阿波学会研究紀要


このページでは、阿波学会研究紀要論文をご覧いただけます。
 なお、電子化にともない、原文の表記の一部を変更しています。

郷土研究発表会紀要第42号
北島町の植物相

植物同好会班(徳島県植物同好会)

   真鍋邦男1)・木村晴夫2)・

   赤澤時之3)・木内和美4)・                    

   木下覺5)・片山泰雄6)

1 自然環境の概況
 本町は県北東部、吉野川北岸に位置し、北は鳴門市大麻町・大津町、東は松茂町、南東から南にかけては徳島市川内町・応神町、西は藍住町に接している。徳島市のベッドタウンとしてまた工場地帯として発展を遂げてきている。本町の大部分は、南東に流れて来て北へ蛇行した旧吉野川と、これと分かれ南へ流れた今切川とに囲まれたひょうたんの形をした海抜3m 以下の沖積平野に位置している。土質は砂質・泥質で肥沃(よく)であり、地下水は豊富である。本町の歴史が治水と低湿地開発の歴史でもあったことが、かつての河道が多くの水路として残っていること等の現在の地形からもうかがい知ることができる。
 気候は、海岸に近く温和である。メッシュ気候値によれば年平均気温16.0℃、年間降水量1,505mm となっており、気候区としては瀬戸内型に近いといえるが、夏季の降水量は多い。これらのことは地下水が豊富なことと相まって植物の生長に好影響を与えている。

2 植物相の概況
 本町の自然は河川との関係を抜きにして語ることはできない。旧吉野川、今切川共に栄養分に富んだ流れとなり、多くの水生植物が、水面、水中に繁茂している。河畔は護岸工事・開発が進み、水生植物はその種類・量ともに多くはなく、自然の残された水辺に細々と生育が確認されるのみである。水路においても、水質の悪化とコンクリートによる三面張りが、水生植物にとって大きなダメージを与えている。しかし、水辺や休耕田、低湿地には、現在は貴重となっているいくつかの種の生育が確認された。また、本町には山地もなく、一部の社寺、民家を除いて、近年の低湿地の開発により造成された土地が多いため、植物相は豊かとはいえない。さらにかつて見られたであろう人里の植物も、各種の造成等により、その生育範囲は狭まり、空き地には帰化植物が侵入している。

3 代表的植物相
1)河川・水路周辺の植物
 本町は先にも述べたように今切川、旧吉野川に囲まれた沖積平野であり、古くは低湿地の多い、自然に近い水路が縦横に流れている地形であったと思われる。残念ながら現在は植物相の豊富であった環境は失われつつある。しかしなお本町の植物相について述べる時、それらと、かつての地形や豊富な水との結び付きを忘れることはできない。かつて豊富であった植物相の一端を、現在残されている水辺の植物からそれぞれの生育環境ごとに探っていきたい。
(1)河川・河川敷
  今切川も旧吉野川から三ツ合橋付近で分流したもので、両河川の植物相には大きな相違は見られない。水中にはイバラモ、ササバモ、セキショウモ、オオカナダモなどの沈水植物が繁茂し、潮が引いた時にはこれらを岸から手に取るように観察できる。また、多くはないがマツモの生育も見られた。河畔近くには抽水植物のマコモ、ヨシが生育している。ヨシはいたる所に繁茂しているが、マコモの個体数・生育個所はそれほど多くはない。水面には浮遊植物のホテイアオイが繁茂し、入り江状の個所や流れのゆるやかな個所では全水面を覆い尽くす程である。両河川の富栄養化の証拠であろう。また、ホテイアオイ程ではないが、流れのゆるやかな個所には浮水植物であるコオニビシも生育する。
 旧吉野川河畔の自然の残された個所には、湿潤な土地を好む次のような植物が確認された。オギ、カサスゲ、イ、ホソイ、ヨシ、ヒエガエリ、キショウブ、ニガクサ、ミゾソバ、サデクサ、セリ、クサネム、カワヂシャ、イヌゴマ、シロネ、クサヨシ、キシュウスズメノヒエ、ゴキヅル、ジュズダマ、サンカクイ、ショウブ。
 河川敷には、ホウキギク、ウラジロオオイヌタデ、ヤブツルアズキ、ツルマメ、ハマエンドウ、ミヤコグサ、コメツブツメクサ、コマツヨイグサ、アレチマツヨイグサ、ブタクサ、オオブタクサ、シンジュ、オニグルミ、カワヤナギ、アカメヤナギが生育している。
 これらの生育範囲は開発により狭まりつつある。
 なお、今切川河畔にも、ニガクサ、ゴキヅル、マコモ等の生育が確認された。

