阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第27号
上板町の植物相について

徳島県博物同好会

          阿部近一・木内和美

1.自然環境
 本町は、背後を讃岐山脈の背稜によって香川県の引田町と境し、それより南は緩やかに傾斜して吉野川に及ぶ。その最高所は、標高691メートルの大山頂上で、それより南東の標高537メートルから、この山頂を経て県境を西北に延びて標高582メートルに達し、さらに土成町との町境標高606メートルの連峯に通ずる一帯は、若干継続しながらも、大体標高500メートルの等高線によって区画せられる。この一帯は、本町の最も高い地域で、本町をやや孤状に取巻く。


 泉谷川は、讃岐山脈に源を発し、本町の西寄りを南に流れ、その東寄りを南流する盗人谷川外2、3の小流とともに宮川内谷川に合流する。本町は、宮川内谷川を境として、その北部洪積層の台地あるいは、その扇状地と、それより以南の吉野川沖積地にそれぞれ発達する。その北部は中生層に属し、私泉砂岩よりなり酸性度が強い。南部は、洪積・沖積層よりなり、砂質土壌で大体良質である。
 年平均気温は、上板町の適当な資料がないので、その両側の鳴門、市場町のものを挙げると次の通りである。


 鳴門、市場町とも年平均気温は、16℃以上で、極めて温暖で、しかも夏季においては、海岸地帯の鳴門より内陸地の市場町(上板町)がより気温が高い。古来上板町一帯に亜熱帯性植物ともいわれるサトウキビが栽培せられるのも、なるほどとうなづけるものがある。
 また年間降水量は1400ミリメートル前後で、しかも通水性の強い土壌とも相まって、柿を始め果樹の栽培には好適している。

 

2.発達するアカマツ林
 阿讃山麓から頂上にかけては、通水力がよく乾燥が強いので、いたる所地肌が露出したり、アカマツ林でおおわれている。


 本町がこのようになぜアカマツが全山で優占種となっているかを考えると、1つは早くから開けたため、薪炭材として皆伐が繰り返され、そこへ陽生樹であるアカマツがはいり込み、広葉樹の萌芽林は、元の姿に立ちなおる余裕がなかったこと。また山火事も皆伐と同じような結果をもたらし、地味は次第にやせていくばかりである。択伐ならば、長い年月の間に元の姿になり、アカマツのはいり込む余地を与えない。アカマツの優占する林下では、如何に自然林が息をつないでいても、十分な活力とはならず、そうしたことが何代か繰り返されると次第に地味はやせ、アカマツやネズの単純林を形作る結果となる。
 2つめの理由として、アカマツの特性と環境要因について考えてみると、日本における天然分布の北限地は、北海道南部(黒松内町以南)である。それより以南の高地や特殊な地域を除いて、いたる所広く分布し、天然分布の南限地は、鹿児島県屋久島の南部北緯30゜15′である。
 垂直分布の範囲は、海抜およそ2〜2290メートルの間で、本県では剣山の夫婦池まで侵入し、かなり高い所にもよく生育する。
 アカマツの水平的に分布する地域の年平均気温は、およそ7.5〜18.7℃の間である。最高自生地の平均最低気温は、およそ−16.1℃である。また自生地の最南地屋久島の平均最高気温は、およそ30.5℃である。要するにアカマツは温度的にみて、かなり適応範囲の広い樹種であるといえる。
 アカマツの自生する地域の年降水量は、1,000〜4,000ミリメートルである。しかし分布密度の大きい地域の大部分の年降水量は約1,000〜2,000ミリメートル程度で、日本としては比較的降水量の少ない地域である。その上降水の配布状態は、冬季は少なく、梅雨期や台風期に多い地方に最もよく生育するようである。
 アカマツは弱酸性土壌すなわちpH4.5〜5.5がよい。また土地に対する適応性も広く、かなり強い乾燥にも耐える力があり、岩壁上や岩石地、砂丘、荒廃原野など一般に地味の悪い乾燥地でもよく耐え、生育を持続する。陽生樹であるから幼樹から老樹にいたるまで十分な陽光が必要である。要するにアカマツは土地に対する適応力が強く、地味の肥沃な平地、平屋根筋および、屋根に接する斜面などにおいて最も旺盛に成長する。このようなアカマツの特性と本町の降水量、地形、気温、土壌などの環境要因から考えると、アカマツ林が発達するようになっている。このアカマツも最近全国に慢延している松くい虫の被害を受け、いたる所枯れ始め、本町では、大谷、泉谷川、大山など全地域にわたり被害を受け、中にはここ数か月の間に小山全体が枯れてしまった所も見られる。
 一般にアカマツの林地は、やせ地が多く、また次第にその地力を弱めるので根に根粒菌を持つ、ニセアカシヤなどのマメ科植物や、放射状菌をもって根粒をつくるハンノキ属や、ヤマモモ属の植物が泉谷川付近の崩壊地に砂防用として利用されているのは、みな肥料木として地力を養う上からも適切な措置と考えられる。

