阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第31号
羽ノ浦町の野鳥

鳥類班

   増谷正幸・神原寛・郡和治・

   曽良寛武・新居正利・西岡桂子・

   西谷利雄・坂東悟・八巻吉子・

   吉田和人

1.はじめに
 日本野鳥の会徳島県支部は、鳥類班として総合学術調査に参加し、羽ノ浦町に生息する野生鳥類(野鳥)の分布・密度・繁殖状況を解明することを目的として調査を行った。

 羽ノ浦町は平野部の占める割合が高く、土地利用も進んで大部分が農耕地・宅地などになっている。南部は那賀川が流れている。山地は最高点が125.5mと低く、大部分がアカマツ二次林・果樹畑になっていて、本来の自然植生である広葉樹のまとまった林はほとんどない。このような自然環境と野鳥の生息状況がどのような関係にあるか、ということに重点を置いて調査を行った。


2.調査地区と調査方法
 平野部の農耕地、那賀川の河川敷、山地の森林の、3つの異なった自然環境の中から1か所ずつ調査コースを選び出し、ライン・センサス法による調査を5・7・10・11月に行った。(図1の1 2 3 のコース)ライン・センサス法とは、調査コースを時速2km程度で歩行し、調査者から半径25m以内で観察された鳥の種類と個体数をすべて記録していくものである。調査コースの全長は、1 、2 は1km、3 は800mであった。


 上の3か所以外の地域でも、必要に応じて調査を行った。
 ライン・センサス法によって得られた野鳥の出現個体数に、各種ごとの鳥の体重を掛けたものの総和を、野鳥の生物現存量という。それを1平方キロメートルあたりに換算したものが、図2である。これから、調査コース内の自然環境がほぼ一様に続いていると仮定した場合の、1平方キロメートルあたり生息野鳥のおよその総重量がわかる。


 また、各調査コース別の、生物現存量の種類別の割合を、図3〜図5に示した。これから、その地域の自然環境と生息野鳥の相互関係(現在の自然環境にどの野鳥が適応しているか、またはどの種類の野鳥がその地域で優占的な生態的地位を獲得しているか)のおおよそがわかる。


3.調査結果と考察
 図2・図3〜5を適宜参照しながら、地区別に調査結果の考察を試みてみたい。
(1)平野部の農耕地
 東部の中庄地区を調査した。ここは水田・畑作地が多く、人家等建造物が点在する。小川や排水路はほとんどすべてコンクリート護岸化されている。自然度の非常に低い地域である。


 ここでは、ドバトが極めて優占しているのが注目される。ドバトとは、中央〜西アジア原産のカワラバトを原種として家禽化されたもので、日本でも、飼われていたものが逃げ出したりして野生化している。日本に元から生息しているキジバトとはまったくの別種である。ドバトは、コンクリート家屋・橋など人工建造物のすきまをねぐら・営巣場所に利用し、付近の農耕地・造成地・河原などで植物の種子を食べている。本来の生息地が、岩石地・荒地・草原などからなる半砂漠地帯であり、現代日本の都市や農耕地が、原産地の環境とよく以ているため、各地で数が非常に増えつつある。最近各地で鳥が農作物を食害して問題になっているが、そのうち種子を食害するものの大部分はドバトによるものである。また、フンが洗濯物や建物を汚したりもしている。しかも、ドバトは人間による自然の破壊が進み、都市化・人工化されればされるほど、生息適地が増え、ますます増殖する、という皮肉な存在である。


