阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第32号

石井町の読書と図書館要求

読書調査班

   筆田浩資・新孝一・寺井素子・

   奥本博子・笠井祥子

1.はじめに
 阿波学会の学術調査における読書調査は、従来、アンケートによる調査をもとに、住民の読書に関する考えをまとめてきた。今回の石井町の調査では、さらに一歩すすめて、住民の図書館に対する要求もふくめて調査をした。


2.調査の方法
 前回までの調査との関連を持たせるために、アンケートの方法も同様に、町内の小中学生を通じて用紙を配布し、その父兄に答えてもらう方法をとった。一方、県立図書館の移動図書館車を利用の人々、町内の公民館を利用の人々にも面接し、率直な意見を聞く、面接調査も加えた。
 

3.石井町の読書と図書館要求
(1)石井町の概要
 石井町は、松茂町、北島町、藍住町とともに、徳島市に隣接し、ベットタウン化してきた町である。そしてべットタウン化されてきた都市型部と、旧来の農村型部―町の重要な産業の一つである疏菜園芸を中心にした農業を営んでいる地域―が混在している。地理的条件は、徳島本線、国道192号線が通っている分、他の三町より恵まれている。財政規模・人口・面績比等も互いに遜色はない。
(2)アンケート結果の概要
 アンケート用紙は3,323枚配布し、2,575枚が回収され、回収率77.5%であった。回収された2,575枚のうち、記述が不十分な568枚をのぞき、アンケートの集計をおこなった。集計の結果は、別載のとおりである。
 結果を要約して、平均像をのべると、人々は、情報を得る手段としては、新聞(49.3%)・テレビ(40.4%)が中心である。書物は週刊誌、雑誌、書籍などを読む(約35%)。そしてその本は、書店などで実物を見て(45.9%)、趣味のため%(39.4%)や、娯楽のため(38.0%)に、自分で買って(89.0%)読んでいる。図書館は利用した事がなく(74.7%)、余暇は、ラジオ・テレビ(58.7%)や買物(34.1%)ですごす。しかし図書館については、町内に建ててもらいたい(58.7%)と考えている。となる。
(3)面接の概要
 県立図書館の移動図書館車を利用して、その駐車場での世話もしているお二人に、まず会った。曽我団地の石川さんは、5〜6年前から自治会のお世話から、移動図書館車のお世話もするようになり、移動図書館車の来る時は、利用者への電話連絡から当日のお世話(仕事を休んで)までしている。お世話係だからそうするのがあたり前と話された石井中央団地の新居さんも、6〜7年前からお世話をしており、石川さん同様、移動図書館車の来る時は、連絡と当日(お店をしめて)のお世話をしている。自分たちのところへも移動図書館車が来てほしいとたのんだのだから、お世話をするのは、あたり前と話された。町村の職員の仕事としてなされていると話したが、お二人とも、移動図書館車が来てくれるのでありがたいと話された。隣の徳島市の例、町としては池田町の例も話すと、石井町にも望んでいいのですねという返答であった。
 全国的にいって都市部では、図書館要求は当然の権利として考えているのに対し、石井町では、まだまだ、消極的な要求にとどまっている。
(4)石井町の読書施設
 高原公民館、中央公民館等を見たが、読書施設としては、十分機能しているとは思えなかった。資料は、ほこりをかぶっているし、中央公民館にいたっては有料であった。どういう名目であれ有料はそぐわない。高原公民館は無人であったが、施設を利用している人に聞くと、移動図書館車が来てくれなくなったので本は利用しなくなったと話していた。高原小学校の図書館は、独立した建物で、歴史を思わせるものであった。夏休み中であったので、利用の状態は良くわからなかった。


4.おわりに
 石井町の町民の読書および図書館に対する要求を高め、それに答えてゆくために、行政として是非実行してほしい点は、新しく建設されているコミュニティーセンターの図書室を、図書館機能を持たせて運営してほしいということである。図書館として機能するということは、人がおり、ある程度の予算があり、常に利用ができるということである。町民に要求がないのではなく、あらわせていないだけである。
 石井町の調査を終わってみて、特に気づいたことは、読書及び図書館に対する要求は、ないわけではないが、どのような形でその要求をあらわしていいのかわからない、という人々と、要求を出すことは贅沢であると考える人々がほとんどで、行政に対しては、「してもらっている」で、「してほしい」までに至っていない、という点であった。
 石井町の行政の目標は、次の3点である。
(1)調和のとれた町づくり
(2)住みよい文化的な町づくり
(3)豊かで健康な町づくり
「住みよい文化的な町づくり」のためにも、行政の力で、町民の読書および図書館要求に答えてもらいたいものだと切に希望したい。
 先に比較した三町のうち、松茂町は、県の図書館整備計画に、名のりをあげており、藍住町も続こうかの意向がうかがえる。北島町は、公民館図書室を利用に便利なところに移す計画がなされている。是非、次には石井町の名前が聞きたいものだと思う。

 

読書に関する世論調査
 徳島県立図書館
〈お願い〉県立図書館では、読書に関する世論調査を行っています。この調査は、いろんな面から読書について調査し、その結果は、今後の図書館運営や公民館の読書活動の改善などに役立てるもので、個々の調査表記入事項については秘密を守り、統計上以外の目的に使用いたしませんので、どうか趣旨をご理解のうえ、つぎの問いにお答えを記入してください。
(世帯主がご不在の場合は世帯員の方が、また家族ご相談のうえ、記入くださっても結構です。)
問1.現在、あなたのご子弟で就学中の方がありますか。また、すでに卒業されている方がありましたら、該当の項目の数字を○でかこんでください。


問2.人間は、社会生活を営むうえにいろいろ新しい情報(知識)が必要ですが、あなたは、その情報(知識)を得られる手段としてつぎのどれによっておられるか、該当のものの頭に○印をつけ、その○の中に、あなたが利用されている順に1.2.3.のように番号をいれてください。


問3.県立図書館は、みなさんに情報(知識)を提供するセンターとしての役割りを果たしていますが、あなた、またはご家族のかたの利用状況について、該当のものの数字を○印でかこんでください。


問4.あなたは、最近3か月間に本を読みましたか。該当の項目の数字を○印でかこみ、読んでいる方は書名等を下欄に記入してください。


問5.あなたが本を読む動機となったのは、つぎのどれですか。該当の数字を○印でかこんでください。


問6.あなたが本を読む場合、おもにどんな目的で読みますか。つぎの該当する項目の番号を○印でかこんでください。


問7.あなたが読みたい本は、おもにどこから入手なさいますか。該当する項目の番号を○印でかこんでください。


問8.図書館の蔵書を充実するうえにおいて、みなさんのご希望を参考にしたいと思いますので、あなたが興味をおもちの本、または購入希望の本がありましたら、つぎの該当する項目の番号を○印でかこんでください。


問9.あなたは、余暇をどう過ごしますか。


問10.県内には徳島市、鳴門市、阿南市、池田町、吉野町、日和佐町、木頭村にそれぞれ図書館があり、充実した図書館活動がなされています。また、海南町、脇町に図書館が建設中で、その活動が期待されています。あなたの町の図書館などの建設・設備・充実については、どうお考えですか。


徳島県立図書館