阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第39号
三好町の植物相

植物同好会班(徳島県植物同好会)
   阿部近一1)・赤澤時之2)・

   木村晴夫3)・木内和美4)・

   木下覚5)・真鍋邦男6)・小川誠7)

1.自然環境の概況
 三好町は、徳島県の北西部に位置し、吉野川北岸一帯から讃岐山脈山頂県境までが町域で、北東は標高 800〜900m の山が峰を連ね、東は三野町,西は池田町、南は井川町、三加茂町、北は県境で香川県多度郡仲南町、三豊郡財田町に接する54.46平方キロメートルの面積を持つ山間地である。
 地質は山地部で和泉砂岩層、平地は洪積層、沖積層から成る。
 讃岐山脈を源とする小川谷川は、つづら谷、滝久保谷川、小川谷川、増川谷川の水を集める町内では、最大の川である。本町に観測所がないため池田、市場のものを参考にすると、年平均気温では池田 15.1℃、市場 16.0℃。年間降水量では池田 1554mm、市場で 1403mm。温量指数では池田122.7、市場で132.2(いずれも徳島気象台、県内累年気象表1945〜1970)であるが、本町は池田に隣接するので、それとほとんど変わらないと考えられる。県南、那賀川筋の年間降水量 3000mm を超すのと比較すれば、その半分に達しない寡雨地帯で、しかも南面のため乾燥度は高い。そのため町面積の8割を山地で占めながらも、ほとんどがアカマツを中心としたやせ地であるため、林業への依存度は低い。 平地は吉野川北岸に形成された河岸段丘で、湧水・日照時間、肥沃な土壌などに恵まれ農耕、果樹園芸の盛んな地域である。

2.植生の概況
 三好町は、四国の中心に近いとはいえ、讃岐山脈の標高900m前後のゆるやかな南斜面にあって、標高500m以下に見られる暖温帯区、約500m〜1000mの中間温帯区に位置するが、乾燥度の高い讃岐山脈の特徴を受け、アカマツを中心として、アベマキ、コナラ、ウラジロノキなどの二次林と、スギ、ヒノキの人工林がわずかながら湿潤な谷川沿いに広がっている。そのため自然植生を残す所は少なく、社寺林にわずかながら昔の植生を知ることができるに過ぎない。
(1) 暖温帯区の植生
 吉野川の河岸段丘に発達した町の中心部は、早くから開発が進み、わずかな社寺林と、その中に勢いのある帰化植物や、乾燥に強い草本が生き残っているに過ぎない。整理された社寺林は、自然林と異なり、中間層の樹林がなく、高木層からいきなり草本層に移行している。そのため次の世代の樹木がないため、社寺林では若返りがむずかしく、補植によってのみ支えられる不安定な組成となっている。
1  足代の八幡神社
 人口約2000人の足代地区の氏神として、古くから信仰の中心となっている。それは広大な境内にある樹齢を重ねた樹種と、その下部に定着した草本からもうかがえる。特にナギの県下一の巨樹と数の多さは珍しく、県の天然記念物に指定されている。ナギ(2.64・1.91・1.73・1.72・1.60・1.56・1.45その他)、(カッコ中の数字は、目通り幹周。単位 m。以下同じ)。イチョウ(4.45・2.95他)、クスノキ(3.73・4.27・4.19・3.86・1.80)、クワ(1.30)、ムクノキ(3.25)、アラカシ(1.74)、ヤブツバキ、ヒイラギ、ユズリハ、セコイアメスギ。
 それらの樹林下部の草本層には、シロバナオドリコソウ、ハグロソウ、セントウソウ、クサイチゴ、ヒメジョオン、オオエノコログサ、メヒシバ、ヤブミョウガ、カラムシ、シュロ、ノブドウ、シオデ、アレチノギク、ハスノハカズラ、タラノキ、スズムシバナ、フラサバソウなどがみられた。
