|
1.はじめに 1995年7月26〜30日、10月9〜10日に、北島町の河川の魚類について調査をした。調査方法は、北島町漁業組合の許可を得て、さし網、投網を使用した。さらに聞き取り調査も行った。また、北島町における地方名も調べた。
2.調査結果 北島町で20種類の淡水魚の生息が確認できた。確認された魚種を次に示す。( )内に北島町における地方名を示す。 硬骨魚綱 OSTEICHTHYES 条鰭亜綱 ACTINOPTERYGII 真骨下綱 TELEOSTEI ウナギ目 ANGUILLIFORMES ウナギ科 Anguillidae ウナギ Anguilla
Japonica コイ目 CYPRINIFORMES コイ科 Cyprinidae ハエジャコ亜科 Danioninae オイカワ Zacco
platypus (ハエンボウまたはハイ) ハス Opsariichthys uncirostris
uncirostris ウグイ亜科 Leuciscinae ウグイ Leuciscus (Tribolodon)
hakonensis カワヒラ亜科 CLltrinae ワタカ Ischikauia (Ischikauia)
steenackeri カマツカ亜科 Gobioninae コウライモロコ Squalidus chankaensis
subsp. ニゴイ Hemibarbus labeo
barbus コイ亜科 Cyprininae ギンブナ Carassius gibelio
langsdorfi (フナ) タナゴ亜科 Acheilognathinae タイリクバラナタゴ Phodeus
ocellatus
ocellatus ナマズ目 SILURIFORMES ギギ科 Bagridae ギギ Pseudobagrus
(Pelteobagrus) fulvidraco ナマズ科 Siluridae ナマズ Silurus
asotus ダツ目 BELONIFORMES メダカ科 Adrianichthyidae メダカ Oryzias
latipes (メメンチャ) カダヤシ目 CYPRINODONTIFORMES カダヤシ科 Poeciliidae カダヤシ Gambusia
affinis
affinis スズキ目 PFRCIFORMES ボラ亜目 MUGILOIDEI ボラ科 Mugilidae ボラ Mugil
cephalus
cephalus キノボリウオ亜目 ANABANTOIDEI タイワンドジョウ科 Channidae カムルチー Channa
argus (タイワンドジョウ) スズキ亜目 PERCOIDEI スズキ科 Percichthyidae スズキ Lateolabrax
Japonicus (セイゴ) バス科 Centrarchidae オオクチバス Micropterus salmoides
salmoides (ブラックバス) ブルーギル Lepomis
macrochirus タイ科 Sparidae クロダイ Acanthopagrus
schlegeli (チヌ) ハゼ亜目 ハゼ科 マハゼ Acanthogobius
flavimanus シマハゼ Tridentiger trigonocephalus チチブ Tridentiger
obscurus イソギンポ亜目 イソギンポ科 ナベカ Omobranchus
elegans ヨウジウオ目 ヨウジウオ亜目 ヨウジウオ科 ヨウジウオ Syngnathus
schlegeli KAUP
3.調査地点ごとの調査結果 調査地点1〜4を決め調査をした。 調査地点1は、7月26日に採集調査した。場所は今切川河口で加賀須野大橋付近である。投網とたも網を使用して採集し、採集した魚は体長を測定した。採集できた魚種と平均体長は表1の通りである。
 その他に甲殻類として、テナガエビ、ベンケイガニ、イワガニ、メンコガニ、ワタリガニがコンクリート護岸のすて石の場所に生息していた。 調査地点2では、7月30日に採集調査した。投網を使用して捕獲をし、旧吉野川と水路を調べた。 調査地点2付近の水路で採集したものを表3に示す。

 調査地点3では、投網とさし網を使用して採集した。しかし川幅が大きく、うまく採集できなかった。水中観察も水が濁っていてできなかったので、土手の上から水表面を泳ぐ魚を観察した結果も含めた。(表4)
 水面観察した魚種を表5に示す。体長は目測を示す。
 調査地点4において、7月31日に投網とさし網を使用し採集したが、水藻が繁殖していて、うまく採集できなかった。たも網を使用して採集できたのはメダカ(5個体、平均体長3cm)だけであった。
4.聞き取り調査 年齢35歳(男)、65歳(男)から聞き取り調査をおこなった。長年地元に住み、釣りをよくする人である。聞き取りで、生息しているとされた魚種は次の通りである。 オオクチバス(ブラックバス)、ナマズ、ウグイ、ハス、ギギ、メダカ、ウナギ、オイカワ(ハエンボウ、ハイ)、ブルーギル、スズキ(セイゴ)、ボラ(アカメボラ)、ニゴイ、ギンブナ(フナ)、カムルチー(タイワンドジョー)であった。