 ハシボソガラス・スズメ・ムクドリ・キジバトなど、自然環境の変化に対する適応力の強い種類も割合多く出現している。これらの鳥も農作物を食害することがある。しかし反面、ハシボソガラスは動物の死体を食べて迅速に処理し周囲の環境を清潔に保っている。スズメ・ムクドリは、繁殖期には大量の昆虫を捕食するため、害虫の大発生を未然に防いでいる。キジバトは、ドバトと違って樹木の枝に営巣するため、どちらのハトが多いかを調べることによって、その地域の自然環境が最悪かよりましか、を示すバロメーター役となり得る。ところが、このような適応力の強い種類でさえ、外来種のドバトに押されて少数者になりつつあるのが現状である。
 また、本来の自然環境(自然状態の河川と周辺の湿地)が残っていれば生息出来る種類は、ごくわずかしか記録されなかった。ゴイサギ・コサギ・クサシギ程度がわずかに記録されたにすぎない。
 このことから、この地域の自然環境は最悪であると言わざるを得ない。人間の物質的利益の増進のため、と称して行なわれる種々の事業・施策(河川改修・護岸工事、農地改良、化学肥料・農薬の大量散布、宅地造成など)が、かえって外来種のドバトを増殖させ、農作物の食害・フン公害などを引き起こしているのである。


(2)那賀川河川敷
 西部の那賀川河川敷を調査した。堤防から水辺にかけておおむね草地→低木散在地→砂レキ地→水域と自然環境が変化する。
 出現した種類はかなり多く、特に目立った優占種はない。これは自然環境が割合複雑で、生息に適した環境にそれぞれの種類が生息しているからである。しかし、湿地に生息・営巣繁殖する種類は記録されなかった。これは、流れのゆるやかなよどみがほとんどなく、広いヨシ原もないので、大雨などによる増水の影響をまともに受けやすいからであろう。


 以上のことから、この地域の自然環境は羽ノ浦町の他の地域に比べれば少し良好、という程度のものである。とは言っても、当地は同町に残る数少ない自然であるから、運動場の造成工事などによって破壊されることのないよう切に望む次第である。
(3)山地の森林
 明現神社の社叢である妙見山を調査した。クロガネモチ・ホルトノキ・クスノキ・ヤマモモなど常緑広葉樹の大木が繁り、本来の自然環境に近い状態が割合良く保存されている。
 今回の調査の結果、森林性の留鳥であるエナガ・ヤマガラ・シジュウカラ・メジロ・コゲラの生息が確認されたものの、個体数は非常に少なかった。また、森林性の夏鳥の中では最も普通に生息するヤブサメは記録されず、大木・古木の樹洞に営巣するフクロウ・アオバズクも、5月の夜の調査・7〜8月の他の神社の森も含めた調査では生息が確認できなかった。これらの種類が生息していないと断定はできないものの、3〜4回程度の調査では、たとえ生息していても容易に確認できないほど数が少ないことは確かである。

ここで優占しているのは、キジバト・カラス類・スズメなど、特に森林でなくとも生活できる、自然環境の変化に対する適応力の強い種類である。
 妙見山の自然度は割合高いのに、鳥類相が貧弱な理由として、1 山の標高が低い、2 よく発達した自然林の面積が狭すぎる、3 周囲の山地が単調なアカマツ林・果樹畑になっていて、それらに取り囲まれて孤立している、などが考えられる。
 (4)特記すべき種について
 1  カイツブリ
 流れのゆるやかな自然状態の河川・湖沼に生息し、水中に潜って小魚などを捕食する。水草を積み上げて浮巣をつくり営巣する。明見の沼で繁殖が確認された。しかし、この沼はすぐ北の養魚場から水が流れてこない時期は涸れてしまうようなので、繁殖条件は非常に厳しい。とはいえ、この程度の湿地でさえほとんど残っていない羽ノ浦町では非常に貴重な生息地である。


 2  バン
 流れのゆるやかな自然状態の河川・湖沼と周辺の湿性草地に生息する。水草・雑草の種子、昆虫など小動物を食べる。生息適地がほとんどない羽ノ浦町では非常に少ない。上と同じ明見の沼と、宮倉の河川状沼地で生息が確認された。しかし、両地域とも非常に狭く、すぐ近くに人家・道路があるため生息条件は非常に厳しい。
 上記のカイツブリ・バンは、徳島県東部〜吉野川下流域の平野部では、だんだん減少しているとはいえ、まだかなりの数が生息している。ところが羽ノ浦町では極端に少ない。これは、河川改修・護岸工事、湿地の埋め立てなどにより本来の自然環境がほぼ完全に失われてしまったためである。