2  願成寺
 イチョウ(4.12)、ノウゼンカズラ(0.56)、トウモクレン、ヒノキ、イロハカエデ、ハイビャクシン、サルスベリ。
 草本には、ボタン(植栽)、テリハノイバラ、ニューサイラン、オニヤブソテツ、シロツメクサ、カンサイタンポポ、タマサンゴ、スイレン、ムラサキケマン、ヒメウズ。ノウゼンカズラの幹周 0.56m の太さは、住職の話しによると樹齢80年以上経ているということであり、県内では突出している。
3  上の段の荒神さん
 ムクノキ(3.78)、エノキ(3.30)、ナツヅタ(0.42)。ナツヅタは樹上、岩上などに着生するが、0.42m の幹周は珍しく、エノキの 20m 余りの高さの所まで伸びている。
4  昼間の敷地の森
 ムクノキ(7.49・3.95)、クスドイゲ(1.25・0.86)、ムクノキの古木は、ほとんど空洞で白骨化し、わずか 0.5m 位の幅で寿命をつないでいる。隣家の川人勝重氏(86)によると、子供の頃は、よく枝を張り、樹勢があったという。今も県下一と考えられる風格がしのばれる。
5  葛篭山祇神社
 スギ、カゴノキ、ヤブニッケイ、マサキ、シロダモ、イチョウ、ギンモクセイ、キンモクセイ、イロハカエデ、ムクノキ(3.74、3.28)、ヒノキ、シュロ、フユヅタ、オオツヅラフジ。
 草本には、イタドリ、ヤマヤブソテツ、ノアザミ、イヌワラビ、ツルボ、キクイモ、ヤマハッカ。
6  笠栂の船戸神社
 ヤマザクラ、スギ、モウソウチク、アカガシ、ヤブムラサキ、オオコマユミ、アオツヅラフジ、アオテンナンショウ、ウバユリ、ゼンマイ、シャガ、クワクサ、クサイチゴ。
7  伊月集会所(倭津岐神社)
 エノキ(3.77・2.87)、ヤブニッケイ(1.00)、ムクノキ(4.21)、ツルマサキ、フジの古木。
8  中屋南集会所
 エノキ(2.25)、ムクノキ(2.33)、クスノキ(2.29)、クスドイゲ(0.96)、アラカシ(2.92・2.26)、センダン(2.07)、エンジュ(1.2)、フユヅタ、ヤブニッケイ。
9  小川谷川下流の草本
 昼間の小川谷川周辺の畠、荒地などで四季折々に環境に適応した草本を見ることができる。シロヨメナ、ヌルデ、クサマオ、アオツヅラフジ、ノガリヤス、キブシ、ヤマノイモ、クズ、コマツナギ、テリハノイバラ、ハゼノキ、アブラススキ、ヤブラン、ウツギ、ネナシカズラ、ヨモギ、ヒキオコシ、ムクゲバアオイ、ダンドボロギク、ザクロソウ、ヨウシュヤマゴボウ、エノキグサ、コセンダングサ、ヒメムカシヨモギ、オニノゲシ、イタドリ、オオアレチノギク、セイタカアワダチソウ、カゼクサ、アメリカセンダングサ、シナダレスズメガヤ、カナムグラ、セキショウ、ニガカシュウ、キササゲなどで、他町村との地形、気象の違いによる植生の特徴はみられない。
10  西ノ池の溜池
 小川谷川、黒川原谷川、黒木谷などの水は灌漑用水として欠かせないものであるが、それらの谷川から恩恵を受けない地点での用水として、溜池が利用されて来た。これは降水量の少ない讃岐山脈に隣接する町村の特徴といえる。所がこれらの溜池は、用水路が整備されるに従って、農地、住宅などに転用されていった。しかし、西ノ池、土井池は今なお利用されている。
