阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第38号
半田町における読書調査

読書調査班(徳島県立図書館)

   清水博・福見喜美子・山本みち・

   吉村洋子・久保貴栄(集計)・
   立石忠徳(文責)

1.調査の目的と方法について
 読書調査班は、従来から読書と図書館等の読書施設について住民の意識と実態を調査するためにアンケート調査を実施してきた。今回の調査では、小中学校を通じて生徒の父兄にアンケート用紙を配付・回収すると共に、半田町役場にきた若干名にも、同様のアンケートに回答をもらった。また、読書施設の実態を把握するため、半田町内の読書施設である公民館図書室や小中学校の図書室の責任者の方々との座談会や訪問取材を行う事により、率直かつ貴重なご意見をもらった。
 以下、アンケート結果、公民館図書室、学校図書室、総括の順に報告する。

2.読書と図書館に対するアンケートについて
 アンケートは大部分は小中学校を通じてその父兄を対象とし、一部公民館の利用者など半田町役場へこられた人にも回答をもらった。無作為抽出ではなく、また男女同数でもないことに注意されたい。回答者の総数及び内訳は、表1及び図1・2の通りである。なお、以下の各問について、〔 〕内に問の目的及び要旨を付し、次にアンケート用紙に書かれた通りの問と選択枝を列挙し、さらに各問に寄せられた回答を「表」としまた、表の内容をグラフ化して「図」とした。但し「表」及び「図」中の数は回答数であるためその総数は必ずしも総回答者数とは一致しない。また、その他として具体的に文章で寄せられた回答を「記述回答」として列挙したが、類似のものはまとめて回答の後ろにその人数を挙げた。そして、これらの回答に対する読書調査班の分析を「分析」とした。

〔回答者の性別・年代について〕
該当するものに○をつけて下さい
性別 1.男 2.女
年齢 1.20代 2.30代 3.40代 4.50代 5.60代 6.70以上
分析:回答者の年齢及び性別の片寄りが著しいが、前にも述べたような方法でアンケートを行っているためである。回答に多少の偏向あるいは誤差がみられるが、これについては、各問の分析欄により、修正を加えたいと思う。

〔情報源について〕
問1.あなたは知りたい情報や知識をなにから得ていますか(主なもの2つに○を)
 1.新聞 2.雑誌 3.本 4.テレビ 5.ラジオ 6.その他(  )


記述回答:書店(3),友人・知人(7)
分析:新聞及びテレビヘの依存度の高さは過去の読書調査でもみられた事であり、半田町に限らず現代社会そのものの特徴といえる。また、新聞・雑誌・本を活字資料として一括するならば、過半数を越す結果となり、活字離れが叫ばれて久しいものの情報源としての活字資料に対する依存率は決して衰えてはいないといえるであろう。また、特徴としては、友人・知人という一次的コミュニケーションが情報源として上げられている事で、人と人とのふれあいが重視される半田町の有りようがよく示されている。

〔余暇の利用方について〕
問2.あなたは余暇をどのように過ごしていますか(主なもの3つに○を)
 1.読書 2.テレビ・ラジオ 3.休息(ごろ寝) 4.旅行 5.スポーツ 6.ショッピング 7.友人との談話
 8.映画 9.その他(  )


記述回答:舞踊,パチンコ(7),平日にはできない事,週刊誌を読む,生涯教育のため通信制の高校に通っている,子供と過ごす(8),家事(10),料理教室,釣り(10),麻雀(2),園芸(7),スポーツ,碁,デザイン製作,趣味,仕事(6),ジグソーパズル
分析:問1の結果からも予測される通り、テレビ・ラジオが男女共に最も多かった。男性の場合以下休息(ごろ寝)23.4%、読書11.2%、スポーツ10.4%と続くのに対し、女性の場合ショッピング22%、休息16.8%、友人との談話11.5%、読書10.9%であった。読書に関してこのデータを解析するならば、半田町民は男女共に余暇の一割程度を読書に割いている事がわかる。

〔読書量について〕
問3.あなたは、1カ月に何冊本を読みますか(雑誌を除く)
 1.1冊   2.2冊  3.3冊  4.4冊  5.5冊以上  6.読んでいない