4.まとめと堤言
 今回の調査の結果、羽ノ浦町の鳥類相は極めて貧弱・単純であることが明らかになった。その原因は、平野部では、河川改修護岸工事・埋め立て・宅地開発・農地改良などにより低湿地・原野・自然状態の河川が失われてしまったためであり、山地では、本来の自然植生である広葉樹の発達した森林がほとんど残っていないためである。この自然度の低さは、県下50市町村の中でもトップクラスに入るのではないかと思われる。将来の徳島県全体の姿を暗示しているのでなければ幸いであるが。
 野鳥は、1 自然度の高い環境でなければ生息できない種、2 自然環境の変化に対する適応力の強い種、3 自然度の低い環境に生息する種、に分けることができる。羽ノ浦町では、1 に属する種類は非常に少ない。2 3 に属する種類ばかり目立ち、特に3 の代表種であるドバトが極めて優占している。そして、このドバトが、農作物を荒らしたり、いわゆるフン公害を起こしたりしているのである。           
 以上のことから明らかなことは、人間生活の向上、農業の健全な発展のためには、すべてを開発・人工化してしまうのではなく、自然度の高い環境も積極的に保護・復元しなけ   ればならないということである。そうすれば、自然の生態系のバランスが回復し生息する各種野生動物の相が複雑になるので、かえって特定の害虫の大発生を抑えることになるのである。また、本当の意味での「自然」は、人々の精神の発達にも良い影響を与え、地域の風土に根ざした文化の発展にも結びつく。これらは、直接金銭的利益とは結びつかず数字化して示すことが困難なため、これまでまったく無視されてきた観念なのである。
 そこで、羽ノ浦町が真の意味における「豊かな」町に生まれ変わることを願って、次の5点の要望をいたしたい。
 1  ドバトがすめないような自然度の高い環境を復元させる。1例として、徳島市の城山と眉山について述べると、前者は山頂神社と麓の公園にドバトが数多くすんでいるのに、後者の山頂公園には種々の人工施設があるにもかかわらず、ドバトは不定期に現われるのみである。これは、前者の原生林が狭すぎる上に、周囲が都市化されているためであるのに対し、後者は、山頂公園と麓の市街地が割合広い森林によって隔てられているためである。これは重要な示唆を含む事実であろう。


 2  湛水・洪水防除策を、土木技術にのみ頼る方法から、それに自然の生態系を尊重する観点も付け加えて、発想の転換を図る。例えば、一部に自然状態の河川を残し、後背地には遊水地帯を設けるなど。
 3  コンクリート三面張り排水路は、水生生物が生息できないばかりか、小動物の移動が妨げられ、落ち込んだら這い上がれないので、どうしても三面張りでなければならないのなら、せめて、一部の傾斜をゆるくしたり、階段状構造にするなどして、野生動物への十分な配慮をする。


 4  那賀川の河川敷は開発しない。また、広い砂レキ地を利用して流れのゆるやかなよどみや池を作り、周囲にヨシなどの水草が自生できるようにして、湿地性の野鳥が生息できるようにする。このように水鳥の生活域を確保してやれば、一部で問題になっているカモ類の養殖ノリ食害やサギ類の養魚場荒らしを減らすことも可能である。
 5  その地域の潜在自然植生に基づいて、神社の森の保護・育成に務める。