(2)水路周辺
 水路のほとんどが三方をコンクリートで固められているため、植物相は貧弱である。富栄養化した水中にエビモ、オオカナダモの繁茂も見られ、より水質の悪化している地点では沈水植物が確認されないほどであった。しかし一部の水路には浮遊植物のトチカガミが見られ、コンクリート化された水路際には、広範囲に見られるヨシとともに、最近減少しつつあるアイアシ、セイタカヨシ(セイコノヨシ)の生育が数個所で確認された。
(3)竹林
 水防のために、かつては多くの竹林が育成されていたと考えられる。今日ではしだいにその姿を消しつつあるものの、モウソウチク、マダケ、メダケ、ホテイチク、ハチクなどの林が、その規模は異なるが河川、河道跡の水路際等に残存している。これらのなかで広い面積ををもっているモウソウチク林、メダケ林の植物相は次のようになっている。
 モウソウチク林は二個所程が旧吉野川堤に見られ、竹林内は暗く、背丈の低い次のような植物が生育している。イノコズチ、コヤブラン、ジャノヒゲ、ヤブミョウガ、ヤブコウジ、ツルグミ、ムクノキ、カクレミノ、アオキ、マサキ、シロダモ、イヌビワ、ホソバイヌビワ、シュロ、キヅタ。
 また一部にマダケが混生している。
 メダケ林は太郎八須、鍋川付近の旧吉野川の支流や水路際、三ツ合橋付近等、モウソウチク林より広範囲に生育している。そして次のような背丈の高い木本植物を含む多くの植物がメダケに混生、あるいは林縁に生育している。フキ、ジャノヒゲ、ヒガンバナ、ハゼノキ、アカメガシワ、クロガネモチ、ムクノキ、エノキ、カジイチゴ、ネズミモチ、ヤブニッケイ、イヌビワ、マユミ、ノイバラ、シロダモ、ヤブツバキ、クス、ツルウメモドキ、カクレミノ、クワ、マサキ、ヤツデ、タブ、マルバシャリンバイ、ナワシログミ、ビナンカズラ、ヤマフジ、キヅタ、テイカカズラ、スイカズラ、クコ。
 他にカラスウリ、キカラスウリ、センニンソウ、ノブドウ、イシミカワ、アオツヅラフジ、ヘクソカズラなどのつる性の植物がメダケを覆うように生育している。モウソウチク林に比べ植物相が豊富なのは、メダケの丈が低いことや、林下に光が差し込みやすい形状等のためと考えられる。
 マダケ林は生育個所が少なく面積も狭い。モウソウチクやヤダケに混じって生育している個所もある。ホテイチク林は、やや生育条件の悪い川岸の狭い範囲に生育している。
 これらの竹林の植物相は、栽培種が侵入しているものの、かつての、そして変遷しつつある本町の植物相の一端を表していると言える。