 

3.暖温帯の常緑広葉樹林帯と植生の混乱
 本県では、平地から低山の標高およそ500メートルに至る一帯では、暖温帯のヤブツバキクラス域にあたり、一般に常緑広葉樹林がよく繁茂する。中でも谷川筋の湿潤地では、カシ林がよく発達し、山腹の乾性地では一般にシイ林がよく繁茂する。この傾向は本町においても決してこれに漏れるものではない。ただ吉野川筋の一帯では、前述のように早くから開発が進み、絶えず森林の伐採が繰り返されたため、代償植生としてそのほとんどは、アカマツに置き代わる外、コナラ、クヌギ、などの二次林の発達をみるなど、自然植生は大きく乱れ、今日では、その自然の姿に見るべきものはない。しかしそうした中にあっても、山麓を始め、大山寺周辺、あるいは泉谷川筋などにおいては、例え2次林とはいえ、いたる所その古い自然の跡をうかがうに足るものがないではない。今それら構成要素の一部を拾ってみると、次の通りである。
 (1)山麓から泉谷川筋にいたる常緑広葉樹林。
 この一帯は、一般にカシ林の発達する地域ではあるが、谷川筋を岩盤でおおい、土層が浅くてよく乾燥する地域では、ウバメガシ(別項を設ける)を始めコジイ林の残存をみる所があり、海岸に多いタイミンタチバナの出現する所もある。またこの谷筋では、そうした常緑広葉樹林を隔てて、クマノミズキやケヤキあるいはイヌザクラの大木が各地に下降するのは、特異な植生といわざるを得ない。


高木層 アラカシ・シラカシ・コジイ・クスノキ・カゴノキ・ヤマモモ・カナクギノキ・エゴノキ・ヤマザクラ・エノキ
亜高木層 ヤブニッケイ・シロダモ・ソヨゴ・リンボク・ナナメノキ・タイミンタチバナ・シナノガキ・マルバアオダモ・ネムノキ・オオバコナラ・カラスザンショウ
低木層 ヒサカキ・アセビ・シャシャンボ・アオキ・マツラニッケイ・イヌツゲ・モチツツジ・ガマズミ・イボタノキ・ムラサキシキブ・ヤマコウバシ・コバノミツバツツジ・ウツギ・ネジキ・キブシ
草本層 アキノタムラソウ・シラヤマギク・シロヨメナ・リュウノウギク・タツナミソウ・アキチョウジ・アキノタムラソウ・オカトラノオ・ヤクシソウ・アキノキリンソウ・キッコウハグマ・カモジグサ・ナガバノタチツボスミレ・セトウチホトトギス・ヤマハッカ・ヒキヨモギ・ミツデウラボシ・タチシノブ・サイコクベニシダ・ベニシダ・ヒメイタチシダ・ヤブソテツ
蔓植物 アケビ・ミツバアケビ・ビナンカズラ・トキリマメ・ヤブマメ・テイカカズラ・カナムグラ・スイカズラ・カエデドコロ・ノブドウ・ナツヅタ
 (2)大山寺周辺の常緑広葉樹林
 大山寺は、標高430メートル付近に位するが、その上下部一体には、わずかに自然域あるいは、自然の2次林のみられる所がある。この地域で特に目立つのは、アカガシを始めユズリハ・モミなどが出現することである。今その構成樹種を挙げると、
高木層 アカガシ・モチノキ・ユズリハ・カゴノキ・クロガネモチ・ヤマザクラ・モミ
亜高木層 カクレミノ・ヤブツバキ・ウバメガシ・サカキ・ヒイラギ・ソヨゴ・ゴンズイ・クロバイ・ネズ・コナラ・エゴノキ
低木層 ネズミモチ・アセビ・ヒサカキ・モチツツジ・ウンゼンツツジ・コバノミツバツツジ・オンツツジ・カイナンサラサドウダン・ヤブムラサキ・ネジキ・ナツハゼ・スノキ・コガクウツギ・コウヤボウキ
草本層 アキチョウジ・サジガンクビソウ・シラヤマギク・ヒキオコシ・シロヨメナ・オカトラノオ・ナギナタコウジュ、アキノキリンソウ・キッコウハグマ・オオバノトンボソウ・キチジョウソウ・コシダ・ベニシダ・トウゲシバ・イノデ・ヤブマメ・カラスウリ・テイカカズラ・オオカモメズル・サルトリイバラ・フジ・ナツヅタ