記述回答:なし
分析:1カ月に1冊以上の読書をする人は全回答者の62.3%である。これは男女共にさほど変わらない。前回、前々回の調査結果と比較した場合数の上では少なくなっているが、前の調査が既に図書館のある町を対象としていた事から考えて、妥当な数字であろうし、また、図書館などの読書施設の充実によって向上するであろう。

〔読書の目的について〕
問4.あなたはどんな目的で本を読みますか(主なもの2つに○を)
 1.仕事のため   2.趣味や娯楽のため  3.教養を高めるため  4.子供の教育のため
 5.家庭生活に役立てるため  6.その他


記述回答:開発・アイデア等,時間つぶし,知識を高めるため,読まない,雑誌以外は読まない,気分を休めるため
分析:趣味・娯楽のためが男女共に最も多いが、男性の場合はこれに続いて仕事のため(27%)、教養を高めるため(16.6%)と続くのに対し、女性の場合は家庭生活に役立てるため(18.9%)子供の教育のため(15.9%)となっている。次の問5とあわせて考える事により半田町の町民の必要とする図書が明白になるであろう。

〔読書傾向について〕
問5.あなたはこれからどんな種類の本を読みたいですか(3つまでに○を)
 1.宗教・哲学   2.歴史・地理  3.政治・経済・財テク  4.暮らし・健康  5.教育
 6.科学・技術  7.産業  8.文学・小説  9.芸術  10.その他


記述回答:料理関係,趣味(3),サスペンス,人物史(4),農業,読まない(2),専門書,絵本,雑誌,SF,娯楽
分析:男女共に暮らし・健康が最高であるのは、最近の健康ブームを反映したものと思われる。男性の場合は政治・経済・財テク(16.9%)、文学・小説(13.9%)となり、女性の場合も暮らし・健康に続いて文学・小説(24.3%)、教育(17.7%)となっており、男女共に問4を裏付けるものとなっている。
 問4、問5の結果からいえる事は半田町では文学・小説関係と共に暮らし・健康などの家庭生活にかかわるものや政治・経済・財テクなどの社会科学関係の図書が求められていると言う事であろう。

〔本の入手について〕
問6.あなたは、読みたい本をどこで手にいれますか(2つまで○を)
 1.書店   2.公民館図書室  3.県立図書館  4.職場  5.友人  6.家族
 7.家庭文庫  8.その他


記述回答:通信販売(3),町外の書店(2),グループ,地域,書店で定期購読,読書会,生活協同組合,バザー
分析:最も多かったのが書店で男女共に全体の約60%、以下男性は職場・友人の順となり、女性の場合はこれが逆転して、友人・職場の順となっている。これは、問1において、情報の入手先として女性が友人の存在を上げている事に符合している。記述の回答でも大部分が何らかの形で本を購入している。なお、図書館や図書室など公的な読書施設を利用している人は43人で人数比にしてわずか4%にとどまる。その理由は次の問7・8で考察される。

〔読書施設の利用形態について〕
問7.(問6で2・3に○を付けた人に)どの様な利用をされましたか(該当するものすべてに○を)
 1.本の貸出・閲覧   2.調査・研究に関する相談や問い合わせ  3.読書会に参加
 4.行事や催しに参加  5.その他


記述回答:図書室より借りる,子供が借りてきた(2)
分析:問6で、県立図書館及び公民館図書室を利用していると回答した43人を対象としている。当然ながら最も多いのは本の貸し出し・閲覧で63.3%がそう答えている。そのほかはすべて一桁の回答数で行事・催しが10.2%、読書会が6.1%、調査・研究が4.1%であった。調査・研究目的の利用者はすべて男性であるが、読書会参加者はすべて女性である。

〔読書施設を利用しないわけについて〕
問8.(問6で2・3のどちらにも○を付けなかった人に)どの様な理由から、図書館(図書室)を利用しないのですか(2つまで○を)
 1.利用したい本がない   2.開館時間中に利用できない  3.設備や快適さに欠ける
 4.本は買って読みたい  5.近くに施設がない  6.その他