(4)堤防
 まず今切川堤防(高房、鯛浜付近)の植物を次に挙げておく。ここでは定期的な刈り込みがなされており、その回数や時期が植物相に大きな影響を与えていると考えられる。カンサイタンポポ、シロバナタンポポ、アキノノゲシ、オニタビラコ、ヨモギ、セイタカアワダチソウ、ウスベニチチコグサ、チチコグサモドキ、タチチチコグサ、ハハコグサ、ノゲシ、アイノゲシ、ヒナギキョウ、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ、カラムシ、スイバ、カラスノエンドウ、スズメノエンドウ、コメツブツメクサ、ウマゴヤシ、カタバミ、オランダミミナグサ、ヤブガラシ、トキワハゼ、ホトケノザ、ギシギシ、ヤエムグラ、セイヨウカラシナ、ノミノフスマ、センニンソウ、ノビル、スズメノカタビラ、ヒメコバンソウ、チガヤ、イヌムギ、スギナ、クコ。
 また新たに築かれた三ツ合公園付近の堤防には、オニウシノケグサ、タチスズメノヒエ、キキョウソウ、シロバナマンテマなどの帰化植物が多く侵入している。また本来山地に自生しているはずのヒヨドリバナが見られたが、これは、堤防に使われた土に混じり込んでいた種子が発芽したものと思われる。
2)休耕田・空き地の植物
 本町も他町と同様、減反政策や農業人口の減少等から、休耕田・一毛作田が多く見られる。これら休耕中の田畑の植物相は、水利、休耕期間、かつての環境等各種条件によって異なっていると考えられる。いくつかを挙げておきたい。
(1)新喜来(グリーンタウン東)・休耕田
 夏季は水が入り湿潤。秋に耕起されている。オモダカ、クログワイに占められている。水田として最近まで利用されていたと考えられる。
(2)中村(北島郵便局西)・休耕田
 秋に耕起されている。やや乾燥しており、帰化植物も侵入しているが、湿地、水田等に生育する植物も見られる。ハキダメギク、タカサブロウ、ハナイバナ、ホソアオゲイトウ、クサネム、スベリヒユ、セリ、オオイヌタデ、イヌビエ、ケイヌビエ、メヒシバ、コゴメガヤツリ、ヒデリコ。
(3)江尻・休耕田
 水田横の一部休耕している個所である。夏季は水が入り湿潤。アゼナ、コゴメガヤツリ、コナギ、ホソバヒメミソハギ、シカクイ、クログワイ、タマガヤツリ。
(4)江尻(妙蛇池付近)・休耕田
 長期間放置され、湿潤。道路の拡張工事等で狭くなった妙蛇池近くにある。種の数はそれ程多くないが、本町における湿地の一つの典型的な姿であり、かつての地形の手掛かりを与えてくれる個所でもある。クサネム、ガマ、ヒメガマ、セリ、イボクサ、コナギ、アゼナ、ケイヌビエ、コブナグサ、タマガヤツリ、コウキヤガラ、ホウキギク、ツルマメ。
(5)高房(百堤外付近)・埋立地(空き地)
 かつては池や湿地、河川敷特有の植物も見られたと思われるが、現在は建設業者の用地等として埋め立てられている。降雨時に一時的に低い部分に水たまりができるものの、全体的には乾燥している。埋め立てられてから十数年が経過しており、ヒメジョオンやオオアレチノギク、ヒメムカシヨモギなど一年生植物の群落から多年生植物等の群落へと移行しつつある。現在は近辺から入り込んだ在来の植物と、客土に混じっていたと思われる植物、帰化植物が混生している。ノゲシ、アキノノゲシ、アカザ、シロザ、ヨモギ、オニタビラコ、ナズナ、レンゲ、クズ、カラスノエンドウ、ニガクサ、タガラシ、オオバコ、オオイヌタデ、シロバナサクラタデ、イタドリ、ヒナタイノコズチ、カスマグサ、スズメノエンドウ、ギシギシ、コギシギシ、イヌガラシ、コイヌガラシ、ヤエムグラ、カラスウリ、キカラスウリ、ヘクソカズラ、イシミカワ、カラムシ、ヤブガラシ、ヒルガオ、コヒルガオ、カタバミ、イチビ、ツユクサ、ススキ、オギ、オヒシバ、メヒシバ、ギョウギシバ、チガヤ、イヌビエ、カズノコグサ、アゼガヤ、スズメノテッポウ、ノゲイヌムギ、コスズメガヤ、エノコログサ、ムラサキエノコログサ、アキノエノコログサ、クサイ、クサヨシ、ヤマアワ、アイダクグ、イボタノキ、アカメガシワ、クワ。
 攪(かく)乱された環境だけに、次のように多くの帰化植物も見られた。ヒメジョオン、アメリカセンダングサ、コセンダングサ、オオアレチノギク、セイタカアワダチソウ、トゲチシャ、ブタクサ、テリミノイヌホオズキ、セイヨウカラシナ、オランダミミナグサ、アレチマツヨイグサ、コマツヨイグサ、マツバウンラン、ウマゴヤシ、アメリカフウロ、タチイヌノフグリ、ケアリタソウ、コニシキソウ、セイバンモロコシ、ヒメモロコシ、メリケンカルカヤ。

