ニョイスミレ、アキノタムラソウ、ウマノスズクサ、フユヅタ、ミツバアケビ、ヒイラギ、ヤブコウジなどが見られたが、オガタマノキの群落やツブラジイ、ウラジロガシの巨樹の残っているこの森を大切に残して欲しい。 11)宮川正敏氏宅裏山の樹林(北河内字久望) スギ、ヒノキの二次林で囲まれた中に、裏山だけは自然林が残されている。個人の防風林としては、珍しいぐらいよく茂っている。 高木層 ヤブツバキ(1.42m・0.77m)、ツブラジイ(1.38m・1.55m)、アラカシ(0.76m・1.06m)。 亜高木層 イヌマキ、クロバイ(0.70m)、タブノキ、サカキ(0.53m)、カゴノキ(0.39m)、オガタマノキ(0.55m
ほか10数本)。 低木層 イヌマキ、ハゼノキ、アカメガシワ、カナメモチ、ハマクサギ、ヤブニッケイ、クチナシ、ヤブムラサキ、シキミ、シャシャンボ、モチノキ、アラカシ、ヤブツバキ、サカキ、ヒイラギ、ツブラジイ、ネズミモチ、ヒサカキ、イズセンリョウ、アセビ、マツラニッケイ、イヌガヤ、カクレミノ、タブノキ。 草本層 ジャノヒゲ、ミソナオシ、ツルコウジ、アリドオシ、ホドイモ、イズセンリョウ、コクラン、ショウガ、ノシラン、ハラン、ムラサキニガナ、ムサシアブミ、エビネ、ドクダミ、イヌマキ、テイカカズラ、ベニシダ、キジノオシダ、ヤブコウジ、マメヅタ、ササクサ、センリョウ、サルトリイバラ、ビナンカズラ、タチツボスミレ。 隣接する十二社神社の境内には、スギ(2.32m・2.20m
ほか4本の植栽がある)。 12)泰仙寺(山河内字西山) 山河内字西山から玉厨子山に登る途中、薬王寺の奥院といわれる泰仙寺がある(図7)。境内に、スダジイ(2.42m)、ヒメユズリハ(0.81m・1.41m)、トチノキ(1.48m)、モッコク(0.99m)、イロハモミジ(2.01m・0.96m)、スギ(3.50m・3.70m)。林下には、モロコシソウ、ダイコンソウ、オオルリソウ、シュウブンソウ、ミズヒキ、セキショウ、イブキシダ、イシカグマ、ハマクサギ、キンミズヒキ、ボタンヅル、コアカソ、ナツヅタ、ウドカズラ、マツカゼソウ、モミジカラスウリ、コチヂミザサ、ホウキラン。

13)新田神社(山河内字大戸) 国道55号から見える新田神社には、予想外に広い社叢がある。よく茂った樹林と古木は神社との歴史の古さを示している。 ウバメガシ(2.99m)は、樹勢よく、樹冠もよく張っている。自生樹では県下1位の太さと思われる。そのほか次のような樹種が、モウソウチクと混生している。 ツクバネガシ(2.35m)、アセビ(0.52m)、サカキ(0.47m)、オンツツジ、ツブラジイ(1.37m・1.45m・1.55m)、イヌシデ(0.92m・0.85m)、オガタマノキ、モミ(1.86m・2.59m)、カクレミノ、タブノキ、カナメモチ、スギ(1.58m)、ヤブツバキ(0.96m)、ウラシロガシ(1.35m)、イロハモミジ(2.46m)その林下には、ハゼノキ、テイカカズラ、モミ、スギ、コウヤボウキ、カクレミノ、モチツツジ、サルトリイバラ、ササクサ、ヤブコウジ、ソヨゴ、チヂミザサ、カナメモチ、シャシャンボ、ヤブツバキ、ウンゼンツツジ、ヤブニッケイ、マツラニッケイ、シキミ、タブノキ、クチナシ、センリョウ、オガタマノキ、ムベ、ネズミモチ、モッコク、ミヤマウズラ、ムヨウラン、ハエドクソウ、シオデなどが見られた。 14)恵比須洞(乾燥地)の植物相 恵比須洞(図8)は、海食によって一部が空洞になり、高波時は洞窟(くつ)内を潮が通り抜ける。海に突き出ているので、その場に降った雨と、夜露が植物を乾燥から守っている。水源から隔離された離島に近い状態では、どんな植物が耐えているかを調べ、記録にとどめて置くことにする。

