阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第41号
那賀川町の鳥類

鳥類班(日本野鳥の会・徳島県支部)

             増谷正幸

1.はじめに
 那賀郡那賀川町は、徳島県の東部に位置し、徳島市の南東約16km に位置する。面積19.19平方キロメートル、人口10,374人(1987年)である。東側は海岸線で紀伊水道に面し、南を那賀川が東流し、紀伊水道に注いでいる。北〜北西部は小松島市に、西部は那賀郡羽ノ浦町に接し、南部は那賀川をはさんで阿南市と向かい合っている。ほぼ全域が那賀川の沖積平野で、最高点は海岸砂丘上の17.7m である。水田稲作を主とする農耕地が多いが、近年は国道55号線バイパスの開通や、徳島市に近いことなどから、住宅地の増加が目立つ。
 那賀川町は、沖積平野上の低平地に位置する。本来の自然が残っていれば、水域、湿地、原野的環境を好む野生鳥類が多く生息すると思われる。しかし、大部分の地域が、農耕地、集落、産業活動用地として高度に利用され、農耕地は圃場整備による排水・乾燥化が進み、用水や小川は多くがコンクリート護岸となっている。
 鳥類班は、河川などの水域を中心に生息調査を行った。神社の森の調査も行った。また、日本野鳥の会・徳島県支部が出島海岸一帯で定例探鳥会を行っているので、その記録も参考にした。阿波学会総合学術調査の正式調査期間は、1994年(平成6年)7月下旬〜8月上旬であった。しかし、野生鳥類は1年間を通して、季節変化も調べないと意味がないので、1月から12月にかけて現地調査を実施した。以下にその結果の概要を記す。なお、ハクセキレイの営巣・繁殖が徳島県で初めて確認されたので、併せて報告する。

2.調査結果
 (1)ハクセキレイの営巣・繁殖
 1994年7月2日、那賀川町上福井・南川渕でハクセキレイの営巣・繁殖が発見された。
場所は出島川水門の工事現場で、出島川を掘って打ち込んだ矢板を支える横組の鉄骨のすき間に巣があり、4羽のヒナが見られ、2羽の親鳥が巣内に餌(えさ)を運び給餌(じ)していた。徳島県で初めての営巣・繁殖確認である。付近には、この年生まれの若鳥も2羽見られた。親鳥の形態は2羽とも、亜種ハクセキレイ Motacilla alba lugens であった。
 本種は、元来は北日本で繁殖し、西日本方面へは越冬のため渡来する。徳島県でも10月〜4月の間、平地の水辺や人里・農耕地で普通に見られる。ところが、次第に繁殖地が南下し、近年は和歌山県や愛媛県でも繁殖確認されていた。また、本来中国大陸、朝鮮半島、台湾などに生息・繁殖する別亜種ホオジロハクセキレイ M. a. leucopsis が、九州北部、中国、北陸地方などで1968年以降繁殖確認されるようになり、分布の東方への拡大が見られる。両亜種の間でつがいが形成され、繁殖する例も報告されている。
 本種に似ているものにセグロセキレイがある。これは、世界中で日本にのみ分布する。
近年、ハクセキレイの分布拡大に伴い、セグロセキレイの分布が縮小する傾向にあることが指摘されている。これは、両種間の生存競争というよりは、自然環境の変化に原因があると考えられる。両種とも河川などの水辺を好み、昆虫、クモなどを捕食する。しかし、セグロセキレイが水辺の環境から余り離れて生活しないのに対し、ハクセキレイは乾いた草地、公園、農耕地や土木工事による造成地にも積極的に進出し生息する。近年の両種の分布の変化は、日本列島の自然の改変に対応しているように思われる。開発などにより水辺の自然が失われると、セグロセキレイは生活できなくなる。しかし、ハクセキレイは生活できるので、セグロセキレイが姿を消して空いた空間に入り込み、次第に分布を広げてゆく。今回の発見地も公共土木工事の現場であり、那賀川町自体も、国道バイパスの開通、出島地区のゴルフ場などのリゾート開発、宅地造成、コンクリート護岸による水辺の人工化などで自然の改変が著しい。その意味で、今回の出来事は、自然の消滅や社会の変化を映す鏡のようなものととらえることができ、徳島県初の発見を素直に喜ぶことはできない。

 (2)那賀川
 那賀川は、河口に中州が形成され、岸辺沿いに砂レキの州が帯状に伸び、ヨシ、ツルヨシ、オギ、ガマ類などの高茎草本群落や、ヤナギ類、オニグルミ、アキニレ、エノキなどからなる樹林が散在する。一方、堤防はコンクリートブロックの所が多く、現在草地の所も順次コンクリートブロックに置き換わりつつある。河川敷は運動場などに整備されている所が多い。そこで、今回の調査では、河川敷について、草本や樹木に覆われ岸辺が自然状態に近い所と、グラウンド状に整備された所について、それぞれ区画を定めて鳥類のカウントを行い、両者の間の鳥類相の違いを比較してみた。また、他の部分についてもできる限り調査した。
 1 カウント調査
 調査区画は、自然状態に近い所が、那賀川北岸の大京原橋から西へ羽ノ浦町との境界付近までの河川敷で、面積約39,600平方メートル。およそ東半分がオギなどの高茎草本群落を主とし、アレチハナガサ、クズ、ノイバラなどの群落を伴う。西半分はオギ、ツルヨシなどの高茎草本群落に、ヤナギ類、オニグルミ、アキニレ、エノキなどの落葉広葉樹を交じえる。グラウンド状に整備された所は、同じく那賀川北岸の大京原橋から東へ約900m 地点までの河川敷で、面積約34,200平方メートル。ゲートボール場などのグラウンドや芝生の公園状となっている。いずれの区画にも、堤防土手の斜面と、河原の砂レキ地や流れの部分は含めなかった。調査区画内で確認し得た鳥の種類と個体数をすべて記録した。結果を50,000平方メートル(5ha)あたりに換算したものを表1、2に示す。この面積は、前年までのライン・センサスによる調査結果を示す際の基準面積に合わせたものである。


