阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第40号

由岐町の方言

方言班(阿波方言学会)

     川島信夫・金沢浩生2)

1.はじめに
 由岐町の方言は海部方言のうち上灘方言に属する。今回、方言班では2名の班員がそれぞれ一つの項目について調査し、報告することとした。項目は次のとおりである。
【金沢】 阿波南部方言、特に海部方言を特徴づける語彙や表現法の分布状況を調べ、由岐町の位置を明らかにする。そのため、平成5年7月27日から8月8日までの間、町内の協力者に教示を受け、さらに同9月、阿南市および海部郡内の小・中学校の国語担当の先生、並びに同地域の四国大学の父母会員に対して行ったアンケートの回答を集計分析した。
【川島】 昭和60年に由岐町史編纂委員会が由岐町8地区の住民の協力を得て採集した方言語彙集を参照して、平成5年7月27日から8月8日までの間、さらに意味・用法について住民の方に教示を受け、由岐町(上灘)方言を特徴づけるものを検討の上選定解説した。

2.由岐町方言の特徴
 由岐町方言の上灘性を端的に示す語は文末詞「ウェ」である。
○暑ウテ 仕事ニナラン ウェ。(中男→同)
 暑さにうんざりして、相手に訴え、同意を促す気持ちである。女性的な柔らかさと、親しみのある文末詞で、同等もしくは親しい年長者に対しても使用できる。男女とも用いる。
○ホンナコト ナイ ウェ。(中女→同)
 相手の謙遜の言葉を否定してねぎらう気持ちである。
○走ッテイクンジャ ウェ。(中男→同)
 断定をさらに確かなものとして表現したいときには「ジャ」、「ジョ」などの助動詞にも接続する。
 海部方言の特徴としては疑問の文末詞「ケ」や、サ行イ音便、ダとラの混同、上方ふうの表現(断定の「ヤ」、原因の「ヨッテ、サカイ」など)の多用が挙げられるが、海部郡をさらに細かくみると、上灘(由岐・日和佐・牟岐)と下灘(海南・海部・宍喰)とに分けられる。そのうちの幾つかの語の使用分布を図に示し、説明する。

☆ 回答者氏名及び生年
 1 阿南市 加茂  阿瀬川久美子 S26
 2     長生  久積富美子 S29
           多田 佳代 S34
           多田 裕美 S5
 3     宝田  鎌田 静代 S11
           清崎 喜美 T10
 4     横見  野村 依子 T10
           佐藤 照美 S29
 5     富岡  井村 佳子 S16
           橋本 久子 S30
 6     領家  桝富 真子 S39
 7     西路見 鈴木レイ子 S16
           中川 佐恵 S39
           鈴木 成雄 S12
 8     才見  野中 久子 S24
 9     津乃峰 岩浅 義彦 S21
 10     桑野  田中 倶子 S14
 11     山口  鎌田 志保 S49
 12     橘   福原ハル子 T5
           正木 好美 S19
           岡部レイ子 M41
           福井 加奈 S49
 13     福井  野中 久子 S24
           上野 益代 S28
           阿部ひとみ S42
 14     椿   久米  進 T13
 15     椿泊  折野 勝彦 S22
           折野 初江 S22
           平山今日子 S35
 16     伊島  辻  三郎 S12
           稲実 智美 S40
           三橋 由美 S40
 17 由岐町 伊座利 北川智香子 S48
 18     阿部  森 ヌイ子 M45
           戎井 俊克 T9
           戎井 章雄 S28
           財賀 藤子 M41
 19     志和岐 森本ミネヨ M45
 20     東由岐 別宮 辰美 S15
 21     西由岐 水口 吉夫 M40
 22     木岐  松浦  勲 T13
 23 日和佐町    豊崎 朝子 S33
           橋本恵美子 S8
           久保 和馬 S17
           田川トヨミ S21
           遊亀 美枝 S33
 24     赤松  岩見美智子 S29
           夏野 正美 S20
 25     山河内 中野  功 S18
 26     西河内 張間 義久 S11
 27 牟岐町 中村  元木 市子 T6
           水田サヨ子 S22
 28     橘   吉川 尚子 S19
           吉川 博晃 S15
 29 海南町 浅川  広田 周吉 S2
 30     松原  細野 カエ S16
 31     中小路 奥村 勝美 S7
 32     大里  乃一 純治 S10
 33 海部町 高園  前田 培江 T14
           吉田 由美 S36
           西宮 真介 S21
           前田 里美 S21
 34     野江  前川 史子 M44
           北川 宏美 T12
           亀川マサノ M41
           才力日出美 S33
 35     那佐  中野 康弘 S19
           高川ゆかり S36
 36 宍喰町 宍喰浦 戎谷 末子 T10
           戎谷小百合 S40
 37         大黒 伸介 S33
 38         前田 里美 S21
 39     竹ケ島 岸本 豊子 S4
           公文トキ子 S6