 西ノ池周辺の植生の組成を調べると、ホウキギク、カヤツリグサ、タマガヤツリ、キツネノマゴ、シロツメクサ、アシカキ、アゼムシロ、トキリマメ、アメリカミミナグサ、セリ、オオバコ、イ、ヒメガマ、ガマ、カンガレイ、アカメヤナギ、ノササゲ、テリミノイヌホオズキ、ヤブマメ、アゼガヤツリ、ヒメジソなどがみられ、沈水性のクロモが一面に繁茂し、マルタニシ、モノアラガイが生息していた。土井池では、沈水性のオオカナダモがみられた。オオカナダモは、流水、池などに旺盛な繁殖をみせる帰化植物である。
(2) 中間温帯区の植生
1  龍王神社の二次林
 三好町の北東部、黒川原谷川の上部にある龍王神社(標高 700m)の植生をみると、
 高木層 クリ、ヤマザクラ、アカマツ、ケンポナシ、ホオノキ、スギ。
 亜高木層 ネジキ、コハウチワカエデ、リョウブ、カゴノキ、サカキ、ヤブニッケイ、ナツヅタ、ウラジロノキ。
 低木層 ナンキンナナカマド、ダンコウバイ、ケクロモジ、ヒノキ、アブラチャン、コバノガマズミ、アマヅル、ナツハゼ、ガマズミ、ヒサカキ、ハリギリ、ヤマウルシ、ヤブニッケイ、ツリバナ、イヌツゲ、オンツツジ、アセビ、コナラ。
 草本層 ヤマツツジ、コウヤボウキ、ツルニンジン、ツルリンドウ、イヌツゲ、マルバウツギ、オオカモメヅル、ヤマウルシ、ネズミモチ、テイカカズラ、ヤブコウジ、シハイスミレ、イヌエンジュ、サルトリイバラ、ヒサカキ、イチヤクソウ、ヤイトバナ、トウゲシバ、ソヨゴ、ミツバアケビ、アラカシ、コツクバネウツギ、ダンコウバイ、コヤブタバコ、コタチツボスミレ、ミヤマウズラ、アキノタムラソウ、ワラビ、スノキ、シュンラン、ノガリヤス、アマヅル、ハリギリ、イヌガヤ、ヤブレガサ。
 剣山系では、標高 700m は、ブナ帯の下部に当り、シデ類、コハウチハカエデ、ヒメシャラ、コシアブラなど中間温帯樹によって占められているが、龍王神社では、それらの樹種は少なく、むしろ暖温帯区の樹種で占められている。ケンポナシ、コハウチワカエデ、ウラジロノキなどわずかに標高の高い所であることをうかがえるものがみられる。
2  アベマキ・コナラ林
 標高 450m によく発達したアベマキ、コナラ林がある。その林下にリョウブ、アセビ、コバノトネリコ、アラカシ、エゴノキ、コバノガマズミ、ネジキ、ヒサカキ、オンツツジ、マルバハギ、ナツハゼ、コツクバネウツギ、ヤブムラサキ、ダンコウバイ、ウラジロノキ、アブラチャン、ウスバヒョウタンボク、下草には、リュウノウギク、ヤマムグラ、ウラジロなどがみられた。
3  残存するアカマツ林
 古くはコナラ、アラカシなどの照葉樹でおおわれていたと考えられる讃岐山脈は、薪炭材として皆伐が繰返されたことにより、肥沃な表土が失われ、乾燥と貧栄養に強い陽生樹のアカマツが優占する樹林へと移行したと考えられる。
 戦後瀬戸内から広がった「マツクイムシ」は、讃岐山脈を越え本町でも猛威を奮い、大被害を被ったアカマツは、全山に白骨化した姿をみせている。こういった現象は、自然植生への復原作用が進んでいるためともいえるが、一部ではなおアカマツを中心とした二次林が残っている。
 標高 550m 付近では、アカマツの中に一部クロマツが点在し、両者の自然交配がみられる。すなわち、両者の雑種で、クロマツよりもアカマツの特徴を多く持っているアイアカマツが多く自生しているが、この樹皮は、赤味が強くて、薄くはがれ易い。また、葉は柔らかいが、樹皮はクロマツのように深く切れ込み、黒褐色になるアイグロマツも点在している。それらの林下層にはウラジロ、モチツツジ、ソヨゴ、ヒサカキ、ネズなどアカマツ林特有の様相もみられる。

3.三好町の特記すべき植物
(1)珍しい植物
1  ミヨシヒメシロヨメナ(ミヨシコマチギク) Aster leiophyllus Fr. et Sav. var. kunio-manabei Akasawa.