 両者を比較してみると、鳥類の種類と個体数に歴然とした差があるのがわかる。後者(グラウンド・公園状に整備された所)は、このような単調な環境でも生息できる少数の種類で占められている。それも、その生活の一部を負う程度にしか利用しない種類が多い。コチドリは、河原の砂レキ地や造成地で営巣する。この区両内は人の出入りが多いため営巣は困難である。すぐ南の河原の砂レキ地が主要な生息地となっていて、そこから餌探し、増水時の避難などのため一時飛来するのであろう。ヒバリは、丈の短い草地を好むので、このような環境にも生息できる。オオヨシキリは、ヨシ群落と密接に結びついた種類である。すぐ南の河原にややまとまったツルヨシ群落があり、そこで繁殖期を通して姿、さえずり声が確認された。そこから餌探し、巣材集めなどのため一時飛来するのであろう。ムクドリとドバトは、すぐ西の大京原橋の建造物のすき間で営巣・繁殖する。ハシボソガラスは、芝生地に下りて採餌したり休息している。冬鳥として記録されたのは、タヒバリ、ジョウビタキ、ツグミの3種だけであった。
 それに比べると、前者(自然状態に近い所)は多種多様な鳥類が記録された。草原性の鳥の代表種であるセッカが多く記録された。サギ類、カルガモ、タシギ、カワセミ、キセキレイ、セグロセキレイなど水系を好む種類が多い。これは、この区画の西方と本流の水域との間が、コンクリート護岸などで遮断されずにつながっているからである。ヤマシギ、ルリビタキ、メジロ、シメなど、森林性の環境を好む種類も記録された。ツバメやアマツバメ類が区画内を飛び回っていたが、これはこの地域の生物生産量が多く、餌となる飛ぶ虫が容易に得られることの証拠となろう。春の渡りの季節には、ノゴマ、シマセンニュウなど希少種も記録された。ただ、オオヨシキリは、5、6月の繁殖最盛期に記録されなかった。当区画は、オギ群落が広くみられ、高さは2m 前後に達する。しかし刈り取りが行われている所がある。ヨシ群落は存在せず、西端部に一部ツルヨシ群落がある。オオヨシキリにとって、オギは営巣に何らかの支障があるのか、刈り取りなど人為による撹(かく)乱を嫌っているのか、今後の興味深い研究課題である。
 2 全体的な鳥類相
 那賀川町域に含まれる那賀川について、十分とはいえないものの可能な限り調査したところ、67種の鳥類が記録された。上記のカウント調査以外で記録された種類は、カイツブリ、カンムリカイツブリ、カワウ、チュウサギ、マガモ、コガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ミサゴ、トビ、ハイタカ、ハヤブサ、キジ、イカルチドリ、シロチドリ、ハマシギ、アオアシシギ、クサシギ、キアシシギ、イソシギ、チュウシャクシギ、ユリカモメ、セグロカモメ、カモメ、ウミネコ、コアジサシ、アマツバメ、オオジュリンであった。水辺の環境を好む、かなり多種多様な鳥類が生息する。しかし、河口の中州は、吉野川河口干潟に比べると規模が小さいためか、シギ・チドリ類の種類・数は少ない。河川敷は、グラウンド整備や堤防のコンクリートブロック化などのため、入江状の止水域、ヨシ・ツルヨシ群落や原野的環境といった、多くの野生生物にとっての大切な生活の場が次第に消滅し、生息状況は悪化しつつある。コアジサシの営巣地は見つからなかった。


 (3)水辺・湿地の鳥類
 カイツブリ科、ウ科、サギ科、ガンカモ科、ツル科、クイナ科、タマシギ科、チドリ科、シギ料、カモメ科、カワセミ科に属する鳥類は、水辺や湿地を好み、水質の汚染、岸辺のコンクリート護岸化、ヨシ、ガマ、マコモなど湿地性草本群落の消失などが起きると生息できなくなる種類が多い。これらのうち、繁殖している可能性があり、数が少なく確認の困難ないくつかの種類について述べる。
 1  ヒクイナ
 全長約22.5cm。主として夏鳥として渡来し、湖沼や流れのゆるやかな河川の岸辺の湿地や草むら、水田地帯に生息し、繁殖期に夕刻から早朝にかけて、コッコッコッ………と連続的に、次第にテンポを速めてさえずる。巣は、草むらの地上やイネ科草本の株間などに造る。水辺の小動物やイネ科草本の種子などを食べる。敷地〜色ケ島、中島、芳崎(ほうささ)でさえずり声が確認された。
 2 タマシギ
全長約23.5cm。ほぼ留鳥として、湿田、休耕田、草むら、ヨシ原など湿地を含む水田地帯に生息する。繁殖期に、主に夜間、コーコーコーとかなり大きな声でさえずる。他の多くの鳥類と異なり、さえずるのはメスで、メスは次々と複数のオスとつがいになり産卵して回る。抱卵・育雛(すう)はオスのみが行う。巣は、草むらの地上やイネ科草本の株のくぼみなどに造る。水辺の小動物やイネ科草本の種子などを食べる。中島、上福井でさえずり声が確認された。
 3 ヨシゴイ
 全長約36.5cm、小型のサギ。主として夏鳥として渡来する。水辺の湿地、特にヨシなど高茎草本群落を好む。常にヨシ原の中などに潜み姿を見つけにくいが、夕刻、ヨシ原の上すれすれに飛んで移動するのを見ることがある。繁殖期に、主に夜間、オーオーオーと奇妙な声で連続してさえずる。魚、カエルや水辺の小動物を捕食する。人間など外敵の存在に気がつくと、直立し嘴(くちばし)を上に伸ばしてじっとしている。風などでヨシがそよぐと、それに合わせて自分も体を揺らす。周囲の環境にとけ込んで非常にみつけづらくなる擬態行動である。ヨシやマコモの地上または水面から、数十cm 〜1m くらいの高さの所に、何本も茎を合わせ、葉や茎を束ねて皿型の巣を造る。
 那賀川町では、10年程前までは各地で生息が確認されていた。那賀川をはさんだ対岸の阿南市・辰巳地区では、広大な工場立地用埋め立て地が放置されていたため、ヨシ原となり、1984年に本種の営巣・繁殖が確認された。しかし、その後の再埋め立てにより、ヨシ原は消滅した。今回の調査では、繁殖期に生息の確認はされなかった。開発、土木工事、埋め立て、コンクリート護岸、圃場整備などによる、ヨシ原を含む広い湿地の減少、消滅により、本種は近い将来姿を消す恐れがある。