 図2から「ウェ」が由岐・日和佐両町で盛んであることがよくわかる。阿南市にもあるが、近隣の言葉として理解していることと使用することの区別が、通信調査ではつきにくい点もあり、さらに詳細な調査が必要である。
 牟岐町は「エ」という答えが多く、上灘、下灘の分岐点であることを示している。海南町、海部町は同じような場面で「ホンナコト ナイデ」と言うとする回答を得た。名訳というべきだが、語の出自・ニュアンスを異にする。由岐町の「ウェ」は藤原与一先生は一人称代名詞「ワイ」「ワエ」からきた語であると言われている。また、この類が但馬地方や大阪府南部にもあることを記しておられる。
 同じく牟岐町に「ジョ」の回答があるが、これは徳島市およびその周辺の若い女性語として昭和年間に県下全域で大変広く行われるようになった文末詞かも知れない。
 宍喰町の回答は、語感が「ウェ」よりも男性的で荒い「ワ」となっている。宍喰には「ウェ」がなく、男子は「ワ」を下がり調子、女性は上がり調子に言うのであろう。高知県と境を接する町として、高知方面の影響も強く受けるし、下灘とはまた違った特色がある。
 竹ケ島・宍喰浦では「ソンナコト アルカヨ」というのだと竹ケ島分校の若山先生は書いて下さった。
 推量の助動詞として海部地方では、四国系の「ダロー」よりも上方ふうの「ヤロー」が多いと私は見ていたのであるが、今回の調査では、海部も下灘についてはそう言えても、由岐町などの上灘地方ではそうは言えないという結果が出た(図3)。


 明治・大正時代の海部地方の子女の多くが、京都・大阪へ行儀見習いをかねて結婚前に奉公に行った。そして上方ことばを持ち帰ったというのが通説となっているが、上灘と下灘とでは人数の違いがあったのか、その他の理由があったのか分からないが、「ウェ」と同様にこの語にも上灘、下灘の差異がはっきり出ている。
 徳島県全域で古風な断定の助動詞「ジャ」の未然形の「ジャロ」は衰え、近代の阿波方言「ダロ」が共通語と一致するところから(あるいはこの変化が意識的共通語化かもしれない)、大正から昭和はじめにかけて上方から「ヤロ」を受け容れた県南まで、「ダロ」を多用するようになったのかもしれない。
 なお、疑問の文末詞「ケ」についても今回質問したが、阿南市・海部郡全域で使われていた。阿南市の全地点が「ケ」になっているのは、やはり、理解語・使用語の区別が不明確な結果でもあろうか。
 「コ」については、由岐町志和岐、日和佐町赤松で使われていると教示してくれる人が多かった。
 2、30年前までは、部落に一軒や二軒は子供相手の駄菓子やビー玉などを置いた店があった。海部地方では子供がそんな店に入るとき、独特のあいさつことばがあって、聞いていてすがすがしい感じを受けたものである。
 由岐や日和佐、牟岐では、そのあいさつことばの文末が「ウェー」になる。また、おおむね駄菓子屋は中老年の女性が営んでいたから、「オバチャン」「バーヤン」などと呼びかける形式もあった。「オバチャン」型は全国的なものであろうが、海部郡上灘の「買ウウェー」、下灘の「買ウデー」は海部独特のあいさつである(図4)。文末詞の「ウェ」と「デ」がはっきりとわかれている。下灘で「ゲ」も聞いたことがある。


 私は美馬郡の出身だが、こどもの頃、こんなあいさつを言った記憶がない。商品を一杯おいた店屋に忍び込めば、万引き、かっぱらいのおそれもあったろうが、海部のこどもたちは買い物についてのマナーというか、フェアな態度をしつけられていたことが想像される。海部郡内の小中学校の先生にアンケートをお願いしたが、中には、「買ウデー」って店へ入っていた幼時体験を子供たちに話して、笑われましたといわれる方もあった。
 宍喰町が、この場合にも「買ウワイ」と男性的な言い方になっており、特異な相をみせている。
 強調、反語の言い方に「アライジャ」という、海部独特のものがある。藤原与一先生は愛媛県で聞いたものとして、
 「わしでも セイ ジャ」(ワシデモすることができるよ)を記録しておられる。海部郡の「アライジャ」の用法もこれと同じである。先生はこの語の起源を「では」としておられる。
 これは海部郡全域て行われている。阿南市の人にも抵抗なく理解できる言い方だろう。繰り返しによる強調「アッテアッテジャ」や、「ナイ」を表面に出した「ノーテドースリャー」を選択肢に入れたので阿南市にばらつきが出たが、「アライジャ」の海部性を物語る結果となった(図5)。