 新変種で上記のような和名が赤澤時之、木下覚によって、また学名が赤澤時之によって命名された。この新変種は、三好郡三好町の山地林下で、1992年10月17日真鍋邦男が発見した。正基準標本は、徳島県立博物館の■葉庫に保存されている。
 本変種は、基準種(Aster leiophyllus シロヨメナ)に非常に近縁である。茎が繊細で舌状花がより短いので容易に区別される。根茎はしばしば匍匐する。茎は高さ 60cm で斜上する小枝を持ち、ジグザグ状を呈し、ほとんど無毛。葉は平滑無毛、花序は、まばらに小数の頭状花序を散房状につける。舌状花は白色で、長い舌弁では無く、舌弁は花柱より少し短い。花柱は長橢円状披針形で、柱頭では二叉している。冠毛は帯白色で、長さ約 2.5mm、子房は密に有毛か、または無毛。
2  ホンゴウソウ Andruris japonica (Makino) Giesen
  ウエマツソウ Parexuris tosaensis (Makino) Nakai et F. Maekawa
 ホンゴウソウは、木陰の腐葉土の中に生える高さ約5cmの紫色の無葉の多年生草本。
 ウエマツソウ(トキヒサソウ)は、時久芳馬が1905年(明治38年)7月26日、高知県香美郡夜須町で発見した。吾川郡伊野町神谷では、天然記念物に指定されている。
 徳島県では、昭和21年、初めて海部郡宍喰町鈴が峯で確認された。昭和25年3月26日、昭和天皇四国巡幸の折、内町小学校にて天覧に供し、宮内省に献上した。讃岐山脈でのウエマツソウの確認は初めてのことである。
3  タムラソウ Serratula coronata L. var. insularis (Iljin) Kitam.
 池田町黒沢湿原など、山地の湿地などにわずかにみられる多年草で、本町の露木の一杵水の自生は珍しい。
4  ムヨウラン Lecanorchis japonica Blume
 主に県南の常緑広葉樹林下にみられるが、讃岐山脈での自生は珍しい。腐生植物で、数個の鞘状葉や茎は無葉緑素である。花期は5〜6月で、花は数個つき、長さ約2cm、筒状で平開しない。
5  クスドイゲ Xylosma congestun (Lour.) Merr.
 雌雄異株の常緑低木、若木では葉腋に2〜3cm の刺がある。また幹には枝分れした顕著な刺がある。クスドイゲのイゲは神母と書き、高知県ではイゲ神社というのがあり、神社の境内に植えられるようである。俗名ユスまたはサルガエシともいう。四国・九州・琉球の海岸近くの林内に生育し、県下では県南の海岸近くを中心に自生がみられる。昼間敷地の森では、植栽されたものと考えられ、幹周 1.25m・0.86m は太い。本町のは雌株で花を咲かせていた。
6  ハルニレ Ulmus japonica (Rehder) Sargent
 北日本の山地に多い落葉高木で、主として公園樹、街路樹として植栽される。樹皮は淡褐灰色でコルク層が発達し、こぶ状になって縦に深い裂目ができてはがれる。葉は互生、短柄、葉身はややざらつき、基部は左右が不相称。花は3〜5月、新葉に先だって、帯緑色の小細花を7〜15個開く。増川の三所神社前に、幹周 2.21m の巨樹とその周辺に数本が植栽されている。これだけの巨樹は県下では他に知られていない。
7  ハナノキ(ハナカエデ) Acer pycnanthum K. Koch
 天戸神社の境内で、植栽されているハナノキは、県下では唯一の木と思われる。岐阜県、長野県、愛知県に自生する。滋賀県湖東町のものは、植栽したものであるが、国の天然記念物となっている。沼地に生える稀な落葉高木で、葉は対生、三浅裂、下面はやや粉白色。花は4月、紅色、雌雄異株。ハナノキの同名異物にシキミがある。
8  ナギ Podocarpus nagi (Thumb.) Zoll. et Moritz.
 雌雄異株の常緑の高木。葉は対生、平行脈があり、裏面はやや白色を帯びる。材は年輪が不明瞭でち密。家具、彫刻などに用いられる。神木として、神社の境内に植えられることが多い。足代八幡神社の樹林は、「なぎ林」として県天然記念物に指定されている。
9  イロハカエデ(タカオモミジ) Acer palmatum Thumb.