 (4)出島湿原
 通称「出島湿原」は、出島川河口部の西北西方の海岸線を、農林水産省補助事業・徳島県営海岸保全施設整備事業として、全長2,312m にわたって、従来の海岸線の沖に新たに堤防を築き、締め切った所が湿地化したものである。以来、多くの鳥類が記録されるようになり、特にチュウヒ、ハイイロチュウヒの越冬渡来地として知られるようになった。ところが、総合保養地域整備法(リゾート法)施行後のリゾート開発ブームにより、当地域にもゴルフ場を核とする開発計画が具体化した。各種団体が湿原の保全を要望した所、西端部の数ヘクタールを野鳥公園として整備保全し、ゴルフ場との境界付近を共存ゾーンとすることで合意をみた。
 現在、日本野鳥の会・徳島県支部が「出島湿原」と周辺一帯で毎月第2日曜日に定例探鳥会を開催している。1994年1月〜12月の記録によると、記録種は次の76種類であった。
カイツブリ、カワウ、ヨシゴイ、ゴイサギ、アマサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アオサギ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、トビ、オオタカ、ハイタカ、ノスリ、チュウヒ、チョウゲンボウ、クイナ、ヒクイナ、バン、オオバン、コチドリ、ムナグロ、タゲリ、クサシギ、イソシギ、チュウシャクシギ、ヤマシギ、タシギ、セグロカモメ、オオセグロカモメ、カモメ、コアジサシ、キジバト、ジュウイチ、トラフズク、カワセミ、アリスイ、ヒバリ、ツバメ、コシアカツバメ、キセキレイ、ハクセキレイ、タヒバリ、ヒヨドリ、モズ、アカモズ、ジョウビタキ、イソヒヨドリ、シロハラ、ツグミ、ウグイス、オオヨシキリ、メボソムシクイ、センダイムシクイ、セッカ、エゾビタキ、コサメビタキ、サンコウチョウ、ツリスガラ、メジロ、ホオジロ、アオジ、オオジュリン、カワラヒワ、イカル、シメ、スズメ、コムクドリ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト。湿地、水辺を好む種類だけでなく、海岸、草地、人里・農耕地、林縁を好むものや、渡り途中または越冬のため訪れた森林性鳥類など、多種多様である。これは、「出島湿原」の周囲が、海岸、農耕地帯、飛砂防止・防潮機能を持つ保安林など、多様な環境になっているためである。那賀川町の自然〜半自然的環境の縮図であるといえよう。
しかし、ゴルフ場が1995年夏にオープンし、周辺の開発がさらに進むなら、鳥類相がどのように変化するか、注視する必要がある。特に、チュウヒが毎冬定期的に渡来するか否かがポイントとなろう。ヨシゴイが繁殖できるような環境を整える必要もあろう。

 (5)神社の森
 大木・古木のある神社の森には、アオバズクが夏鳥として渡来し、営巣・繁殖する可能性があるので、1994年6月下旬〜8月上旬に可能な限り各地の神社の森を訪れ調査した。
その結果、6月29日にアオバズクのさえずり声と姿が確認された。本種は、昼間は樹木の茂みなどで休み、夕刻〜夜間活動し、昆虫類を捕食したりさえずったりする。樹洞に営巣する。この神社には、ホルトノキ、クスノキ、クヌギなどの大木があり、特にホルトノキが多い。ハシボソガラス、またはハシブトガラスの巣があり、キジバト、ムクドリ、モズなどが見られた。ゴイサギ、コサギは樹木の茂みをねぐらや休息所に利用している。秋冬期には、ヒヨドリ、メジロ、シメなどが生息し、11月19日にはキクイタダキが見られた。シメは、液果性の木の実の、果肉は食べずに捨て、中の種子を丈夫な太い嘴で割って食べる。キクイタダキは山地の森林性で、平野の真ん中の樹林に現れるのは珍しい。平地林の存在の重要性を示す事例であろう。

