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阿波学会研究紀要 |
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| 郷土研究発表会紀要第27号 | |
| 上板町の水生昆虫 |
水生昆虫班 徳山豊・神野朗 |
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1.はじめに
2.調査地点と調査方法
各調査地点の様相を述べると、st.1は泉谷川の上流部である。源流性の流れであるが砂防堤工事中で、河底は荒れ、水量も乏しく荒廃している。st.2は河床はやや荒れているが、水量もあり、頭大の石礫が多い。st.3、st.4は泉谷川に流れ込む小さい渓流である。流れ幅が2m位で、清水が流れる。st.5は、河床もやや安定している。st.6は和泉寺の約100m上手の谷である。水は汚濁し、白濁色をしている。
st.7では、家庭排水の流入も見られ、水は黒ずんだ色をしている。以上が泉谷川であるが、全体に河床の荒廃、水質の汚濁が見られ、水生昆虫相は貧弱であろうと予想された。st.8は宮ケ谷の上流で、自然な状態の山地渓流である。河床も安定し、石礫底で水も清冽である。st.9は大山谷の上流部で、河床は小さな石礫が多く、不安定な状態である。各所に砂防堤が築かれているのは、砂礫の流出が激しいことを示すのであろう。st.10は、山地部から平地部へ移る中間渓流で、水量がやや少なく、平瀬の状態である。st.11は大谷の上流部で、源流性の流れであるが、水量が乏しいのと、底質が岩盤で石礫が少ないことから、水生昆虫相は貧弱であると思われた。st.12〜st.14は宮川内谷川であるが、これらの地点は降水量が少ない時は、水量も減り、水枯れすることもある。今回は、水量もあり、流れが見られた。かつては美しい流れであったと思われるが、現在は汚濁がすすみ、水生昆虫も汚濁に強いものが生息し、汚濁に弱いものは絶滅していると予想された。特にst.14は汚濁がひどく、川というより、下水路である。採集するまでもなく、水生昆虫の生息できる状態でないが、清水の湧き出す所があり、そこで採集してみることにした。また、汚水の流れる川底も念のために調査した。st.15は上板町井ノ内付近に見られる瀬で、吉野川もこの地点から下流は水量も増え、瀬の状態は見られなくなる。st.16は高瀬橋のたもとにできた、大きなたまりで水草もはえ、池のような状態の所である。蜻蛉類などが多く採集されると予想されたので調査した。st.17は山間部に作られた大きな貯水池である。水は赤茶色に濁り、あまり水生昆虫も採集されそうに見えなかったが、他に見られる池はもっと汚濁しており、この池を調査することにした。以上、各調査地点の様相を述べたが、自然な状態で、水生昆虫の種類が豊富に見られると予想される地点はわずかであった。
3.調査結果と考察
今回、この地点で多く生息することがわかった。本来池や沼に生息するもので、st.6の汚濁した淵で採集した。図3に示すように、コバン型に切った木の葉を2枚重ね合わせた巣を作る。st.9の砂防堤によってできた水たまりの泥中から、カスリホソバトビケラを多数採集した。池・沼に見られる種類で、今回初めて採集された。st.3、st.4、st.8で採集されたムカシトンボの幼虫は、生きた化石といわれ、わが国の渓流だけに見られるものである。近年、自然の荒廃とともに、急激に姿を消している。カワニナは、ホタルの幼虫の食餌となる貝であるが、st.6、st.7でわずか見られただけで、ほとんど生息していない状態である。汚水の流入による水質の汚濁、農薬の散布、護岸工事、河床の荒廃など様々な原因で、ホタルはほとんど見られなくなってしまったが、その餌であるカワニナも、ホタル同様、姿を消しつつあるといえよう。
4.おわりに 参考文献
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| 徳島県立図書館 |