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板野町の地形と地理的様相を地図によって概観すると、湿地、古い池沼などはあまり見当たらず、そのような所を生活の中心としていることから、チリモ類の種類相は比較的単純で、人の興味や関心を引きそうな要素は少ないように見受けられる。しかし、実地に調査してみると、そう単純ではないことが明らかとなったので、まだ十分な結果は出ていないが、採集されたもののうち、一部を図示し、特に興味深いものについて簡単に触れておきたい。 関柱の西方、山上に、ジョガマル池というかなり大きな池があるが、この池で採集したミカヅキモの中に、新種と考えられるものが見つかった(図2)。かなり変わった形をしているので、これにはクロステリウム・ミラビリス(ミラビリス=驚くべき、不可思議な)と名をつけておく。 他の池から採られたツヅミモの中に、コスマリウム・オブソレーツム(図10)と、さらにこれに似るがやや異なるもの(図11)が見つかった。この後者は前者の変種とするのが適当と考えられるので、そのように扱い、トルンカツムの名を与えておく。 さらに別の池から、コスマリウム・ホルミエンスとやや異なるものが見つかったので、これを変種として、板野町で発見されたことを記念するイタノエンセの名を与えたい。なお、他の池からは新種と考えられるもの(図なし)が見つかっているので、コスマリウム・ドルシトルンカティフォルメと名付けたいと思っている。 さらに、水田の端の方にできた小さな水溜まりに緑色の小塊が見られたが、これはタウラストルム・ポリトリクム(図8)の集まりであることがわかった。この種は、これまでに日本では北海道からのみ報告されているものである。したがって珍しい種であると言えないこともないが、詳細に調べれば、日本各地から発見されるものと思われる。チリモ類についての十分な調査がなされていない日本では、そのようなことが一般的である。
 1 Netrium
digitus varrectum Krieger 2 Closterium mirabilis Hinode, sp.
nov. 3 Pleurotaenium eugeneum (Turn.) W. et G. S.
West 4 Cylindrocystis brebissonii Menegh. 5 Closterium strigosum
Br■b. 6 Closterium pseudoperacerosum Hinode, sp. nov. 7 Closterium
gracile Br■b. 8 Staurastrum polytricum (Perty) Rabenh. 9 Staurastrum
corniculatum Lund. 10 Cosmarrium obsoletum (Hantzsch)
Reinsch. 11 Cosmarium obsoletum var. trucatum Hinode, var.
nov. 12 Cosmarium homiens var. itanonese Hinode, var.
nov. |