 (6)その他
 ナベヅルが、1994年11月8日に1羽、9日に4羽、芳崎の農耕地帯で発見された(宮本勇氏の記録)。本種はユーラシア大陸北部の広大な湿原で繁殖し、中国南部、朝鮮半島、日本列島南西部などで越冬する。魚類、両生類、昆虫などの小動物を捕食するほか、植物質のものも食べる。日本の越冬地は鹿児島県出水(いずみ)平野のものが有名で、給餌しているためか、最近は1万羽近くにも達し、本種のほとんどすべてがここに集まって越冬するようになっている傾向が強まりつつあると言われ、中国の急速な経済発展による自然環境の破壊が、その傾向をさらに強めるのではないかと指摘されている。国内の他の越冬地は、山口県熊毛町、高知県西南部などがあるが、いずれも個体数はごく少ない。1か所に大きな群れが偏在すると、事故や災害が起こったり、伝染病が発生したりすると、急激に個体数が減少し、絶滅への引き金となる。そのため、越冬地を分散させる必要性が叫ばれているが、実情は困難である。その原因は、どの動物でもそうであろうが、餌が得やすいなど生活条件の良い所に一旦住みついてしまったものを分散させるのは困難であることと、日本国内のどこの田園地帯でも、給餌などに頼らずに、自然状態で一冬過ごせるような湿地・原野的環境がほとんど失われてしまったことである。徳島県でも時々渡来しており、今回の記録も貴重であるが、いずれの場所も恒久的な越冬地となり得ていない。
 敷地と向原(色ケ島)の境界付近の敷島川から、北方へ小川が枝分かれして流れている。敷島川は両岸ともコンクリート護岸だが、この川は国道55号線バイパスと交わる(たぶのせ橋)付近を除けばコンクリート護岸でなく、ヨシ群落もあり自然の面影をとどめている。
この水域周辺では、カイツブリ、バン、ヒクイナ、カルガモ、オオヨシキリ、ゴイサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アオサギ、タシギ、などが生息する。特に、たぶのせ橋の北方(江野島)の川幅が広がり、マコモ群落に覆われ、水面にヒシが密生する幅広い水域では、3月6日に全長約60cm のナマズやコイ、フナを網ですくっている人がいたり、7月27日にはコオイムシが見られ、6月4日に長さ約210cm のヘビの脱皮殻を見つけた。付近の水田にはカブトエビが多数見られた。自然状態に近い水辺の生物相がいかに豊かであるかを示すものであろう。ただ、8月5日にマコモの株にジャンボタニシの卵塊が見られた。これは外来種で、稲に被害を及ぼすということで農家から嫌われている。経済活動が活発になり、外部との交流が盛んになるにつれて、外来種も侵入し易くなるわけで、自然の改変・人工化がそれだけ進行している証拠である。たぶのせ橋の南方には、造成地状の区画があり、上の山が築かれ、そこから赤茶色の水が流れ出している。しかししばらく流れてヨシ群落の中を通ると水はかなり澄んできている。また、バイパスを通る車の騒音は、ヨシ群落をはさむと非常に静かになる。このように、ヨシなど湿性の高茎草本群落は、環境を浄化し、付近に住む人々にも恩恵を与えているのである。
 なお、6月29日に熊氏(くもうじ)(大京原)の宮神社周辺の水田と、7月21日に下ノ川〜南川渕(上福井)の水田で、夕刻〜夜間に、アマガエル、トノサマガエル、ツチガエルと共にヌマガエルの鳴き声が聞かれ、姿も見られた。8月3日に、今津浦の海岸沿いの樹林でヒグラシの鳴き声が聞かれた。参考までに記しておく。

3.まとめ
 今回の調査の結果をまとめると、およそ以下の通りである。
1 ハクセキレイの営巣・繁殖が徳島県で初めて確認・記録された。
2 那賀川の、自然状態に近いような所では、水辺、湿地、原野、森林性の多種多様な鳥類が生息するが、運動公園などに整備された所は鳥類相は貧弱である。
3 河川、用水、池沼、海岸、農耕地帯やその周辺で、余り人工化されず自然に近い植被のある所では、多種多様な鳥類が生息する。
4 大木・古木のある神社の森には、アオバズクが夏鳥として渡来する。
5 各種渡り鳥の渡り経路、中継地、休息地として、重要な地理的位置を占めている。

 現在の那賀川町の自然環境は、那賀川下流域の沖積平野本来の自然の名残りを部分的には留めているものの、それが消滅するか否かの瀬戸際にあるといえる。ハクセキレイの繁殖確認や、ヨシゴイが繁殖期に見つからなかったことは、自然環境の悪化を示す象徴的な事例と受け止めるべきである。今後、那賀川町がどのような方向に進むのか、野生の生き物が生息できる余地を確保し、自然と共存できる範囲内での生活の向上を工夫し模索するのか、それとも地域の実情を考慮しない、画一的な人工的環境を増やし、多くの野生生物を消滅させる方向に進むのか、町民の方々、議会、行政担当者、関係各機関の考え方一つにかかっている。そのことを考える上で、この調査報告が少しでも参考になることを願うものである。
[調査参加・協力者氏名]笠井 正、曽良寛武、東條秀徳、増谷正幸、宮本 勇、八巻吉子(五十音順)
4.那賀川町鳥類目録
 1994年1月〜12月の間に記録された種名と、具体的な観察例を掲げる。具体的な観察例は紙幅の制約上最小限に止め、本文、図、表などで参照できるものは極力省略し、特に重要な種類や行動に限定して記載した(観察年月日、場所・地名・字名、地図メッシュ番号、固体数、環境、行動、記録者名)。那賀川町はほぼ全域が低平地であるので、海抜高度の記載は省略する。地図メッシュ番号は、2万5千分の1地形図「阿波富岡」を縦・横それぞれ10等分し(A〜H、1〜7で表す)、さらに縦・横それぞれ2等分してできたメッシュ(a〜dで表す)を単位として記録地を示している(図1参照)。種名の後の◎印は、那賀川町での繁殖が確認されたか、あるいは確実な種類を、○印は繁殖可能性がある種類を、△は、今回の調査だけでは何とも言えない種類であることを示す。

