阿波学会研究紀要


このページでは、阿波学会研究紀要論文をご覧いただけます。
 なお、電子化にともない、原文の表記の一部を変更しています。

郷土研究発表会紀要第36号
土成町の方言

方言班  川島信夫

1.はじめに
 方言班は、2名が調査に参加し、森重幸が主としてアクセントを、川島が語法、語彙の調査に当たったが、ここでは語彙を中心に報告することにした。
 さて、一口に語彙といっても、その調査対象の範囲は非常に広い。外来者の1人が、短期間で、全般に立ち向かって成果の上らぬことは初めから分かっている。そこで筆者の試みた方法は、調査語の基本を決めることと、対象を高年齢層に限定することであった。
 結果は以下のように、ごく一部分に触れた不十分なものとなった。自分が出来なかったことを棚に上げて心苦しい極みだが、ここで地元の方にお願いしたいことがある。
 それは、老人会などの活動の一環として方言調査を実施していただけないかということである。方言は貴重な文化財であり、今の高年層が、内省観察(自分が今までに使ったり聞いたりした言葉を正しく思い起こすこと)によって記録しておかねば永久に消えてしまうものである。そして、方言の最高権威者は地元の人々だからである。

2.あいさつの言葉
 近年、全国的に交流関係が広まり、あいさつ語は急速に共通語化してきた。土成町も例外ではない。しかし、今の高年層が若い頃には、古語の残ったゆかしいあいさつが聞かれたという。それには、次のようなものがある。
 「オハヨーゴザイマスヨーニ」「エーオテンキデゴザイマスヨーニ」
 朝のあいさつと、天気についてのあいさつ。ほのぼのとした、楽しいあいさつ語である。とくに、天気のあいさつで後に、ヨーニと願望のような言葉をつけたのは、昔の農民の気持ちであろうか。変ったあいさつだが、どの範囲で行われていたものだろうか。
 「エーオウルイジャナー」
 雨の日のあいさつ。(良いお潤い)に慈雨を喜ぶ気持ちが実感される。
 「オヒナッタデ」「ゲシナットルンデ」
 他家を訪問したときの、朝と晩のあいさつ。オヒナル(お日成る、お昼なるで起床の意味)、ゲシナル(御寝なるで、お休みになる)で、土御門院の御所があったとされる土成町らしい上品なあいさつである。
 「シタクガ デキタケン アガリナハレ」「イヤー、サッキ タベテキテ モー トコロガナインデスワ」
 食事のすすめと、断りのあいさつ。「シタク(食事の用意)が出来たので召し上ってくれ」とすすめられて、「いや、先刻食べたばかりで、もうトコロ(余分の食物を入れる所=胃袋の空き間)がないので」と断っているのである。
 何ともユーモラスな、ゆとりを感じる応答である。昔の農家では正月には餅を沢山ついて最高の美味の一つとした。腹いっぱい食事をした後で「餅は別じゃ」と言って又食うような人もあった。そんなことを思い合わすと、これもゆかしいあいさつである。
 「コレホド タベレン。ワケニ シテクレンデ」「ワケニナッテモ カンマン マータベテツカハレ」
 山盛りのご馳走を出されて、少し減してほしいと頼む客。主人の方は食べ残してもよいから十分食べてくれというあいさつ。世はグルメと称する飽食の浪費の時代。食べ残しをせぬ心掛けを示す立派なあいさつだ。ワケ(分け)という方言は、猫ワケとも言い、汚く食べ残す意味もあるというが、このあいさつはいい言葉だと思う。
 「ビンキキ」
 お見舞い、またはご無沙汰のあいさつ。ビンキキ(便聞き)は心のあいさつだ。最近の物質万能の風潮に反し、物よりも気持ちを重視する本来のお見舞いである。

3.特徴的な方言
 土成町だけの方言(里言)は採集できなかった。比較的珍しいと思ったものをあげる。
◇スイノー・ケンド・トーシ(ふるい)
 「大阪サカイに阿波ケンド」は阿波弁についての有名なことわざである。この後に「阿波はケンドで名が高い」が付くと教えてくれた人がある。さらに、このケンドは篩(ふるい)のことで阿波の節は大阪の堺と同じように有名なから名が高いとなるのだという人もあった。


