阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第41号
那賀川町の植物相

植物同好会班(徳島県植物同好会)

  木村晴夫・赤澤時之2)・田渕武樹・

  木内和美・木下覚5)・小川誠6)・                  

  小松研一7)・真鍋邦男8)・篠原正義

1.白然環境の概況
 那賀川町は、那賀川の北岸河口に広がる広大な三角州で、那賀川が運んで来た土砂の堆積によつてできた町で、平野は19.19平方キロメートルである。
 北と西は、小松島市、羽ノ浦町、南は那賀川を挟んで阿南市と接し、東は太平洋に面している。
 隣接する富岡(1945〜1970)での年平均気温は15.9℃、年平均降水量は2186mm で、気温は温暖、降水量は那賀川上流の3000mm 余りには及ばないが、県平均よりやや高い。
 那賀川の豊富な水は、広大な平野を縦横に走っている用水路によって水田に供給されている。このように恵まれた環境にあるため、農業は早くから開け、県南の穀倉地帯になっている。

2.植物相の概況
 多く残る社叢(そう)林は、すべて植栽されたものばかりであると考えられ、昔の植物相をうかがうことはできない。
 中島漁港から江野島にかけて、松林はわずかに残っているが、昔の松林を知ることはむずかしい。また海浜植物、湿生植物の宝庫であった出島は、昔の環境を残している所はほとんどなく、当時見られた植物の中で、消滅したものも少なくない。
 那賀川の川床には、特異な環境にしか見られない植物相が定着しているのは興味深い。
 用水路もコンクリートに改修されてから、水草に大きな変化があったと考えられる。また農耕地は肥えているので休耕田、放棄田などの湿地がほとんどないため、水草の種類数は極めて貧弱である。

3.社叢林と民家に見られる植物
 特に農業が中心であった頃は、収穫された農作物を、社寺や先祖にお供えして、1年間の感謝と収穫を祝ったことを物語るように、神社、寺院の数が特に多く残されている。広大な境内を持つ宮神社、石川原の八幡神社などや、水田の中のわずかな面積に残る、工地の祠(ほこら)、中蔵寺、蛭子神社など大小50余がある。それぞれは住民の生活と大きくかかわり合って来た。
 社寺林や人家の垣根、庭園木は風致、防風林として、地形、気候にふさわしい樹種が生活の智恵として植栽されている。防風林としては、高くならないで枝がよく四方に張る、葉が密について、粘りがあり風力に強い、整枝し易いか、しなくとも生育に影響が少ないなどの条件にあった樹種として、イスノキ、ホルトノキ、クロガネモチ、ウバメガシ、イヌマキ、タブノキが中心で、ヤブニッケイ、エノキ、カイヅカイブキ、ヒマラヤスギなどもよく見られる。垣根には、イヌマキが一番多く利用され、他にサザンカ、カナメモチ、コウヨウザンなども植えられている。50余の社寺の中で、主だった社寺林の樹種や太さについて調査した結果は、次のようである。(  )内の数字は胸高幹周である。
1)古津神社
 イヌマキ(1.29m、1.29m、1.21m)、クロガネモチ(0.84m)、ホルトノキ(2.60m)、エノキ(1.43m)、スギ(0.31m ほか23本)、タブノキ(1.05m、1.26m)、その林下には、イヌビワ、ノダフジ、サネカズラ、ハゼノキ、ツタ、ゴヨウアケビ、ヤブツバキ、シュロ、ミゾシダ、オニヤブマオ、ヤブラン、ツボクサ、ヤブカラシ、チヂミザサ、ドクダミ、ニガカシュウ、スズメノヒエ、フキ。
2)宮神社と熊氏集会所
 イスノキ(1.13m、1.96m、2.94m、1.43m、1.58m、1.43m ほか)、タブノキ(2.01m ほか)、ホルトノキ(2.45m、1.74m、3.51m、2.16m、2.54m、3.28 mほか)、クスノキ(3.34m)、クロガネモチ(2.21m、0.82m ほか)、ミミズバイ(1.03m ほか)、イヌマキ(1.77m ほか)、ヤブニッケイ(1.28m)、ムクノキ(1.73m ほか)。宮神社の社叢林(図1)はよく繁茂し、太い樹が多く、神社としての威厳があり、防風林としての役も大きい。
 隣接する大京原の平島上保育所との境界にアケボノスギ Metasequoia glyptostroboides Hu et Cheng(0.91m、0.82m ほか2本)、カンポウフウ Pterocarya stenoptera DC.(0.64m、0.66mほか3本)、フウ Liquidamber formosana Hance(0.91m)などの外来種が植栽されている。