 町史編纂委員会のまとめた方言集の中に、「セイデ マー」(もちろん、しますよ)というのがあるが、これも同種の表現である。「デ」は助動詞系統の語である。語尾の「マー」は代名詞系統の文末詞で呼びかけの語である。海部にはこの種の文末詞が多い。言葉を交わす相手との距離を出来る限り縮めて一体化を図るためにしばしば呼びかけるのである。
その究極が全的容認の「ダー」(そう、そのとおり)という感動詞だろう。
 海部ことばの古風さゆえの由緒正しさ、多彩な誇張・感動表現、当意即妙な様態の副詞など、表現の豊かさは徳島県下でも一頭地を抜いている。
 「ぞえ」からきた文末詞「ジェー」も、南がたのことばである。試みに質問のなかに入れたが、果たして阿南市・海部郡をおおいつくした(図6)。質問文に「ドイタンジェー」と書いたところ、上灘では全部、「ジェー」は使うが「ドイタン」とは言わないと指摘された。海南、海部、宍喰は「ドイタン」を容認してくれた。サ行イ音便のあり方に上灘と下灘では差異があるのか。


 宍喰町では「ジョー」との回答があった。これまた宍喰文末詞の特異性の一つである。
◎ A〜Eのもととなった調査については、由岐町の協力者、阿南市・海部郡内の小、中学校の先生、四国大学の学生および父母の皆さんの絶大なご協力によってできたもので、感謝にたえない。また、語彙の部と両方ご協力願った方も多いが、重複を避けて一方のみにさせて戴いた。全体を通して、もっと細かい、微妙な語感や使用範囲の説明などを戴いたが、図示などの制約から大まかなものになったことをお詫びする。

3.方言語彙集
 前述のように、この語彙集は町史編纂の貴重な遺産から出発した。これから生まれた船越要氏の「方言」集と、悦田慶一氏から寄せられた資料を基にして、多くの方のご助力で、やっと成った語彙集である。だが、心残りは多い。紙数の制約から、多くの語を割愛したこと、説明文が言葉足らずになったことである。また筆者の非力から、語の取捨の不適切や、説明の誤りも多いことと思われる。これを叩き台にして、後日完全な語彙集の生まれることを望むばかりである。

