阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第40号

由岐町の植物相

植物同好会班(徳島県植物同好会)

    木村晴夫1)・赤澤時之2)・                     

    田渕武樹3)・木内和美4)・                   

    木下覚5)・小松研一6)・                   

    真鍋邦男7)

1 自然環境の概況
 由岐町は、県の南東部に位置し、面積は23.31平方キロメートルである。西は日和佐町、北と東は阿南市に接し、南は太平洋に面している。県下でも有数の長い海岸線を持つが、陸部の幅はわずか1.5km 程に過ぎない。
 背後の海部山地は、標高が348m、281m、245m、372m などの山々、本町最高地点である441m の明神山が連なり、海岸線まで迫っている。人家は、当町を流れる木岐川、田井川、伊座利川のほか三つの川の流域と、港の周辺に広がるわずかな平たん部に集中してい
る。
 気候については、町内に公的観測機関がないため、隣接する日和佐、椿泊の観測所の記録をみると、年平均気温は、日和佐16.9℃、椿泊16.7℃、年降水量は日和佐2670mm、椿泊2200mm である(徳島気象台、1945〜1970年)。温量指数は日和佐142.2、椿泊137.6と計算される。由岐町は、日和佐と椿泊の中間位に位置するため、年平均気温は16.8℃、降水量は約2435mm、温量指数は、約140位と推測され、黒潮の影響を受けて、温暖な気候に恵まれている。

2 植物相の概況
 伊座利から阿部、志和岐、由岐、木岐を結ぶ海岸線は、砂岩と泥岩からなる互層によって、ほとんどが岩崖を形成しており、表土は浅く、海岸特有の乾燥と、貧栄養の土壌のため、植物の生育にとって厳しいものがある。
 海岸の林は、魚付保安林になっており、常緑広葉樹によっておおわれている。スギ、ヒノキの植林面積比は、那賀川節などに比べれば極端に低く、生育もよいとはいえない。
 自然林は、伐採が繰り返され、そこへアカマツがはいり込み、旺盛な生育をしていたが、瀬戸内海から発生したマツクイムシの被害は、海岸線沿いに広がり、本町では、昭和53年前後に猛威をふるい、今では白骨化した跡がみられる。
 本町の社叢林は、面積も狭く、樹種も乏しい。そのため、昔の樹林の様相をうかがい知ることはむずかしい。

3 由岐町の代表的植物相
 1)暖温帯域の防潮、防風林
 木岐、西由岐、東由岐、志和岐、阿部など港周辺の人口密度の高い地域は、直接海に迫っているので、南からの強い潮風の塩害から民家や農作物を守るため、集落や個人の家では古くから、常緑広葉樹の防潮林が計画的に植えられ、保護されて来た。それらの樹林は、本町の植物相を知る手がかりの一つとなる。
 (1)南白浜集落センターのクスノキ林
 クスノキは、社寺林によく植えられているが、防風林としても有用な樹種である。南白浜センターの常緑広葉樹林は、堤防一つで海に接し、集会所と民家1軒と水田の防潮、防風林となっている。長い間の防潮林であったことを物語るような巨樹がみられる。
  高木層 コジイ(2.08m)、(かっこ内の数字は胸高幹周。以下同じ。)スダジイ(1.67m・3.13m)、エノキ(2.69m)、アラカシ(0.98m)、クスノキ(3.98m・3.76m・3.47m ほか数本)、タブノキ(2.97m ほか数本)、ヤブニッケイ、カゴノキ、ツタ。
  亜高木層 ヒメユズリハ(1.20m)、ヒサカキ、イヌマキ、ヤブニッケイ、ウバメガシ、テイカカズラ。
  低木層 イヌビワ、マサキ、トベラ、ヤブツバキ。
  草本層 サルトリイバラ、アマヅル、ヘクソカズラ、ホウロクイチゴ、イタドリ、ツルウメモドキ、カクレミノ、テイカカズラ、イヌマキ、ヤブコウジ、クスノキ、センリョウ、キヅタ、タイミンタチバナ、ネズミモチ、ヤブラン、ノシラン、ハマダイコン、バクチノキ、ムサシアブミ、イヌビワ、ホソバイヌビワ、シロダモ、トウバナ。
 (2)田井の防潮林
 田井の浜に隣接する常緑広葉樹林は、約40軒の集落と水田、農作物を潮風から守り続けている。
 近所の人の話によると、樹齢100年余りのクロマツが林立していたというが、マツクイムシの被害によって今は1本もない。常緑広葉樹の植被率は高く、マサキ、トべラなどの低木層が防潮林の中心になっている。
 クスノキ(3.12m ほか数本)、タブノキ(2.35m ほか)、トベラ、ヤマモモ、マサキ、ヒサカキ、ハゼノキ、エノキ(2.04m ほか数本)、それらの下部には、ムサシアブミ、ヒメヒオウギズイセン、ムラサキケマン、ウラシマソウ、ハラン、イノコズチ、オニヤブソテツ、ヤブジラミ、キケマンなどの中にノシランが一面に生育し、広い面積を占めているのが、海岸樹林の草本層の一つの特徴といえよう。
 (3)東由岐の潮害防備保安林
 長さ約200mの堤防に囲まれた内側に、標柱が県知事名で立てられており、潮害防備保安林が住民生活の上に如何に大きな役目を果たしているかがうかがえる。由宇の集落と広い水田を塩害から守っている最も大規模な防潮林といえる(図1)。