3)三栗八幡神社
 クヌギ(1.92m)、ムクノキ(1.97m、1.67m)、スギ(1.33m)、アキニレ(1.48m)、クスノキ(2.54m)、イヌマキ(1.17m)、ホルトノキ(2.54m、3.35m、2.44m)、ヤブツバキ(0.83m)、バクチノキ(1.07mと1.61m の2幹)。それらの林下にはテイカカズラ、ムクノキ、ヤブツバキ、シオデ、ミズ、ウマノミツバ、ヤブカラシ、ミズヒキ、ヤブラン、ニガカシュウ、タマサンゴ、ミツバ、ホシダ。
 三栗八幡神社前の広場には、ホルトノキ(2.70m、2.59m、2.38m、2.12m、3.92m、2.49m、2.93m、3.34m)、エノキ(2.38m)、クロガネモチ(1.98m)の巨樹が群生しており、三栗神社の防風林となっている。
4)大京原集会所
 クスノキ(3.90m)、イヌマキ(1.64m、1.02m、1.07m、0.80m、1.39m)、ムクノキ(1.14m)。
5)上苅屋の工地の祠
 ムクノキ(1.25m)、エノキ、ヤブニッケイ、ナワシログミ、トベラ、ヤブツバキ、イヌビワ、ネズミモチ、キヅタ。
6)上苅屋の中蔵寺
 クロガネモチ(2.46m、1.92m、1.93m)、イヌマキ(1.29m)。
7)上苅屋の蛭子神社
 クロマツ(2.34m、1.85m)。
8)野神社
 クロマツ(2.23m、1.72m、1.99m)、シラカシ、クスノキ、ヒマラヤスギ、ヤブニッケイ、サカキ、カイヅカイブキ、クロガネモチ、イヌツゲ、イロハモミジ、ケヤキ。
9)芳崎の天満神社、金刀比羅神社
 ホルトノキ(2.17m)、ムクノキ(1.25m)、クロガネモチ(0.70m)、クロマツ(0.70m)、イチョウ(1.10m)、ヤブニッケイ(0.86m)、ヒノキ(0.46m)、スギ(1.17m)、エノキ(0.99m)。
10)今津浦の信行山
 アイアカマツ(1.41m)、クロマツ(1.71m、1.15m ほか8本)、クロガネモチ(1.81m、0.58m、1.21m)、クスノキ(1.17m、1.25m)、アオギリ(0.65m)、イチョウ(1.63m)、フジ(0.79m ほか3本)、タブノキ(1.77m)、イヌマキ(1.13m)。高木層にクロマツの多いのが特徴。
11)照円寺
 ホルトノキ(2.31m、1.65m)、ヤブニッケイ(0.84m、0.61m ほか)、カクレミノ(0.60m)、ヒノキ(1.02m、1.14m)、クロガネモチ(1.55m)、ナギ、シホウチクなどが防風林として植えられ、ヤブニッケイの多い寺である。
12)今津浦の事代主神社
 イチョウ(1.70m)、ホナガイヌビユ、シロザ、ツルナ、イチビ、ノゲシ、エノキグサ、スベリヒユ、チチコグサモドキ、オヒシバ、オオエノコログサ。
13)今津浦の大久寺
 イヌマキ(1.70m)、ホルトノキ(1.97m)、ヤブニッケイ(0.60m)、カクレミノ(0.58m)、エノキ(1.36m)、クロガネモチ(1.27mと1.72m の2幹)、ヒメユズリハ(0.80m)、トベラ。
14)八坂神社
 ムクノキ(1.09m、1.63m)、エノキ(1.63m)、クロマツ(1.56m、1.08m)、ヤブニッケイ(0.84m、0.58m ほか数本)、アキニレ(0.70m)、タブノキ(0.60m)、ネズミモチ(0.44m)。
15)西原天神社
 クヌギ(1.42m)、ハゼノキ(1.07m)、ヤブニッケイ(0.79m)、トゲチシャ、イヌホオズキ、クスドイゲ、クロガネモチ、アオキ、ヒノキ、ムクノキ、ノボロギク。
16)皇子神社
 イヌマキ(1.69m、1.45m、1.47m、1.21m、1.62m ほか)、ホルトノキ(2.45m、3.67m、2.59mほか)、ムクノキ(1.66m、2.04m、1.83m ほか)、アラカシ(0.98m)、クロガネモチ(2.41m)、ヒノキは0.50m前後が20余本、クスノキ。
17)原の原集会所
 ホルトノキ(2.01m、2.32m)、イチョウ(2.20m)、イヌマキ。
18)神応寺
 イチョウ(3.57m)(図2)、スダジイ(3.41m)、ホルトノキ(3.29m)、クロガネモチ(1.63m)、イチイ(0.92m)、ナギ(0.38m)、ヤブニッケイ(1.21m、0.89m、1.04m)。スダジイ、ホルトノキ、イチョウなどの巨樹から寺の歴史の重みが感じられる。