記述回答:目が悪い,読書の時間がない(9),図書館が近くにない(5),館内が息苦しい,本を読みたいと思わない(3),本がほとんどない
分析:圧倒的に多いのが、近くに施設がないためで全回答数の54.7%を占めている。次に上げられているのが開館時間の問題で16.5%,以下本がないため、設備・快適さに欠けるためとなっている。その他の回答の中にも同様の理由が多くあげられている。これらの事から、逆説的ではあるが、近くに、利用しやすい開館時間の読書施設があれば、多くの利用が見込まれるものであると推論される。

〔読書施設の整備について〕
問9.県内には16市町村に図書館がありますが、あなたの町については、どうお考えですか。(該当するものに○を)
 1.町立図書館の設置   2.公民館図書室の整備  3.読書施設を整備する必要はない


記述回答:一応設置されているが、司書もおらず予算がないため本も少なく設備も不十分である,町にたくさん他にする事がある,休日に利用できる施設がない,子供のためにはあった方がよい,充実している,親と子で読める施設が必要,図書館があるかどうか知らない,関心がない,半田・美馬・貞光の3町で大きな充実した図書館を合同設立するとよい,あまり利用がないのに整備しても税金のムダ遣い
分析:町立図書館を設置するべきという回答は58.8%、公民館図書室の整備・充実を選んだ人は21.3%で、町内に読書施設を充実すべきという人は全体の80%以上にのぼる。また、積極的に、読書施設を整備する必要はないという人は全体の5.4%にとどまっている。

〔COMETについて〕
問10.家庭からパソコンなどを通して県立図書館などの情報を知る事が出来る徳島県文化情報システム(COMET)についてごぞんじですか。
 1.登録している   2.知っている  3.知らない


記述回答:なし
分析:知らないという回答が大多数である。また、登録しているという回答も3件あったが、COMET を管理している県立21世紀館の資料によると、住所が半田町になっている COMET の登録者は個人では存在しないので、何らかの誤解に基づくものと思われる。これらから、COMET は半田町ではほとんど知られていないといえる。COMET を用いる事により県立図書館の蔵書の所蔵状況等がわかり、より確実な配本も可能である。県及び半田町に対しもっと PR する事を希望したい。

〔希望・要望等について(記述式)〕
問11.あなたは、町教育委員会、公民館、県立図書館に何を望みますか。
●町教育委員会:町立図書館の設置(94),日曜・休日または PM5:00 以降の夜間貸出のできる施設(4),公民館図書室の整備・充実(5),学校図書室の整備・充実(5),読書施設についての PR(4)・教育指導の強化(6),学校設備の充実(6),社会教育の充実(7),多くの意見を取り入れる(4),相談しにくい(2),子供にとって楽しめる施設を(4),形だけでない企画・運営(3)大学校の創立,町民に本当に必要な施設を,都会との知識差をなくしたい
●公民館:施設・設備の充実(18),図書室の整備・充実(24),公民館活動のPR(3),図書室の広報(3),開館時間の延長・休日開館(11),催し・講座の充実(8),子供やその他大勢の人にも利用しやすくしてほしい(8),近くにない,補助費の増額,必要ない
●県立図書館:日曜・休日の開館・開館時間の延長(5),移動図書館の実施(17),分館の設置(5),遠くて利用できない(23),郡部の人間にも使いやすく(6),図書の整理・充実(11),COMET の広報・充実(3),パワー不足,自由に誰でも利用できるようにしてほしい(2),見る,必要ない,町立図書館に幅広い本の貸出を,自習室の設置
分析:町教育委員会に対しては圧倒的に町立図書館の建設を望む声が大である。また、どのような図書館が建設されるべきか。あるいは、既存施設をいかに運営して行くべきかなどの具体的な意見も多かった。公民館に対しては、町立図書館のない現状での町内の公共の読書施設として、または、文化施設としてよりよく機能させるためにいかに有るべきか様々な意見があった。県立図書館にたいしては、遠すぎて利用できないため特に興味もないという意見が多かった。また、遠隔地の人間にも利用しやすいように、祝日の開館や開館時間の延長などが求められていた。さらに、県立図書館による移動図書館の実施・運営も求められている。これについては、各町村住民の読書需要は各町村自らが責任を負うべきであるとの観点から、県立図書館では昭和62年から移動図書館を廃止して各町村に対するより後方支援的な協力車に切り替えている。このことについて住民の理解を望むと共に、町民の積極的な読書欲求を生み出すような半田町の広報活動を望むものである。