3)道端の植物(水神社南)
 “道草をくう”という言葉が死語になるのではないかと思われる程、道端に草が生えているという、かつては当たり前であった景観が、都市だけでなく田園地帯においても失われつつある。本町においても、未舗装道路の減少とともに、身近に見られた人里の植物も生育範囲が狭まってきている。短い距離ではあるが未舗装道路が見られたので、ここに生育していた植物を挙げておく。ホウキギク、ヒロハホウキギク、オオユウガギク、セイタカアワダチソウ、アレチノギク、アキノノゲシ、ヨモギ、ヒナギキョウ、カラスウリ、キカラスウリ、カラムシ、キツネノマゴ、ヤブツルアズキ、シロツメクサ、カラムシ、オオバコ、ヒナタイノコズチ、メマツヨイグサ、シロバナサクラタデ、カタバミ、ギシギシ、イヌガラシ、ヒガンバナ、ツユクサ、ネズミノオ、ハマスゲ、アキメヒシバ、カゼクサ、オヒシバ、ニワホコリ、チカラシバ、シマスズメノヒエ、キンエノコロ、アキノエノコログサ、シマスズメノヒエ。
4)社寺林の植物
 本町の社寺林は整備がなされ、真砂土が入れられてしまっている所もあり、かつての植生はほとんど残されていない。それらの中で比較的植物相の豊かな水神社と、中村の山の神/三宝荒神の植物を挙げておく。
(1)水神社
 本神社の馬場には、日清紡社宅から続くクロマツの並木がある。しかし舗装道路が神社の杜(もり)に沿って走り、車も通行して環境は悪化している。クロマツの樹勢は衰え、枯死も目立っている。社叢(そう)も人手が入り、自然の姿は失われつつあるが、大切に保護していかなければならない。植栽されているものを含め、次のものの生育が確認された。カンサイタンポポ、アカミタンポポ、アキノノゲシ、ノゲシ、ヨモギ、ノコンギク、ホウキギク、コセンダングサ、オオアレチノギク、ヒメムカシヨモギ、フキ、チチコグサモドキ、ハキダメギク、タカサブロウ、キュウリグサ、ウリクサ、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ、オニタビラコ、オランダミミナグサ、ヤエムグラ、アカザ、ニガクサ、ホトケノザ、スズメウリ、ヘクソガズラ、ナズナ、ヤブカンゾウ、スベリヒユ、カタバミ、ムラサキカタバミ、ウシハコベ、ヒメウズ、スイバ、コナスビ、カラムシ、エノキグサ、ドクダミ、イノコズチ、ツボクサ、シロツメクサ、ウマゴヤシ、コメツブツメクサ、ヒメスミレ、カラスノエンドウ、カスマグサ、スズメノエンドウ、マツバウンラン、セイヨウカラシナ、ヤブガラシ、オシロイバナ、シャガ、ヤブラン、キショウブ、ツユクサ、アキノエノコログサ、メヒシバ、スズメノカタビラ、チガヤ、カラスムギ、ハマオモト、スギナ、クス、サカキ、クロガネモチ、キョウチクトウ、サンゴジュ、ヤツデ、キンモクセイ、サザンカ、シュロ、クロマツ、スギ、ヒノキ、イブキ、モミ、ヒムロスギ、イヌマキ、ムクノキ、エノキ、イヌビワ、マンリョウ、ナンテン、スイカズラ、アオキ、マサキ、ヤマモモ、アツバキミガヨラン、ムクゲ、マユミ、ツルウメモドキ、トベラ、アラカシ、ウバメガシ、ノイバラ、イチョウ、ホテイチク、サツキ、ヒラドツツジ。

(2)山の神/三宝荒神
 多くの社寺林に人手が入り、樹木が植栽され、整備されつつあるなかで、面積も狭く樹種も豊富とは言えないものの、本祠(ほこら)は昔からの植物相を一部残している。イノコズチ、メヤブマオ、カタバミ、ジャノヒゲ、チヂミザサ、カクレミノ、キヅタ、クス、ヤブニッケイ、シロダモ、ハゼノキ、ムクノキ、エノキ、マサキ、シュロ、イヌビワ、ナワシログミ、アカメガシワ、サンゴジュ、ヤブツバキ、トベラ、マユミ、テイカカズラ、ビナンカズラ、メダケ、マダケ。

4 巨樹・老木
 本町には山地がなく、巨樹・老木は民家や社寺など人手の入った所に生育しているものがほとんどであるが、これらのなかには、かつてのこの地域の自然の一端を表すものも多い。しかし、近年の生育環境の悪化に伴い、伐採されたり、枯死したりしたものも見られる。特にクロマツの巨樹の多くが枯死している。マツノザイセンチュウだけが原因でなく、大気汚染等環境の悪化も要因の一つではないかと考えられる。また主幹を残して定期的に枝がはらわれ、樹勢の衰えている樹木も多い。
 ここでは社寺や民家等で確認したものについて、樹種ごとに挙げておきたい。樹種によっては、巨木とは言えないものも、他種の巨木に劣らず年月を経ているものが存在することは言うまでもない。また、巨樹・老木とは言えないものも、参考のために一部挙げておいた。なお、数値は胸高幹周を表し、順位は「徳島県植物誌(1990)」によった。
 モッコク 2.01m(円通寺、県下第2位)、1.28m(高房・天羽一宏氏宅)、1.03m(恵比須神社)