  高木層 クスノキ(1.58m)、エノキ(1.34m)、タブノキ(2.40m・1.85m)、ウバメガシ(1.35m ほか数本)、ホルトノキ(1.37m ほか数本)、ハゼノキ(1.24m ほか数本)。
  亜高木層 モチノキ(1.36m ほか数本)、モッコク(0.53m)、ヤブツバキ(0.47m)、ヤブニッケイ、ヒサカキ、テイカカズラ、ツタ、ムベ、エノキ、オオバヤシャブシ(0.49m)、タブノキ、ハゼノキ、ツルウメモドキ、ホルトノキ、トベラ、マルバグミ(0.49m)。
  低木層 カジイチゴ、カクレミノ、イヌビワ、ハマクサギ(0.46m)、マサキ、アカメガシワ、ヤブツバキ、ホルトノキ、ネズミモチ、モチノキ、オオムラサキシキブ(0.27m)、エノキ、ハゼノキ、シロダモ、トベラ、サネカズラ、クスドイゲ。
  草本層 イヌビワ、ツワブキ、ヤマアイ、マンリョウ、ホルトノキ、ヤブツバキ、ヤツデ、ノシラン、エノキ、キヅタ、ヒトツバ、マサキ、トベラ、ハマナタマメ、マメグンバイナズナ。
 (4)馬見原の防潮林
 イボ取りなとで信仰の深い満石権現さんに通ずる馬見原の防潮林は、広い面積ではないが、民家や木岐小学校などを潮害から守っている。
 タブノキ(3.15m)、エノキ(1.49m ほか数本)、ムクノキ(1.75m ほか数本)、枝の垂れ下がるヤブニッケイ(0.89m)、スダジイ、ヤブツバキ、キヅタ、マルバグミ、ヤブラン、イヌビワ、マサキなど、林下にはノシラン、アマチャヅル、ユキノシタなどの群落がある。エノキ、ムクノキが特に多いのが馬見原防潮林の特徴である。その他、阿部、伊座利では、個人の家の防風林として、常緑広葉樹のモチノキが多く、垣根として植栽されており、次にタブノキがよく目につく。
2)人家裏に残る樹林
 山が人家裏にまで迫っている旧家では、防風などのために、自然林をうまく利用している。そこには、海岸線の防潮林とは異なった樹林が形成されているのがおもしろい。
 (1)阿部のオガタマノキ林
 阿部の松村久樹氏の家の裏山及び前の山には、オガタマノキの林がある(松村家のオガタマノキ。昭和58年9月8日町天然記念物に指定)。裏山は、松村家の鎮守さんがまつられ、防風林ともなっているので、樹高もよく伸び、植被率も高い(図2)。


 オガタマノキ(0.83m・1.17m・1.04m・1.08m・0.43m・0.95m・2.14m・2.14m・1.27m・0.98m・1.10m・1.11m・0.93m・1.09m・0.28m・0.82m・0.84m・0.71m・0.81m・0.38m・0.17m・0.07m。ほか草本層には数十本の発芽幼木がみられる)。
  高木層 オガタマノキ、クスノキ、ヤマザクラ、タブノキ(1.17m・1.00m ほか)、コナラ、イヌマキ(1.36m・1.16m・1.29m)、ヤブニッケイ(2.10m)、モッコク(0.83m)、スダジイ(2.44m・1.66m・1.35m・1.19m)、ヒメユズリハ(0.68m)、ヤブニッケイ、ホルトノキ(0.92m・1.78m・2.09m・1.42m・1.92m・2.90m)。タブノキ(2.85m・1.17m)、イスノキ(0.76m・1.16m)、ヤマザクラ(1.70m・1.82m)、モウソウチク、モチノキ(1.36m)。
  亜高木層 オガタマノキ、ヤブニッケイ(0.66m)、ミミズバイ(0.57m)、イヌマキ、カラスザンショウ(0.72m)、シロダモ(0.53m)、モチノキ(0.14m)、ウバメガシ(0.77m・1.16m)、ヤブツバキ。
  低木層 ヒサカキ、ミミズバイ、イヌビワ、リョウブ、ヤブムラサキ、ウバメガシ、ヤマウルシ、ヤブツバキ、タイミンタチバナ、タブノキ、サカキ、オガタマノキ(多数)。
  草本層 タイミンタチバナ、カクレミノ、マンリョウ、ヤブコウジ、サルトリイバラ、ヒメユズリハ、テイカカズラ、ヤブツバキ、ササクサ、チヂミザサ、アリドオシ、ムベ、アマクサシダ、ウラジロ、サネカズラ、ノシラン、アマチャヅル、イヌマキ、イヌビワ、ミズヒキ、ハナミョウガ、フユイチゴ、ベニシダ、ムサシアブミ、シロダモ、ジャノヒゲ、キチジョウソウ、オガタマノキ。
 (2)北白浜のスダジイの樹林
 北白浜の中川健氏の家の裏山は、暖地性樹林の代表ともいえるスダジイの林でおおわれている(図3)。このような樹林は、昔はごく普通であったであろうと思われるが、今の由岐町では珍しい。この西側にはバクチノキの純林がみられ、共に暖地ならではの樹林としておもしろい。