 

4.ウバメガシの特異な樹林
 ウバメガシは、耐乏性の強い植物で、海岸の貧栄養、乾燥度の強い所によく樹林を形成するが、また勝浦川や那賀川の上流河岸や宮川内谷など、海岸から相当離れた内陸地においてもよくその分布が見られる。本町泉谷川上流の標高250メートル付近で、他の植物の侵入し得ない岩塊地において、ウバメガシの優占する大群落が見られることは、誠に興味ある植生といえる。今その構成要素を挙げると次の通りである。
亜高木層 ウバメガシ(優占)・カゴノキ・ヤブツバキ・コジイ・ヤマモモ・シラカシ・ヒイラギ・カヤ・イヌガヤ・マルバアオダモ・オオバコナラ・コナラ・ヤマザクラ
低木層 ソヨゴ・イヌツゲ・ネズミモチ・イボタノキ・ガマズミ・ウシコロシ・ネジキ・コバノミツバツツジ・マルバウツギ・マツラニッケイ
草本層 シュンラン・モエギスゲ・ナンカイアオイ・コバノタツナミソウ・ミツデウラボシ・キンラン

 

5.頂上一帯の中間温帯林
 本県では、大体標高が500メートルともなると、暖温帯の常緑広葉樹が次第にその姿を消し、それに代って針葉樹のモミ・ツガを始め、冷温帯の落葉樹が出現するようになる。その状態は、高度を増すに従って、その交替の量を加え、標高がおよそ900〜1000メートル(厳密には、1200メートルに及ぶ)にいたっては、全く冷温帯落葉広葉樹林へと移行する。
 中間温帯林とは、このように標高による気温差によって、暖温帯から冷温帯へと移行する途中相において、常緑と落葉の両植物が混生する樹林をいう。
 本町の大山頂上を中心とした讃岐山脈の背稜地帯は、標高500〜600メートルの等高線内にあり、すでにその推移帯に入ることが伺われる。しかしこの一帯は、古くその樹林が何回かにわたって伐採され、多くはアカマツの2次林となる外、ヒノキの植林などに置き代わるが、中には、モミ(周1.88メートル)、スギ(周1.97メートル)、イロハカエデ(周2.56メートル)、ヤブニッケイ(周1.01メートル)など、その一部が伐り残され、そこに潜在植生が復元しつつある。その組成の大要を挙げると、次の通りである。
高木層 モミ・ヤブニッケイ・イロハカエデ・ヤマザクラ・ウラジロノキ・イヌシデ・クマノミズキ
亜高木層 ヤブツバキ・シロダモ・ヒイラギ・カナクギノキ・ウリハダカエデ・イタヤカエデ・コナラ・エノキ
低木層 タンナサワフタギ・アセビ・ウバメガシ・ネズミモチ・イヌツゲ・ウシコロシ・オオバケクロモジ・コマユミ・ツリバナ・ウツギ・サワフタギ・ガマズミ・ナンカイサラサドウダン・コバノミツバツツジ・ツクバネウツギ・ヤマコウバシ・イヌガヤ・ネジキ・コバノガマズミ・サンショウ
草本層 ニヨイスミレ・ヒメジソ・サジガンクビソウ・ハダカホオズキ・ヒナスミレ・ツルニンジン・ヤブタバコ・モミジガサ(群生)・コチジミザサ・アケボノソウ・ホウチャクソウ・ナルコユリ・ヤマホロシ・スゲ一種・ヤマアザミ・ガンクビソウ・ヒメノガリヤス・シロヨメナ・シハイスミレ・アオテンナンショウ・テイショウソウ・アキノタムラソウ・ヒメシラスゲ・ヤマトウバナ・コスミレ・ヌカボタデ・ハリガネワラビ・フユノハナワラビ・ナンゴクナライシダ
蔓植物 イワガラミ・ゴトウズル・シラクチズル・ツルマサキ・ナツヅタ・カエデドコロ・テイカカズラ・エドドコロ・トリガタハンショウズル