5.生息する魚種の特徴 〔ワタカ〕 琵琶湖、淀川水系の固有種であるが、旧吉野川で体長13cm
の個体を投網で1個体採集することができた。どのようにして入ってきたか定かでないが、琵琶湖の種アユを放流していたときに一緒に混入したと考えられる。ヨシ場を主な生息場所としており、下流域のワンドや流れのほとんどない水路に生息している。 〔ハス〕 琵琶湖水系と福井県三方湖に自然分布するが、琵琶湖産アユ種苗の全国各河川への放流と一緒に広がり、旧吉野川にも移入された。食物の供給がある大きな河川でなければ生存は困難で、生息個体数は少ない。 〔ウグイ〕 ほぼ日本全国に分布する。淡水域のみで生息する淡水型と、海へ下る降海型とがある。降海型は、1年から数年の海洋生活ののち河川に逆上って産卵する。徳島県内でイダという地方名で呼ぶ所が多いが、北島町ではそのような名で呼ばれることがない。 〔オイカワ〕(図2) 北陸、関東地方より以西の本州、四国、九州に広く分布する。四国の太平洋側の小河川には、まだ移されていないので分布していない。釣りの対象として好まれるが、北島町では釣っても食べることがない。川がきたないので食べる気がしないとのことである。吉野川水系のオイカワだけは天然分布と考えられている。

〔ニゴイ〕(図3) 本州と四国のほぼ全域、および九州北西部に分布する。日本固有の種である。大きな河川の中流、下流域から汽水域で生息する。耐塩性が強く、汚濁や富栄養化にも強い。環境が悪化するとウグイよりもニゴイが増加する傾向がある。吉野川や旧吉野川では、ニゴイが増え、海から逆上るアユの稚魚を食べるので困っている。

〔コウライモロコ〕(図4) 四国では、吉野川のみに生息しているとされているが、旧吉野川にも生息している。濃美平野、和歌山県紀ノ川から広島県芦田川までの本州瀬戸内海側に分布する。採集した場所は、旧吉野川から水を引く水路である。流れのゆるやかな砂レキ底の底近くを群泳する。

〔ギンブナ〕(図5) 日本全域に見られる。普通に見られるフナであるが、発生学上から考えると変わっている。雄が少なく、ほとんどが雌であり、染色体数は3倍体である。ギンブナ以外のフナは2倍体である。

〔タイリクバラタナゴ〕(図6〜8) 原産地はアジア大陸東部と台湾島であるが日本には1940年代はじめに入り、1962〜1963年頃に琵琶湖にも見られるようになった。徳島県には琵琶湖からのアユの稚魚放流にともなって移入された。現在は全国に広がっている。ほとんどの雄の成魚は腹ビレ前縁に真珠光沢を持つ白線がある。しかし旧吉野川に生息するものには白線のないものがあり、ニホンバラタナゴとタイリクバラタナゴの交雑が進んでいるためと考えられる。
 

〔ギギ〕 中部地方以西の本州、四国の吉野川や仁淀川水系の中流域などに生息する。夜間に活動し、摂食する。釣りでも釣れることがあり、トゲがあって、手を刺すことから、きらわれている。 〔ナマズ〕(図9) 日本全土に分布。

〔メダカ〕 本州以南から琉球列島まで分布する。開発につれ生息場所がしだいになくなり、水質汚染に強いカダヤシとの競争により、分布は狭くなっている。 〔カダヤシ〕 日本へは台湾島経由で1916年に入り、ボウフラ退治のため東京から徳島県に移入され、成功した。ふえたものが東日本、西日本へ放流され、全国に広がった。メダカによく似るが、尾びれがまるく、体が青っぽい色をしている。卵胎生である。汚染に強く、メダカを駆逐しつつある。 〔ボラ〕 全国に分布し、ふつうに見られる。10月〜1月ごろには外海で産卵し、冬から春にかけて成長すると、吉野川河口域や沿岸に来遊し、さらに河川に入る。 〔カムルチー〕 日本へ入ったのは、1923〜1924年に朝鮮から奈良県へ移入されたのが最初らしい。現在は本州、四国、九州の平野部の湖沼や河川に分布している。空気呼吸もおこなうことができるので、冬季の乾そう期の、水の少ない地点でも生息できる。 〔スズキ〕 日本各地に分布し、越冬したものは春に内湾に移動し、夏になると汽水域や淡水域に入る。秋になると再び外海に出て、岩礁帯の深みで越冬する。釣りの対象魚である。夏季に加賀須野橋などでよく釣りがおこなわれて、セイゴと呼ばれている。 〔オオクチバス〕 1925年にアメリカ合衆国のオレゴン州から神奈川県芦ノ湖へ移入されたのが日本に入った最初である。野放図な放流により各地に移植され、今ではほとんど日本全国に分布する。旧吉野川にも体長40cm
程の大きな成魚が多く生息し、本年度は、ブラックバス釣り大会が北島町でおこなわれており、ルアー釣りがさかんである。 〔クロダイ〕 北海道南部以南の日本沿岸に広く分布する。稚魚や幼魚のときは、夏から秋の間、内湾や沿岸域に定着し、特に淡水が多くて濁りがあり、餌(えさ)の多い河口域に好んで集まる。釣りの対象魚として人気がある。 〔マハゼ〕 日本各地の川の汽水域や内湾に生息し、夏には多数の未成魚が、河口の干潟や河川下流域にも浸入する。砂泥底にすみ、主にゴカイ類を餌とするが、小魚や藻類も食べる。
1)徳島県立富岡西高等学校 2)徳島県教育研修センター 3)徳島県立川島高等学校 4)東亜合成化学工業株式会社 5)四国化成工業株式会社 6)徳島県立農業高等学校 7)徳島県立板野高等学校 |