  高木層 スダジイ(1.95m・2.03m・1.79m・2.25m ほか十数本)。カゴノキ(2.09m・1.53m・1.00m ほか3本)、バクチノキ(1.79m・2.31m・1.43m・1.30m ほか草本層に数十本)、タブノキ(2.80m)、ケヤキ(2.34m)。
  低木層 アラカシ、イヌビワ、バクチノキ、スダジイ(多数)、ヒノキ、ヒサカキ、タイミンタチバナ、ヤブツバキ、ヤブニッケイ、ミミズバイ、オンツツジ、ヒメユズリハ、シロダモ。
  草本層 スダジイ、ネズミモチ、ウラジロ、イチヤクソウ、バクチノキ、センリョウ、シュンラン、カクレミノ、モチノキ、サルトリイバラ、ヤマウルシ、テイカカズラ、ヤツデ、ムサシアブミ、シロダモ、ホソバカナワラビ、シラン。
 中川健氏宅隣家の谷本長氏宅の防風林は、太平洋からの塩害を防ぐために方位を計算したように適切な場所に植えられている。
 タブノキ(4.02m・5.10m・2.31m・2.09m・1.53m ほか数本)、ケンポナシ(0.97m)、ウラジロガシ(1.65m)、クリ(0.97m)。
 近くにカジノキの植栽が10数本みられ、その周辺にクマノギク、ジュズダマ、ヒメウリ、カエデドコロ、イシカグマ、ヤマハッカ、ツルボ、ネナシカズラ、キンゴジカ、ムラサキニガナ、イワヒトデ、ミソナオシ、ミズタマソウ、ウマノスズクサの花も咲いていた。
 (3)田井の浜のハマボウの群生地
 田井の浜の水門から上流へ約100〜200m の間の周辺は、海水の混入と土壌がハマボウ生育によく合っているためか、古くからハマボウの群生地となっている。
 幹は地表から叢生状に分かれることが多い。その一例を挙げると、1株が、0.23m・0.26m・0.21m・0.27m・0.19m・0.35m・0.21m・0.25m・0.26m・0.40m・0.21m・0.42m・0.20m・0.20m・0.21m・0.21m・0.17m・0.18m・0.17mの計19幹からなり、幹束周囲は2.25mにもなる。
 右岸には単幹のものもあり、幹周0.63m が一番太い樹であった。
 約3600平方メートルの狭い面積に約40株、幼木まで入れると50余株が自生しており、如何に環境が適しているかがわかる。
 河川改修のため、以前の状況とはやや異なったが、自然状態を壊すことなく保護されたことに敬意を表するとともに、県下に誇れるハマボウ群落として、今後とも保護を望む。なおハマボウ生育地周辺の種組成をみると、トベラ、アサキ(多数)、ウバメガシ、サルトリイバラ、ムベ、アキグミ、ツルウメモドキ、アカメガシワ、エノキ、クロマツ、ヤマモモ、ノイバラ、スイカズラ、タラノキ、ヒサカキ、クスノキ、ホルトノキ、ススキ、カモジグサ、イタドリ、ヨモギ、ヤブムラサキ、ハゼノキ、ツルヨシ(多数)、ニガナ、クズ、シオクグ(多数)。
 (4)旧お水大師跡のマルバチシャノキの樹林
 阿部の旧お水大師跡から海岸線までの間に、マルバチシャノキの純林がある(図4)。樹高はわずか5m 以下で、幹の下部からの枝分かれが多く、一部の樹の幹周を測定してみると、0.80m・0.51m・0.33m・0.33m・0.54m・0.41m・0.37m・0.46m・0.45m・0.51m・0.49m・1.02m、平均約0.51m で、約50余株が枝を交錯しながら群生している景観は、海岸から見るとみごとである。