5.羽ノ浦町野鳥目録
 1984年3〜11月の調査で記録された種類は、ドバトも含めて61種であった。以下にその種名と主な生息環境を、また重要な種類・行動等については具体的観察記録を掲げる。なお、年間を通して町内を詳しく調べれば記録種が増える可能性もある。
  カイツブリ目 PODICIPEDIFORMES
 カイツブリ科 PODICIPITIDAE
1.カイツブリ Podiceps ruficollis
 流れのゆるやかな自然状態の河川・湖沼に生息。非常に少ない。非繁殖期は那賀川にも生息。
 1984.3.4 覗石・那賀川(標高14m) 4冬羽
 1984.5.7 古毛原分・那賀川(標高10m)2
 1984.7.29 明見(標高10m) 4ヒナ2成鳥 沼地でアマガエルを給餌
  コウノトリ目 CICONIIFORMES
 サギ科 ARDEIDAE
2.ゴイサギ Nycticorax nycticorax
 主に夜行性。河川・湖沼・水田等でカエル・魚などを捕食する。
 1984.7.8 中庄(標高4m) 1成鳥 自然状態の小川の岸辺
 1984.7.26 明見(標高10m) 4 沼地の岸のヤナギの枝にとまる。
 1984.10.10 宮倉(標高3m) 3若鳥 河川状の沼地で
3.アマサギ Bubulcus ibis
 乾性草地・畑で昆虫・クモ類を捕食する。
 1984.7.8 中在(標高5m) 8 飛んで来て水田の畔に下りる
 1984.7.26 明見(標高15m) 5 那賀川堤防上の草地
 1984.10.10 中庄(標高4m) 6 稲刈り後の田と畔道
4.ダイサギ Egretta alba
 河川・湖沼・湿地・水田等で小動物を捕食する。少ない。
 1984.5.7 古毛原分・那賀川(標高10m) 1
 1984.10.10 宮倉(標高3m) 1 河川状の沼地
5.コサギ Egretta garzetta
 河川・湖沼・湿地・水田等で小動物を浦食する。
 1984.11.23 古毛原分・那賀川(標高10m)33±
6.アオサギ Ardea cinerea
 主に河川で小動物を捕食する。少ない。
 1984.11.23 明見 1 那賀川上空通過
  ガンカモ目 ANSERIFORMES
 ガンカモ科 ANATIDAE
7.マガモ Anas platyrhynchos
 冬鳥。河川と周辺の湿地に生息。少ない。
 1984.10.14 岩脇原分・那賀川(標高10m) 4
8.コガモ Anas crecca
 冬鳥。河川と周辺の湿地に生息。少ない。
 1984.3.4 上山路・那賀川(標高12m) 3
  ワシタカ目 FALCONIFORMES
 ワシタカ科 ACCIPITRIDAE
9.トビ Milvus migrans
 留鳥。主として那賀川河原で動物の死体等を食べ、近くの山の林で営巣する。少ない。
 1984.5.7 妙見山(標高70m) 1
 1984.5.7 古毛原分・那賀川(標高10m) 1 河原で
 ハヤブサ科 FALCONIDAE
10.チョウゲンボウ Falco tinnunculus
 冬鳥。平地に生息し、ネズミ・昆虫類などを捕食する。少ない。
 1984.11.23 中庄(標高5m) 1♂型 電線にとまる
  キジ目 GALLIFORMES
 キジ科 PHASIANIDAE
11.ウズラ Coturnix coturnix
 冬鳥。主に那賀川河川敷の草地に生息。少ない。
 1984.11.23 明見・那賀川(標高11m) 1 河原の草地
12.コジュケイ Bambusicola thoracica
 留鳥。低山・山麓の疎林・林縁(えん)部に生息。
 1984.10.10 古毛原分・那賀川(標高10m) 1 中洲から川面すれすれに飛んで北岸のやぶヘ
  ツル目 GRUIFORMES
 クイナ科 RALLIDAE
13.バン Gallinula chloropus