アイシラウ(動)  大事にする。
アオケ       青毛。完熟前の稲・麦など。
アカイ  (形)  明るい。
アカーニ・アコーニ(副)赤く。
アカジャコ〈魚〉  ねんぶつ鯛。
アクサイ      性悪。てこずる。
アゲガキ      渋抜き柿。
アゲタ       二毛田。
アゲト       あご。
アコ・アコー    きみ。お前。(二人称)
アサッパチ・アサッパラ 朝早く。
アサハン・ユーハン 朝食・夕食。
アジロ       魚のよく集まる所。[網代]
アズナイ (形)  子供っぽい。
アズル  (動)  困惑する。辛苦する。
アタリ       魚の釣れた手ごたえ。分け前。
アタリク      八つ当り。
アテ・ワテ     わたし。(一人称)
アナゼ       北西風。(船を苦しめる悪い風)
アバケン (句)  手に余る。さばききれぬ。
アブラメ 〈魚〉  あいなめ。
アムケ       仰向け。
アヨビ  〈貝〉  あわび。(阿部)
アライジャ(句)  あらざらんや。(反語)
アリシ       ある限り。あるだけ全部。
アリンド 〈虫〉  あり。
アレヘン (句)  無い。有りはせぬ。
アンカゴブジ    平穏。のんき。
アンジョー(副)  うまい具合に。
アンゼ       心配。
アンダイナ(形動) 不安な。
アンダラ・アホンダラ 阿呆。馬鹿。
アンニャ・アンヤ  兄。
イイサマ      言うがまま。言いなり。
イオ        魚。
イガミ・ゴンタ〈魚〉ぶたい。
イグチオカク(句) いびきをかく。
イクリ  〈果〉  すもも。
イケイケ      やりっ放し。
イケズ       意地悪。
イコル  (動)  炭が火になる。
イサギ  〈魚〉  いさき。
イサリ       あわび等の箱眼鏡漁法。
イジ        泉。
イセル  (動) (網の)ひだを取る。
イタメン      紙製の遊具。めんこ。
イタズリ 〈植〉  いたどり。
イッケン      いっけ。親戚。
イッコン      一つ。
イッシニ (副)  いつも。
イッチャ (副)  いつでも。
イッチャン(副)  一番。もっとも。
イトケナイ(形)  幼い。
イナサ       南東風。
イナリ  (副)  いきなり。不意に。
イヌ   (動)  帰る。去る。
イネツム (動)  寝る。
イノチナゴ     不在者の安全祈願行事。
イヤウチ      弥打ち。身体の同じ所を又打つ。
イレアイ      相子。イネイネ。
イレメ       減量を予想し余分に入れる分。
イレコ       組み合わせの容器。
インデクル(句)  帰る。辞去の挨拶。
イロベル・イロメル(動)からかう。
ウェ   (終助) よ。「スルウェ」(するよ)
ウエシリ      田植前の整地。
ウシイタズリ〈植〉 ぎしぎし。
ウシターラゴ〈動〉 うみうし。
ウタテイ (形)  気持ちのすぐれぬ。不快な。
ウチゴロ      家族の者。一家中。
ウチンク      自分の家。
ウトウトシ(形)  うっとうしい。
ウドマス (動)  ひどい目に合わす。
ウナギソーメン〈魚〉小さい鰻の幼魚。
ウナジ       首。
ウマビキ 〈魚〉  しいら。
ウモレル (動)  むし暑い。
ウヮ   (助)  …よ。文末助詞。「するウヮ」
ウワニ       余分に上方に積んだ荷物。
ウングロ・ウンゴロ〈動〉もぐら。
エー   (副)  能く。「エーセン」(得せぬ)
エガマ       柄鎌。先の曲った厚い鎌。
エガム  (動)  曲がる。
エクソナクソ    あれこれ際限なく浪費する。
エズク  (動)  胃から突き上げる不快さ。
エット  (副)  久しく。
エッポド (副)  よほど。
エトバ       行きつけの漁場。[得手場]
エブリ       水田均らしの人力農具。
エロイ       絵。「江戸絵」
オーケナシャッポン(句)大きな当て外れ。
オーケニ      有難う。
オードー      道に外れたこと。[横道]
オーニシ      強い西風。
オーバッソー    大水。洪水。
オガ   〈虫〉  かめ虫。
オガメ  〈虫〉  かまきり。
オギレイナ(形動) 物質的欲望がない。
オクド       かまど。
オクモジ      つけもの。
オゲ        にせもの。「オゲヘンド」(にせ遍路)
オシアゲ      共同費用のための漁撈奉仕作業。
オシツケオージョー 無理やり押しつける。
オシマイサン    挨拶語。(食事は終ったか)
オシャチ      おせっかい。
オジクソ      臆病者。
オジュッサン    坊さん。
オス        圧殺式イタチわな。
オタエ       わたし。(一人称)