 太平洋に突出した個所に、これ程の群生がみられるのも県下ではここだけである。
 周辺にはトベラ、ウバメガシ、マサキが中心の樹林となっているが、強い南風を受けるので樹高は低く、海岸線から長い横縞模様を何段にも階段状に作る、いわゆる風衝現象がみられるのは珍しい。
 マルバチシャノキ林の下の海岸線には、上部からの伏流水が湧出しており、その周辺には、海岸によく見られる次のような植物をみることができる。
 スズメノオゴケ、キキョウラン、ミヤコグサ、ムラサキタツナミソウ、ハマボッス、ハマモッコク、ハスノハカズラ、マルバマンネングサ、ハマヒサカキ、オニヤブソテツ、ハマアザミ、ヒトモトススキ、アゼトウナ、ハマゴウ、ベニバナボロギク、テリハノイバラ、イタドリ、ハマナタマメ、ツワブキ、シオギク、タカサゴユリ。
 (5)その他
 1 徳竹のタブノキ林
 木岐徳竹から日和佐に通ずる途中から少し入った所に、タブノキ、モチノキを中心にした樹林がある。
 タブノキ(2.20m・1.31m・2.38m ほか)、ヤブニッケイ(1.48m・1.19m・1.18m)、ヤマモモ(1.48m・1.45m ほか3本)、ヒメユズリハ(1.07m・1.49m・0.98m)、クリ(1.35m)、モチノキ(1.18m・2.15m ほか数本)、ウバメガシ(0.94m)、クスノキ(2.26m)、イヌマキ(数本)。
 林下には、オニヤブソテツ、センリョウ、キチジョウソウ、ノシラン、イヌマキ、ベニシダなどが生育している。
 2 木岐のホルトノキ
 木岐の濱名悌三郎氏宅の裏山は特にホルトノキが多い。
ホルトノキ(3.18m・2.42m・2.38m ほか数本)、スダジイ(1.82m)、クスノキ、タブノキ、ヒメユズリハなどからなる安定した樹林である。
 3 明神山頂上周辺の植物
 明神山(441m)は、由岐町と阿南市の境にある本町で最も高い山で、たえず四方からの強風にもまれ、樹高は低い。乾燥に強いもの、やや低温を好むものなど、中には海岸では珍しいものも混生している。
 ヤマツツジ、カンコノキ(0.93m)、イボタノキ、ヤマウルシ、シャシャンボ、ハゼノキ、エビヅル、カクレミノ、アマヅル、ヤブツバキ、ジャケツイバラ、カマツカ、ナワシログミ、イヌザンショウ、アオツヅラフジ、テリハノイバラ、アセビ、ガマズミ、イソノキ、ゴンズイ、ネムノキ、マルバハギ、ウツギ、カゴノキ、オカトラノオ、ミドリネナシカズラ、リュウノウギク、コウヤボウキ、カラムシ、タンキリマメ、ヤブマオ、オニタビラコ、ツリガネニンジン、スイカズラ、ヤマハッカ、コマツナギ、キキョウ、カエデドコロ、ミヤコグサ、ボタンヅル、ノギラン、キツネガヤ、コメガヤ、キンミズヒキ、オトギリソウ、アリノトウグサ、アキノタムラソウ、スズメノオゴケ、ヒオウギ、ホシダ、ワレモコウ、オトコヨモギ、シハイスミレ、ハルリンドウ、ツルリンドウ、シュンラン、ナツエビネ、キキョウラン。
 4 山座峠周辺の植物
 木岐から日和佐町田井に通ずる、標高約80〜170m の山座峠周辺の植物を調べると次のようである。
 ガマズミ、ツヅラフジ、アマヅル、アケビ、ガクウツギ、ヤエノコガクウツギ、カギカズラ、ハゼノキ、ハマセンダン、ヤマウルシ、シマサルナシ、ナンバンキブシ、オンツツジ、ウツギ、マルバウツギ、イヌビワ、ゴンズイ、スイカズラ、ヒメユズリハ、ネジキ、クサギ、ヤブムラサキ、ネズミモチ、マルバグミ、クスノキ、ナワシログミ、シロダモ、ツルグミ、キリ、ツタ、アオツヅラフジ、アカメガシワ、カクレミノ、リョウブ、テイカカズラ、カナメモチ、エノキ、タラノキ、ムクロジ、ホソバイヌビワ、コウゾ、コジイ、ヤブツバキ、ヒサカキ、ミミズバイ、タブノキ、キヅタ、タイミンタチバナ、ハマクサギ、カゴノキ、クロガネモチ、クヌギ、トベラ、ヤマノイモ、キキョウ、ネジバナ、ニガナ、コクラン、ノアザミ、エゴノキ、チガヤ、ノゲシ、ウシハコベ、キツネノボタン、カラムシ、オニタビラコ、ナギラン、シュンラン、シタキソウ。
3)砂浜、湿田の植物
 由岐町は、長い海岸線を持ちながら、砂浜は木岐の白浜、志和岐港の一部、田井の浜、大井にしかみられない。そこには、海岸特有の植物も多く見られた。次にそれらを示す。
 (1)白浜
 タチイヌノフグリ、ギシギシ、ハマヒルガオ、ノゲシ、ハマエンドウ、ハマゴウ、カモジグサ、ヤブジラミ、ヘクソカズラ、ギョウギシバ、アメリカフウロ、コモチマンネングサ、ハマダイコン、カタバミ、ツルナ、アカザ、ヤエムグラ、オカヒジキ、ヨモギ、コタツナミソウ。
 (2)田井の浜
 ギョウギシバ、カモジグサ、キツネガヤ、アレチギシギシ、セイタカアワダチソウ、コセンダングサ、スズメノカタビラ、ウマゴヤシ、ハマダイコン、クズ、ホウキギク、ヒメヒオウギズイセン、カラスウリ、ヒメムカシヨモギ、ニワゼキショウ、ヒメジョオン、ハマウド、ブタナ、セイヨウタンポポ、オニユリ。
 (3)志和岐
 ガガイモ、イヌホウズキ、ナミキソウ、シロバナキツネノマゴ、シロバナイヌタデ、オトコエシ、キキョウラン、シロバナママコノシリヌグイ、マルバアカザ、ネコハギ、シオギク、アゼトウナ、クサスギカズラ、テリハノイバラ、ハマヒルガオ、ハマゴウ、マルバツユクサ、ハスノハカズラ、ヘクソカズラ、ヤマハッカ、ハマエノコロ。
 (4)由岐の湿田・池などの植物
 山地がほとんどの面積を占め、水田面積が狭く、池、河川も他町村に比べれば少ない本町の湿田などに、次のような植物がみられた。
 1 田井の放棄水田
 田井川によって潤されている田井の水田は、本町で最も広い耕作田となっているが、一部に放棄された湿田がある。
 タウコギ、アギナシ、キクモ、イボクサ、ヒメビシ、ホタルイ、ミゾソバ、ヒメガマ、ヤナギスブタ、ヒロハイヌノヒゲ、クグガヤツリ、タマガヤツリ、ギョウギシバ、イ、アオウキクサ。
 2 東由岐、由宇の放棄田
 シロネ、ミゾソバ、セリ、カンガレイ、カサスゲ、クサネム、ハリコウガイゼキショウ、キツネノボタン、ハイチゴザサ、ヤノネグサ、コブナグナ、ウシノシッペイ、ヌマトラノオ、サンカクイ、シロバナサクラタデ、マツバイ、アメリカアゼナ、ウキシバ。
 3 田井の池周辺
 ホテイアオイ、ショウブ、ヤブカンゾウ、オニユリ、オトギリソウ、ヌマダイコン、セイタカアワダチソウ、ヤマイ、アカバナ、ミソハギ、シロバナサクラタデ、ヒヨドリバナ、ヒメガマ、ミゾソバ、イ、ハイチゴザサ、アシボソ、ヤナギタデ、ホシアサガオ、アレチウリ、スズメノオゴケ。池の周りには特にヒトモトススキ、ツルヨシがよく繁茂し、珍しいクログワイもわずかにみられる。
 4 鹿ノ首岬の池
 阿部の鹿ノ首岬の中程に、幅約50m、長さ約150m の塩水性の池がある。池の南側にヒトモトススキ、ツルヨシの群落がみられるが、水深0.5m 前後の池の中には、水草は認められなかった。
 池を取りまく樹林は、潮風が強いため、風衝現象がみられ、クロマツ、アカマツ以外の常緑広葉樹の樹高は約3m 以下で、一方に傾斜したウバメガシの純林が特に目だった(図12)。池の東側に約1.5m の石垣が積まれており、その内側の樹林には次のような樹種がみられた。