 クス 3.53m・2.07m(大将軍神社)、3.05m(東邦レーヨン社宅)、2.88m・2.25m・2.05m(地上1mにて二幹、他1.25m)(水神社)、2.82m・2.44m(若宮八幡宮)、2.66m(天満神社)、2.65m(安楽寺)、2.49m(江尻・八幡神社)、2.27m(根元付近より二幹、他1.58m)(中村・山の神/三宝荒神)、2.13m(中村・高畠堅治氏宅)
 クロガネモチ 2.67m(鯛浜・米津利則氏宅)、2.57m(高房・墓地)、2.26m(新喜来・河口勝吉氏宅)、2.15m(高房・忠津博之氏宅)、1.97m・1.78m(中村・北島英良氏宅)、1.92m(恵比須神社)、1.90m(高房・八幡神社)、1.88m(高房・亀田吉之氏宅)、1.86m(新喜来・阿部カズヱ氏宅)、1.82m(新喜来・藤田庄八氏宅)、1.74m(東邦レーヨン社宅横)、1.72m(東邦レーヨン社宅)、1.67m(新喜来・近藤利教氏宅)、1.51m(水神社)、1.50m(中村.高畠堅治氏宅)
 ヤブニッケイ 0.87m(天満神社)、0.70m(太郎八須・佐藤美雄氏宅)
 シロダモ 1.06m(鯛浜・米津利則氏宅)
 カクレミノ 0.92m(中村・山の神/三宝荒神)
 ホルトノキ 3.82m(高房・八幡神社、県下第6位)、1.52m(中村・大島啓靖氏宅)
 オガタマノキ 2.45m(太郎八須・佐藤美雄氏宅、県下第3位)、1.51m(荒神社)、1.12m(中村・櫟田引幸氏宅)
 クロマツ 2.04m・2.02m(水神社)
 ゴヨウマツ 1.02m(新喜来・藤田庄八氏宅)
 タイサンボク 1.04m(安楽寺)
 イヌマキ 1.48m(新喜来・新居堅一氏宅)、1.23m・1.09m・1.08m(2樹)(安楽寺)
 タブ 2.27m(正通寺)、1.34m(鯛浜.新見武司氏宅)
 イチョウ 7.78m(光福寺、県下第9位)、2.30m(能満寺)

 ムクノキ 2.93m(北村・坂野茂隆氏宅)、1.51m(水神社)
 エノキ 2.46m(高房・八幡神社)、2.40m(新喜来・高倉義行氏宅)、1.74m(北村・伊賀肇氏宅)、1.63m(東邦レーヨン社宅)、1.63m(八坂神社)、1.59m(新喜来・坪内寛伍氏宅)、1.54m(新喜来・近藤利教氏宅)
 チシャノキ 1.21m(北島小)、1.02m(江尻・八幡神社)
 ニワウルシ 1.37m・0.94m(三ツ合公園)
 ハゼノキ 0.75m(地上0.7mにて三幹、他0.73m・0.63m)(鍋川・堤防)、0.43m(中村・山の神/三宝荒神)