  カイツブリ目 PODICIPEDIFORMES
 カイツブリ科 PODICIPITIDAE
1.カイツブリ Podiceps ruficollis poggei ◎
 1994.6.4 敷地〜色ケ島[D3c] 2 ヨシの茂る小川でさえずり声 〈増谷〉
 1994.6.5 上福井[F4b] 1 出島川でさえずる 〈増谷〉
 1994.8.5 江野島[C3b〜D3a] 2 川幅の広がった水域。潜って水草をくわえて来て、マコモ群落のきわの水面上に積み上げる(造巣行動) 〈増谷〉
2.カンムリカイツブリ Podiceps cristatus cristatus
 1994.4.1 那賀川[G6a] 1夏羽 河口部の水面上に浮かぶ 〈増谷〉
  ミズナギドリ目 PROCELLARIIFORMES
 ミズナギドリ科 PROCELLARIIDAE
3.オオミズナギドリ Calonectris leucomelas
 1994.7.29[D4c→b→D5d] 1 海上を飛ぶ〈増谷〉
  ペリカン目 PELECANIFORMES
 ウ科 PHALACROCORACIDAE
4.カワウ Phalacrocorax carbo hanedae
 北西方約7km の小松島市で営巣・繁殖する。企業の立入禁止区域内で、詳細は不明。
 1994.6.25 那賀川[G3b] 11 砂地の州の上 〈増谷〉
 1994.7.30[E6d] 2 海に潜って餌取り 〈東條〉
 1994.10.2 那賀川[G2ab] 80± 飛び立った後、流れに着水し、整然と列を作って泳ぎ、州に上陸する〈増谷〉
  コウノトリ目 CICONIIFORMES
 サギ科 ARDEIDAE
5.ヨシゴイ Ixobrychus sinensis sinensis ○
 1994.9.11 出島湿原[E5c] 1 水域の岸辺に 〈出島探鳥会〉
6.ゴイサギ Nycticorax nycticorax nycticorax ◎
 1994.5.8 上福井[F5c] 2+ 小丘の林に他のサギとコロニー形成 〈出島探鳥会〉
 1994.7.30 那賀川[G2b] 30± 池のほとりのヤナギで休む 〈東條〉
7.アマサギ Bubulcus ibis coromandus
 1994.6.4 江野島[C3a〜b] 8 水田の中と畔(あぜ)を歩き採餌 〈増谷〉
 1994.9.11 江野島[D3a] 25± 稲刈りの終わった後の田で、動いている耕運機の周辺に集まる 〈増谷〉
8.ダイサギ Egretta alba ◎
 1994.5.8 上福井[F5c] 3+ 小丘の林に他のサギとコロニー形成〈出島探鳥会〉
 1994.10.1 那賀川[G3bd、G2ab] 計86 瀬、砂レキ地、ヨシ原のきわの水域などに。瀬で魚を捕らえるものあり 〈増谷〉
9.チュウサギ Egretta intermedia intermedia △
 1994.6.5 工地(たかむじ)[F4ac] 4 ダイサギ6、コサギ5、アオサギ1と共に水田に 〈増谷〉
 1994.10.7 芳崎[E4a] 1冬羽 刈り取り後の水田で採餌 〈笠井〉
10.コサギ Egretta garzetta garzetta ◎
 1994.2.27 那賀川[G3b] 18 ヨシや樹木の生える中州の南面で休む 〈増谷〉
 1994.5.8 上福井[F5c] 4+ 小丘の林に他のサギとコロニー形成 〈出島探鳥会〉
11.アオサギ Ardea cinerea jouyi ◎
 1994.2.27 那賀川[G3b] 20+ ヨシや樹木の生える中州の南面で休む 〈増谷〉
 1994.5.8 上福井[F5c] 3+ 小丘の林に他のサギとコロニー形成 〈出島探鳥会〉
 1994.10.1 那賀川[G2ab、G3b] 計76 瀬で魚を捕らえたり、砂レキ地で休んだりする 〈増谷〉
  ガンカモ目 ANSERIFORMES
 ガンカモ科 ANATIDAE
12.マガモ Anas platyrhynchos platyrhynchos
 1994.11.11 那賀川[G6a] 12 河口の中州 〈宮本、増谷〉
13.カルガモ Anas poecilorhyncha zonorhyncha ◎
 1994.6.4 江野島[C3b〜D3a] 3 マコモの茂る幅広い水域に 〈増谷〉
 1994.7.2 出島川(上福井〜中島)[F5b] 1成鳥・3+幼鳥 泳いでヨシの茂みに入る 〈増谷〉
14.コガモ Anas crecca crecca
 1994.3.20 那賀川[G3d] 3 河原の水辺 〈増谷〉
15.オカヨシガモ Anas strepera strepera
 1994.11.11 那賀川[G6a] 150± 河口中州のヨシ群落沿いに 〈宮本、増谷〉
16.ヒドリガモ Anas penelope
 1994.4.1 那賀川[G6abd] 計1019± 河口中州、ヨシ原、岸辺の水上 〈増谷〉
17.オナガガモ Anas acuta acuta
 1994.4.1 那賀川[G6a] 2 河口の中州 〈増谷〉
18.ホシハジロ Aythya ferina
 1994.10.30 出島湿原[E5c] 2♂ 池に 〈東條〉
  ワシタカ目 FALCONIFORMES
 ワシタカ科 ACCIPITRIDAE
19.ミサゴ Pandion haliaetus haliaetus
 1994.2.19 [E6b] 1 梅上を飛ぶ 〈増谷〉
 1994.10.15 那賀川[G5b] 1 河口の方へ飛ぶ 〈東條〉
20.トビ Milvus migrans lineatus ◎
 1994.5.8 工地[E5d] 1巣・1成鳥 マツに営巣 〈出島探鳥会〉
21.オオタカ Accipiter gentilis
22.ツミ Accipiter gularis gularis
 1994.10.30 出島湿原[E5d] 1若鳥 上空帆翔(はんしょう)後、西へ飛去 〈東條〉
23.ハイタカ Accipiter nisus nisosimilis
 1994.10.30 大野(中島)[G5d] 1成鳥 那賀川から北へ低空飛行 〈束條〉
24.ノスリ Buteo buteo japonicus
25.チュウヒ Circus aeruginosus spilonotus
 1994.3.13 出島湿原[E5c] 1 湿原とゴルフ場造成地の上空帆翔 〈出島探鳥会〉
ハヤブサ科 FALCONIDAE