 留鳥。流れのゆるやかな自然状態の河川・湖沼と周辺の湿性草地に生息。非常に少ない。
 1984.5.7 宮倉(標高3m) 4 河川状の沼地
 1984.7.29 明見(標高10m) 2成鳥 沼地の岸辺
  チドリ目 CHARADRIIFORMES
 チドリ科 CHARADRIIDAE
14.コチドリ Charadrius dubius
 那賀川河原の水辺〜砂レキ地に生息。
 1984.3.4 古毛原分・那賀川(標高10m) 2
15.イカルチドリ Charadrius placidus
 那賀川河原の水辺〜砂レキ地に生息。
 1984.7.29 明見・那賀川(標高10m) 2
 シギ科 SCOLOPACIDAE
16.トウネン Calidris ruficollis
 旅鳥。那賀川の河原に生息。非常に少ない。
 1984.3.4 上山路・那賀川(標高10m) 1
17.クサシギ Tringa ochropus
 冬鳥。河川の岸辺や湿地に生息。少ない。
 1984.11.23 中庄(標高4m) 1
18.キアシシギ Tringa brevipes
 旅鳥。那賀川の岸辺で昆虫など小動物を捕食する。少ない。
 1984.5.7 古毛原分・那賀川(標高10m) 4
19.イソシギ Tringa hypoleucos
 冬鳥〜旅鳥。主に河原に生息。少ない。
 1984.11.23 上山路・那賀川(標高10m) 1
20.タシギ Gallinago gallinago
 冬鳥〜旅鳥。湿地に生息。少ない。
 1984.10.10 宮倉(標高3m) 2 河川状の沼地
 1984.11.23 宮倉(標高3m) 1 河川状の沼地
 カモメ科 LARIDAE
21.ユリカモメ Larus ridibundus
 冬鳥。那賀川に生息。
 1984.5.7 古毛原分・那賀川 1 川の上空飛翔
22.コアジサシ Sterna albifrons
 夏鳥。大きな河川の河原の砂レキ地で営巣するが羽ノ浦町で繁殖する可能性は小さい。
 1984.5.7 明見・那賀川 1 上空飛翔
  ハト目 COLUMBIFORMES
 ハト科 COLUMBlDAE
23.キジバト Streptopelia orientalis
 留鳥。平地から山地まで普通に生息。木の枝に粗い巣を作りほぼ周年繁殖する。
  ブッポウソウ目 CORACIIFORMES
 カワセミ科 ALCEDINIDAE
24.カワセミ Alcedo atthis
 留鳥。流れのゆるやかな河川・湖沼の岸辺にとまり、水中に飛び込んで小魚を捕食する。土の崖に穴を掘って営巣するため、コンクリート護岸工事等により営巣地がほとんどない。非常に少ない。
 1984.3.4 覗石・那賀川(標高15m) 1 岸辺の木の枝にとまる
 1984.7.29 明見(標高10m) 1 沼地の岸の木の枝にとまる
  キツツキ目 PICIFORMES
 キツツキ科 PICIDAE
25.アリスイ Jynx torquilla
 旅鳥〜冬鳥。樹木の散在する草地に生息。少ない。
 1984.11.23 明見・那賀川(標高10m) 1 河原の枯草にとまる
26.アオゲラ Picus awokera
 本来は山地の自然林に生息するが、羽ノ浦町では非繁殖期に移動途中のものが時折立ち寄るにすぎないと思われる。
 1984.10.10 妙見山北方(標高100m) 1 鳴き声
27.コゲラ Dendrocopos kizuki
 留鳥。山地の自然林に生息。アカマツ枯木をつついてカミキリムシ幼虫を捕食することが多い。枯木〜半枯木の太い枝又は幹に嘴で穴を掘って営巣する。少ない。
 1984.5.7 妙見山(標高80m) 1
  スズメ目 PASSERIFORMES
 ヒバリ科 ALAUDIDAE
28.ヒバリ Alauda arvensis
 留鳥。草地・農耕地・河原に生息。