オダイシグサ〈植〉 われもこう。
オチンコマ     正座。
オッキュイ・オッケイ(形)大きい。
オッサン      叔父さん。小父さん。
オッリョー(感)  驚いたなぁ。
オツゲ  〈植〉  はこねうつぎ。
オツム       頭。
オトコシ      男の人。
オトゴ       末っ子。
オトマシイ(形)  ひどい。
オトメ       お礼のしるし。おだちん。[お留]
オトンボ      末っ子。
オドレ       貴様。おのれ。(語気荒く)
オナゴシ      女の人。[女子衆]
オナゴダエ     女のやつ。女め。
オナベ       女子の卑称。
オニシダ 〈植〉  うらじろ。
オノガラ      男の子。
オノシ・オンシ   お前。二人称。(目下に)
オノワル      子供。
オバメッキ〈魚〉  おきあじ。
オフクサン〈動〉  ねずみ。
オブケル (動)  驚く。
オブレル (動)  溺れる。
オボチャ      木を割ったりそいだりする刃物。
オボチョダイク   たたき大工。下手な大工。
オミーサン     おじや。雑炊。
オメ        お前。(目上・目下ともに)
オラ・オイ・オテ  自分。オテは目上に。
オランク      おれの家。
オリカニ (副)  時折りに。
オロカデナイ(句) 容易な事でない。
オワエゴ      追い駆けごっこ。
オンビキ 〈動〉  ひきがえる。
オンヤン      叔父さん。小父さん。
オンヤンボー    年齢不相応の独身男性。
カータンコ(句)  買ったのか。(志和岐)
カーシン・カシン  菓子。
カイサマ・カエサマ さかさま。
カイダルイ(形)  ひもじい。頼りない。
カイバ  〈植〉  野生いちごの葉。
カウゥェー     店へ入るとき子供のあいさつ。
カエ・カエマー   否定又は疑問の詞。
カカ        女房。
カカ・タタ     母・おかあさん。
カカリ       事情のこと。「こんなカカリで」
カガミイオ〈魚〉  いとひきあじ。
カケゾメ      豊作を祈る苗代田の正月神事。
カザ        におい。
カシラ       頭。
カシワ  〈植〉  さるとりいばら。
カセンキビ〈植〉  とうもろこし。
カタブネ      双生児の一方。
カツグ  (動)  水中に潜る。
カド        家の人口の外。
カナド  〈魚〉  かながしら。
カマツカ 〈植〉  つゆくさ。
カマブシイ(形)  貧乏たらしい。物不足。
カムケ・カモタケ(句)構うものか。
カラ        所為(せい)。原因なすりつけ。
カリアゲ      稲刈り終了の日。
カリゴエ      狩声。勢子が犬を追う声。
カワクロシイ(形) 胸やけの状態。
カンタイ      ぜいたく。
カンタラ・タンタラ〈動〉大型みみず。
カンバ       甘藷の輪切り干し。
カンブス 〈植〉  からすうり。
カンボタオス(句) 困ってしまう。
カンマン (句)  構わぬ。
ガイ(グヮイ)   都合。調子。[具合]
ガイセン (句)  具合が悪い。
ガイナ  (形動) 向こう意気が強い。
ガガネ  〈魚〉  かさご。
ガゼ   〈動〉  うに。
ガネ・ガニ・ガンチ〈動〉かに。
キー   (動)  来い。「キーヨ」(おいで)
キスゴ  〈魚〉  きす。
キタゴチ      北東風。
キタランセ(句)  来てあげなさい。
キッツイ (形)  きつい。
キビル  (動)  出し惜しみする。
キビレ  〈魚〉  ちぬの一種。
キラ   〈魚〉  きゅうせん(べらの一種類)。
キリモン      着物。
キル   (動)  被る。「帽子をキル」
キンタマニギリ   追従者。
キントキ 〈魚〉  きんめだい。
ギオンマゼ     梅雨明けの南風。
ギョーサン     沢山。おおげさ。
クグイ  〈魚〉  ごんずい。
クサキリ      刈り草やわらを押し切る農具。
クサギナ 〈植〉  くさぎ。
クサシ  (接尾) 動作の中止。「食ベクサシ」
クサマゼ      水田に山草を刈って混ぜこむこと。
クソ   (接頭) 罵称。「クソシンドイ」
クビタマ      軛(くびき)。
クマバチ 〈虫〉  すずめばち。
クラッシャゲル(動)なぐるの強調語。
クレ        塊(くれ)土の固まり。
クレンセ (句)  下さい。
クロハエ      梅雨に吹く風。
クワ        鋤(すき)。スキの用語は使わぬ。
クワル  (動)  形容し難いだるさ。
クングリ 〈魚〉  ごんずい。
クンジンナ(形動) 迷信、タブー重視。
グイミ  〈植〉  ぐみ。
グズナ  〈魚〉  あまだい。
グチナ  〈動〉  蛇。くちなわ。
