阿波学会研究紀要


このページでは、阿波学会研究紀要論文をご覧いただけます。
 なお、電子化にともない、原文の表記の一部を変更しています。

郷土研究発表会紀要第34号

板野町の読書と図書館要求

読書調査班

  棚橋満雄・新 孝一・中田真理子・

  奥本博子・松原敦子・佐川美穂

1.はじめに
 前々回の読書調査より、従来からのアンケートによる調査と併せて面接調査や座談会を行ってきた。今回の板野町でも、これら3つの方法(特に面接調査に重点を置き)により、読書や図書館に対する意識・要求を調査した。

 

2.面接調査
 町内の学校他に出向き、読書環境や現状について話を伺った。その概要は次のとおりである。
[町長]
 来年度、西公民館の改築に伴って図書館を建設する予定であったが、位置的に片寄るので公民館図書室とし、近い将来、町の中心部に図書館を建設したい。
[教育長]
 西公民館の改築に際して、図書館との複合施設にしてはどうかという計画がある。板西・栄・松坂の各地区の公民館に図書館施設を付設できたらと考えている。最終的には、町の中心部に単独の図書館を作りたい。
[板野保育園・板野わかば保育園]
 400〜500冊の蔵書があり、3年前から貸出している。わかば保育園では親子のふれあいの場を作るということで、月1回、子供に合わせた本を持って帰らせている。子供自身が親と一緒に本を持って帰ることを喜ぶようになった。
[板野東幼稚園]
 昨年から、絵本コーナーを設置。毎日、子供が選んだ本を帰る前にクラスで1冊読んでいる。毎週金曜日にクラスの絵本を貸出す。
[板野西幼稚園]
 貸出はせず、毎日帰る前に読み聞かせをしている。各教室ごとに本を置いてあり、図書室がないのでコーナーでよいから欲しいと思う。
[板野南幼稚園]
 一度につき2冊まで園児に貸出している。南公民館には子供向けの本がなく、中央公民館まで借りに行く人もいる。南公民館も中央公民館と同じようにしてもらえたらと思う。
※ 板野郡内の幼稚園図書館部会では、絵本の選び方・読み聞かせ方などの研修を行っている。
[板野東小学校]
 毎週2回、朝の自習の時間に読書の時間を設け、黙読だけでなく、朗読・まわり読みなどもし、お話のカセットを聞いたりすることもある。教科と関係のある本を置く「読書ボックス」を設置している。
[板野西小学校]
 過去2年間、多額の寄付があり、新刊本が多く入った。新しい本が入ると、普段は本を読まない子でも、どんな本が入ったか喜んで見に来る。できるだけ持って帰らせるようにし、借りやすいようにしている。毎土曜日の朝に読書の時間を設けており、一昨年の読書週間には親子読書をした。読書量に応じて、7級から1級までの色別の個人用読書カードを作り、本を借りる励みとしている。
[板野南小学校]
 10冊の読書で1枚の読書カードを作り、そのカードの枚数に応じて簡単な賞状を出している。「図書館利用の手引き」を学校で購入し、図書室に備え付けて利用している。先生に国語の時間に週1回、図書室を利用してくれるよう頼んでいる。
※ 「図書館利用の手引き」(板野郡小学校教育研究会学校図書館部会編集・発行)は、低・中・高学年別に、学校図書室の利用方法を分かりやすく書いたもの。
[板野中学校]
 生徒は図書室をよく利用しているようだが、貸出は少ない。図書館だよりを年5〜7回、発行している。朝の10分間読書をしていた学年では、よく本が読まれている。秋に読書週間の行事を行っている。
[板野高校]
 広々とした図書室で、最近は利用が伸びてきている。秋の読書週間に読書会を行った。図書室入口に図書購入希望用紙を置いている。
[板野養護学校]
 先生が授業へ持ち出して利用することが多い。カセットで、お話や歌を揃えようかと思っている。新聞の書評をスクラップするなどして、生徒の興味をひき、また先生の授業に役立つ本を選ぶよう心掛けている。1年間に、オリエンテーション、図書館だよりの発行、購入希望図書調査、必読・選定図書の紹介読書感想文の展示などを行っている。昨年は図書館紹介のビデオを作成し、各教室で放映した。また、本の一部分を生徒が放送で紹介したりもし、これには生徒の反応も多かった。図書室担当の先生自身が本の内容を実際につかんで生徒に勧められたらと考え、お話の本を中心に少しずつ図書館の本を読んでいる。
子供の障害に個人差があるので個別指導が中心となっている。
[中央公民館]
 図書室は日曜日を除いて毎日開いている。登録者は、約700名。貸出は1人4冊まで14日間。蔵書冊数は約7,000冊(うち、県立図書館から700冊)、毎週木曜日を紙芝居の日にしている。子供の利用は多いが、大人の利用が少ない。
[板野町児童館]
 利用対象は、幼稚園児から中学生まで。図書の冊数は290冊、現在はまだ貸出はしていない。第2第4水曜日に紙芝居を、第1第3土曜日にビデオの会を行っている。
[板西農協]
 板西農協管内697戸中、「家の光」購読300部、「こどもの光」(「家の光」の小学生版)購読6部。20年ぐらい前までは「こどもの光」を使っての体験学習を行っていた。
[板野町商工会]
 ファクシミリは既に全県下の商工会に導入され、パソコンも 2/3 の商工会に導入されている。板野町商工会でも積極的に利用している。入手したい情報は実務に直結したことなので、担当の官公庁に尋ねている。中小企業情報センターの情報は既に活字になったのが主で、タイムリーなものがない。
[井上書房]
 「徳島県の地名と民俗」「徳島県の薬草」など阿波文庫のシリーズを刊行中。一般の人には郷土の本に関する関心が少ない。執筆・出版している人には郷土のことを何かの形で残し次の世代へ伝えねばという使命感がある。
 サロン的な雰囲気で講演を聞く文化サロンは、始めてから6年め、62年末で76回になり、徳島市・鳴門市・市場町からの参加者もある。秋には「阿波のかたりべ小劇場」を開催した。