 ハマヒサカキ(0.38m ほか数本)、トベラ(多数)、ヤブニッケイ、ウバメガシ(0.63m。ほとんどを占めている)、カクレミノ、ヒメユズリハ、ネズミモチ、ハゼノキ、ナワシログミ、モチノキ(0.89m ほか多数)、シロダモ、タブノキ(0.93m)、ヒサカキ、マサキ、ヤマモモ、クチナシ、イヌビワ、アカマツ(0.54m)、クロマツ(1.18m・1.05m)、テイカカズラ、サカキカズラ、エノキ。
 林下には、ツワブキ、クサイチゴ、セリ、スイカズラ、ヒメウズ、ネズミモチ、アオツヅラフジ、ノイバラ、ベニバナボロギク、ハスノハカズラ、ナワシログミ、ゴヨウアケビ、タチツボスミレ、ハマナタマメ、メリケンカルカヤ、ツルナ、オオミマンリョウ、ヒオウギ、タイミンタチバナ、イヌマキ。
 海岸には、ハマモッコク、キキョウランの群生がみられ、シオギクも多い。シオギクのうち舌状花のあるアワギクは、志和岐、由宇の坂の浜などにみられた(図11)。日和佐、牟岐などの海岸線にも点在している。

4 由岐町の特記すべき植物
 1)珍しい植物
 1 ハマボウ(アオイ科)Hibiscus hamabo Sieb. et Zucc.
 田井の浜のハマボウは、県下一の群生地で、7〜8月の盛夏にハイビスカスのような黄色の大きく美しい花を樹いっぱいに咲かせる。海部郡では、日和佐町から宍喰町にかけて自生がみられたが、今では護岸改修とともに完全に消えてしまった。
 2 マルバチシャノキ(ムラサキ科)Ehretia dicksonii Hance var. japonica Nakai.
 暖地に生える落葉高木で、枝は横に広がる。阿部の旧お水大師から海岸線の間に群生地がみられる。葉は厚くて硬く、表面は剛毛がはえ、著しくざらつく。5月に白花を密につけ、秋には黄色の直径1cm ほどの実をつけるので、庭木としている所もある。由岐町では、他に西由岐、山座などと、日和佐町にわずかに自生するだけである。
 チシャノキは県内に自生なく、各地の公園・神社などに植栽されている。ヒロハチシャノキは、日和佐薬王寺境内のみ植栽されている。
 3 ナミキソウ(シソ科)Scutellaria strigillosa Hemsley.
 海岸の砂地にはえる多年草で、高さ10〜40cm、地下茎を伸ばして繁殖する。夏から秋にかけて紫色の唇形花を1個ずつ着け、一方に向いて咲く(図6)。鳴門から宍喰の砂浜にかけ点在していたが、鳴門と本町のみとなった。砂浜の安定した所だけに残る貴重な植物である。