グチナシ 〈植〉  くちなし。
グツ        都合や調子。「グツが悪い」など。
グルカケ      わらを田んぼに積むこと。
グレ   〈魚〉  めじな。
ケ    (助)  …か。「イクケ」(行くか)
ケタクソガワルイ(句)不愉快な。
ケットー      毛布。
ケモモ       桃。
ケン   (助)  …から。
ケントマク     当てずっぽう。
ゲ    (助)  …よ。「イクゲ」(行くよ)
ゲト        最後尾。ビリ。
ゲンゾナシ     漁が全くない。魚の見参無し。
コ    (助)  …か。「イクコ」(行くか)
コイヤゲル(動)  困る。どうにもならぬ。
コカス・コケル(動)倒す・倒れる。
コズク  (動)  咳(せ)く。
コソ        小想。強めの語。「愛想もコソも無い」
コタゲル (動)  混ぜて混ぜてする。
コチ        東風。
コチ・ワシ・ウラ  自分。(同輩以下に)
コッカナシ〈植〉  猿梨。さるなし。
コッシャエ     こしらえ。物を作る準備。
コッスイ (形)  こすい。ずるい。
コッチャ      1 こちら。2 …ことだ。
コットイウシ    雄牛。
コットゼル(動)  雑多の中から物色する。
コバテ       子供。
コボチ       小鳥取りのわな。
コミ        壁土などに混ぜる藁(わら)など。
コミジコッパ    粉みじん。木の葉。
コラエタル(句)  許してやる。
コリキヤマ     植林でない雑木林。
コレバ       ほんの少し。これつぽっち。
コロ        砕土用の畜力農耕具
コロット (副)  完全に。不用意に。
コロモンベヤ    漬物部屋又は小屋。
コンズコロンズ(句)最後の最後まで。
コンナン      このような。こんな奴。
コンペイ 〈魚〉  いしがきだい。
コンマイ (形)  小さい。
ゴショーダイイチ(句)後生大事。
ゴジャ       間違い。
ゴジャクル(動)  邪魔をする。
ゴジュッサン    お住持さん。
ゴッツイ (形)  大きい、の誇張表現。
ゴッツォー     御馳走。
ゴテル  (動)  ごねる。
ゴトマツ・ゴトンビキ〈動〉ひきがえる。
ゴボ・ゴンボ〈植〉 ごぼう。
サイキ       田植始めの祭儀。
サイラ  〈魚〉  さんま。
サカイ  (助)  …から。故に。
サカク       苦労、苦心。
サシガヤ      草屋根の補修用かや。
サデル  (動)  木を集める
サドコイ (形)  さとい。敏捷な。
サノボリ      早上り。田植終了の日の祝事。
サバフグ 〈魚〉  しまふぐ。
サンデモリ     7月土用の虫送り行事。
サンノジ 〈魚〉  にざだい。
ザマナ  (形動) 大きいの誇張表現。
シイトメ・ヤセウマ〈植〉ほるとのき。
シー   (動)  しなさい。
シー・シートット  幼児の小便を促す言葉。
シービン 〈鳥〉  しょうびん
シタシタ      下下(しもじも)。
シタル  (動)  してやる。水がこぼれる。
シブキタ      冬季・北四分東六分から吹く風。
シモタケ      挨拶。オシマイサンに同じ。
シモニシ      南西風。「下西苫(とま)して構え」
シャゴシャゴ(副) 身軽なさま。
シャッキン     無垢な新しい。
シャックリ〈鳥〉  せきれい。
シャッポン     帽子。
シャンシャン(副) 早く。元気に。
ショージダ     精進田。神饌(しんせん)用の稲作田。
ショータレ     だらしない人。
ショートロシ(形) 大変な。勿体(もったい)ない。
ショラシ (形)  おとなしい。賢い。
ショガナイ(句)  仕方がない。
シラ        にわかに吹く南西風。
シロハエ      空梅雨に吹く南西風。
シワシワ (副)  そろそろ。
シワリット(副)  そっと。慎重に。
シンドイ (形)  つかれる。苦しい。
ジーヤン      祖父。おじいさん。
ジカゼ       地風。北風。
ジビル  (動)  小便などをもらす。
ジャーシン・スー  じゃんけんの掛声。
ジャコ       ざこ。雑魚。
ジャラケル(動)  遊び半分にやる。
ジャラコイ(形)  つまらぬ。阿呆らしい。
ジャレコト     冗談。
ジョートンボ    尉(じょう)と姥(うば)。
ジョーニ      沢山。
ジョーリ      草履。
ジョーンナ(形動) 上手な。
ジョロダマ〈植〉  竜のひげの実。
ジワジワ (副)  そろそろ(湿った感じ)。
ジンロク 〈魚〉  めだか。
スカッチョ     方角違い。はずれ。
スカマ       間違いのこと。すかまた。
スズ   〈魚〉  さより。
スッタイナ     どうしようもない奴。