 はて?と思って歩いていたら、浦池の稲井澄男氏宅で、篩の3種類を同時に見せていただいた。スイノーは共通語であり、トーシは相当広い範囲に通用する方言である。
 篩をケンドと言うのは、せまい方言のようで、『日本方言大辞典』によると、使用地として挙がっているのは、徳島のほか、香川、愛媛の2県となっている。
◇ツルイ(つるべ)
 ツルイとは深い掘井戸のことである。これを釣瓶(つるべ)の意味で使うのはどの範囲までの方言であろうか。もしかしたら、土成だけの方言ではあるまいか。
◇イモアナ・イモブロ・イモムロ(甘藷貯蔵の土蔵)
 共通語が見当たらぬ言葉だが、一昔前までは農家には必備の施設であった。土間や、床下などに常時掘られていた大きな土穴だ。秋、リューキイモ(甘藷)を掘り上げると、表面を乾かして、スリヌカ(もみがら)と一緒にこの穴に蓄える。1年間の重要な食糧であった。共通語がないので、県下ではイモツボと呼ぶのが多い。当地では、イモアナと呼ぶ人が多く、イモブロという人もある。芋風呂とは面白い呼び名だと思ったが、イモムロ(芋室)という人もある。芋室が語源であろう。宮中の氷を貯えた氷室と同じ言い方で、高尚な命名だと思う。
◇ハッタケ(きのこ)
 茸(きのこ)を総称してハッタケという。毒茸ならドクバッタケだ。当地中心の珍しい方言で、全国的には隣接の香川県とこの付近だけのようである。
◇カンナリ(雷)
 雷のことを、カンナリと呼ぶ人が多いのも当地の特徴である。県下では、右に引用した『日本言語地図』にもあるようにカミナリが一般である。
 カンナリは県下では当地とその付近であり、全国的には、島根県の出雲地方、大分県北部、岐阜県の飛騨地方などである。なお香川などの花片形はドンドロ・ドンドロハンなどである。


◇マツボリ(へそくり)
 内証の貯蓄をマツボリと言うのは、かなり広い範囲の方言で珍しくない。が、語源として、後(末)で役に立てるための用心(守)。つまり末守(マツボリ)だと思っている人が多いという。これなら、山内一豊の妻のような、明るいイメージのへそくりである。
◇オフナタハンノオジキ(子福者)
 岐(ふなと)神の信仰は県下全般である。12人もの子持ちの神様だとされている。その神様がオジキスル(頭を下げる)ほどの子沢山の人が昔は居たのだ。核家族、過疎化の現在はまず見られないことだが。

4.里言集
 共通語でなく、ある地域だけ通用することば(いわゆる方言)を、方言学では里言という。土成町だけの里言は見つからなかったが、一応五十音順に並べてみたものである。

  ア
アイ 中耕。アイ(中耕)をする。
アカン(句) 駄目だ。
アギトツク(句) 口答えする。
アサイキ 朝の間。
アズル(動) もてあます。
アドイ(形) 感がにぶい。
アマイタ あまえん坊。
アンガー 馬鹿。
アンジョーニ(副) うまいこと。
アンニャ 兄。
アンネ 姉。
アラニ(副) 最初に。
アリシニ(副) あるだけのもの全部。
アリャー(感) あれっ!
アルデナイデ(句) 有るではないか。

  イ
イガム(動) 曲がる。
イズミ 井戸。
イタイ(形) 熱い。
イチマ 市松人形。
イッケ 親類。
イデ 小溝。(井出)
イテキ(句) 行ってこい。
イモアナ・イモムロ 芋貯蔵穴。芋つぼ。
イヤラシイ(形) 見苦しい。
イロベル(動) からかう。玩ぶ。
インデコンデ(句) 帰りましょう。

  ウ
ウッチャ わたし。(女子)
ウサンナ(形動) 怪しい。
ウチカタ あなたのお宅。
ウッチャゲ おしまい。区切りをつける。
ウトル(動) 眠る。
ウモレル(動) むせる。

  エ
エカゲン いいかげん。
エグイ(形) むつかしい。(人)
エクソイキ(副) むやみに。
エット(副) 長いこと。
エドイ 江戸絵。
エッポド(副) よほど。
エライ(形) 苦しい。
エライコッチャ(句) 大変なことだ。