 4 ハコネウツギ(スイカズラ科)Weigela coraeensis Thunb.
 海岸付近にはえる落葉低木で、しばしば庭園に植栽される。箱根空木の意であるが、箱根には本種はない。旧お水大師跡への小道筋には、幹周0.68m・0.77m・1.03m など約51本の古木を数えた(図5)。上部が枯れて萠芽のある株が多い。これらは植栽されたものだが、志和岐から阿部の県道の斜面には、自生がみられるのは珍しい。


 初夏に、はじめ白色だがしだいに紅紫色に変化するみごとな花が咲く。由岐の名所の一つといえる。


 5 クログワイ(カヤツリグサ科)Elecharis kuroguwai Ohwi
 田井の池にわずかに群生している(図13)。泥中に、直径7〜18mm 位の黒褐色のクワイのような塊茎があるので、その名がついた。
 茎は円柱形で平滑、叢生し、緑色で軟弱、中空で横隔膜が多くあるので他と区別できる。

 6 クマノギク(キク科)Wedelia calendulacea Less.
 暖地性で、海岸のやや湿ったところにはえる多年草(図8)。熊野菊は、和歌山熊野地方に産するからで、本県では、県南の海岸近くで、冬場暖かい所に時々みかける。

 7 ハルリンドウ(リンドウ科) Gentiana thunbergii(GoDon)GriSeb.
 5月頃咲くリンドウで、茎頂に1個ずつ青紫色の花を上向きに開く。高さは10cm 位で、かわいらしい。由岐町では、明神山その他の山側に局所的にみられる。
 8 シロバナシナガワハギ(マメ科)Melilotus alba Medicus
 中央アジア原産の帰化植物で、牧草として栽培されたことがある。夏頃に1茎に数十個の小さな白花をつける。海部郡では初めての採取である。
 9 ムクゲバアオイ(アオイ科)Malva hibiscifolia Akasawa
 帰化植物であるが、本県では数少なく、海部郡では初めての採取である(図9)。本町でも1か所にわずかにみられるだけである。花は小さいがかわいらしく、花や実にアオイ科の特徴を持っている。

 10 マルバフジバカマ(キク科)Eupatorium rugosum Houtt.
 北米原産の帰化植物で、総苞庁は10個内外で等長である。花冠は純白色で、11月上旬頃まで咲く。県下でも珍しく、海部郡では初めての採取である(図10)。

 11 サイコクイカリソウ(メギ科)Epimedium diphyllum (Morr. et Decne) Lodd. subsp. kitamuranum (Yamanaka) k. Suzuki
 丘陵や山すそなどの樹下にはえる多年生草本で、5月頃白色の花を下垂する(図7)。


県内では数か所で確認されているが、開発などで少なくなっている。
 強精、強壮薬として古くから用いられる。県内には、ほかにヤチマタイカリソウが石灰岩地帯にみられる。
 12 ホルトノキ(ホルトノキ科)Elaeocarpus decipiens Hemsl.
 ホルトノキは、鳴門市周辺から徳島市城山、眉山、阿南市富岡から由岐にかけて分布が多く、日和佐、牟岐、海南、宍喰と行くにつれてほとんどみられなくなる。気温の低い県北と、温暖な県南にほとんど分布しないことから、微妙な気温の差、あるいは雨量の差が分布に影響しているものと思うが、由岐町と日和佐町辺りが分布の境と感ずる。
 案内をして下さった西ノ地の竹林六郎氏によると、地元の人はホルトノキをシイトメといい、子供の頃、台風の去った朝は、暗いうちからちょうちんをさげて実を拾い、食べたという。
 13 ハマセンダン(ミカン科)Evodia meliaefolia (Hance) Benth.
 東由岐貴井神社のハマセンダンは、幹周5.37m・3.36mで県内では特に太く、県天然記念物に指定されたが、平成4年8月19日の台風11号により、太い方が倒れた。東由岐にはそのほかに数本みられるが、県内にはその数は少ない。
 14 アレチウリ(ウリ科)Sicyos angulatus L.
 茎はつる性で、長さ数 m になり、茎、葉、果実など著しくざらつき、他物にからまり、おおい枯らし、除去に困る。北米原産で、現在は青森県から九州まで広く強害草化しつつある。県内では吉野川堤防によく見られ、県南では桑野川まで侵入が確認されていたが、本調査で田井の山すそでみられた(図14)。これ以上まん延しなければよいがと思う。