〔児童の読書について〕
問12.(1)あなたのお子さんは週に平均何冊本を読んでいますか。
  ●小学__年生、中学__年生 ●約____冊


記述回答:なし
分析:回答の中には1枚のアンケート用紙に複数名の回答を書いている者があったが別個の回答として処理した。故にたとえば
  ●小学2年生、中学2年生 ●約5冊
という回答は一週間当たり5冊の読書量の小学2年生が1名、中学2年生が1名として計算されている。このようにして回答者の学齢別に人数を集計してグラフ化すると、各学齢共に70名程度の回答が寄せられ、その点においては平均的な数値を得られたものと思われる。
分析:半田町の児童の読書量の平均をとってみると、最低は0冊から最高は25冊までで、その平均数は約1.7冊であった。また、学齢別にみると読書量が最高になるのは小学3年生で平均2.25冊となり以下中学生になるまで下降を続け中学入学から再度読書量が増加傾向にある。これは環境の変化に伴う変動であり、また学齢が上がるにつれて、より大部の本を読むようになり、1冊当たりの読了時間が増加する事からおこると思われる。


分析:親の読書量と子の読書量を相関させてみると、親の読書量が0冊から3冊程度の間は相関がみられなくもないが、それ以上になると、相関関係はみられない。特に父親の読書量と子供の読書量の間の関係はまったくみられない。これは、子の読書量のばらつきが大きく、また、父親のデータが少ないためでもあるが、それ以上に、親と子が共通の読書環境にない事によるものともいえよう。すなわち、書店中心の親の読書環境に対して、学校図書館等を中心とした子の読書環境が重ならないことによるものではないだろうか。父親との相関関係がさらに小さいのは、父親の読書環境が子の読書環境とさらに大きくずれていることを示すものでそれは、このアンケートの他の問いからも導き得るであろう。

問12.(2)あなたは、お子さんの読書に何を期待しますか(2つまで○を)
 1.子供自身が楽しんで読める事   2.創造力を養い、心を豊にする事
 3.知識が増し、視野を広げる事  4.文字がよく読め、読解力を増すこと
 5.本をきっかけにして親子の交流を図る事   6.子供の読書にあまり関心がない


記述回答:子供に読書のための時間がなくなってきている(2),子供の頃に多くの本を読む事で広い心がもてる,楽しんで読む事がいちばん,一つの事に集中できるか
分析:父親・母親共に上位に上げられるのは楽しんで読むことと創造力を高める事でこのふたつの回答で総回答数の半数を超える。次に、知識を増す事、読解力を増す事がほぼ同数で約15%ずつであり、関心がないというのは0.4%にとどまった。親子の交流を図るという目的をもった人は3.4%である。が、先の分析にも見えるとおり、親と子が共通の読書環境にない限りそもそも不可能な事であり、このためにも、公共の読書施設の充実が望まれる。