 

3.座談会
 面接調査で話を伺った方々の他に、中央公民館図書室の利用者にも参加していただき、子供の読書の重要性、子供を本に親しませることの難しさ、公民館図書室への要望などの意見が交わされた。話に関連して県立図書館から・レファレンスサービスや、希望図書、配本図書制度など、町を通じて利用できるサービスについての説明も行った。
 また・中央公民館利用者の方々から町立図書館設置の要望が出され、これに対して、町としても面接調査の概要にもあるとおり前向きに検討しており、住民の側からの世論の盛り上げをお願いし、少しでも早く実現するよう努力したいとのことであった。

 

4.アンケート調査
 町内の小中学生の保護者に依頼した。回答者数は871人。


問1.あなたは、社会生活に必要な情報(知識)をどこから得ていますか。


問2.あなたは、県立図書館をどのように利用していますか。(複数回答)


問3.あなたは、最近1カ月に何冊本を読みましたか。

問4.あなたが定期購読している新聞・雑誌は何ですか。


   〈雑誌〉
    定期購読している月刊誌がある人 131人(15.0%) 96種
       〃    週刊誌  〃  80人(9.2%) 32種
 

問5.あなたが、本を読む動機となるのは次のどれですか。(複数回答)

問6.あなたは、本を読むときどんな目的で読みますか。(複数回答)


問7.あなたは、読みたい本をどこから入手していますか。(複数回答)


問8.あなたは、余暇をどう過ごしていますか。(複数回答)


問9.県内には徳島市、鳴門市、池田町、吉野町、日和佐町、海南町、脇町、穴吹町、佐那河内村、木頭村にそれぞれ図書館があります。さらに川島町、土成町でも図書館が計画中で、その活動が期待されています。あなたの町については、どうお考えですか。

 

5.まとめ
 板野町は、徳島市まで車で30分程の距離にあり、一部にベッドタウン化もみられるが、人口は昭和58年には13,724人、昭和63年には13,843人とほぼ横バイの状態である。
 町には中央、南、西の3つの公民館があるが、そのうち図書館的機能を果たしているのは中央公民館のみで、他の2公民館は、殆ど全くと言っていいほど活動していない現状である。中央公民館図書室は、町庁舎に隣接しており、利用者はその周辺、町の中心部近辺の人が大部分である。調査の折、西・南地区では、「中央公民館までは車でないと行けないので利用しにくい。もっと近くにあれば…」という声が多く聞かれた。中央公民館から、他の2公民館へ巡回配本をするなどの方法をとれば、施設を有効に利用できるのではないかと感じた。西公民館は昭和63年度に改築され、図書室も整備されるらしいが、面接調査の際に教育長も述べておられるように各公民館が図書館の機能を持つことが望まれる。
 また、座談会の席で、中央公民館図書室の利用者から、「公民館には子どもの本が少なく、時々県立図書館まで出かけているが、駐車場から遠いこともあり大変だ」との意見が出された。これに対して、公民館への配本に児童図書を増やしたり、読みたい本があれば希望図書制度で対応できることを説明した。それ以後板野町への協力貸出や児童図書の利用が増大したことは、今さらながらPRの重要性と現在のPRの不充分さを認識させられた。
 アンケート結果から見た板野町の読書や図書館に関する意識は、前回の海部町、前々回の石井町の結果と殆ど差はみられなかった。町立図書館の設置を望む人は、56.1%あり、行政側も図書館建設に対してかなりの理解と意欲を持っているとみられることから、1日でも早い実現を望むものである。


徳島県立図書館