  オ
オイト いとこ。(従兄弟姉妹)
オイド・オケツ お尻。
オーカゼ 自慢。大仰に言うこと。
オーキナシャッポン(句) 馬鹿をみる。
オカッコマリ 正座。
オカマイナハランデ(句) お気を使わないで下さい。
オゲクライ・オゲッタ 嘘つき。嘘。
オコライナシテ(句) 許して下さい。
オコル(動) しかる。
オジュッサン 僧りょ
オジル(動) 恐れる。
オシンゾー 嫁。
オシンシャクナシニ(句) 遠慮なしに。
オセ 大人。
オタツサン 母。
オチクゼル(動) 墜落する。
オトイ(形) 恐ろしい。
オトーミ 贈与品に対し返す小品。
オトゴ 末子。
オトマシーイ(形) うとましい。
オナジコツ(句) 同じ事。
オバハン・オッサン 伯叔母・伯叔父。
オヒナル(動) 起床する。
オブー 白湯。
オブケル(動) 驚く。
オフナトハンノオジギ(句)子沢山。
オミーサン 雑炊。
オモッショイ(形) 面白い。
オヤリナシテ(句) 下さい。
オヨーハン 夕飯。
オラ おれ。自称。(男性)
オリカニ(副) 時々。
オワイゴッコ 追っかけごっこ。
オンデン 仕返し。復しゅう。

  カ
カイダルイ(形) 物足りない。
カイサマ 着物の裏。
ガイナ(形動) 気が強い。
カカハン 母。
ガケ(接尾) ついでに。「行き―」
ガサツナ(形動) 自我をまげぬ。
カッチェル(動) 飢える。
カミ 上。京阪神地方。
ガモシャ 不用の雑物
カンカ 下駄。(幼児語)
カンナリ 雷。
カンマン(句) かまわない。

  キ
ギシュクナ(形動) 律気な。厳格な。
ギタジ 吉野川北岸。
ギッチョ 左利き。
キビル(動) 惜しむ。
キブイ(形) 急な。(坂の形容)
ギョーサン(副) たくさん。
キョロイ・キョロクサイ(形) のろい。
キリモン 着物。

  ク
グアイガワルイ(句) 病気。
クサヤ 草屋根。
クッッオイダ(句) くつろいだ。
クチオキク・クチオタタク(句) 悪口雑言を言う。
グチナゴ 蛇。
クチャマツ 多弁者。おしゃべり。
クラワス(動) たたく。なぐる。
グルニナル(句) 手を組む。仲間になる。
クンゼル(動) 崩れる。
クンマクイ 首巻き。

  ケ
ゲシナル(動) 就寝する。
ケタイガワルイ(句) しゃくにさわる。
ゲト 一番あと。ピリ。
ケンド ふるい。(スイノより粗い目の)
ケントガワルイ(句) 外聞が悪い。
ケンケン 片足跳び。

  コ
ゴアヘン(句) 有りません。
ゴータレ(形動) 強情な。業つくばり。
ゴーシーイモ じゃがいも。
ゴータ 蛙。
コーシンサンノバン(句) 長話を止めてくれの意。 「―にしてくれ」
ゴクラクトンボ のんき者。
ココ 大便。(幼児語)
ゴシナハン 奥さん。
ゴジャ すじの通らないこと。
ゴジャクロ・ゴジャンボ 間違い。
コスイ(形) ずるい。
コズク(動) 咳く。
コソロ 松の落葉。
コチ ぼく。男の自称。
コッシャエル 作る。
コデオユウ(句) 小束にする。
ゴテル(動) もめつける。
ゴヘータ 石炭。
コミジ こなみじん。
コレビャー(副) これくらい。(小量)

  サ
サシハマ 差し下駄。
サダチ 夕立。
サッキ さきほど。先刻。
サデル(動) 集める。
サドコイ(形) すばやい。
サンマイ 墓地群。

  シ
シケル(動) 赤ん坊が人みしりする。
シズカイ・ハスカイ 斜めに行く近道。
シナ(接尾) ついでに。「行き―」
シマツ けんやく。ドシマツはけちん坊。
シモ 吉野川下流地方。
ジブシン 地普請。畑を田にする仕事。
シブトイ(形) 強情な。
シャッキン(副) はっきり。大丈夫。
ジュツナイ(形) せつない。
シャンコシャンコ(副) 元気で身軽い。
シャンシャン(副) てきぱき。
ショーコトナイ(句) 致し方ない。
ジョーニ(副) 沢山。
ジョーニナル(句) 炭火がもえつきる。
ジョーバリ 強情。
ショーモナイ(形) つまらない。
ジョーリ 草履。
ショタイ 炊事。
ジルイ(形) ぬかるみ状態。
シルデダ(句) 知らないよ。
シワイ(形) 夜遅く起きている。
シワシワ(副) そろそろ。
ジワリット(副) しずかに。そろっと。
シンダイ(形) だるい。