19)石川原の八幡神社
 アキニレ(1.93m、1.29m、1.17m)、ウバメガシ(1.74m)、エノキ(1.62m、1.36m ほか10 余本)、ヤブツバキ(0.52m)、ムクノキ(2.35m)、イヌマキ(1.40m、1.51m、1.26m、0.90mほか10本)、クスノキ(1.95m)、ヤブニッケイ(1.26m)、ヒノキ(0.53m ほか10余本)、タブノキ(1.06m ほか数本)、カクレミノ(0.87m)、モッコク(0.75m)、アラカシ(1.04m)、クロガネモチ(1.59m)。樹種数も多く、よく繁茂している。
20)杉尾神社
 クロガネモチ(1.11m、1.82m)、モッコク(0.94m)、エノキ(1.11m、1.47m)、ホルトノキ(2.11m)、ヒノキ10余本、イヌマキ(0.97m)、クロマツ(0.61m)、カイヅカイブキ(0.61m)、エノキ(1.47m)、アキニレ(0.18m)、イヌビワ、ネズミモチ、ナツフジ、ナツツバキ、タチツボスミレ、ヤブラン。
21)若宮神社
 アキニレ(1.13m、1.72m)、スギ(0.78m ほか6本)、クロマツ(1.73m)、ヒムロ(1.02m ほか)、ヤブニッケイ(0.63m、0.92m)、ヤブツバキ(0.38m)、エノキ(1.02m ほか)、ヒノキ(0.84mほか)。
22)江野島の八坂神社
 高木層 クロマツ(2.65m、2.13m、2.16m、1.85m、1.81m、2.09m、2.07m、1.90m)、クロガネモチ(1.56m、1.51m)。
亜高木層 ケヤキ(0.33m)、イヌマキ(1.54m ほか)、ヤブニッケイ(0.63m、0.75m ほか数本)、ヒノキ(0.48m ほか)、サカキ、サザンカ、モッコク、マテバシイ(0.62m、0.58m、0.58m、0.82m、0.33m の5幹)、モクレン、ツバキ、スギ、ヒラドツツジ、ハゼノキ、イチョウ、アオキ。
林下にはキヅタ、クサイチゴ、ヤブラン、ツユクサ、ニガカシュウ、ヤブニッケイ、ジャノヒゲ、カラスウリ、ナツフジ、ノブドウ。
23)那賀川中学校の校庭
 ホルトノキ(1.58m)、メタセコイア(1.14m ほか)、ハマボウ(0.85m)、クスノキ(1.26m)、クロガネモチ(0.24m、0.77m)、クロマツ(0.93m ほか6本)、ヒヨクヒバ、ケヤキ、ウバメガシ、ヒラドツツジ、サザンカ。垣根にカイヅカイブキ、イヌツゲが植えられている。
24)中島のY氏宅庭園
 クロガネモチ(1.18m)、クロマツ(0.38m、0.86m、0.78m)、アカマツ(0.84m、0.53m、0.66m、0.64m)、カイヅカイブキ(0.80m、0.90m、0.64m)、コウヤマキ(0.92m)、シリブカガシ(0.35m)、ウバメガシ(0.64m)、クスノキ(1.31m、2.00mほか3本)、ラカンマキ(0.25m)、モミ(0.67m)、カキ(0.88m)、ヒノキ(0.68m)、イチイ(0.45m)、ウメ、サンショウ、イヌツゲ、センリョウ。このお宅は、クロマツ、アカマツが中心で樹木の手入れがよい。コウヤマキ、シリブカガシ、モミなどを庭園木に利用しているのはおもしろい。
25)中島のN氏宅庭園
 クロマツ(0.97m、0.89m)、アカマツ(0.75m、0.82m)、カイヅカイブキ(1.15m、0.52m、0.70m ほか数本)、ウバメガシ(0.68m)、ラカンマキ(0.43m)、アラカシ、ウメ、キャラボク、ボケ、マンリョウ、ヒサカキ、センリョウ、チャノキ、オウゴンヒバ、ヒイラギ、キンモクセイ、モッコク、サザンカ。ヒマラヤスギ、カイヅカイブキがよく整枝されている。樹木の配置もよい。
26)手島の若宮神社
 クロガネモチ(1.68m)、クロマツ(0.78m ほか)、モチノキ(0.99m)、イヌマキ(0.79m、1.49m、0.90m ほか)、クスノキ(1.48m)、タブノキ(1.65m)、クヌギ(1.53m)、ムクノキ、ヤブニッケイ、ヒノキ。
27)諏訪神社
 クロマツ(1.51m、1.57m、1.18m)、クスノキ(1.06m)、カクレミノ(0.11m)、ヤブニッケイ(1.39m)、クロガネモチ(1.03m、0.84m)、タブノキ(0.87m、1.24m、1.26m)。クロウメモドキが自生していたのは珍しい。
28)小延の日吉神社
 ホルトノキ(1.48m、0.80m、1.44m、1.97m、2.10m ほか)、クロガネモチ(2.05m、1.37m、2.08m)、イヌマキ(1.03m、1.32m、1.29m、1.13m、1.55m ほか)、ヤマモモ(0.67m)、カクレミノ(1.91m、1.04m)、ヒノキ(0.76m、1.03m ほか16本)、ヒサカキ、クロマツ、イチョウ。イヌマキ、ホルトノキ、ヒノキが中心の社叢林である。
29)島尻の厳島神社
 ヒノキ(0.63m、0.64m、1.26m)、エノキ(1.22m)、ヤブニッケイ(0.78m)、クロガネモチ(1.45m、0.90m、0.91m、1.49m、1.58m)、イヌマキ(1.25m、1.51m、1.56m、1.41m、1.37m)、モッコク(0.83m、0.90m、0.90m、0.92m)、ホルトノキ(1.83m、2.14m、1.72m)、ヒメユズリハ(0.96m、0.75m)、クスノキ(3.11m)、カクレミノ(0.63m)、クロマツ(1.11m)、タブノキ(1.01m)、ソメイヨシノ、ヤブツバキ、ゲッケイジュ。多く植栽されているのは、モッコク、ホルトノキ、イヌマキ、クロガネモチの常緑広葉樹で、暖地ではよく見られる庭園木である。すべての樹木に樹名札がつけられており、県下では珍しく、親しみが感じられる。
30)黒地の道浄寺
 イチョウ(4.73m)、クロマツ(1.23m)、ケヤキ(0.60m)、ナギ(0.43m)、サルスベリ、ヤマモモ、ヒマラヤスギ、ホルトノキ、ケヤキ、タイサンボク、クロガネモチ、セイヨウシャクナゲ、オオムラサキ、カイヅカイブキ、イヌマキ、ヒムロ、アカマツ、ツバキ、ナシ、モクレン、イロハモミジ、クロマツ、イヌツゲ、ウメ、コブシ、アラカシ、コムラサキシキブ、カナメモチ、アオキ、ハギの1種、キンシバイ、チャノキ、チョウセンマキ。
31)出島の神明宮
 高木層 クスノキ、ムクノキ(0.55m)、エノキ(1.95m)、ヤブニッケイ(0.93m)、アカメガシワ。
 亜高木層 ヤマモモ、ヤブニッケイ(0.43m)、ハチク、ウバメガシ(0.48m)、ハゼノキ、ヒメユズリハ(0.53m)。
 低木層 ヤブニッケイ、ハゼノキ、ネズミモチ、クスドイゲ、アケビ、トベラ、ムクノキ、ネズミモチ、ウバメガシ、モッコク、マサキ、ヒサカキ、アキグミ。
 草本層 ネザサ、ヨモギ、イノコズチ、ヤブカラシ、ツタ、ヒメムカシヨモギ、ジャノヒゲ、トベラ、ノブドウ、カクレミノ、キヅタ、アケビ、ヤブラン、テイカカズラ、ネズミモチ。
32)王子神社
 クロマツ(1.92m)、クスノキ(1.24リm)、イヌマキ(1.72m)、ムクノキ(1.58m、1.86m)、ケヤキ(0.34m)、エノキ(1.29m、1.24m、1.31m)、クスドイゲ(0.93m)、カイヅカイブキ8本。クスドイゲの花はなかなか見られないのに、この神社でみごとな花を見ることができた(図3)。クスドイゲのイゲは神母と書き、高知県ではイゲ神社というのがあり、神社の境内に植えられることが多い。