スッポンノキ〈植〉 きぶし。木五倍子。
スバブル・スバクル 器用にしゃぶる。
スボケ       ふくらはぎ。脹脛。
スマンゴ      隅っこ。
スミヤキ 〈魚〉  しまいさぎ。
スリヤゲ      もみすり終了の慰労行事。
ズキ        ずいき。
セ    (助)  やさしい命令。「来ンセ」
セーヘン (句)  しない。
セコイ  (形)  苦しい。
セックルシー セッロシー(形)窮屈な。
セナイカン(句)  しなければいけない。
センスナ・セラレン(句)してはならぬ。
センセ  (句)  しなさい。
ゼウェ  (助)  …ですよ。「ほうゼウェ」
ソエル  (動)  速く走る。
ソーバクズシ(句) 雰囲気こわし。
ソーヤク      掃除すること。整えること。
ソーレン      葬列(礼)。
ソグル  (動)  藁の不用分を除き整える。
ソケナイ (形)  素気ない。馬鹿らしい。
ソソハイ (形)  軽率な。
ソバエ       通り雨。
ソラデ       腕の疼痛。けんしょう炎。
ソレベクソーロー(句)それきり音無し。
ゾーライナ(形動) 乱雑な。
タカマゼ      台風時に変化して吹く強風。
タタワシイ(形)  落付きがない。
タッスイ (形)  馬鹿馬鹿しい。
タヌキノチョーチン〈植〉美男葛の実。
タワラブルイ    末子。
タンネル (動)  尋ねる。
ダイー  (体が) だるい。
ダイコンソー〈植〉 きんみずひき
ダイナン      大灘。沖合。
ダス   〈魚〉  だつ。
ダッスイ (形)  ダスイ。栓などがゆるい。
ダボソ       栓(せん)。
ダロー  (助動) 推量。終止形は「ジャ」。
チエル  (動) (崖が)くずれる。
チッチ・ハチマキ〈鳥〉ほおじろ。
チヌ   〈魚〉  くろだい。
チビル  (動)  小便などもらす。けちる。
チャウ  (動)  違う。
チャズケ      3時など休憩時の軽食。
チョーケ      手桶。
チョーサ      みこし。(掛声から)
チョケル (動)  おどける。
チョコバエ     増長しておどけること。
チョナ       片手で使うおの。
チンギ       さお秤。
チンコサバ〈魚〉  鯖。特に油鯖の小もの。
ツカハル (動)  下さる。
ツクシンボ〈植〉  つくし。
ツクマム (動)  しゃがむ。
ツバエ       増長。「ツバエル」
ツバクロ 〈鳥〉  つばめ。
ツボンジャ     野外の人糞尿貯蔵小屋。
ツベナゴ 〈動〉  手長えび。
ツマエル (動)  しまっておく。収蔵する。
ツメガミ      小魚など頭や骨のまま食べること。
ツロク       つり合い。
ツンボゴエ     手遅れの追肥。
テス   〈魚〉  てんす。
テダル  (動)  連れ立つ。
テドーカラ(副)  手回しよく早くから。
テノクボ      掌にのせての味見。腹ごしらえ。
テノゴイ      手ぬぐい。
テル   (動)  西瓜などが熟れること。
テレコ       正対の逆。
テンガ       手鍬(ぐわ)。
テンゴ       余計な言動。ばくちを指すことも。
テンデヤス     たやすい。簡単。
テンマ       子供。「テンマ連レ」
テンヤ  〈植〉  てんぐさ。
デキサン      あいつ。彼。(三人称)
デンキンボー    電信柱。
テンゴノカワ(句) 余計なお節介。
デンビ  〈鳥〉  とんび。
トエサン      非農家が下肥取りを契約の農家。
トエル  (動)  叫ぶ。大声でどなる。
トクマエル(動)  捕える。物につかまる。
トト        父。おとうさん。
トノグチ      戸口。玄関。
トヤ        鳥小屋。
トリカジ 〈魚〉  つむぶり。
トロクソ      とろい人。
トロコイ (形)  とろい。どんくさい。
トワイ       間柄。間合。「船ト船ノトワイ」
トンオカケル(句) カマをかける。
ドーナイ・ドーナエ どうしようもない。
ドーマン      図体の大きい。猫(木岐)。
ドギャンスリャ   どのようにするか。
ドシタンジェー(句)どうしたの?
ドバッシャゲル(動)衝突する。
ドベカス      口先だけの不誠実者。
ドング       つり道具。
ドングリ      あめ玉。
ドンナラン(句)  どうしようもない。
ナーコレ      同意を求めるような間投詞。
ナガタン      平たい包丁。
ナシテ  (補動) 敬意表現。「オ休ミナシテ」
ナッション・ナンション 何をしているの。
ナテ        魚代。[魚手]
ナブラ       かたまり。魚群。
ナヤツイ (形)  たやすい。安易な。
ナラ   (助)  …だったら。