 ツバメ科 HIRUNDINIDAE
29.ツバメ Hirundo rustica
 夏鳥。人家の軒下等に営巣。春、秋には広いヨシ原をねぐらとするが、そのような広いヨシ原は羽ノ浦町にはない。
 セキレイ科 MOTACILLIDAE
30.キセキレイ Motacilla cinerea
 留鳥。河川・湖沼に近い平地〜山麓部に生息。非繁殖期には生息環境が広がる。
 1984.5.7 妙見山麓(標高20m) 2
31.ハクセキレイ Motacilla alba
 冬鳥。河原・湿地・草地・農耕地に生息。
32.セグロセイレイ Motacilla grandis
 留鳥。平地の水辺に生息。非繁殖期には農耕地でも採餌し、昆虫類を捕食する。
33.タヒバリ Anthus spinoletta
 冬鳥。湿地・河原・草地・農耕地に生息。
 1984.11.23 中庄(標高4m) 34+ 休耕田・畑でクモを捕食する
 ヒヨドリ科 PYCNONOTIDAE
34.ヒヨドリ Hypsipetes amaurotis
 留鳥。明るい林に生息。冬期は北日本方面から渡来越冬するものが加わり数が増え、樹木の多い平地にもすむ。
 モズ科 LANIIDAE
35.モズ Lanius bucephalus
 留鳥。林縁(えん)部に生息。
 1984.7.26 明見・那賀川(標高10m)1♂成鳥 河原の低木の枝にとまる(夏期の成鳥の記録は珍しい)
 ヒタキ科 MUSCICAPIDAE
36.ジョウビタキ Phoenicurus auroreus
 冬鳥。林縁(えん)部や樹木の多い人家、農耕地周辺に生息。
37.ノビタキ Saxicola torquata
 旅鳥。平地の河原・草地に生息。少ない。
 1984.10.14 明見・那賀川(標高10m) 6 丈の高い草にとまり、地上の昆虫に飛びついて捕食する
38.シロハラ Turdus pallidus
 冬鳥。山地の林に生息。少ない。
 1984.3.4 上山路(標高50m)1
39.ツグミ Turdus naumanni
 冬鳥。平地〜山地の林縁(えん)部・農耕地に生息。
 1984.5.7 古毛原分・那賀川(標高10m) 1 河原(かなり遅い時期の記録)
40.ウグイス Cettia diphone
 留鳥。山地のササやヤブの多い明るい林で繁殖し、冬期は平地の林縁(えん)部にも生息。
41.オオヨシキリ Acrocephalus arundinaceus
 夏鳥。ヨシ原に生息。非常に少なく、繁殖している可能性は小さい。
 1984.7.26 明見(標高10m) 1 沼地畔のヨシにとまる
 1984.7.29 宮倉(標高3m) 1若鳥 河川状沼地の草にとまる
42.エゾムシクイ Phylloscopus tenellipes
 旅鳥。山地の林に生息。少ない。
 1984.5.7 妙見山(標高40m) 1 さえずり声
43.センダイムシクイ Phylloscopus occipitalis
 旅鳥。山地の落葉広葉樹の多い林に生息。少ない。
 1984.5.7 妙見山(標高100m) 1 さえずり声
44.セッカ Cisticola juncidis
 留鳥。河川〜農耕地周辺の草地に生息。
 エナガ科 AEGITHALIDAE
45.エナガ Aegithalos caudatus
 留鳥。二次的な自然林に生息。少ない。
 1984.3.4 上山路(標高100m) 2
 1984.5.7 妙見山(標高30m) 1
 シジュウカラ科 PARIDAE
46.ヤマガラ Parus varius
 留鳥。広葉樹の多い自然林に生息。大木の樹洞に営巣する。少ない。
 1984.5.7 妙見山(標高40m) 1
47.シジュウカラ Parus major
 留鳥。広葉樹の多い自然林に生息。大木の樹洞に営巣する。少ない。
 1984.5.7 妙見山(標高70m) 1♂ さえずる