3.半田町の読書施設の現状について
 半田町における公的な読書施設は、中央公民館、八千代公民館、小野公民館の各図書室と各地区の小中学校の図書室である。また、半田町内の書店は1軒のみである。
 平成3年11月12日に半田町中央公民館に半田町教育委員会代表と紙屋、八千代、半田の各小学校の図書室の責任者及び半田町内の読書グループであるあすなろ読書会の代表者に集まってもらって座談会を開き、その活動の状況を取材した。また、11月26日に前回都合により集まれなかった各小中学校の図書室を訪問し、また、各公民館の図書室も実際に見学した。
(1)座談会におけるアンケート集計結果に対する反応と出席各読書施設の現状報告について
 座談会では、アンケートの集計結果が報告され、おおむね現状にそったものである旨碓認された。その後各読書施設の活動状況が報告された。各公民館は利用が少なくまた、古い本がほとんどであるという事であった。これについては、その後実際に見学取材しているのでのちほどより詳しく述べたい。
 各小学校については、八千代小では図書費が少ないので新しい本があまり購入できないが、古い本には人気がないと言う事であった。
 紙屋小でもやはり図書費は少なく、年2万円程度なので課題図書の購入で終わりである。また、児童に対し読書についてのアンケートを独自にとったところ、本を読んでもらいたいか自分で読みたいかの問に対し高学年の方が読んでもらいたいと思っているとの結果がでたとの事である。これは、われわれのアンケートにおいて小学3年生で読書量のピークを迎えている事にも符合している。これらの結果についてあすなろ読書会の方々から小さいときに本を読んでもらえず、読書の楽しさに目覚めていないためではないかとの指摘があった。この指摘に対し紙屋小の人も低学年は幼稚園時に親子読書をしていたが、高学年の児童にはそのような経験のある子供は少ない、との事である。
 半田小では年間20から25万円ほどの図書費があり、加えて空き瓶回収などで得た収益を図書費に当てる事により500から600冊の購入を行いだいぶ充実してきたとの事であった。また、静かで、落ちついた雰囲気の図書室づくりが効果を上げて2学期になってから利用が増えてきたという事である。読まれる本の傾向としては物語、科学の本、歴史ものが多くまた最近のグルメブームを反映したものか料理の本が男女を問わず人気があるとの事である。また、一般に読書感想文を書くという事に抵抗があり、読書は好きなのだが暇なときはファミコン等に流れてしまうようである。
 読書に関する行事については各学校とも、読書感想文や読んでほしい本のリスト作成、本の紹介などを行っていた。また、半田小では読書カードを読書量に応じて取り替えたり、また読書量に応じた表彰を行っているとの事であった。
 次に、あすなろ読書会の活動が紹介された。同読書会は現在会員20名で会費は月1200円、このうち1000円を本代として、毎月1冊本を決めて購入しこれについて感想などを述べあう、という形の活動を続けている。また、読んだ本に縁のある土地を訪ねる旅行なども定期的に行っている。選書は会員の希望を取り入れて行っているが、全員がそれらの本を購入し手元に残しておけるため皆に喜ばれてもいるが、半田町内の書店では常備してある本も少なく、また、注文してから手元に届くまでに時間がかかるので、身近に図書館がほしいとの事であった。
 次に、半田町教育長から図書館建設の計画の発表があった。すでに用地は購入してあり、建設資金も積み立ててあるとの事である。また、造るのであれば大きな図書館を造りたいとの事であった。これに対し、県立図書館から本年8月にオープンした市場町立図書館などの例が紹介され、図書館建設によって子供も大人もより活発な読書傾向がみられるであろうとの意見が出た。
(2)11月26日に行った個別訪問調査に付いて
 まず中央、小野、八千代の各公民館の図書室であるが、このうち多少とも公民館図書室として機能しているのは、八千代公民館のみであった。小野公民館については、専任の管理者もなく通常は入り口も施錠しており自由な利用はできなくなっている。ここには県立図書館から貸し出された図書が50冊程度放置されているが、当然の事ながら利用はされていない。次に中央公民館の図書室は前年まで町史編纂室の事務室に使用しており、現在も町史関係の帳簿などの一般には公開できない資料が置いてあるので通常は施錠してあるとの事である。全集等の比較的新しそうな本が置いてはあるのだが当然ながらここも利用はされていない。但し、来年には町史関係の帳簿や事務机などを整理しまた、専任の担当者も置いて図書室として機能するようにしたいとの事である。唯一、図書室として、機能していた八千代公民館図書室であるが、ここも現在利用はほとんどない。蔵書は2000冊程度で県立図書館の配本図書のほとんどがここへ回されているとのことであるが、利用者としては通りを挟んである八千代中学校の生徒がたまに来る程度であるそうだ。この大きな原因は、開館時間にあり役場と同様に 8:30 から 17:00 まで第2・4土曜日閉館となっているため、農業を営む老人にも町外へ働きに出ている若者にも利用できないらしい。利用が多ければ公民館も力を入れるが少ないので広報等もしていないし、新規に図書を購入し利用者の関心を引く事もしていないという消極的姿勢にも問題がある。
 次に訪問した各学校についてである。まず半田中学校であるが、ここは年間に5、6セットのシリーズを購入しているとの事である。選書は図書委員が各クラスにおいてアンケートなどを行い、教師とも相談の上で行っている。昼休みと放課後に図書室をあけて図書委員によって運営されている。人気のある本は文庫本や推理小説であるが、放課後は部活動などもあって利用は少ないとの事である。
 八千代中では、年間図書費5万円で30から40冊の増加がある。また利用は1日中開放して閲覧は自由であるが、貸出は係のいる昼休みのみであった。購入図書の選定については生徒の要望を聞いてはいるが100%取り入れる事はできないでいる。本を読む事は嫌いではないので、利用しやすいスペースに本を多く置いてほしいとの事であった。
 白石小は山の上にある少人数の学校で県立図書館の僻地校文庫が毎学期50冊ずつ交換されている。部屋は終日あけており6年生はすすんで読んでいる。また、生徒数が少ないため流行があり、現在は物語がよく読まれている。人数当たりの増加冊数、蔵書数などは最も多くそれを反映して読書量も多いように見えた。
 高清小は年間30から40冊の増加があり図書室はつねに開いているが、貸出しは火曜と金曜の昼休みのみである。低学年は字数の少ない本を、また、高学年は必読図書・課題図書などを読んでいる。また、生徒がそれぞれ推薦する本を簡単な(10行程度)感想・絵を添えて紹介しあっていた。要望としては、役場や公民館から巡回図書が回ってきたらよいとのことであった。
 日浦小には専任の担当者がおり、開館は1日中で、貸出は毎昼休みに図書委員が2名で行っている。年間増加数は約40冊でそのほかに PTA から寄付を受けて課題図書を2冊ずつ購入している。購入図書の選定には児童からのリクエストも反映している。図書室の行事としては、図書まつりを行って感想文の発表などをしたり、読んだ本のぺージ数によって級を設け表彰する読書1000点運動などを行っている。
 以上の読書施設に対する取材から言える事は、利用しやすい場所に十分な量の本があり、利用しやすい時間に貸出し、質問などのサービスを受けられれば、児童であれ、大人であれその読書施設を大いに利用するであろう、という事である。また、多くの読書を進めるための広報活動は、その対象が児童であれ大人であれ、大いに必要であるという事である。

