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1.はじめに 我々医学班は阿波学会総合学術調査の一環として農村医学班の調査と並行し、那賀川町農業従事者の栄養調査を実施した。那賀川町は徳島県の東南部、那賀川河口に開けた三角州に位置している。北は小松島市、西は羽ノ浦町、南は阿南市に接し、東側は紀伊水道を経て和歌山に面している。山地はなく肥沃(よく)な田園地帯で、米作を中心とした農業と、一級河川の那賀川の下流に位置する関係で、昔から木工業が盛んである。特産品としては、公方(くぼう)イチゴ、キャベツ、ウナギ等がある。 今回、ここに在住する農業従事者の食物摂取量、生活時間、みそ汁塩分濃度及びアンケート調査を実施したので報告する。 2.調査方法 1)対象 徳島県那賀川農協に加入している農業従事者のうち、男性69名、女性145名の計214名に対して栄養調査を実施した。年令は30歳代から70歳代で、平均年令は男性60歳、女性59歳であった。 2)期間 平成6年8月1日から8月4日までの4日間にわたり実施した。 3)調査項目 a)栄養素摂取量 調査を行う数日前に食事調査表を各自に配布し、調査の前日に摂取した食品の種類と分量を記入してもらい、調査日に持参するように依頼した。調査日には個々の面接により食品モデルを提示し、各自が記入した食品分量を調査員が再確認した上でグラム数に換算した。栄養素摂取量及び食品群別摂取量は、当班で作成したプログラムによりパーソナルコンピューターを用い算定した。 b)生活時間調査 食事調査日の生活時間を記入してもらい、面接時に調査員が不明確な点を再確認し、生活時間の算定を行った。消費エネルギーの算出は沼尻らの方法(24、25)を用いた。各労作の活動代謝は、以前の報告(1〜22)と同様の値を用いた。 c)みそ汁の塩分濃度 調査日に持参してもらったみそ汁について、ケニスデジタル食塩濃度計により塩分濃度を測定した。 d)アンケート調査 アンケート用紙を各自に配布して記入を依頼し、面接時に調査員が不明確な点をもう一度確認したうえで、各回答を得た。 3.結果および考察 食糧構成および栄養摂取量の各グラフは、被検者全体(全体)および男女別の平均値で示した。 1)那賀川町農業従事者の食糧構成 那賀川町農業従事者の食品群別摂取量は、「食品群別摂取量の目安」(速水氏案)(26)を100%として図1に示した。穀類は目安量をやや下回る程度であり、油脂類、いも類はかなり低い値を示した。たん白質源である豆類、卵類、乳類、魚類、肉類は目安量を充たしていた。ビタミン源である緑黄色野菜は、よく摂取されており果実類、淡色野菜類も摂取されていた。 2)年齢別にみた食品群別摂取 「食品群別摂取量の目安」(速水氏案)を100%として各食品群別の摂取量を30〜49歳、50〜59歳、60歳以上に分けて検討した。穀類の摂取は、全体的に目安量をやや下回っており(図2)、いも類、砂糖類は、全体的に摂取量は低かった(図3、4)。油脂類は摂取量が低く、特に50歳以上においては目安量の40%程度でしかなかった(図5)。 たん白質源のうち、豆類は、ほぼ充足されていたが、30〜49歳の男性は目安量の半分であった(図6)。魚類は、各年齢層ともよく摂取されていた(図7)。肉類は、30〜49歳でよく摂取されており(図8)、卵類は目安量を満たしていた(図9)。乳類も全体的によく摂取されており、特に30から50歳代の女性は目安量の3倍以上であった(図10)。 ビタミン源である緑黄色野菜は全体的によく摂取されており、50歳代以上において目安量の2倍以上であった(図12)。淡色野菜については30から50歳代の男性において目安量をやや下回っていた(図11)。また果実類は50歳代以上でよく摂取されていたが、30〜49歳において不足気味であった(図13)。 ミネラル源である小魚・海藻類は、60歳以上はほぼ目安量を満たしていたがそれ以下の年齢層では不足気味であった(図14)。 3)栄養摂取量 日本人の栄養所要量(第4次改訂)(27)を100%としたときの那賀川町農業従事者の平均栄養摂取量の比率(%)を図15に示した。脂肪以外は、全般的によく充足されており、たん白質もよく摂取されていた。たん白質のうち動物性たん白質が多いのは、魚類や乳類の摂取が多かったためと思われる。また、ビタミンCは緑黄色野菜の摂取が多かったためか、高い値を示した。 4)年齢別にみた栄養摂取量 栄養素摂取状況においては年齢の違いによる差はあまり見られず、どの栄養素も比較的充足されていた(図17〜27)。糖質、たん白質エネルギー比については年齢の違いによる差はみられなかったが、脂質エネルギーにおいては50歳以上で目安量を下回っていた(図28〜30)。 5)みそ汁の塩分濃度 図31は、みそ汁の塩分濃度を測定し、その濃度の度数分布を示したものである。塩分濃度は、男女とも0.6〜0.8%がピークで、全体の90%以上の人が推奨濃度である1.0%以下であった。しかし一日の食塩摂取量は11.1g
で全国平均をやや下回っているものの、厚生省の推奨値である「10g以下」よりは多く、指導による改善が望まれる。 6)アンケート調査結果 食物摂取調査は1日の結果であるので、食生活の全容をとらえるべく、栄養意識および食物摂取頻度について調査した(図32)。 緑黄色野菜を食べると答えた人が多かったが、これは実際の調査結果と一致していた。男女とも約半数以上の人が食事はいつも腹一杯食べると答え、女性は7〜8割の人が間食をすると答えたのに対して、問題となる様な過食及び欠食をする人は少なく、全般に良好な結果であった。 4.まとめ 那賀川町農業従事者の食生活は、食品群別摂取量、栄養素別摂取量ともに一部のものを除いてよく充足されており、問題となるような過剰摂取もみられず、エネルギーバランス(表1)も良好であった。しかし、油脂類については、全体的に男女とも目安量の約半分と低く、このことは、油を使った料理が少なかったためと思われる。たん白質についてみると、50歳以上は魚類に依存した動物性たん白が多かったのに対し、30〜49歳では肉類に依存していた。乳類の摂取は各年齢層とも目安量を満たしていたが、60歳以上についてはさらに摂取することが望ましい。小魚・海藻類の摂取は30から59歳で低く、カルシウム摂取の点からも摂取量を増やす必要がある。 野菜類は、全体的にみると夏場ということもあってよく満たされていた。特に、緑黄色野菜については十分に摂取されており良好な結果となったが、野菜の収穫量の少ない季節についても摂取するように心がけなければならない。 一日の食塩摂取量は、全体でみると11.1g
と全国平均値をやや下回っているものの、厚生省の推奨値である「10g
以下」よりやや高く、また個人差も大きかったので、成人病との関連からも栄養指導の必要がうかがわれた。
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nutrition survey in Tokushima, Tokushima J. Exp. Med.,
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