 イロハカエデは、カエデ科の中では、一番暖地にまで降りて来る普通の落葉高木で、人家にも栽培される。本町増川棟木にある町天然記念物のイロハカエデは、普通のイロハカエデと思うが、岩壁より主幹(184)が斜上し、2幹に分枝(1.09・0.96)、上部にいくにつれて下垂し、各枝の樹冠は、すべてみごとなしだれ状になっていることから、シダレモミジと呼称されている。自生場所は、岩場ではあるが、水路になっていることから、旺盛な樹勢を示し、風致に富んだ樹形といえる。
(2)珍しい帰化植物及び外来植栽樹
1  ツルドクダミ Polygonum multiflorum Thumb.
 多年草で根茎は横に伸び、時に巨大な円い塊茎を作る。中国原産、不老長寿の薬効があるという。白井光太郎によれば、駒場農園に植えられたとされている。そのため東京周辺の地に特に多く野生化しているという。
2  ムクゲバアオイ Malva hibiscifolia Akasawa, nom, tentat.
 本町は県下で3か所目の帰化地で、全国でも数少ないため文献がなく、赤澤時之が急きょ上記のような暫定学名をつけた。アオイ科の特徴を持つ花と実をつける。上の段の道路際にみられた。
3  テリミノイヌホオズキ Solanum photeinocarpum Nakamura et Odashima
 イヌホオズキに似るが、葉にはきょ歯はなく、4〜7個の花が1点に散形につく。稀に1花だけ離れてつくことがあるが、その花の柄の途中に関節があるのが特徴。
4  アメリカキンゴジカ Sida spinosa L.
 熱帯アメリカ原産。足代八幡神社近くの道路沿いに帰化しているが、稲田の刈り取り跡、などにみられる。葉柄の基部に糸状の托葉と湾曲した刺状突起がある。
5  チャンチン Toona sinensis (A. Juss) M. J. Roem.
 中国原産の落葉高木。東山字男山には、幹周 1.46m の県下一と思われる巨樹があり、柳沢の農家では収穫農作物を掛けて乾燥させる際の支柱として植えている。県下では稀。
6  ホシアサガオ Ipomoea triloba L.
 南米原産。花冠はロート形で、径 1.2〜1.5cm。上からみと五角形〜星形。花柄のイボ状突起がまばらで、種子が肥厚しないのが特徴。マルバアサガオも本町に帰化している。
7  フラサバソウ Veronica hederaefolia L.
 欧州原産。平成元年阿南市明谷に帰化が確認されたが、足代八幡神社にも帰化していた。
 2年草。茎は匍匐し、先だけ立ち、葉はほとんど互生、1〜2対の大きな歯があり、立った長毛がまばらにはえる。花冠は淡青紫色、3〜5月、花柄は葉とほぼ同長。
8  イロマツヨイグサ Godetia amoena Lilja と
  ヒルザキツキミソウ Oenothera speciosa Nutt.
 ヒルザキツキミソウは、空地、道路ぶちなどに広く帰化しているが、イロマツヨイグサ
は植栽して親しまれている。区別点は、おしべのやくと花糸とのつき方で、ヒルザキツキミソウは、やくと花糸がT字形である。イロマツヨイグサは、やくと花糸が直線状につながっている。
9  トウモクレン Magnolia liliflora Desrouss. var. gracilis (Salisb.) Rehd.
 中国原産の落葉性低木で、4〜5月頃、半開の暗赤紫色の花を葉に少し先だって、枝先に咲かせるのが特徴である。鑑賞用花木として願成寺に植栽されている。
10  セコイアメスギ Sequoia sempervirens (Lamb.) Endl.