(1)岩磯に生える植物 水面から5m
ぐらいは岩磯になっている。そのすき間に生える植物を挙げると、クサスギカズラ、ハマエンドウ、スズメノオゴケ、ハマナデシコ、スイカズラ、アゼトウナ、ハマエノコロ、テリハノイバラ、シオギク、ヤクシソウ、トベラ、ツワブキ、ギシギシ、オニヤブソテツ、ススキ、ハマヒサカキ、ハマナタマメ、ハマボッス、クロマツ(樹高9m、推定幹周1.30m)。 (2)堆積した土壌に生える植物 ウバメガシ林が中心で、樹高5m、幹周0.72m
と強風にたたかれ高くないのが特徴。そのほかヤマイモ、タイミンタチバナ、ネズミモチ、モチノキ、タブノキ、ヒメユズリハ(0.58m)、アカメガシワ、イヌビワ、クスノキ、ネジキ、ヤブツバキ、キブシ、ススキ、コシダ、サルトリイバラ、ツワブキ、ハゼノキ、トベラ、タツナミソウ、シハイスミレ、カクレミノ、ヒサカキ、ハマヒサカキ、クロマツ、ナワシログミ、シャシャンボ、ヤイトバナ、オンツツジ、ヒメハギ、キキョウ、ホラシノブ、クサスギカズラ、ナツフシ、シオギク、ワラビ、コウヤボウキ、スイカズラ、チガヤ、ヤハズソウ、ハマナタマメ、イヌザンショウ、クチナシ、カンコノキ、オトコブドウ、シシガシラ、カミエビ、ツブラジイ(1.13m・樹高8m)、北側の陰地では、カクレミノ、ヤマモモ、ミツバアケビ、カンコノキ、ナツフジ、コクラン、カエデドコロ、ナンカイアオイ、センブリ、ナワシログミ、ヤブコウジ、タツナミソウ、ネザサ、シオギク、ヒトツバ、コマツナギ、ヤイトバナ、ネコハギなどが、時には30日も雨が降らなくとも、岩間深く根をおろして生きている生命力の強さに驚く。案外種類は多いが、陸の種類とは、かなりの違いが感じられる。
4.中間温帯域の植物相 胴切山は頂上で海南町・牟岐町・日和佐町と境する。牟岐町河内から胴切山の日和佐側を通り、上那賀町谷山に通ずる馬道がある。 標高約800m
の馬道の幅は2m
で(図9)、一方は石垣が積まれ、昔のまま残っている。木橋は朽ちているが、昭和20年ごろまで生活道として利用されていた。

この馬道(標高約750〜800m)を中心に植物相を調べて見た。胴切山と八郎山を結ぶ稜(りょう)線を境にして、剣山山系からの冷たい風と、太平洋側からの暖かい風とか接するため、内陸ほどの中間温帯域の植物分布は見られなかった。多いのはイヌシデ、アカシデ、クマシデ、シラキ、イロハモミジ、そのほかコハウチワカエデ、ウリハダカエデ、ハリギリがわずかに混生している。そのほかの落葉樹は次のようである。 フサザクラ、キブシ、サルナシ、アブラチャン、ヤマアジサイ、カナクギノキ、ミヤマシグレ、クマノミズキ、ヤマグワ、オンツツジ、ネジキ、ウスゲクロモジ、シロモジ、ホオノキ、コナラ、ガマズミ、オトコブドウ、タンナサワフタギ、コバノトネリコ、カイナンサラサドウダン、ヤマウルシ、ノリウツギ、ハゼノキ、ヤブムラサキ、コガクウツギ、ヒメシャラ、クロモジ、エゴノキ、リョウブ、ヤハズアジサイなどがみられた。また次のような常緑広葉樹の混生が見られた。 ウラジロガシ、アカガシ(やや多い)、ウバメガシ、ヤブツバキ、ツブラジイ、ヒイラギ、ユズリハ、ソヨゴ、ウンゼンツツジ、アセビ、イヌツゲ、シロダモ、モチツツジ、シキミ。そのほかスギ、ヒノキの二次林、ツガ、モミの針葉樹も少なくない。中に幹周4.75m