  ス
スイノー 目の最も細いふるい。
スカマ 方角ちがい
スカンポ からっぽ。へどちん。
ズキ 芋のずいき。
ズルケル(動) 怠ける。
スワリコブ 足のくるぶし。

  セ
セーヘン(句) しない。
セチン 便所。
セコイ(形) 苦しい。
セナンダ(句) しなかった。

  ソ
ソーガラ 総瓦。
ソコマメ 落花生。
ソソハイ(形) がさがたする。
ソラ 吉野川上流方面。

  タ
ダイー(形) だるい。
タキモン たきぎ。
タクル(動) 取る。うばい取る。
ダスイ(形) ゆるい。もの足らぬ。
タッスイ(形) 馬鹿らしい。
ダテニスル(句) みえをかざる。
ダマカス(動) だます。
タユーサン・オタユーサン 神官。
ダンナイ(句) かまわない。
タンネル(動) 尋ねる。

  チ
チギル(動) もぎとる。(果物など)
チットクマ しばらくの間。
チビル(動) すりへる。けちけちする。
チャチ 不正。
チャンチャ 茶湯。
チャンヤン お嬢さん。
チョーゲル(動) じゃれる。
チョコザイナ(形動) なんでもない。
チョビット(副) すこし。
チョンガラ 浪花節。
チリチリスル(動) 恐れる。
チンチン 仲良し。

  ツ
ツエル(動) つぶれる。
ツカハル(動) 下さる。
ツジバン 昔のこたつ。
ツマエル(動) しまう。片づける。
ツラクル(動) つり下げる。
ツルイ つるべ。
ツンドル(句) 密集している。

  テ
デカ(助) …ですか。
テガウ(動) 手出しする。からかう。
テグツ 手袋。
デケアイ 既成品。
デケソコナイ でき損じ。
デコンボ 人形。
テダル(動) 同伴する。
テノゴイ 手ぬぐい。
デブチン 額の出ていること。
デワ(助) …ですわ。
テンカ てんかん。
デンダイ 広い農地帯。
テンツジ てっぺん。頂上。

  ト
ドーズリ 盗人。
トーシ 大きい目のふるい。
ドクレル(動) すねる。
ドグンダラ 無駄口。
トコロガナイ(句) 満腹。
ドズク・ドヤス(動) なぐる。
トタハン・トトサマ 父。
ドタマ 頭。
トックラ(副) ゆっくり。
ドッチャ どちら。
トット 鳥。(幼語)
ドテッパラ 腹。(卑語)
トテナシ 浪費する人。
トネ 山奥の人。
トロコイ(形) にぶい。
トングヮ 唐鍬。

  ナ
ナ(助) …なさい。「行き―」
ナギタナ・ナギタン 菜刀。包丁
ナジ 菜地。野菜畑。
ナハレ(句) …なさい。「行き―」
ナンジャ(句) 何にも。(無い)
ナンニャカシ(副) 色々なもの。
ナンバ とうもろこし。

  ヌ
ヌカス(動) 言う。
ヌクイ(形) 暖かい。
ヌクモル(動) 温まる。

  ネ
ネキ かたわら。
ネゴタ・ネゴタレ 寝ごい人。寝坊。
ネソ 束にするわら。
ネトボケ 寝ぼけ。
ネブタイ(形) 眠い。
ネブチ 値打。
ネンビャク(副) いつでも。

  ノ
ノ 野。野良。(のら)
ノーナカス(句) 失う。

  ハ
ハシカイ(形) かゆい。すばしこい。
バショ 市街。
ハゼノケル(動) 排斥する。
ハチコル(動) はびこる。
ハチフン うす馬鹿。
ハッタケ きのこ。
バッチ ももひき。
ハッチャウ(動) ぶっつかる。
ハッチャス・ハリマース(動) なぐる。
パッパ 背負うこと。
ハップイ はっぴ。
ハナカラ(副) 最初から。
ハネコケル(動) ころぶ。
ハバカリ 便所。
ハヤズリ・ハヤツケ マッチ。
バンバ 絵。