 足代八幡神社の境内に大木がある。アメリカ西海岸の原産の常緑針葉高木で、明治中期に渡来し、庭園、神社、仏閣に植栽されている。樹幹は直立し、原産地では高さ 110m、径7m に達するものがある。樹皮は赤褐色で軟らかく、縦に裂け、はげ落ちる。メタセコイア、ラクウショウは落枝するがセコイアメスギは落枝しない。

4.本町の巨樹、老木
 樹種によっては、幹周5m でも、特別に太いとは思わないイチョウ、クスノキのようなものから、太くならない灌木では、0.5m でもイチョウの幹周6m に匹敵するものもある。本町の巨樹、老木と思われるものを記載し残すことにする。以下、目通り幹周、単位は m で示す。
 イチョウ 4.12(願成寺)、4.65(重田の鎮守さん)、4.45・2.95(足代八幡神社)、3.18(若宮神社)、3.45(教法寺)、3.15・2.06(笠栂の船戸神社)
 サルスベリ 1.20(願成寺)
 ノウゼンカズラ 0.56(願成寺)
 クヌギ 2.07(天戸神社)、1.28(美濃田神社)
 ハナノキ 0.26(天戸神社)
 ムクノキ 4.64(天戸神社)、2.20(重田の鎮守さん)、4.76(笠栂の船戸神社)、3.78(上ノ段荒神さん)、4.09・2.32(天椅立神社)、3.25(足代八幡神社)、5.44(小見)、2.45(若宮神社)、5.01(北光明寺山ノ神)、5.95・4.80(谷藤神社)、3.74・3.28(山祇神社)、7.49・3.95(敷地の森)、4.08(上ノ段山ノ神)、4.21(倭津岐神社)
 カゴノキ 1.18(重田鎮守さん)、1.48(足代八幡神社)、1.64(若宮神社)、2.32(上ノ段荒神さん)、2.05(石本)、3.24・3.20(山祇神社)
 カヤ 2.76・2.56・2.35(天椅立神社)、1.86(足代八幡神社)
 エノキ 2.11(天椅立神社)、2.65(足代八幡神社)、3.34(徳泉寺)、3.36(上ノ段荒神さん)、2.25(中屋南集会所)、3.37・2.86(倭津岐神社)
 ナナメノキ 1.11(天椅立神社)、1.50(美濃田神社)
 アラカシ 2.13・2.11・2.10(天椅立神社)、1.74(足代八幡神社)、1.90(光清)、1.90(三所神社)、2.92・2.26(中屋南集会所)
 サカキ 0.96(天椅立神社)
 コノテガシワ 1.20(教法寺)
 アオギリ 1.38(天椅立神社)
 イロハカエデ 1.84(増川)
 モッコク 0.78(天椅立神社)、1.72(瑠璃光寺)
 イヌマキ 1.22(天椅立神社)
 ハルニレ 2.21(三所神社)
 ヤブツバキ 0.96(天椅立神社)
 イブキ 1.60(出雲神社)
 タイサンボク 1.30(天椅立神社)
 タブノキ 1.52(北光明寺山ノ神)
 ナギ 3.68(足代)、2.64・1.91・1.73・1.72(足代八幡神社)
 クスノキ 4.27・4.19・3.86・3.73(足代八幡神社) 3.32(若宮神社)
 クワ 1.30(足代八幡神社)
 ネズ 0.64(柳沢日吉神社)
 チャンチン 1.46(東山字男山)
 ソメイヨシノ 2.06(出雲大社)
 ギンモクセイ 2.42(若宮神社)
 センダン 2.07(中屋南集会所)
 ヤマモミジ 1.48(若宮神社)
 エンジュ 1.20(中屋南集会所)
 コウヨウザン 1.35(若宮神社) 1.71(出雲大社)
 ヤブニッケイ 1.09(若宮神社)、1.00・0.95(倭津岐神社)
 ナツヅタ 0.42(上ノ段荒神社)
 ヤマザクラ 3.35(笠栂船戸神社)
 シナノキ 1.15(教法寺)
 ウラジロガシ 4.44・4.24(柳沢日吉神社)
 クスドイゲ 1.25・0.86(敷地の森) 0.96(中屋南集会所)
 ケヤキ 2.63(足代行安)、3.40(男山)、3.47(昼間天神)

 参考文献
牧野富太郎(1970) 牧野新日本植物図鑑,北隆館.
長田武正(1979) 原色日本帰化植物図鑑,保育社.
佐竹義輔・原寛編(1989) 日本の野生植物木本I・II,平凡社.
阿部近一(1990) 徳島県植物誌,教育出版センター.
竹内理三(1986) 角川日本地名大辞典,角川書店.
阿部近一ほか(1990) 土成町の植物相.郷土研究発表会紀要第36号,43.阿波学会・徳島県立図書館.

1)川島町神後  2)北島町中村  3)徳島市北田宮三丁目  4)牟岐町中村
5)徳島県教育研修センター  6)山城町河内小学校  7)徳島県立博物館


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