のスギの自然樹を確認した。林下に次のような植物が見られた。 コウヤボウキ、サルトリイバラ、ナガバキイチゴ、ミヤマシキミ、チャボホトトギス、トサノミカエリソウ、アケボノソウ、ミズタビラコ、ホドイモ、イナモリソウ、ヤマジオウ、シロヤマシダ、イワヒメワラビ、ナチシダ、フタリシズカ、タニタデ、ミヤマタゴボウ、キツネササゲ、オオバノトンボソウ、ホウチャクソウ、ナンカイアオイ、ナガバヤブマオ、エビガライチゴ、サワハコベ、イワガラミ、オオバライチゴ、ナツエビネ、アキノ キリンソウ、シュンラン、ミヤマウズラ、ベニシュスラン、ヤクシソウ、オミナエシ。
5.湿田・河川植物 1)奥潟川周辺の植物 奥潟川は、干満の差に関係なく中洲ができている(図10)。干ばつ時には表面に亀(き)裂のはいる時もあるが、普通は柔らかい状態にある。ツルヨシが中心であるが、そのほかに次のような植物が見られる。 サンカクイ、スカシタゴボウ、ホウキギク、ヒロハホウキギク、イガガヤツリ、イヌタデ、ヒメガマ、アリタソウ、ギシギシ、ヨモギ、アメリカセンダングサ、オオオナモミ、ヒメムカシヨモギ、クララ、ツルマメ、オトコヨモギ、センニンソウ、イシミカワ、ヒルガオ、ニガカシュウ、セリ、アメリカネナシカズラ、ブタクサ、ヤハズソウ、マツバイ。

奥潟川の水位が変わらない所では、透明度は悪く濁っている。その中に沈水性のイトヤナギモ、マツモ、オオフサモの塊が相当数見られる。これらはここに定着する魚の餌・か くれ場・座卵の最適場になっている。 2)櫛ケ谷の湿川に見られる植物 サワヒヨドリ、トキンソウ、タカサブロウ、コナギ、チョウジタデ、マルバサワトウカラシ、キカシグサ、ヒメミソハギ、アブノメ、アメリカアゼナ、イボクサ、ヒナガヤツリ、コゴメガヤツリ、タウコギ、クログワイ(多い)、オモダカ、アゼムシロ、アメリカセンダングサ、スズメハコベ、クサネム、ミズハコベ、コブナグサ、タマガヤツリ、ケイヌビエ、メヒシバ、チヂミザサ、ホタルイ、ヒデリコ、ホシクサ、テンツキ、ヤブマメ、ホソバヒメミソハギ、ヤノネグサ、カモノハシ、ヤハズソウ、オオウシノケグサ、クグガヤツリ、サンカクイ、コケオトギリ、ウリカワ、ミゾソバ、ヒメナミキ、ヤブツルアズキ、ヌマトラノオ、ヌマダイコン、ヒメガマ、カサスゲ、ヒンジガヤツリ、ハシカグサ、ツボクサ、セキショウモ、ウシノシッペイ(多い)、ヒメクグ、オオイヌタデ(多い)、ヤマイ、ジュズダマ、キショウブ、コシロネ、キツネノボタン、シロバナサクラタデ。そのほかの水田雑草として、木谷野ではイナカギク、コシオガマ、ミミカキグサ、ミゾハコベ、ヒメミソハギ、ミズワラビ、ミズネコノオ、ミズマツバ、スズメハコベ。赤松川の渓流にはナカガワノギクのほかウナヅキギボウシ、ホソバコンギク、アキノキリンソウ、アケボノソウ、シラネセンキュウ、リンドウ、ヒキオコシ、ナガバシャジン、ウメバチソウなどが見られた。 天狗谷のホラシノブの奇形は珍しい。
6.巨樹・巨木 本町は山地が広い割に、スギ・ヒノキの二次林に置き換えられ、自然林の占める面積は極めて狭い。その上伐採が繰り返され見るべき太さのものはほとんどない。幸いにも社寺林は比較的保存、管理がよく、予想以上の巨樹を見ることができた。また民家の防風のため、単木または林として残されている中に巨樹を見ることができる。調査に手落ちもあってすべて記録されたとはいえないが、一応の目やすとし、後日追加され、正確な巨樹一覧表の一助になればと思っている。