26.ハヤブサ Falco peregrinus
 1994.8.5 那賀川[G3d→G2b] 1 南の阿南市側へ飛去 〈増谷〉
  コチョウゲンボウ Falco columbarius insignis
 1994.11.8 出島湿原[E5c] 1♀ 堤防の柵(さく)にとまる 〈笠井〉
28.チョウゲンボウ Falco tinnunculus interstinctus
 1994.10.9 中島[F5b] 1 電線から地上に飛び下り何かを捕らえる 〈東條〉
  キジ目 GALLIFORMES
 キジ科 PHASIANIDAE
29.キジ Phasianus colchicus ◎
 1994.6.12 出島湿原[E5c] 1♂ 粗草地の斜面で餌拾い 〈束條〉
  ツル目 GRUIFORMES
 ツル科 GRUIDAE
30.ナベヅル Grus monacha
 1994.11.8 芳崎[E4a] 1 農耕地帯に下りる。11月9日に4羽確認 〈宮本〉
 クイナ科 RALLIDAE
31.クイナ Rallus aquaticus indicus
32.ヒクイナ Porzana fusca erythrothorax ◎
 1994.6.4 敷地〜向原(色ケ島)[D3c] 1 ヨシの茂る湿地状の水域でさえずり声 〈増谷〉
 1994.6.5 中島[F5b] 1 出島川南方のヨシの茂る湿地でさえずり声 〈東條〉
 1994.8.3 芳崎[E4a] 1 21時頃、水田地帯でさえずり声 〈増谷〉
33.バン Gallinula chloropus indica ◎
 1994.7.27 江野島[D3a] 1 マコモの茂る湿地状の水域 〈曽良、増谷〉
 1994.8.28 江野島[C3b] 1若鳥 川幅広いマコモの茂る水域 〈増谷〉
34.オオバン Fulica atra atra
 1994.10.30 出島湿原[E5c] 1成鳥 湿地状の水域 〈東條〉
   チドリ目 CHARADRIIFORMES
 タマシギ科 ROSTRATULIDAE
35.タマシギ Rostratula benghalensis benghalensis ◎
 1994.7.21 中島[F5b〜G5a] 1 夕暮れ後、湿田地帯でさえずり声 〈増谷〉
 1994.7.21 上福井[F5b] 1 日の入り後、水田地帯でさえずり声 〈増谷〉
 チドリ科 CHARADRIIDAE
36.コチドリ Charadrius dubius curonicus ◎
37.イカルチドリ Charadrius placidus japonicus ○
 1994.7.30 那賀川[G2b、G3c] 3 河原の砂レキ地 〈東條〉
38.シロチドリ Charadrius alexandrinus nihonensis ◎
 1994.4.3 那賀川[G2cd] 2 河原で、頭を低くし尾羽の白い部分を目立たせて歩く(擬傷行動)〈増谷〉
 1994.6.5 出島川[F5b] 4 飛んで来て岸辺の泥地に下りる 〈増谷〉
 1994.7.30 [E5c] 2 海岸の波打際に 〈東條〉
39.ムナグロ Pluvialis dominica fulva
 1994.8.21 上福井[F5d] 3 稲を刈った後の田に下りる 〈東條〉
40.タゲリ Vanellus vanellus
 シギ科 SCOLOPACIDAE
41.ハマシギ Calidris alpina sakhalina
 1994.2.19 [E5c] 3 海岸の波打際で嘴を砂に突っ込みながら歩き回る 〈増谷〉
 1994.4.1 那賀川[G6a] 130± 河口の中州 〈増谷〉
 1994.9.11 上福井[F5a] 2 池の水際で採餌 〈東條〉
42.アオアシシギ Tringa nebularia
 1994.9.2 出島湿原[E5c] 1 飛んで来て池に下りる 〈増谷〉
 1994.10.1 那賀川[G2a] 1 飛んで来て河原の水ぎわに下りる 〈増谷〉
43.クサシギ Tringa ochropus
 1994.7.30 那賀川[G3c] 1 河川敷沿いの石の原に 〈東條〉
 1994.8.25 上福井[F6c] 3 コンクリート3面張り水路に 〈東條〉
44.キアシシギ Tringa brevipes
 1994.5.22 那賀川[G3bd] 1 河原の水ぎわに 〈増谷〉
 1994.7.29 [D4b] 1 海岸沿いに積んだテトラポットの上にとまる 〈増谷〉
45.イソシギ Tringa hypoleucos ○
 1994.7.2 上福井〜中島[F5b] 3+(幼鳥らしきものを含む) 出島川沿いの泥地や、水門工事現場の泥地に 〈増谷〉
 1994.7.3 上福井[F5d] 2(幼鳥らしき) 出島川北岸沿いの水田で採餌 〈増谷〉
46.ソリハシシギ Xenus cinereus
 1994.8.14 芳崎[E4a] 1 旧堤の上で採餌 〈笠井〉
 1994.9.3 上福井[F5a] 2 池の水際で採餌 〈東條〉
47.チュウシャクシギ Numenius phaeopus variegatus
 1994.5.22 那賀川[G3d] 1 河原の水ぎわ 〈増谷〉
48.ヤマシギ Scolopax rusticola
49.タシギ Gallinago gallinago gallinago
 カモメ科 LARIDAE
50.ユリカモメ Larus ridibundus sibiricus
51.セグロカモメ Larus argentatus vegae
52.オオセグロカモメ Larus schistisagus
53.カモメ Larus canus kamtschatschensis
 1994.4.3 那賀川[G3d] カモメ類総数2400±(ユリカモメ40+、セグロカモメ75+、カモメ2000±、ウミネコ300±) 河原の砂レキ地や水辺で 〈増谷〉
54.ウミネコ Larus crassirostris
 1994.7.30 那賀川[G7c] 100+ 河口の中州に 〈東條〉
 1994.11.11 那賀川[G6a] カモメ類総数10000+(ユリカモメ1000±、セグロカモメ80+、他はカモメ、ウミネコ。ウミネコの方が圧倒的に多いと思われる)河口の中州で休む 〈宮本、増谷〉
55.コアジサシ Sterna abifrons sinensis
 今回、那賀川で営巣・繁殖地は見つからなかった。以前は繁殖していた。