4.半田町に望まれる読書施設
 アンケート結果の分析においても、また、既存の読書施設に対する取材報告においてもふれてきた事であるが、最後に提言させていただきたい。
 半田町に図書館的な読書施設が必要である事は、住民の要望からも、また、既存の読書施設の内一般の大人を対象としたものがほとんど機能していないという現状を見てもあきらかである。問題はどのような読書施設であるべきか、と言う事であるが、具体的な事は半田町の住民自身の問題であり、われわれの関与すべき事ではなかろう。ただ一つ言える事は、将来建設・運営されるべき町立図書館は5時以降の開館、日曜・休日の開館、入りやすく利用しやすい雰囲気、などが求められているということである。また、広報・イベントなども行うべきである。各小・中学校図書室の広報活動やイベントによる利用の増加や、公民館図書室の衰微と広報の欲求がこれを裏付けている。さらに、山地が多い半田町の特徴からみても分館または移動図書館の必要性も大である。あとは半田町民の読書傾向に合わせた町民の必要とする十分な量の図書を収集することである。むろん予算的な都合もあり、全てを常備する事は不可能であろう。が、図書館を設置する事により県内の各市町村立図書館の協力も受け得る。また、具体的な書名やより絞り込んだ分野での要求には県立図書館も大いに協力したい。最後に、半田町の読書環境のさらなる充実のため本調査が役立てれば幸いである。
 なお、データの解析にミスがあったため、本稿に先立っての発表したものと内容に若干の違いがあることをお詫びする。


徳島県立図書館