5 帰化植物
 本町の歴史は、洪水との闘いと湿地開拓の歴史であったと同時に、近年は他町と同様に、そのようにしてでき上がってきた農村的な自然景観を破壊しながら都市化してきた歴史でもあったといえる。このような条件下において、多くの空き地・道端には帰化植物が入り込んできている。なお、ここでは次のようなものを帰化植物として取り上げた。まず、意識的・無意識的を問わず人為的に外国から持ち込まれたものであり、人の手によって育てられているものではなく野生状態で生育しているものであること。さらに、これらの条件を満たすもののうち、稲作など古くからの農業に伴って入って来たものは除き、主に江戸時代末期以後に入って来た植物たちである。
 本町で特に勢力の盛んな帰化植物としては、堤防、空き地などに生育しているセイタカアワダチソウ、セイバンモロコシが挙げられる。両者とも背丈も高く、その形状からよく目立ち、ススキと競合している。特にセイタカアワダチソウは種子の散布能力が高く、いたる所に侵入していっている。このほかにもヒメムカシヨモギ、オオアレチノギクなどが空き地を占領している姿を見ることができる。
 これら一見して「困ったもの、やっかいなもの」と考えられるもの以外にも、多くの植物が入って来ており、次に挙げておきたい。
(きく科)セイヨウタンポポ、アカミタンポポ、ブタナ、ナルトサワギク、ホウキギク、ヒロハホウキギク、アレチノギク、オオアレチノギク、ヒメムカシヨモギ、ヒメジョオン、ハルジョオン、コセンダングサ、アメリカセンダングサ、セイタカアワダチソウ、ハキダメギク、ノボロギク、タチチチコグサ、チチコグサモドキ、ウスベニチチコグサ、ブタクサ、オオブタクサ、オオオナモミ、トゲチシャ、ハルシャギク、キヌガサギク (ききょう科)キキョウソウ (うり科)アレチウリ (ごまのはぐさ科)アメリカアゼナ、マツバウンラン、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ (なす科)イヌホオズキ、テリミノイヌホオズキ (しそ科)アメリカハッカ、マルバハッカ、 (くまつづら科)ヤナギハナガサ (ひるがお科)アサガオ (せり科)マツバゼリ、ノラニンジン (あかばな科)アレチマツヨイグサ、コマツヨイグサ、ヒルザキツキミソウ (みそはぎ科)ホソバヒメミソハギ (あおい科)ウサギアオイ (とうだいぐさ科)ニシキソウ、オオニシキソウ、コニシキソウ (かたばみ科)ムラサキカタバミ、ハナカタバミ、フヨウカタバミ (ふうろそう科)アメリカフウロ (まめ科)シロツメクサ、ムラサキツメクサ、コメツブツメクサ、ウマゴヤシ、イタチハギ (べんけいそう科)メキシコマンネングサ、オノマンネングサ (あぶらな科)セイヨウカラシナ、マメグンバイナズナ、ニワナズナ、ショカッサイ (けし科)ナガミヒナゲシ (なでしこ科)シロバナマンテマ、ムシトリナデシコ、ドウカンソウ (すべりひゆ科)ハゼラン (ざくろそう科)クルマバザクロソウ (おしろいばな科)オシロイバナ (ひゆ科)ホソアオゲイトウ、ホナガイヌビユ、ツルノゲイトウ (あかざ科)シロザ、アカザ、ケアリタソウ (たで科)ホザキニワヤナギ、オオケタデ、アレチギシギシ (あやめ科)キショウブ、ニワゼキショウ (ひがんばな科)サフランモドキ (ゆり科)ハナニラ (みずあおい科)ホテイアオイ (つゆくさ科)ノハカタカラクサ (かやつりぐさ科)シュロガヤツリ (いね科)セイバンモロコシ、ヒメモロコシ、ヒメコバンソウ、イヌムギ、ノゲイヌムギ、シマスズメノヒエ、タチスズメノヒエ、スズメノチャヒキ、シナダレスズメガヤ、オニウシノケグサ、ナギナタガヤ、ネズミムギ、キシュウスズメノヒエ、メリケンカルカヤ (ありのとうぐさ科)オオフサモ (とちかがみ科)オオカナダモ。

6 特記すべき植物
1)シャク(せり科)
  Anthriscus aemula Schischk.
 山中の湿地に生えることが多い多年生草本。長い葉柄をもち、葉は3回羽状に深く裂ける。初夏に複散形花序を出し、細かな白い花をたくさんつける。果実はヤブジラミ、ヤブニンジンとは異なり、毛が見られない。白い根はさらして粉にし、食用にすることができる。今切川に群生が見られ、旧吉野川にもわずかではあるが生育している。