33)その他
 徳林寺のイチョウ(3.09m)、飛龍神社のホルトノキ(2.99m)、真光寺のクロガネモチ(1.58m、1.71m)、小延真福寺のスダジイ(7.13m。県下一)(図4)、クロガネモチ(1.39m、1.22m)、島尻中田寿氏宅のホルトノキ(3.52m)、工地加藤実氏宅のマテバシイ(1.32m、1.04m)。

4.用水路、湿田に見られる水草など
 日本は湖沼、ため池、河川、用水路などが多いので、水草の種類も多い。水草の定義は様々な考え方があるが、ここでは広義に考え、沈水・浮葉・浮遊・抽水植物、そして湿生植物も水草とする。本町の水草を列挙すると、アオウキクサ、ヨシ、イトモ、イヌビエ、ウキクサ、ウリカワ、エビモ、オオイヌタデ、オオカ
ナダモ、オオバタネツケバナ、オオフサモ、オモダカ、カンガレイ、キクモ、キシュウスズメノヒエ、キショウブ、クサヨシ、コウキヤガラ、コカナダモ、コナギ、ササバモ、セキショウモ、ツルヨシ、ハリイ、ヒシ、ヒメガマ、ヒレタゴボウ、ホタルイ、マコモ、ミズワラビである。
 用水路は、主として農業用かんがいに利用されているが、富栄養化した平地の流れのゆるい水路には、クロモ、オオフサモなどの沈水・抽水植物のほか、ヒシ類など浮葉植物、また流れの速いところでは、セキショウモ、イトモなどが優占する群落が見られた。どの用水路も大群落のため「藻上げ」の除草作業が行われている。また外来の水草が在来の水草群落に大きな影響を与えていることは、オオカナダモやコカナダモの例でもわかる。
 一方、本町の用水路は、家庭排水路としても利用されている。家庭排水に含まれているリンなどを水草が栄養分として取り入れ、汚水の浄化に大いに役立っていることを忘れてはならない。
 日本植物分類学会(1993)によれば、895種の絶滅危倶(きぐ)種の中に、50種位の水草が含まれている。それは日本産水草の約25%に相当するという。水草の絶滅は、水草と関わりのある多くの動物たちにも影響を及ぼすことになる。
 本町は、用水路が発達しているのでため池の必要性がなく、湖沼もないので、水草の見られる所は河川、用水路と湿田がわずかにあるだけで、他町に比べて種類数は少ない。那賀川から導入された水は、水量も豊富で水流も速い。そんな環境に適応した水草が次のような所にみられた。
1)江野島のイトモとコカナダモ
 水量が豊富で水流も速い江野島の用水路には、イトモとコカナダモの群生がみられる。イトモは全長1m 余りにもなり、全国のため池や水路などに群生する沈水植物で、束になってくねるように水流に動く様はみごとである。コカナダモは北米原産の常緑沈水植物で、水路などに群生する。有機物を多く含んだ水域にもみられるが、清水域にもみられる。全長は1m にもなって盛んに分枝する。第二次大戦前に植物生理学の実験用として導入されたのが、今では全国にみられる。
2)小延のササバモ、クロモ、コカナダモ
 ササバモ(図5)は、茎長が3m 前後にもなり、浮葉と沈水葉からなり、花期は7〜9月である。クロモは、全国の湖沼、河川、水路などに生育する多年生の沈水植物で、群生する。茎はよく分枝し、円柱形で各節に3〜8葉を輪生し、ややそりかえる性質がある。