 1994.5.22 那賀川[G3d] 3 河原の砂レキ地に下りている 〈増谷〉
   ハト目 COLUMBIFORMES
 ハト科 COLUMBIDAE
56.キジバト Streptopelia orientalis orientalis ◎
   ホトトギス目 CUCULIFORMES
 ホトトギス科 CUCULIDAE
57.ジュウイチ Cuculus fugax hyperythrus
   フクロウ目 STRIGIFORMES
 フクロウ科 STRIGIDAE
58.トラフズク Asio otus otus
 1994.3.13 工地[E5d] 2 樹林の中の竹ヤブで休む 〈出島探鳥会〉
59.アオバズク Ninox scutulata japonica ◎
 1994.6.29  1 20時過ぎ、電線や近くの人家のテレビアンテナにとまりさえずる。近くでもう1羽さえずり声が聞かれる 〈増谷〉
   アマツバメ目 APODIFORMES
 アマツバメ科 APODIDAE
60.アマツバメ Apus pacificus
   ブッポウソウ目 CORACIIF0RMES
 カワセミ科 ALCEDINIDAE
61.カワセミ Alcedo atthis bengalensis ○
 1994.11.19 中島〔F5b〜G5a〕 1 ヨシの茂る小川に 〈増谷〉
   キツツキ目 PICIFORMES
 キツツキ科 PICIDAE
62.アリスイ Jynx torquilla japonica
 1994.10.9 工地[E5d] 2 粗林の枯れたマツにとまる 〈出島探鳥会〉
   スズメ目 PASSERIFORMES
 ヒバリ科 ALAUDIDAE
63.ヒバリ Alauda arvensis ◎
 ツバメ科 HIRUNDINIDAE
64.ショウドウツバメ Riparia riparia ijimae
 1994.10.16 出島湿原[E5c] 3 上空飛翔 〈東條〉
65.ツバメ Hirundo rustica gutturalis ◎
 1994.6.29 那賀川[G2b] 日の入り前後、多数がツルヨシ群落上を飛び回る。ねぐらとして利用していると思われる 〈増谷〉
66.コシアカツバメ Hirundo daurica japonica
 セキレイ科 MOTACILLIDAE
67.キセキレイ Motacilla cinerea robusta ○
68.ハクセキレイ Motacilla alba lugens ◎
 1994.6.25 那賀川[G6d] 2若鳥 阿南市との境界付近の砂地、草地や樋(ひ)門工事現場などで採餌 〈増谷〉
 1994.7.2 南川渕(上福井)[F5b] 1巣・4ヒナ・1♀・1♂ 出島川水門工事現場の、打ち込んだ矢板を支える横組みの鉄骨のすき間に営巣。親鳥はヒナに給餌する。7月3日には、ヒナは巣立ちしていた。付近に別の若鳥が2羽いて、親鳥に追い払われたりする。7月21日、夕刻に、1♀・1♂・3幼鳥・2若鳥を確認。若鳥は自力で採餌。日の入り前、2成鳥は南方へ飛び去り、少しして3幼鳥も南方へ飛び去る。2若鳥は残って採餌する(18時53分時点で) 〈増谷〉
 1994.9.2 [E6bd〜F6a] 計5 海岸波打際の藻場(もば)、堤防下のテトラポットや、造成中のゴルフ場などに 〈増谷〉
 1994.9.11 苅屋[F4c] 1若鳥 町立図書館の池に下りる 〈増谷〉
69.セグロセキレイ Motacilla grandis ◎
 1994.6.24 那賀川[G2c] 1幼鳥 河原の水辺に 〈増谷〉
70.タヒバリ Anthus spinoletta japonicus
 ヒヨドリ科 PYCNONOTIDAE
71.ヒヨドリ Hypsipetes amaurotis ○
 1994.7.3 上福井[F5a] 1 樹林のある田園地帯で盛んに鳴く 〈増谷〉
 1994.10.1 [G3ab→cd] 1000±(一群) 那賀川上空を南北に細長く広がって東方から西方へ(渡り) 〈増谷〉
 モズ科 LANIIDAE
72.モズ Lanius bucephalus bucephalus ◎
73.アカモズ Lanius cristatus
 1994.5.8 出島湿原[E5b] 1♂ ヤブ状地やゴルフ場造成地に 〈東條〉
 ヒタキ科 MUSCICAPIDAE
 (ツグミ亜科 TURDINAE)
74.ノゴマ Erithacus calliope
 1994.5.20 那賀川[G2c] 1 河川敷の樹林でさえずり声 〈増谷〉
75.ルリビタキ Tarsiger cyanurus cyanurus
 1994.11.20 出島湿原[E5c] 1♀型 グミの木陰に入ろうとするが、ジョウビタキに追い払われる 〈増谷〉
 1994.12.24 那賀川[G2c] 1♂ 河川敷の樹林のヤブに潜む 〈増谷〉
76.ジョウビタキ Phoenicurus auroreus auroreus
77.ノビタキ Saxicola torquata stejnegeri
78.イソヒヨドリ Monticola solitarius philippensis
 1994.2.19 [F6a] 1 海岸、離岸堤のテトラポットにとまる 〈増谷〉
 1994.8.14 出島湿原[E5b] 1 飛んで来て木にとまる 〈笠井〉
79.シロハラ Turdus pallidus
 1994.2.19 工地[E5d] 1 庭園に 〈増谷〉
80.ツグミ Turdus naumanni eunomus
 (ウグイス亜科 SYLVIINAE)
81.ウグイス Cettia diphone △
82.シマセンニュウ Locustella ochotensis
 1994.5.20 那賀川[G2c] 1 河川敷の低木材でさえずり声 〈増谷〉
83.オオヨシキリ Acrocephalus arundinaceus orientalis ◎
 1994.5.22 那賀川[G3ac] 計4 ツルヨシ群落で、前年の穂や、ヤナギ低木の枝などにとまりさえずる 〈増谷〉
 1994.6.4 敷地〜向原(色ケ島)[D3d] 1 敷島川から北へ枝分かれした小川に沿ったヨシなど高茎草本群落で、前年の枯れ葉などを集めて回る(造巣行動) 〈増谷〉
 1994.6.5 中島[F5b] 5 出島川右岸内陸側のヨシ群落で 〈東條〉
 1994.6.5 上福井[F4b〜F5d] 4 出島川に沿ったヨシ群落で 〈増谷〉