できるだけ多くの樹種について、記録したので、巨樹とはいえなくとも、それなりに価値のある太さのものは記録した。数値は目通りの幹周を表す。順位は平成6年、緑の遺産継承対策事業調査(徳島県緑化推進委員会)による。 1)ハリギリ 0.99m(八郎山)。 2)コナラ 0.64m(八郎山) 3)アカガシ 2.80m(八郎山)、1.81m・1.70m(赤松神社)、2.20m(新田神社)。 4)ホオノキ 0.91m(八郎山)。 5)ヤブツバキ 1.65m(一番谷)、0.98m(西山・井上正典氏宅)、1.11m(モビレージ)、1.06m(白沢・向幸弘氏宅)、1.68m(玉木神社)、1.41m(八幡神社)、1.42m(宮川正敏氏宅)。 6)ヒメシャラ 0.90m・0.48m(ちょうしのたお)、1.23m・0.77m(赤松神社)。 7)ヒメユズリハ 1.39m(泰仙寺)、1.80m(モビレージ)、1.01m(田井防風林)。 8)ヤマモモ 1.90m(泰仙寺)、3.19m・2.55m(薬王寺)。 9)スダジイ 2.42m(泰仙寺)、4.38m・2.93m(モビレージ)、2.67m(玉木神社)、2.29m(八幡神社)、2.28m(薬王寺)、2.64m(赤松・小山直行氏宅)、2.71m(赤松・上原久信氏宅)。 10)スギ 3.73m・3.60m(泰仙寺)、4.85m・5.30m・4.08m(玉木神社)、4.75m(胴切山)、2.20m(赤松神社)、4.08m(奥潟・観音杉)。 11)クリ 1.98m(泰仙寺)、2.33m(平戸・大持孝啓氏宅)。 12)モッコク 0.99m(泰仙与)、0.80m(久望・水野和憲氏宅)。 13)トチノキ 1.48m(泰仙寺)。 14)イロハモミジ 2.14m(泰仙寺)、1.48m(玉木神社)、2.46m(新田神社)。 15)ツブラジイ 3.84m(白沢・向幸弘氏宅)、2.46m(薬王寺)、2.77m・3.73m(赤松神社)、3.75m(赤松・円通寺)、2.25m(深瀬・八坂神社)、3.39m(原ヶ野・原西博行氏宅)、3.60m(打越寺)、4.28m(櫛ヶ谷・森理氏宅)、3.52m(西河内・賀永安夫氏宅)、2.04m(泰仙寺)。 16)クロガネモチ 1.97m(赤松・佐竹治芳氏宅)、2.32m(向幸弘氏宅)、2.72m(玉木神社)、1.52m(円通寺)、2.59m(西河内・小原邦昭)、1.26m(白い燈台)。 17)オガタマノキ 2.03m・2.82m(モビレージ、自然樹では県下1位)、1.22m(向幸弘氏宅)、1.75m(玉木神社)。 18)モチノキ 2.16m(円通寺)、2.64m(赤松・佐竹治芳氏宅)、2.04m(山河内・橋本政子氏宅)。 19)ナギ 2.94m(弘法寺 県下2位)(図11)。

20)イブキ 2.84m(奥河・浄光寺)。 21)タブノキ 2.87m(玉木神社)、3.78m・3.16m・3.47m・3.57m・3.91m(八幡神社)、3.83m(大戸・瀧本嘉一氏宅(図12))、2.38m(田井・防風林)、3.59m(白沢・高倉茂氏宅跡)、2.66m(井上・防風林)、2.13m(山河内・葉田利治氏宅)、4.01m(西河内・小原邦昭氏宅)、2.20m(モビレージ)。