 メジロ科 ZOSTEROPIDAE
48.メジロ Zosterops japonica
 留鳥。常緑広葉樹の多い林に生息。少ない。冬期は北日本方面から渡来・越冬するものが加わり数が増え、樹木の多い人家の庭などにも現われる。
 ホオジロ科 EMBERIZIDAE
49.ホオジロ科 Emberiza cioides.
 留鳥。平地〜山地の林縁(えん)部に普通に生息。
50.ホオアカ Emberiza fucata
 冬鳥。平地の草地〜農耕地に生息。少ない。
 1984.11.23 明見・那賀川(標高10m) 2♀ 河原の枯草にとまる
 1984.11.23 中庄(標高4m) 2 畑地の脇の草やぶ
51.カシラダカ Emberiza rustica
 冬鳥。平地の林縁部や河原に生息。
 1984.11.23 明見・那賀川(標高10m) 23 河原の草地
52.ミヤマホオジロ Emberiza elegans
 冬鳥。山地の明るい林、林縁部に生息。
 1984.3.4 上山路(標高20m) 8+
53.アオジ Emberiza spodocephala
 冬鳥。平地〜山地の林縁部に生息。
54.クロジ Emberiza variabilis
 冬鳥。山地の林に生息。少ない。
 1984.5.7 妙見山(標高90m) 1♂亜成鳥 落葉の堆積した地上
 アトリ科 FRINGILLIDAE
55.カワラヒワ Carduelis sinica
 留鳥。河原・草地・農耕地・林縁部で雑草の種子を採餌し、山地〜山麓部の木の枝に営巣する。非繁殖期には群れる傾向がある。
 1984.7.29 明見(標高10m) 43若鳥
56.イカル Eophona personata
 冬鳥〜旅鳥。広葉樹の多い明るい林に生息。エノキ・ムクノキ・クスノキなどの木の実の種子を食す。少ない。
 1984.5.7 妙見山(標高70m) 2
 ハタオリドリ科 PLOCEIDAE
57.スズメ Passer montanus
 留鳥。人家・農耕地周辺に普通に生息。
 ムクドリ科 STURNIDAE
58.ムクドリ Sturnus cineraceus
 留鳥。人家・農耕地周辺に普通に生息。かつては大木の樹洞に営巣したが、大木の激減した現在では人家のすきまに営巣している。非繁殖期には群れる性質がある。主として昆虫食だが、冬期には木の実も食す。
 カラス科 CORVIDAE
59.ハシボソガラス Corvus corone
 留鳥。平地の河原・農耕地周辺に生息。
60.ハシブトガラス Corvus macrorhynchos
 留鳥。平地から山地まで広く生息。
○ ドバト
 人工建造物(橋・コンクリート建物等)のすきまをねぐら、営巣地とし、周年繁殖する。農耕地・造成地・草地・河原で農作物・草の種子を食す。非常に多い。自然が破壊されるにつれて逆に増える鳥である。
 1984.3.4 上山路(標高18m) 20+ 那賀川・堰の水門上の建物
 1984.7.8 中庄(標高5m) 60+ 畑地と造成地で採餌
 1984.7.29 明見(標高10m) 45+ 畑地と付近の草地で採餌

 参考文献
1)清棲幸保 1966:野鳥の事典 東京堂出版 p.19〜33
2)信州鳥類生態研究グループ 1977:長野県の野鳥―繁殖期の鳥類群集について― 長野県林務部林政課 p.12〜14
3)羽田健三監修 1975:野鳥の生態と観察 築地書館
4)増谷正幸 1983:鷲敷町の野鳥 総合学術調査報告「鷲敷町」郷土研究発表会紀要第29号 阿波学会・徳島県立図書館 p.81〜98
5)増谷正幸 1984:鴨島町の野鳥 総合学術調査報告「鴨島町」郷土研究発表会紀要第30号 阿波学会・徳島県立図書館 p.55〜73


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