1989年7月及び9月、徳島県板野郡土成町のザトウムシ類について調査した。十分な調査ができず、町内に生息する全種は網羅できていないが、1989年の記録として、下記の2科9種を報告する。
OPILIONES 盲蛛(ザトウムシ)目
Laniatores 有鉤亜目
Phalangodidae アカザトウムシ科
1.Proscotolemon sauteri Roewer コアカザトウムシ
1989.7.28. 鵜峠
2.Pseudobiantes japonicus Hirst ニホンアカザトウムシ
1989.7.28. 御所,1989.7.29. 相婦,1989.7.29,'89.9.10. 宮川内藤ケ内
3.Crosbycus dasycemus (Crosby) ケアシザトウムシ
1989.7.29. 宮川内藤ケ内
本種は静岡県、長野県、千葉県、愛媛県で記録があったが、徳島県では新記録である。この種の最初の産地は北アメリカで、アメリカと日本にのみ産する奇種である。
体長は1mm
程度の小型種であり、和名のように脚は細い毛でおおわれている。雌のみが採集され、おそらく処女生殖するものとされている。
Palpatores 有鬚亜目
Phalangiidae マザトウムシ科
4.Leiobunum japonense japonicum (Suzuki) オオヒラタザトウムシ
1989.7.28. 御所,1989.7.29. 相婦
5.Leiobunum japonicum japonicum M■ller モエギザトウムシ
1989.7.28. 鵜峠,1989.7.29. 相婦
6.Nelima nigricoxa nigricoxa Sato & Suzuki ナミザトウムシの一種
1989.7.28. 御所,1989.7.29. 相婦
7.Nelima satoi suzuki サトウザトウムシ
1989.7.28. 御所,(亜成体) 8.Gagrellula distincta (Sato &
Suzuki) クロオビザトウムシ
1989.7.28. 鵜峠,御所,1989.7.29. 相婦
これまで徳島産の本種は Gagrellula ferruginea
として取り扱われてきたが、近年の研究(鈴木,1986)で、四国産のものは
G. distincta と改められた。
9.Systenocentrus japonicus Hirst ゴホンヤリザトウムシ
1989.7.28. 鵜峠,御所
体の背面に5本または6本の棘が1列に並んでいて、それぞれ、ゴホンヤリザトウムシ、ロッポンヤリザトウムシと別種として扱われ、四国産のものは、ロッポンヤリ型とされていた。しかし、鈴木と鶴崎(1981)の研究で両者は同種であることがわかった。本町のものも幼体であったが、はっきりと6本の棘がみとめられた。
文 献
鈴木正将・岡田利明 1972 愛媛県のザトウムシ類.愛媛の生物:89−94.
鈴木正将・冨島啓次・矢野静子・鶴崎展巨 1977 遺跡的ザトウムシにおける隔離分布.
Acta Arachnologica, vol 27:121−138.
Suzuki, S. & N. Tsurusaki 1981 Redescription of Systenocentrus
japonicus (Arachnida, Opiliones, Leiobunidae) with special reference to
its geographic forms. Annot. zool. japon., 54:273−283.
鈴木正将 1986 広島県のザトウムシ類.比婆科学,No.132:7−45. 1)徳島県立中央高等学校 |