3)芳崎のマコモ、オオフサモ
 オオフサモは、南米原産の帰化植物で、ため池、水路などに群生する多年生の抽水植物である。水中を横走しながら分枝し、1節に5〜6葉が輪生する。花期は6月頃。
4)江野島のカブノセ用水路のマコモとキシュウスズメノヒエ、ヒシ
 川幅が約40m 位で、水は停滞している。浮葉植物のヒシが一面に群生し(図6)、岸辺に有機質の多い泥質の水底を好むマコモ、キシュゥスズメノヒエがみられた。マコモは、用水路によく見られたが、改修と共に姿を消してゆく植物の一つである。肥大した茎は食川にしたり、薬用にも使われる。


5)左津、島尻のセキショウモ
 セキショウモのリボン状葉は、左津用水路では約60cm にも伸び、速い流れにたなびいている。沈水植物で、花期は8〜10月。島尻のセキショウモは、帰化貝ジャンボタニシの餌(えさ)となり、約20cm 以下にまで食べられ、ほとんど見えなくなっている。
6)今津幼稚園横のため池
 狭いため池で、渇水時には水が無くなるが、わずかながらイバラモ科のトリゲモがみられた。トリゲモは、湖沼やため池にまれに見られる沈水植物である。
7)宮神社前の湿田
 面積は狭いが、コナギの大群生の中にアゼナ、チゴザサ、スズメノヒエ、イヌビエ、タカサブロウ、ナンゴクアオウキクサ、イボクサ、タマガヤツリ、ヒデリコ、キカシグサ、アゼムシロ、セリ、ヒナガヤツリなどが見られた。
8)色ケ島八坂神社前の休耕田
 ツユクサ、アメリカセンダングサ、クサネム、イヌタデ、セリ、ヨモギ、ヒロハホウキギク、ホウキギク、チドメグサ、タカサブロウ、アゼナ、トキンソウ、イヌコウジュ、ミゾソバ、シマスズメノヒエ、オオユウガギク、コブナグサ、ツルマメ、ヒメムカシヨモギ、セイタカアワダチソウ、コゴメガヤツリ、チガヤ、クサヨシ、アゼトウガラシ、ホタルイ、タウコギ、シロバナサクラタデが見られた。

5.出島周辺の植物
1)中島港の飛砂防備林
 中島漁港とゴルフ場との間に、約8〜30m の幅で、江野島までクロマツ林と一部ニセアカシア林が続いている。それは県の飛砂防備林となっている。
 クロマツが優占する樹林で、次のような植物が混生している。
 モチノキ、マサキ、トベラ、ネズミモチ、ツルウメモドキ、ノイバラ、マンリョウ、ナワシログミ、ミツバアケビ、ヤマウルシ、ゴヨウアケビ、ヤブニッケイ、ハゼノキ、ニセアカシア、キヅタ、アカメガシワ、センダン、ヒメヤブラン、ハマエンドウ、ノブドウ、カエデドコロ、トラノオシダ、シロバナキツネノマゴ、コセンダングサ、セイタカアワダチソウ。
2)ニセアカシア林
 1994年7月30日の調査で、幹周0.83m 前後のニセアカシアが車道の両側に林立しているのを確認したが、1994年10月30日には、ゴルフ場側のニセアカシアは伐採されてゴルフ場の一部になっていた。ニセアカシアは荒れ地に肥料木として植栽されるが、落葉樹であるため、クロマツのような防風樹とはなりにくい。マメ科で、白い美しい花を咲かせるので、風致のために植栽されたのかもしれない。
 ニセアカシア樹林(図7)にクロマツ、エノキ、カキ、ヤブニッケイ、マユミ、ハゼノキ、トベラ、ノイバラ、マサキがわずかながら侵入しており、その下部にヤマノイモ、カラスウリ、ヤブカラシ、ツルウメモドキ、アケビ、ヘクソカズラ、アオツヅラフジ、ノブドウなどのつる性植物が絡まりながら伸びている。その中にコセンダングサ、ヨモギ、ツルマメ、ヒメムカシヨモギ、マンリョウ、イノコズチ、ブタクサ(図8)、ヤブマオ、チジミザサ、ヤブジラミが混生しているに過ぎない。


3)江野島の防風林
 中島港から江野島にかけてのクロマツの防風林(図9)は、林層が浅いので、防風林としては弱い。その代わり民家の屋根より高い堤防を築き、防風、防潮の役に立てている。
 昔の防風林の名残として、幹周1.44m 前後のクロマツが数十本残っているが、マツクイムシの被害は今も止まることはない。このまま放置すれば全滅する可能性もあり、消毒などの対策を取る必要がある。クロマツの中に次のような植物の混生が見られた。
 ヒメユズリハ、マサキ、トベラ、ネズミモチ、ヤブニッケイ、ハゼノキ。その下部にナツハゼ、アオツヅラフジ、ハマヒルガオ、スイカズラ、ツタ、スベリヒユ、ナワシログミ、ノイバラ、ツルウメモドキ、イヌムギ、イノコズチ、ヨモギ、ヤブジラミ、ホソバイヌビワ、カラスウリ、ツユクサ、ヤブコウジ、ネザサ。