 1994.7.2 南川渕(上福井)[F5b] 2 出島川左岸のヨシ群落で。一羽はさえずり、他の1羽は餌をくわえてヨシの茂みへ入る 〈増谷〉
84.メボソムシクイ Phylloscopus borealis
 1994.5.8 工地[E5d] 2 樹林で 〈出島探鳥会〉
85.センダイムシクイ Phylloscopus occipitalis coronatus
 1994.5.8 工地[E5d] 1 樹林でさえずる 〈出島探鳥会〉
86.キクイタダキ Regulus regulus japonensis
 1994.11.19 三栗[G3c] 1 八幡神社のサクラを枝移りし何かをついばむ 〈増谷〉
87.セッカ Cisticola juncidis brunniceps ◎
 1994.5.20 那賀川[G2a] 1巣・6卵 河川敷の草むら、地上約40cmの高さの所にイネ科草本を何束か束ねて作る。中にチガヤの穂をいっぱい入れてある 〈増谷〉
 1994.6.5 西ノ口(上福井)[F4d] 1 ガマの穂の綿毛状のものをくわえてガマなどの茂みへ入る(造巣中) 〈増谷〉
 (ヒタキ亜科 MUSCICAPINAE)
88.エゾビタキ Muscicapa griseisticta
89.コサメビタキ Muscicapa latirostris
 1994.5.8 工地[E5d] 2 樹林の枝にとまる 〈出島探鳥会〉
 (カササギヒタキ亜科 MONARCHINAE)
90.サンコウチョウ Terpsiphone atrocaudata atrocaudata
 1994.5.8 工地[E5d] 1♀型 樹林の枝にとまる 〈出島探鳥会〉
 ツリスガラ科 REMIZIDAE
91.ツリスガラ Remiz pendulinus consobrinus
 1994.2.19 下ノ川(上福井)〜北中島[F5d] 18 出島川のヨシの茎にとまる 〈増谷〉
 1994.3.6 芳崎〜工地[E4d] 17± 苅屋川沿いのヨシ群落に 〈増谷〉
 メジロ科 ZOSTEROPIDAE
92.メジロ Zosterops japonica
 ホオジロ科 EMBERIZIDAE
93.ホオジロ Emberiza cioides ciopsis ◎
 1994.12.24 那賀川[G2a] 1♂ オギの穂についた種子をついばむ 〈増谷〉
 1994.12.24 那賀川[G2c] 2♂ ツルヨシの穂についた種子をついばむ 〈増谷〉
94.ホオアカ Emberiza fucata fucata
 1994.4.1 那賀川[G2c] 1 河川敷の丈の高い草の茎にとまる 〈増谷〉
 1994.11.19 中島[F5b] 2 出島川右岸ヨシ群落のヘりの枯れマツに 〈増谷〉
95.アオジ Emberiza spodocephala
96.オオジュリン Emberiza schoeniclus pyrrhulina
 冬鳥。ヨシの茎を嘴で剥がし、中に潜む昆虫の幼虫を捕食する。
 1994.2.19 下ノ川(上福井)〜北中島[F5d] 5 出島川沿いのヨシ群落 〈増谷〉
 1994.2.27 那賀川[G5b〜H5a] 6 ヨシの茎にとまる 〈増谷〉
 1994.3.6 芳崎〜工地[E4d] 10+ 苅屋川沿いのヨシに 〈増谷〉
 1994.11.19 中島[F5b] 2 出島川右岸内陸側のヨシ群落に 〈増谷〉
 アトリ科 FRINGILLIDAE
97.カワラヒワ Carduelis sinica ◎
 1994.6.5 中島[F5b] 1 出島川右岸 ガガンボをくわえマツにとまる 〈東條〉
98.イカル Eophona personata personata
99.シメ Coccothraustes coccothraustes japonicus
 1994.11.19 三栗[G3ac] 2 八幡神社のホルトノキの枝にとまる 〈増谷〉
 ハタオリドリ科 PLOCEIDAE
100.スズメ Passer montanus saturatus ◎
 1994.6.29 那賀川[G3d] 19時過ぎて続々と集まって来て、ツルヨシ群落上をすれすれに飛び回る(ねぐら入り) 〈増谷〉
 1994.7.21 中島[F5b] 出島川右岸。19時過ぎて続々と集まって来て、堤防などにとまり、内陸側のヨシなどの群落に人る(ねぐら入り) 〈増谷〉
 ムクドリ科 STURNIDAE
101.コムクドリ Sturnus philippensis
102.ムクドリ Sturnus cineraceus ◎
 1994.5.22 那賀川[G3cd] 4+巣 大京原橋の主として東側の橋桁(げた)のすき間に営巣。親鳥は餌をくわえて巣へ入り、ヒナのフンをくわえてとび去る 〈増谷〉
 カラス科 CORVIDAE
103.ハシボソガラス Corvus corone orientalis ◎
 1994.6.24 那賀川[G2a] 5 一羽がミミズのようなものをくわえて河原に飛んで来ると、他の4羽も次々に飛んで来る。引っ張り合ったりしてちぎれたのを食べる。餌をねだるしぐさをするものあり 〈増谷〉
104.ハシブトガラス Corvus macrorhynchos ○
 (追加)
 スズメ目・ヒタキ科・ツグミ亜科
105.トラツグミ Zoothera dauma
 1995.1.8 色ケ島[D3b] 1 バイパスを横切って東から西へ飛ぶ 〈東條〉
 (野生化種)
106.ドバト カワラバト(Columba livia)を家禽(かきん)化したものの野生化種 ◎
 1994.5.22 那賀川[G3cd] 30+ 大京原橋の主として東側のすき間に営巣 〈増谷〉

参考文献
1)中村一恵 1980 ハクセキレイの本州侵入について 野鳥 通巻第405号 p38〜42 日本野鳥の会
2)日本野鳥の会 1980 鳥類繁殖地図調査1978 第2回自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書(鳥類)全国版
3)高野伸二 1981 日本産鳥類図鑑 東海大学出版会
4)日本野鳥の会徳島県支部目録部1988 徳島県鳥類目録 日本野鳥の会・徳島県支部
5)日本野鳥の会・徳島県支部 1994〜95 野鳥徳島 No.186〜197 日本野鳥の会・徳島県支部報


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