阿波学会研究紀要


このページでは、阿波学会研究紀要論文をご覧いただけます。
 なお、電子化にともない、原文の表記の一部を変更しています。

郷土研究発表会紀要第39号
三好町の神社祭礼行事

民俗班  岡島隆夫

1.例祭および祭礼行事一覧

(註1)神社の配列は「徳島県神社誌」に登載されている順とし、便宜上番号を付した。
  なお、2 〜9 の神社は1 の飛び地境内社として登記されている。
(〃2)例祭日とその祭礼行事、その他の主要祭日は、町内全神社の宮司を勤める金丸光作氏にお聞きしたもので、行事欄が空欄の社は例祭式のみである。

2.三好町神社(祭礼)分布  〈図中の番号は前表の神社番号と対応する〉

3.主な祭礼行事
(1)足代の月見祭り
 三好町の東端に位置する足代の八幡神社は、鎌倉初期、石清水八幡宮の荘園・三野田保の守護神として同社の分霊を祭ったのが起源とされる。県指定天然記念物のナギの古木で有名な境内に、8月26日(もと旧暦7月26日)の月見祭りには町内外から2500人もの善男善女が詰めかける。戦前は、回り踊りの舞台に、音頭出しが20〜30人も揃って夜が明けるまで踊ったそうだ。戦後もしばらく境内に櫓をくみ月の出る午前2時頃まで回り踊りを楽しんだという。今は境内の特設舞台で、かわいい巫女さん(小学生3〜4人)が「乙女舞」「浦安の舞」を奉納し、境内に数十軒の夜店が軒を並べ、福引やカラオケ大会、芸能ショー、阿波踊りなどがあって夜遅くまで賑わう。
 10月18日の秋祭りも近在の大祭で、神輿2台、ダンジリ3台が出る。かつては獅子舞も奉納されたが15年ほどまえから中断している(その獅子舞はこのほど小学生により復活し運動会で披露された)。 祭りには氏子地域の旧足代村全域を8地区に分け、本当屋や屋台当屋を交替で務めている。
(2)昼間の大宮祭り
 宮内に鎮座する天椅立神社は、もと郷社で“昼間の大宮”と呼ばれ、町内一の大社であり、平安時代の延喜式にでてくる式内社とされている。
 10月17日の秋祭りにはダンジリ2台が神輿のお供をして祭りを盛り上げる。神輿は白装束に身を包んだ十数人の若者が担ぐ。2台のダンジリは幕や七夕飾りのような笹竹で華やかに飾り立て、着飾った打子が数名ずつ乗り込んで太鼓やカネを打ち鳴らしながら、大勢の氏子衆に引かれて賑やかにお供する。かつては“お客ダンジリ”と称する氏子外のダンジリも集まって威勢を競ったそうだ。
 なお、昼間では町役場のすぐ東にある出雲神社(出雲大社教)の春祭り(4月15日)と秋祭り(11月15日)も有名で、農具市が立ち大勢の参拝客で賑わう。
(3)東山の獅子舞
 貞安の鷲羽神社や馬岡神社の秋祭り(10月19〜21日)には、氏子が豊作を感謝し悪魔退散を願って獅子舞を奉納する。その構成は、太鼓(裏打)2名、打子2名、獅子2名、カネ2名で、大人は法被、打子は花笠を被り袴姿に草鞋ばきで、2人が獅子を操りカネや太鼓のリズムに合わせて巧みに舞い踊る。この獅子舞の由来は、昭和29年に東山葛籠から伝わったとされ、その葛籠の山祇神社の秋祭り(10月10日)に奉納される獅子舞は三野町大平から明治20年ごろ伝わったと言う。これらは「徳島県の民俗芸能」(徳島県教育委員会文化課編)にも取り上げられており、ともに奥深い山里で祭礼を盛り上げている。


徳島県立図書館