4)野鳥観察場周辺の植物
 かつての出島湿地のうち、わずかに残された野鳥観察場も人工が加わっており、野鳥の安住の場となるかは疑わしい。1988(昭和63)年に赤澤時之、田渕武樹が自然保護の目的で調査した資料と今回の調査結果から、野鳥観察場周辺の植物を列挙する。
 ブタクサ、スズメガヤ、オオブタクサ、カワラケツメイ、コミカンソウ、マルバアカザ、オオフタバムグラ、ハマゴウ、イタチハギ、イヌホオズキ、アキグミ、コマツヨイグサ、アレチマツヨイグサ、ハマヒルガオ、コウボウムギ、ケカモノハシ、コウボウシバ、ハマボウフウ、コニシキソウ、ヤナギハナガサ、エノコログサ、ツルマメ、スギナ、ヒメガマ、シロバナサクラタデ、ツルナ、ヒメハッカ、ヌマガヤツリ、カサスゲ、タマガヤツリ、イヌビエ、イヌスギナ、イヌドクサ、ミゾソバ、ギシギシ、イソボウキ、オカヒジキ、ツルナ、ヤハズエンドウ、カスマグサ、ヤブツルアズキ、ツルアズキ、エノキグサ、ミズマツバ、ヒレタゴボウ、キクモ、アゼトウガラシ、オヒシバ、カゼクサ、シナダレスズメガヤ、オモダカ、ミズオオバコ、ウシクサ、メヒシバ、ケイヌビエ、タイヌビエ、コウキヤガラ、ヒデリコ、ヒメクグ、サヤヌカグサ、アシカキ、オオクサキビ、マツバイ、テンツキ、ナガボテンツキ、イガガヤツリ、ホタルイ、イボクサ、コナギ、ノカンゾウ。
5)出島造成地周辺の植物
 ヤマアワ(図10)の大群生や帰化植物が多く見られた。ハルシャギク、アレチハナガサ、ヒメガマ、ツルヨシ、ハマヒルガオ、コセンダングサ、メドハギ、ハマエンドウ、ヒメムカシヨモギ、ツルヨシ、ホウキギク、アキノノゲシ、ヒメスイバ、マツバゼリ、アレチギシギシ、クソニンジン(図11)、キツネノマゴ、キカラスウリ、オオニシキソウ、マメグンバイナズナ、コニシキソウ、コマツヨイグサ、ヤブジラミ、ヤナギハナガサ、コメツブウマゴヤシ、コマツナギ、アカザ、ケイヌビエ、オオイヌタデ、ヒメマツバボタン、タカサブロウ、コシナガワハギ、キバナカワラヨモギ、ハマエノコロ、クグガヤツリ、トゲチシャ、セイタカアワダチソウ、イヌタデ、ツルヨシ、アリタソウ、クワクサ、ノキシノブ、イシミカワ、オオケタデ、ホソバノハマアカザ、シロザ、アカザ、ケアリタソウ、ミチヤナギ、ヒナタイノコズチ、ツルノゲイトウ、オシロイバナ、ムシトリナデシコ、スベリヒユ、ウマゴヤシ、クズ、スズメノエンドウ、イチビ、アキグミ、マルバアキグミ、ガガイモ、クサギ、トラノオジソ、アゼナ、アマチャヅル、アメリカセンダングサ、ケナシヒメムカシヨモギ、オオアレチノギク、アイアシ、キンエノコロ、ザラツキエノコログサ、オオエノコログサ、ネズミノオ、ハタガヤ、ヒメヤブラン、ヒガンバナ、ニガカシュウ、ヤマノイモ、メリケンカルカヤ、トダシバ、アゼガヤ、ススキ。

6.徳島県立博物館収蔵庫の昔の植物
 故伊延敏行、高藤茂、篠原正義、山本弘が、1958年8月30日から1974年5月19日までに徳島県立博物館に標本として収納した本町産の植物の中で、今回の調査で確認できなかった植物を列挙し、環境の変化と植物相の移り変わりを見てみる。
 アオカモジグサ、アキノミチヤナギ、イソヤマテンツキ、イトクズモ、イトトリゲモ、イバラモ、カワラサイコ、クグテンツキ、クルマバナ、クロカワスゲ、クロコヌカグサ、ケチヂミザサ、コウマゴヤシ、ササガヤ、シバスゲ、シロバナマンテマ、スズメノチャヒキ、トキワトラノオ、ナガミノオニシバ、ナギナタガヤ、ヌカキビ、ネバリノミノツヅリ、ノニガナ、ハマアオスゲ、ハマツメクサ、ハマニガナ、ハマハタザオ、ヒゴロモソウ、ヒメナミキ、ヒルムシロ、ベニバナコバノタツナミ、ホソバノウナギツカミ、ホソムギ、ホテイアオイ、マツバボタン、マンテマ、ミズオオバコ、ミズタカモジグサ。