ナルテン 〈植〉  なんてん。
ナンキン 〈植〉  かぼちゃ。
ナンヤカイ・ナンヤカシ(副)いろいろ。
ニキ・ネキ     そば・かたわら。
ニシマ       南西の風。
ニドイモ      じゃがいも。
ニワ        戸口から入った所の土間。
ネソ        藁を結んで作った結束用品。
ネブカ  〈植〉  ねぎの総称。
ノカナ       鎌などの柄の角度大。のんびり者。
ノゲ        稲・麦などののぎ。
ノボリジオ     黒潮の北東上(豊漁の前兆)。
ハエ        南風。
ハゲ   〈魚〉  かわはぎ類。
ハス   〈魚〉  いしだい。
ハチカン      あばずれ女。
ハナノキ 〈植〉  しきみ。
ハバシイ (形)  すばしこい。
ハビッキャワン(句)比べものにならぬ。
ハマモッコク〈植〉 しゃりんばい。
ハミ   〈動〉  まむし。
ハルタ       水田の荒おこし。この頃の田作業。
ハンチャ      はんてん。
バーヤン      叔母さん。小母さん。
バラゴイモ〈植〉  さといも。
ヒアワセ      火合せ。葬礼の後講組の一行事。
ヒーラ  〈魚〉  どくくらげ。
ヒガン  〈動〉  もずく蟹。
ヒコズル (動)  取り散らかす。引っ張る。
ヒッパリ      着物の上に羽織る仕事着。
ヒメイチ 〈魚〉  ひめじ。
ビシャコ 〈植〉  ひさかき。
ビンビ       魚。主として幼児語。
ブエン       無塩の魚。
ヘラコイ (形)  抜け目がない。
ヘン   (動)  せぬ。「書ケヘン」
ヘンナゴ      女性を卑しんだ言い方。
ホーケ  (句)  そうか。そうですか。
ホンメッキ〈魚〉  かいわり。
ボーゼ  〈魚〉  いぼだい。
ボードー      藁を束ね収穫物を雨から防ぐ物。
マジメ       明暗(朝夕)の境目。(好漁時)
マゼ        真風。(西・南又は南西風)
マゼコタゲル(動) 完全に混ぜ合わす。
マタイ  (形)  おとなしい。温和な。
マンモリ      真すぐ。
ミゾタ       用水路を兼ねた水田。
メジカ  〈魚〉  まるそうだ。
メダケル (動)  砕ける。
メメズ  〈動〉  みみず。
メンツキ      面桶。飯桶。
メンドイ (形)  恥ずかしい。ややこしい。
メンメハチハチ(副)各自思い思いに。
モー   〈植〉  藻。ほんだわら。
モサゲル (動)  乱雑に集める。
モタレル (動)  南風がかかり不安定な日和。
モツ   〈魚〉  むつ。
モッテ  (助)  …ながら。「歩キモッテ」
モヤイ       舫。舟と舟、舟と物をつなぐこと。
モンブク 〈魚〉  とらふぐ。
ヤ    (助動) …だ。「アリャ犬ヤロ」
ヤッチャ      お三時の茶づけ。
ヤドイシ 〈動〉  青大将。
ヤマガツオ〈動〉  つちのこ。
ヤマゼ       南東から北西に変わる沖風。
ヤマノカミ〈魚〉  みのかさご。
ヤンダ  (副)  それほど。あまり。
ユーレンバナ〈植〉 彼岸花。
ユサクル (動)  ゆさぶる。
ユムギ・ヨムギ〈植〉よもぎ。
ヨーケ       沢山。ジョーニ。
ヨーナカッタ(句) 死亡した(お悔み)。
ヨケ        導水のために作ったうね。
ヨダチ       夕立。「ヨダチとヨグソは三日」
ヨッテ  (助)  …から。故に。
ヨワザ       夕立。
レンコ  〈魚〉  ぎだい。
ワイタジケ     南が急に北に変わる時化の大風。
ワコ・ワコー    お前。(同輩以下の二人称)
ワレ        お前。(語気荒く)
ンネ        姉。
 今回の調査に当たって、ご教示いただいた方の芳名を掲げて感謝の意を表する。
悦田 慶一(木 岐.昭4生)
松浦  勲(木 岐.大13生)
大谷  明(西由岐.明44生)
富永万喜太(西由岐.昭5生)
滝川 房江(西の地.昭2生)
中村トミエ(西の地.明36生)
橋口 弟三(西の地.明41生)
船越  要(西の地.大13生)
真南 卓哉(西の地.大13生)
水口 吉夫(西の地.明40生)
谷沢 円次(東由岐.明44生)
別宮 辰美(東由岐.昭15生)
大田武三郎(志和岐.大2生)
坂本 良一(志和岐.昭12生)
浜行 治次(阿 部.大9生)
松村 久樹(阿 部.大12生)
木床 賢一(伊座利.大14生)
浜名 匡世(伊座利.大2生)
森本 利幸(日和佐)
栗作 幸晴(日和佐)
虹羅 茂雄(赤 松)
中川 誠也(日和佐)
西内 泰子(日和佐)
坂東ツトミ(椿 町)

2)四国大学短期大学部


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