2)由岐町の帰化植物
 帰化植物と呼ばれるには、三つの条件が必要である。
 第一は人間がどこからか持ちこんだ植物である。人間が自分の生活に役立つ植物を意識的に運ぶ。例えば、アサ、イチビなどは皮から繊維を作る、イネ、ムギなどを食料とする、フジバカマなどを薬用とする、などのために運ぶ。
 第二は、野生状態で見いだされることである。ダリヤ、チューリップなどは、人間の保護が必要で、放置すれば消えてしまうので、帰化植物にはなり得ない。
 第三は、外来植物ということである。国境は人間が決めたものであるが、植物にとっては国境はない。日本は海に囲まれているから国境がはっきりしているので、日本ぐらい帰化植物という言葉がはっきり使える国は少ない。
 帰化植物の侵入経路も多様である。港、空港、税関、牧場、養鶏場、ゴルフ場、醤油あるいは豆腐製造工場などから広がって行く。いずれも諸外国と直接、間接的に関係深い所である。
 由岐町の帰化植物は、海部郡内では最も種類が多く、郡内で初めてみつけられた種もいくつかある。その原因は、人里離れた所に、養鶏、養豚が古くから営まれており、その飼料とともに侵入したものが多いためと考えられる。
 帰化植物の中には、旺盛な繁殖力を持ち、在来種を追いやるほどのホテイアオイ、セイタカアワダチソウ、ブタクサ、ヒメジョオンなど、また人体や農作物に悪影響を及ぼすものも少なくない。次に由岐町でみられた帰化植物を挙げる。
 ビロードモウズイカ、シロバナシナガワハギ、マツバウンラン、セイタカアワダチソウ、マツヨイグサ、アメリカセンダングサ、イチビ、アレチギシギシ、アメリカキンゴジカ、ムクゲバアオイ、ブタナ、キンゴジカ、ダツラ、タマサンゴ、イヌホウズキ、ヤナギハナガサ、アメリカネナシカズラ、ヒルザキツキミソウ、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ、ムラサキカタバミ、ムシトリナデシコ、シロザ、オオケタデ、ニワゼキショウ、ハナカタバミ、アメリカフウロ、マメグンバイナズナ、ヒメヒオウギズイセン、ノハカタカラクサ、セイバンモロコシ、ヒメコバンソウ、オオクサキビ、カモガヤ、キンシバイ、ウマゴヤシ、ホシアサガオ、アレチウリ、コセンダングサ、ヒメジョオン、ヒメムカシヨモギ、アレチノギク、ヒロハホウキギク、ホウキギク、オニノゲシ、ノゲシ、ベニバナボロギク、ダンドボロギク、チチコグサモドキ、オナモミ、アメリカアゼナ、オオニシキソウ、コニシキソウ、シロツメクサ、ムラサキツメクサ、コメツブツメクサ、シュウメイギク、オシロイバナ、ヒメツルソバ、キショウブ、サフランモドキ、シマスズメノヒエ、ジュズダマ、マルバフジバカマ。