7.那賀川の川床、河川敷の植物
1)那賀川の川床
 那賀川鉄橋下の那賀川の川幅の半分は、千潮に川床が現れ、こぶし大の石ころの川原になる。石ころの間に堆積物が積もって、川床植物を育てている(図12)。満潮時になると、一部だけ残して水面下に没してしまう。洪水時の濁流は、川床植物に多少影響を与えることはあっても、常は干満のゆるやかな流れの中で、造成や乾燥の心配もなく安定した環境にある。特にハマサジ(図13)、ハマゼリ、ウラギクを始め、オオニシキソウ、ツルヨシ、ヨシ、ヨモギ、メドハギ、トウオオバコ、ホウキギク、カワラヨモギ、オトコヨモギ、アレチマツヨイグサ、ヘクソカズラ、ハママツナ、ホソバアカザ、キバナカワラマツバ、ミチヤナギ、ハマヒルガオ、アイアシ、シオクグなどが水に没したり、現れたりを繰り返すので、生育する種類数も限られているように思う。洪水時以外水没しない個所では、メドハギ、カワラナデシコ、ガガイモ、ノイバラ、エノキなどや、秋には赤い実が枝一杯のアキグミが見られる。


2)大京原橋下の河川敷の植物
 那賀川の大京原橋下では、川幅の半分位が水路で、半分は土砂の堆積によって川原となり、そこにアレチハナガサとツルヨシの混生した大群生が見られる。
 川床よりやや高い河川敷では、今年のように日照りが続いても植物が枯死することはなく、川原よりは種類も多い。見られた植物は次の通り。
 セイバンモロコシ、オオニシキソウ、キンエノコロ、クコ、スイカズラ、クシゲメヒシバ、ムラサキススキ、スギナ、ホウキギク、フジバカマ、イヌコウジュ、アキノノゲシ、コツブキンエノコロ、オオクサキビ、イヌビエ、ヨモギ、ギシギシ、シマスズメノヒエ、メガルカヤ、カラムシ、ヨメナ、ムラサキイヌビエ、セイタカアワダチソウ、メリケンカルカヤ、トゲチシャ、チガヤ、アリタソウ、メドハギ、クサネム、コニシキソウ、ヤハズソウ、チカラシバ、カゼクサ、ヘラオオバコ、オオユウガギク、オギ、ノイバラ、アレチノギク、コセンダングサ、イヌドクサ、シロツメクサ、ヤブカラシ、コマツヨイグサ、スズメガヤ、アキノエノコログサ、ネズミノオ、カヤツリグサ、クズ、スギナ、ツユクサ、ツルマメ、エノキグサ、ヒガンバナ、マツヨイグサ、ヤブカンゾウ、アオビユ、オトコヨモギ、ヘクソカズラ、コヤブラン、タマスダレ。

8.残土に見られる植物
 中島港の岸壁近くに、阪神地区の工事で出た残土が、長さ約20m、幅10m、高さ4m 位に無造作に積まれている。残土と共に種子がついて来たのか、風などによって種子が運ばれて来たのか、次のような植物が見られた(図14)。


 ミドリバナオオイヌタデ、イヌビエ、メヒシバ、エノコログサ、イヌタデ、ケイヌビエ、ヨモギ、ギョウギシバ、スベリヒユ、エノキグサ、スズメガヤ、ハマエノコロ、オオエノコログサの在来種と、アリタソウ、エビスグサ、オオニワヤナギ(ハマホウキギク)、コアカザ、オシロイバナ、コセンダングサ、ヒメムカシヨモギ、アイノゲシ、オオクサキビ、アレチマツヨイグサ、コマツヨイグサ、アメリカイヌホオズキ、セイバンモロコシ、ヨウシュヤマゴボウ、コシナガワハギ、シロバナチョウセンアサガオ、オオケタデ、メリケンカルカヤ、イチビなどの帰化植物である。59%が帰化植物であることからも、いかに帰化植物の生命力が強いかがうかがえる。

9.那賀川町の特記すべき植物
1)珍しい植物
(1)トゲチシャ Lactuca scariola L.(図15)
 茎の節間や葉裏の中央主脈上に、触れると感じられる刺がわずかながらある。葉身は羽状に分裂するものと、しないものがある。鳴門市、土成町、海南町などにも見られるが少ない。


(2)ツルアズキ Azukia umbellata (Thunb.) Ohwi
 茎はつる性で、地面上を延びてはう。茎上に軟毛が生える。種子は円柱状長楕円形、赤色、へそに明かな縦溝がある。インド原産のツルアズキの栽培されていたものが逸出して野生化したものといわれる。
(3)オキジムシロ Potentilla supina L.
 欧亜大陸原産の1〜2年草。高さ20〜40cm、葉柄の基部に1対の卵形〜皮針形の托葉があって、しばしば葉柄に合着する。花期は存から夏、日本各地の開港場や河川敷にまれに帰化。
(4)フジバカマ Eupatorium stoechadosmum Hance forma praeflorens Akasawa(図16)
 秋の七草の一つで、本町のは葉が深く3裂するものが少ない。県下の自生はまれ。