2)ゴキヅル(うり科)
  Actinostemma lobatum Maxim. ex Franch. et Savat.
 池や川などの水辺に生える1年生の柔らかなつる植物。葉と対生に巻きひげがつき、他の物にからみつく。果実が熟すと、合わさった器が上下に分かれるように黒色をした種子が現れるところから名付けられた。夏の終わりから秋にかけて葉腋(えき)に総状の雄花序と雌花をつける。全県的に池や川の岸がコンクリートで固められ、減少しつつある。本町では旧吉野川、今切川の河畔にわずかに生育している。
3)ミゾサデクサ(サデクサ)(たで科)
  Persicaria maackiana (Regel) Nakai
  水辺に生える1年生草本。サデとはなでさすることで、この草でさすると痛いところから名付けられた。茎は直立することが多く、高さは50cm 以上になり、茎、葉柄ともに逆向きの刺(とげ)がある。水辺によく生えるミゾソバによく似ているが、葉の両面に毛が密生していること、葉がやや細く基部がほこ形に強く張り出していることなどから区別することができる。旧吉野川河畔にわずかに生育している。
4)イヌゴマ(しそ科)
  Stachys riederi Cham. var. intermedia (Kudo) Kitamura
 チョロギダマシともいう。溝や水田の畦(あぜ)、池の縁などやや湿った土地に生育する多年生草本。果実の形がゴマに似ているが利用価値がない、というところから名付けられた。茎は四角形で稜がざらざらしており、葉は対生する。高さは30〜70cm 程で、夏季に階段状に桃色の花を茎の周囲につける。生育環境の悪化により、減少しつつある。本町では、三ツ合公園付近等の旧吉野川沿いに数個所生育している。

5)セイタカヨシ(いね科)
  Phragmites karka (Retz.) Trin.
 セイコノヨシともいう。川辺の湿地や海辺に生育する大形の多年生草本。茎は直立し3m以上にもなり、名はこれに基づく。根元はメダケのように太くなり、葉先は垂れない。また茎の中央部付近より上で短い枝を出し、夏季には茎頂に円錐花序がつく。県内でも生育個所は多くない。中村字本須付近のコンクリート化されつつある水路際等にわずかに残されている状態である。

6)アイアシ(いね科)
  Phacelurus latifolius (Steud.) Ohwi
 河口や海辺の湿地に群生する大形の多年生草本。アシに似ているが、まがい物のアシという意味から名付けられたといわれる。ちまきに使用されマキガヤとも呼ばれている。茎は直立し1.5〜2m ほどになる。夏季に茎頂に帯紫色の穂状花序をつける。無毛・革質で先端はとがっており、花序が少数の時には鳥の嘴(くちばし)のように見える。老門付近の水路際に数個所狭い範囲に生育している。しかし生育環境はしだいに乾燥し悪化しつつある。
7)コウキヤガラ(かやつりぐさ科)
  Scirpus planiculmis Fr. Schm.
 海辺の湿地に群生する多年生草本。茎は3稜(りょう)形で直立し0.4〜1m ほどになる。冬になると茎が枯れ水に浮かぶこと、茎の形状を矢幹(やがら)に例えたところから名付けられた。妙蛇池付近の休耕田に群生が見られた。
8)デンジソウ(でんじそう科)
  Marsilea quadrifolia L.
 暖地の水田や池、沼等に生える落葉性・多年生のシダ。根茎は柔らかく、泥中をはい、長い葉柄を伸ばして水面に葉を浮かべる。扇形をした4枚の小葉がちょうど漢字の「田」の字に似ているところから名付けられた。土地が乾燥すると茎葉が固くなり、葉を直立させる。本町では太郎八須付近に生育している。水面を覆い尽くす程であるとも聞くが、生育個所は多くない。近年生育に適した湿地や水田等が、耕地整理や宅地化等により激減したり、除草剤により雑草として駆除されたりしている。本種の置かれている状況は県内のみならず全国的にも同様で、「我が国における保護上重要な植物種の現状」では『危急種』 (個体数の減少、生育・生息条件の悪化、再生産能力を上回る採取・捕獲圧、交雑可能な別種の侵入などの理由で、絶滅の危険が増大している種)にされている。しかし、農業にとっての「雑草」というイメージは変わらず、依然駆除の対象となっている。

9)コギシギシ(たで科)
  Rumex nipponicus Franch. et Savat.
 道端や田畑の畦に生える多年生草本。ギシギシに似ているがやや小さく、高さは50cm 程でほっそりした感じである。葉は両面とも無毛で長い柄があり長楕(だ)円状披針形から披針形、基部は円形をしている。果実をとりまく花被片には刺がある。本町では高房字百堤外付近の空き地に生育しているが、土木工事等により減少している。