5 由岐町の巨樹
 巨樹といっても、樹種によっては、幹周(胸高)が1m に達しないものでも、杉の6m以上に匹敵する意味を持つものもある。そこで、各樹種ごとに本町で太いと思ったものを測定し、後世の参考のために記録しておく。いずれも数値は胸高幹周を示す。氏名敬称略。
 スダジイ 2.03m・1.93m・2.25m・1.79m(以上木岐中川健宅裏山)、3.13m、1.67m(以上木岐白浜集落センター)、2.60m(山座)、3.21m(西由岐住吉神社)。
 コジイ 2.08m(木岐白浜集落センター)。
 タブノキ 3.35m・4.12m・2.96m(以上東由岐天神社)、2.73m(東由岐由宇堺谷哲男)、2.87m・2.73m(以上田井の浜防潮林)、2.80m・4.02m・2.31m・5.10m(以上木岐谷本長宅)(5.10m の太さは県下でも屈指の太さで、樹形もよい)、3.69m(東由岐貴井神社)、2.85m(阿部松村久樹宅裏)、3.11m・2.90m(以上西ノ地岡崎神社)、3.53m(田井本田正幸宅裏)、2.97m(木岐白浜集落センター)、3.42m(山座)。
 ホルトノキ 3.30m(阿部)、2.52m(由宇馬頭観音)、2.20m(東由岐天神社)、2.90m・2.09m(以上阿部松村久樹宅裏山)、3.18m・2.42m・2.38m(以上木岐濱名悌三郎宅裏山)、2.99m(田井木田正幸宅裏)。
 ハコネウツギ 1.03m・0.77m・0.68mほか数十本(阿部)。
 エノキ 2.69m(白浜集落センター)、2.16m(由宇笹田秀則宅前)、2.14m(木岐小野聡宅前)、2.80m(木岐延命寺)。
 アラカシ 0.98m(白浜集落センター)、1.65m(JR木岐駅)。
 クスノキ 3.98m・3.76m・3.47m(以上木岐白浜集落センター)、2.81m(木岐白浜集落センター)、2.81m(田井ノ浜防潮林)。
 ヒメユズリハ 1.20m(木岐白浜集落センター)、2.81m(志和岐日吉神社)。
 ハマボウ 0.63m・0.35m ほか数十本(田井)。
 マルバチシャノキ 1.02m・0.80m・0.54m ほか数十本(阿部)。
 シロダモ 0.96m・1.65m(以上阿部旧お水大師跡)。
 マルバグミ 0.49m(東由岐防潮林)。
 ハゼノキ 1.24m(東由岐防潮林)。
 ウバメガシ 1.35m(東由岐防潮林)、1.34m(田井ノ浜防潮林)、1.96m・1.86m(以上白浜白浜知洌宅)。
 モチノキ 1.36m(東由岐防潮林)、1.53m(由宇堺谷哲男宅裏)、2.67m(由宇水口英行宅前)、2.15m・1.18m(以上木岐悦田慶一宅前)、2.13m(東由岐貴井神社)。
 モッコク 0.53m(東由岐貴井神社)。
 ヤブツバキ 0.47m(東由岐防潮林)、1.35m・1.05m(以上由宇堺谷啓男宅裏)。
 ハマクサギ 0.46m(東由岐防潮林)。
 オオムラサキシキブ 0.27m(東由岐防潮林)。
 クロガネモチ 2.09m(木岐悦田慶一宅前)、2.32m・1.77m・1.73m(以上東由岐天神社)。
 イスノキ 1.47m・1.44m(以上東由岐天神社)、1.16m(阿部松村久樹宅裏山)、1.69m・1.67m(以上田井木田正幸宅裏山)。
 ヤマモモ 1.96m(由宇馬頭観音)、4.34m・2.54m(以上志和岐谷新聞悦博宅横)。
 ヤブニッケイ 0.82m(東由岐防潮林)、1.48m・1.18m・1.18m・1.19m(以上木岐悦田慶一宅前)、2.01m(阿部松村久樹宅前)。
 ハマセンダン 3.36m(県指定天然記念物。東由岐貴井神社)、3.22m(由宇水口英行宅裏山)、3.30m(東由岐由岐中晃宅裏)、2.39m(志和岐)。
 イヌマキ 0.94m(由宇堺谷啓男宅横)、1.36m・1.29m(以上阿部松村久樹宅裏山)、1.85m・1.66m(以上東由岐貴井神社)、1.68m・1.43m・1.33m(以上志和岐吉野神社)。
 アオキ 0.23m(由岐堺谷啓男宅横)。
 アコウ 0.54m・1.51m(以上亜由岐公民館前)。
 マサキ 0.47m(西由岐公民館前)。
 アカマツ 1.68m(西由岐住吉神社)。
 カクレミノ 0.70m(西由岐住吉神社)。
 ケンポナシ 0.97m(木岐谷本長宅裏山)、1.15m(木岐延命寺境内)。
 ウラジロガシ 1.65m(木岐谷本長宅裏)。
 クリ 0.97m(木岐谷本長宅裏山)、1.35m(木岐悦田慶一宅前)。
 バクチノキ 2.31m・1.79m・1.43m(以上木岐中川健宅横)。
 カゴノキ 2.34m(木岐中川健宅横)。
 ムクノキ 2.78m(東由岐長円寺)、1.87m・1.14m(以上東由岐防潮林)。
 ナギ 1.46m(志和岐吉野神社)。
 イブキ 3.44m(阿部喜多条瑞穂宅・町指定文化財)。
 オガタマノキ 2.14m・1.80m・1.27m・1.17m ほか数十本(阿部松村久樹宅裏山など)。
 コナラ 0.90m(阿部松村久樹宅裏山)。
 ヤマザクラ 1.82m・1.70m(阿部松村久樹宅裏山)。
 ミミズバイ 0.57m(阿部松村久樹宅裏山)。
 カラスザンショウ 0.72m(阿部松村久樹宅裏山)。
 カンコノキ 0.93m(明神山)。
 イロハモミジ 1.35m(JR木岐駅)。

6 おわりに
 コバンモチは、本県を代表する暖地性樹種で、宍喰町から牟岐町の海岸線や山地にかけてその分布は少なくない。日和佐町では、薬王寺裏山から海岸線にもわずかながらみられるが、本調査では確認できなかった。由岐町以北でも、コバンモチの分布はみられるが少ない。由岐町が本県の分布の多少の境になるように思う。その原因はわずかな気温の差異によるのかはさだかではない。
 防潮、防風林は、本町の樹種を知る上で大きな役割を持っている。それらは、今後とも保護されるであろうが、本町の貴重な樹木の遺産でもある。マルバチシャノキ、オガタマノキ、ハマボウの三種は、貴重種でもあり、本県の他町村では見ることのできない群生地を形成している。その他、クログワイ、ナミキソウ、マルバフジバカマなど珍草も少なくない。それらが今後も生き続けられるような自然を残され、自然のある由岐町として発展されることを望む。

1)徳島市北田宮町三丁目 2)北島町中村 3)徳島市西新浜町一丁目 4)牟岐町中村
5)鳴門市堀江北小学校 6)三野町王地小学校 7)山城町河内小学校


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