(5)コシナガワハギ Melilotus indica (L.) All.
 欧亜大陸原産。出島周辺の荒れ地に多い。シナガワハギ(M. suaveolens Ledeb.) は、花や果実が明らかに小さく、托葉はやや幅が広く、しばしば少数の歯があるので区別できる。セイヨウエビラハギ(M. officinalis (L.) Lam.)は果実無毛。蜂の巣状にへこみ、旗弁は翼弁よりはるかに長い。
(6)セイヨウミヤコグサ Lotus corniculalus L.
 欧州原産。ミヤコグサに似るが、枝先に3〜7個が集まり、ミヤコグサがふつう2花なので区別できる。
(7)ウラギク Aster tripolium L.(図17)
 塩湿地に見られる2年草で、茎は太くつやがあり、高さ1m 内外。県下では、ほかに勝浦川河口、海南町浅川に見られ、まれ。


(8)オオニワヤナギ
 Polygonum aviculape L. var. vegetum Ledeb.
 ミチヤナギに似るが、茎は直立し、葉は大きくて、長さ1〜3cm になる。中島港の残土の中に1株だけ見られたが、花が無かった。ツルノゲイトウの仲間かと思われる程、葉は大きく、茎は太い。
(9)コウキヤガラ
 Scirpus planiculmis Fr. Schm.(図18)
 海岸近くの湿地などに生える多年草で、出島の湿地に群生しているが、県内唯一の産地。


(10)ハマボウ
 Hibiscus hamabo Sieb. et Zucc.(図19)
 由岐町田井、鳴門市瀬戸町北泊の群生地は保護されているが、昔は出島の湿地にも群生していた。しかし度重なる環境の変化により、現在は絶滅した。なお、植栽したものが那賀川中学校校庭に1本見られる。


(11)ヒメハッカ Mentha japonica (Miq.) Makino
 ハッカより小さく、湿地に生える多年草で、長い地下茎を引いてふえる。淡紫色の小形唇形花をつける。出島に見られ、珍しい。

 2)那賀川町の帰化植物
 本町は、養鶏、養豚場など、諸外国から直接種子が運びこまれる所は少なく、他町村で帰化し、ふえたものが、風、鳥、人や他の動物などによって移人されたと考えられる。帰化種は96種で、前回調査地の由岐町に比べると、少ない。ブタナ、セイヨウタンポポ、オニノゲシ、アイノゲシ、トゲチシャ、クソニンジン、ホウキギク、ヒロハホウキギク、アレチノギク、オオアレチノギク、ヒメムカシヨモギ、ヒメジョオン、ヘラバヒメジョオン、ハルジオン、ペラペラヨメナ、コセンダングサ、セイタカアワダチソウ、ハキダメギク、ベニバナボロギク、ダンドボロギク、チチコグサモドキ、ブタクサ、オオブタクサ、オナモミ、オオオナモミ、スカシタゴボウ、オオフタバムグラ、セイヨウオオバコ、ヘラオオバコ、アメリカアゼナ、オオイヌノフグリ、タマサンゴ、イヌホオズキ、アメリカイヌホオズキ、ヤナギハナガサ、アレチハナガサ、アサガオ、マツバゼリ、メマツヨイグサ(アレチマツヨイグサ)、コマツヨイグサ、ヒルザキツキミソウ、イチビ、オオニシキソウ、コニシキソウ、アメリカフウロ、セイヨウミヤコグサ、シロツメクサ、シナガワハギ、コシナガワハギ、セイヨウエビラハギ、シロバナシナガワハギ、ウマゴヤシ、コメツブウマゴヤシ、イタチハギ、エビスグサ、メキシコマンネングサ、マメグンバイナズナ、ムシトリスミレ、ヨウシュヤマゴボウ、オシロイバナ、ノゲイトウ、ホナガイヌビユ、イヌビユ、ツルノゲイトウ、シロザ、オオケタデ、ヒメスイバ、アレチギシギシ、キショウブ、ニワゼキショウ、ヒメヒオウギズイセン、サフランモドキ、ノハカタカラクサ、セイバンモロコシ、ヒメコバンソウ、イヌムギ、シマスズメノヒエ、アメリカスズメノヒエ、キシュウスズメノヒエ、オオクサキビ、シナダレスズメガヤ、ジュズダマ、メリケンカルカヤ、クロモ、コカナダモ、ウイキョウ、シロバナチョウセンアサガオ、ツルアズキ、オキジムシロ、ヒメマツバボタン、マツヨイグサ、コヌカグサ、ボタンクサギ、コアカザ、オオニワヤナギ、キンシバイ。

 参考文献
1.赤澤時之(1988)植物分類・徳島,No.29.
2.赤澤時之・田渕武樹(1988)那賀川出島植物目録.
3.阿部近一(1990)徳島県植物誌.教育出版センター.
4.佐竹義輔ほか(1981〜2)日本の野生植物(草本 I,II,III).平凡社.
5.佐竹義輔ほか(1989)日本の野生植物(木本 I,II).平凡社.
6.日本植物分類学会(1993)レッドデータブック 日本の絶滅危惧植物.農村文化社.
7.牧野富太郎(1961)牧野新日本植物図鑑.北隆館.

2)北島町中村 
5)鳴門市堀江北小学校 6)徳島県立博物館
7)徳島市国府小学校 8)北島町北島小学校


徳島県立図書館