22)カラスザンショウ 0.73m(モビレージ)。 23)コバンモチ 2.04m・2.21m・2.24m(薬王寺、県下1位)。 24)イスノキ 1.22m(薬王寺)、1.47m(向幸弘氏宅)、2.03m(赤松神社)、1.59m(久望・赤滝)、1.67m(奥潟・山神)、0.93m(田井防風林)。 25)カンザブロウノキ 1.04m(薬王寺)。 26)ウラジロガシ 2.67m(向幸弘氏宅)、2.03m(赤松神社)、1.53m(新田神社)。 27)カゴノキ 1.28m(奥潟・山神)、2.40m(高倉氏宅跡)、0.90m(向幸弘氏宅)、0.84m(赤松神社)。 28)ムクロジ 1.82m・2.60m(玉木神社、県下有数)。 29)サカキ 0.92m(玉木神社)、0.82m(高食氏宅跡)。 30)ミミズバイ 0.91m(玉木神社)。 31)リンボク 0.16m(玉木神社)。 32)シキミ 0.49m(玉木神社)。 33)モミ 2.71m(大越)、2.23m(赤松神社)、3.65m(大戸・瀧本嘉一氏宅)。 34)イヌガヤ 0.53m(玉木神社)。 35)イヌマキ 1.52m(玉木神社)。 36)シロバイ 0.33m(玉木神社)。 37)ムクノキ 2.95m・2.76m(玉木神社)、2.49m(八幡神社)、2.98m(円通寺)、2.98m(田井防風林)、2.14m(打越寺)、2.09m(赤松・青木三郎氏宅)。 38)ヒロハンチシャノキ 1.76m・1.71m・0.96m(薬王寺境内、県内薬王寺のみ)。 39)クスノキ 5.58m・5.10m(薬王寺)、7.49m・5.12m・5.69m・5.44m・5.51m・5.09m・5.19m・5.58m(八幡神社)、2.75m(赤松神社)。 40)エノキ 2.15m・2.11m(八幡神社)、2.19m(円通寺)、2.09m(井上防風林)、2.28m(寺込)。 41)シロダモ 0.89m(八幡神社)。 42)ホルトノキ 2.42m(八幡神社)、1.85m(田井防風林)。 43)クスドイゲ 1.13m(八幡神社)。 44)ヤブニッケイ 1.41m(八幡神社)、0.93m(田井防風林)。 45)バクチノキ 1.09m・0.88m(八幡神社)。 46)ユズリハ 1.63m・1.54m(大越山神)。 47)イヌシデ 1.18m(胴切山)、1.35m(赤松神社)。 48)クマヤナギ 0.10m(胴切山)。 49)マルバチシャノキ 0.83m・0.69m(恵比須浜)。 50)ヒノキ 2.59m(薬王寺)、2.18m(赤松神社)。 51)アラカシ 2.09m(赤松神社)、1.16m(久望・宮川正敏氏宅)、2.01m(原ヶ野・原西博行氏宅)。 52)アカメガシワ 0.98m(赤松神社)。 53)ツガ 1.64m(赤松神社)。 54)ツクバネガシ 4.74m(赤松・青木三郎氏宅)、2.35m(新田神社)、1.75m(久望・水野和憲氏宅)、1.08m(赤松神社)。 55)アセビ 0.67m(赤松神社)。 56)ネジキ 2.20m5幹(赤松神社)、0.85m(円通寺)。 57)オンツツジ 0.34m(赤松神社)。 58)ケヤキ 2.23m(赤松・虹羅稔氏宅)、2.28m(平戸・大持孝啓氏宅)。 59)イチョウ 3.86m(円通寺)。 60)サザンカ 0.83m(円通寺)。 61)クロバイ 0.70m(久望・宮川正敏氏宅)。 62)ウバメガシ 1.82m・2.99m(新田神社、自然樹では県下1位)。 63)アベマキ 0.86m(恵比須浜)。 64)クヌギ 0.52m(恵比須浜)。 65)ハゼノキ 0.84m(田井防風林)、1.57m(山河内、橋木政子氏宅)。 66)ヤマグワ 0.77m(山河内、勘野氏宅)。 67)カヤ 1.61m(西山・春江由光氏宅)。 68)ニッポンタチバナ 0.69m(北河内北分)県指定天然記念物