10)カワヂシャ(ごまのはぐさ科)
  Veronica undulata Wall.
 川岸や溝などの湿ったところに生える二年生草本。高さは60cm 程になり、茎は円柱状である。葉は対生し、長楕円状披針形で茎を抱く。茎、葉ともに黄緑色をしており柔らかである。初夏葉の脇に細長い総状の花序をつける。本県ではなお各所に生育しているが、川岸等がコンクリートで固められるにつれ減少しつつある。本町では三ツ合公園付近の旧吉野川沿いに生育しているが生育個所、個体数とも多くはない。
11)アカミタンポポ(きく科)
  Taraxacum laevigatum DC.
 タンポポのうち、本町ではカンサイタンポポ、アカミタンポポ、シロバナタンポポ、セイヨウタンポポの生育が確認されたが、セイヨウタンポポの個体数は少なく、前二種が優勢である。本種は、ヨーロッパ原産の帰化種であり、カンサイタンポポからは総苞(ほう)片が反り返ることから、またセイヨウタンポポからは果実が赤褐色を帯びていることから区別される。都市部ではかつて広く分布していたセイヨウタンポポにとって代わろうとしている。本町でも、有性生殖を行わず果実が小さくて飛散能力が高い本種が、刈り込みや攪(かく)乱の機会が多い道端や校庭、民家の庭先、空き地などに侵入し勢力を拡大している。しかし、今切川堤防など他の植物と競合する草むらには侵入しにくく、そのような環境下では在来のカンサイタンポポがなお優勢である。
12)ヒノキバヤドリギ(やどりぎ科)
  Korthalsella japonica (Thunb.) Engler
 暖地のヒサカキ、ツバキなどに寄生する常緑の小さな木本植物で、10cm 前後になる。根元付近で分枝し、緑色の偏平な多数の茎が関節でつながっている。葉は茎の先端に鱗片状につながってつく。中央公園のツバキ、サザンカに寄生している。

13)オガタマノキ(もくれん科)
  Michelia compressa (Maxim.) Sargent
 暖地に自生するが、神社などにも多く植栽される常緑の高木である。名は枝を神前に供えて神を招く、招霊(おきたま)から転化したといわれる。荒神社の本樹(町指定天然記念物 1980.7.18指定)は、1935年実生のものであるが、これは太郎八須の佐藤美雄氏より奉納されたものである。ちなみに佐藤氏宅のものは、樹齢約100年、樹高約14m、胸高幹周2.45m(「巨樹・老木」の項参照)である。樹高2m の所で二分枝し、さらに各々が三分枝して大きく枝を広げている。民家があるため刈り込まれているが樹勢は旺盛である。

7 おわりに
 現代社会は、自然を急速に破壊していっている。そしてその代償として私達は遠くの「素晴らしい自然」を求めて遠距離を集団移動する。しかし、もっと身近にある自然を見直し大切に保護していくべきではないのだろうか。「自然に親しむ」という名のもとに身近な自然を全て人手の入ったものに変えしてしまい、生き物の住める環境を必要以上に破壊していっているように思われてならない。私たちが日常生活の中で交流し触れ合うことができるのは決して遠くの自然ではなく、身近な自然である。
 本町においても開発の波は避けるべくもないが、なお竹林や雑木、湿地の植物が茂り野鳥の飛来する水辺もわずかながら残されている。また危急種に指定されている植物をはじめ、水辺に生育する貴重な植物も数種類確認された。これらをとりまく環境を含め、一つの大きなまとまりとして積極的に保護していってほしいと心より念願する。
 最後に、炎天下連日ご案内を頂いた本町の北島貞一氏、そして調査並びに本報告書のまとめにご協力頂いた田渕武樹氏、小松研一氏、小川誠氏に心より御礼申し上げる。

 参考文献
徳島地方気象台・日本気象協会編 1991 徳島百年の気象 徳島出版
北島町史編纂委員会編 1975 北島町史 北島町
北村四郎・村田源・堀勝 1976 原色日本植物図鑑(上) 保育社
北村四郎・村田源 1974 原色日本植物図鑑(中) 保育社
北村四郎・村田源・小山鐵夫 1975 原色日本植物図鑑(下) 保育社
大滝末男・石戸忠 1980 日本水生植物図鑑 北隆館
阿部近一 1990 徳島県植物誌 教育出版センター
長田武正 1977 原色日本帰化植物図鑑 保育社
牧野富太郎 1989 牧野新日本植物図鑑 北隆館
我が国における保護上重要な植物種及び群落に関する研究委員会 種分科会編 1989
 我が国における保護上重要な植物種の現状 (財)日本自然保護協会 (財)世界自然保護基金 日本委員会

1)北島町立北島小学校 2)徳島市北田宮3丁目 3)北島町中村
4)牟岐町中村 5)一宇村立明谷小学校 6)徳島県立徳島農業高等学校神山分校


徳島県立図書館