  ヒ
ヒキハマ 普通の下駄。サシハマの対語。
ヒコズル(動) ひきずる。
ヒコヌク(動) 引きぬく。
ヒダルイ(形) 空腹感。
ヒッタクル(動) 取り上げる。
ビャー(助) ばかり。「1円―ある」
ヒョーゲダマ 冗談をよく言う人。
ヒラタクタイ(形) 平たい。
ビンキキ お見舞。

  フ
フグリ 袋状の木の実。
ブゲンシャ 金満家。
フケンタ 一毛田。
ブスヌケル(動) 脱落する。
ブル(動) 洩る。
フルツク ふくろう。
フンドシニツツム(句) 女房天下。

  ヘ
ヘイ(感) はい。
ヘコタレル(動) 閉口する。
ベタコニ(副) 一面に。
ヘダレル(動) 落ちる。
ヘドチン 的はずれ。
ヘラコイ(形) ずる賢い。
ヘンズ(副) 余分。

  ホ
ホイテ(接) そして。
ホーゲタ・ホーべタ・ホーべチャ 頬。
ホーケニスル(句) ばかにする。
ホーデカ(句) そうですか。
ホケ 湯気。
ホシタラ(接) そうすると。
ホジャケンド(接) そうだけれど。
ホゼクル(動) 掘りかえす。
ホゼル(動) 発育が悪いこと。
ホダ 足。足の骨。
ホタエル(動) 喜び狂う。
ホタオヒロウ(句) 幸運をひろう。
ボチ 心付け。チップ。
ホットク(動) 捨てておく。
ホテ 腹。(接続語) そして。
ホテカラ(接) それから。
ホンダケ(副) それだけ。
ホンドリ(副) 十分。「―分からん」
ホンナラ(接) そうであれば。
ポンポン 腹。(童語)ぽっくり下駄。
ホンマニ(副) 本当に。
ボンヤン 坊っちゃん。

  マ
マイマイコンゴ(副) きりきり舞い。
マエカド ずっと以前。
マガル(動) 邪魔になる。
マクイツク(動) からみつく。
マケル(動) あふれる。
マッサラ(副) 真新しい。
マツボリ ヘそくり。
マネクソ 真似。
ママルコイ(形) 丸い。
マルタ 完全。
マンマイサン 仏様。(幼語)

  ミ
ミテツカ(句) みて下さい。

  ム
ムカイジ 吉野川南岸。
ムゴイ(形) かわいそうな。
ムゲッショー(形動) 情無し。

  メ
メーチン めだか。
メメル(動) にらむ。
メンドイ(形) むつかしい。
メンメヤチヤチ(副) てんでばらばら。

  モ
モエル(動) 増える。
モドク(動) 結んだひもを解く。
モッチェル(動) もつれる。
モノゴ 器物。

  ヤ
ヤケハタ 火傷。
ヤッチャール(句) やってある。
ヤドーシ・ヤドシ 青大将。
ヤネ 腕。
ヤネコイ(形) 弱い。なさけない。
ヤリコイ(形) やわらかい。
ヤンダ(副) あまり。(打消)

  ユ
ユーフシニ(句) 言うように。
ユサクル(動) ゆさぶる。
ユスグ(動) すすぐ。

  ヨ
ヨーケ・ヨーキョ(副)沢山。
ヨーサ 夜。
ヨーナベ 夜業。
ヨーハン 夕飯。
ヨーコト(副) 無駄なこと。
ヨーべ 昨夜。
ヨコユー(句) 無理を言う。
ヨバレ 夜尿。
ヨバレル(動) ごちそうになる。
ヨマス(動) 予炊。
ヨワザ 夕方。

  ワ
ワケニスル(句) 食べ残す。
ワヤテコ 無茶苦茶。駄目になること。
ワルガネ いたずら者。

  ン
ンネ 姉。

5.おわりに
 今回の報告の中心は期せずして里言集となった。これは、『御所村誌』(昭和4年)、『土成村史』(昭和26年)、『土成町史』(昭和50年)を基本とし、今年の調査で収集した里言を加えて作成したものである。先人のご労作に敬意を表するとともに、積極的にご指導下さった斎藤邦夫氏や快く取材に応じて下さった方々のご好意と、町当局の行き届いたご配慮に心からお礼を申し上げたい。


徳島県立図書館