7.帰化植物 日本は島国だから、国境がはっきりしているので、帰化植物かどうかの区別がつき易い。侵人経路は、動物の飼料や大豆などの原料の中に混入したり、木材や出入国者の体について運ばれる。また輸入した園芸種から離れたものが、日本の風土に合って定着したものを帰化植物と呼んでいる。中には在来種を追いやって、低山から高山まで、強い繁殖力を持ち、時には人体に悪影響を与えるものも少なくない。 日和佐町は、直接外国との交流拠点でないし、養豚・養鶏場も少ないが、高温・多湿で空地もあるので、帰化植物にとって好ましい環境であるのかその種類は少なくない。列挙してみると次のようである。 (きく科) セイヨウタンポポ、ブタナ、ノゲシ、オニノゲシ、カミツレ、ホウキギク、ヒロハホウキギク、アレチノギク、オオアレチノギク、ヒメムカシヨモギ、ヒメジョオン、ペラペラヨメナ、コセンダングサ、セイタカアワダチソウ、ヒメヒマワリ、ハキダメギク、ベニバナボロギク、ダンドボロギク、チチコグサモドキ、ブタクサ、オオオナモミ。 (ききょう科)キキョウソウ。 (ごまのはぐさ科)アメリカアゼナ、マツバウンラン、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ。 (なす科)チョウセンアサガオ、タマサンゴ、テリミノイヌホオズキ、センナリホオズキ、ツクバネアサガオ。(くまつづら科)ヤナギハナガサ、アレチハナガサ。 (ひるがお科)アメリカアサガオ、アサガオ、マルバアサガオ、マイアサガオ、ホシアサガオ、マルバルコウ、オキナアサガオ(図13)、アメリカネナシカズラ。 (せり科)ノラニンジン。(あかばな科)メマツヨイグサ、コマツヨイグサ、ヒルザキツキミソウ、ユウゲショウ、ヒレタゴボウ。 (みそはぎ科)ホソバヒメミソハギ、ヒメミソハギ。(おとぎりそう科)キンバイ。 (あおい科)ギンセンカ、イチビ、アメリカキンゴジカ、キンゴジカ。 (とうだいぐさ科)ホルトソウ、オオニシキソウ、ハツユキソウ、コニシキソウ、ナンキンハゼ。(かたばみ科)ムラサキカタバミ、ハナカタバミ、オッタチカタバミ。(ふうろそう科)アメリカフウロ。(まめ科)アレチヌスビトハギ、シロツメクサ、ムラサキツメクサ、コメツブツメクサ、ウマゴヤシ、アメリカツノクサネム、イタチハギ、エビスグサ。(あぶらな科)ショカツサイ、マメグンバイナズナ。(きんぽうげ科)シュウメイギク。(なでしこ科)マンテマ、ムシトリナデシコ、ノハラナデシコ、オランダミミナグサ。(すべりひゆ科)ヒメマツバボタン。(やまごぼう科)ヤマゴボウ、アメリカヤマゴボウ。(おしろいばな科)オシロイバナ。(ひゆ科)ノゲイトウ、センニチコウ、ホナガイヌビユ、イヌビユ、ツルノゲイトウ。(あかざ科)ケアリタソウ、ホウキギ。(たで科)シャクチリソバ、オオケタデ、ヒメツルソバ、ヒメスイバ、アレチギシギシ。(あやめ科)キショウブ、ニワゼキショウ、ヒメヒオオギズイセン。(ひがんばな科)サフランモドキ、ハタケニラ。 (いね科)セイバンモロコシ、ヒメコバンソウ、シマスズメノヒエ、シナダレスズメガヤ、オオクサキビ、カモガヤ、ジュズダマ、メリケンカルカヤ、イヌムギ。(ばら科)カジイチゴ。(むくろじ科)フウセンカズラ。(あかね科)オオフタバムグラ。

8.特記すべき植物 1)オグラコウホネ(スイレン科) Nuphar
oguraense Miki ナガエミクリ(ミクリ科) Sparganium japonicum
Rothert 北河内字本村の用水路に生えていた。オグラコウホネは、浮葉、水中葉の2形を持つ水草である。水流をよくするために共に除去された。オグラコウホネはレッド・データ・ブックで絶滅危急種、ナガエミクリも全国的に稀少種である。木町から2種共消えたのは惜しまれる。 2)ウエマツソウ(ホンゴウソウ科) Sciaphila
tosaensis Makino ホンゴウソウ(ホンゴウソウ科) Andruris japonica (Makino)
Giesen 共に暖地の林下の落葉の中にはえる、多年生無葉の菌根植物である。危急種になっているが、本県ではウエマツソウの方はほとんど見られない。本調査で10数株の群生が見られ、新産地として保護したい。高さは数cmで、共に花茎の上方に雄花、下方に帯紫紅色の丸味の雌花をつける。 3)キリシマエビネ(ラン科) Calanthe
aristulifera Reichb.
f. 鹿児島県霧島山中に初めて見つけられたのでその名がついた。暖地性のエビネ属で、本県に自生することが珍しい。エビネブームのころに消えてしまい、日和佐町に数株だけが確認されている。 4)シバナ(シバナ科)(図14) Triglochin
maritimum
L. 海水の出入する沼地を好み、奥潟川にも自生していたが、今は消えてない。日和佐川河口にわずかに見られるのが県下唯一の自生。9月頃海水中でも紫色を帯びた緑色の花を咲かせる。危急種で、本県では絶滅寸前。

5)ダイサギソウ(ラン科)(図15) Habenaria
dentata (Sw.)
Schltr. 棚田の側面など湿った草の中にはえる。草を刈らないで放置すると、周囲の草におおわれたり、乾燥するとやがて消える。生存力の弱い種類で、愛媛、香川にはなく、四国では唯一の産地が日和佐町かも知れない。

6)コナミキ(シソ科) Scutellaria
guilielmii A. Gray ヒメナミキ(シソ科) Scutellaria dependens
Maxim. コナミキは暖地性の植物で、海岸に近い砂地にややまれに生育する。県内では、本町にのみ数株確認されている。この連命も保障されない不安定な状態にある。茎の高さは15cm
ぐらいで、細かい毛と腺(せん)毛がある。上部の葉のわきに短い柄のある白色の唇形花を1個ずつ対生する。 ヒメナミキは、山側や田の湿地に白色の地下茎を伸ばして散生する。葉は小形で対生し、上部の葉のわきに1個ずつ小さい白花をつける。県下ではまれである。 7)ナカガワノギク Chrysanthemum
yoshinaganthum
Makino 普通キク科植物は、幾県にもまたがって繁殖するが、ナカガワノギクは徳島県の固有種で、しかも那賀川とその流域の一部、日和佐川の一部にしか生育していない。小川誠・田渕武樹・小松研一の調査によると、日和佐町内の赤松川では、相生町境から日浦橋下流までの8か所、日和佐川では田々川から原ヶ野までの6か所で確認された(図16)。赤松川では群生しているが、日和佐川では、三面張のコンクリートに変わってから細々と生育しているにすぎない。

参考文献 牧野富太郎 1989 牧野新日本植物図鑑 北隆館 長田 武正 1977 原色日本帰化植物図鑑 保育社 阿部 近一 1990 徳島県植物誌 教育出版センター
1)梅部郡牟岐町中村 2)徳島市北田宮3丁目 3)板野郡北島町中村 4)徳島市西新浜町 5)一宇村立明谷小学校 6)北島町立北島小学校 7)県立徳島農業高等学校神山分校 8)県立博物館 9)徳島市立福島小学校 |