 

6.池・沼の植物
 古い地図を拡げてみると、本町には小さな池が多い。本町のように南面の扇状地に発達した集落では、溜池は農業用の重要な水源であった。それらの溜池には、サンショウモ・タヌキモ・アサザ・トチカガミなど珍らしい水生植物が少なくない。しかし用水機の発達と共に溜池も次第に埋立てられて宅地や農耕地へとその姿を変えつつある。こうした数少なくなった溜池の辺地や水湿地には、ヤナギ類やハンノキが散生し、シロバナサクラタデ・アキノウナギツカミ・ハンゲショウ・サデクサなどが生育するほか、水中にはショウブ・コオホネ・ヒメガマ・カサスゲなどがよく挺水する。また水面には、オニビシ・スイレン・ヒルムシロ・ヒメヒルムシロなどの浮葉性植物がその葉を拡げ、ウキクサ・アオウキクサなどの浮遊性植物も群生する。さらに水中には、ミズオオバコ・ヤナギスブタ・クロモなど沈水性のものも見られる。特に関堀池には、本県唯一の貴重な自生とされるミズニラが昭和50年頃まで確認されたが、本年の調査では増水のこともあって確認に至っていない。

 

7.帰化植物
 帰化植物とは、いろいろな原因によって、渡来した外国産の植物が生育し、繁殖して広範囲に、あるいは局部的に野生化したものをいう。したがって外来種であっても栽培されている植物は除外される。
 現在日本に見られる帰化植物は800種とされ、イネ科・キク科・マメ科・アブラナ科・ナス科・シソ科などのものが多い。ハコベ・ナズナ・チドメグサ・エノコログサ・イヌビエなどは石器時代の帰化植物で、史前帰化植物と呼ばれる。
 一般に帰化植物は、種子が小形で、伝搬力の大きいこと、発芽力の強いことなどを特徴とするものが多く、生育可能の環境条件の幅の広いものが多い。
 現在県下には約250種の帰化植物がある内、140種以上は戦後侵入したもので、戦後如何に海外との交通が頻繁となり、人と物質の移動が活発化してきたかをうかがい知ることができる。
 町内では、吉野川堤防、宮川内谷筋にその侵入が多く、マメアサガオ・アレチウリ・ケイヌホウズキなどは珍らしい。現在明らかになっているものでは、ニワゼキショウ・アレチノギク・オオアレチノギク・ヒメジョオン・チチコグサモドキ・ホソムギ・ベニバナボロギク・オニノゲシ・イヌホオズキ・アメリカイヌホオズキ・ケイヌホオズキ・コセンダングサ・ムラサキカタバミ・ホソアオゲイトウ・イチビ・アメリカフウロ・ツルソバ・ホソバイヌビユ・ヘラオオバコ・シロザ・オオイヌノフグリ・オオヌカキビ・オオホウキギク・ダンドボロギク・アレチマツヨイグサ・エゾノギシギシ・アレチウリ・メリケンカルカヤ外。

 

8.社叢に見る植物
 神社や寺では、昔の植生をそのまま残して、その昔をうかがうものが少なくない。中でも葦稲葉神社境内ではカヤ(周1.75メートル)、ムクロジ(1.3メートル)、ナナメノキ(1.68メートル)、ノグルミ・エノキ(2.76メートル)、ムクノキ(1.96メートル)、クロガネモチ・ツブラジイ・アラカシ・イタヤカエデなどの巨樹が見られるのは、貴重な遺産といえる。中でもムクロジは低山地に多い落葉の喬木で、大形の羽状複葉をもち高木となることが多い。黒色の大きな種子ができるので、一名ツムノキともいい昔から追羽子の球に使われ、果皮にはサボニンが含まれるので、石けんの代用とされるほか、材はツム材として下駄などの用材に用いられる。

 

9.特記すべき植物
(1)瀬部の大イチョウ
 瀬部乳保神社の境内にある雄株の老樹で、周りは12メートルに達し、徳島県最大のイチョウで、昭和19年11月文部省から天然記念物の指定を受けている。
(2)鳥屋の大クス
 瀬部鳥屋の大クスノキは、周り12.1メートルで昭和34年12月天然記念物の指定を受け、県下第3位。
(3)スギ
 大山寺の大杉は、周り6.2メートルで県下第3位。
(4)シナノガキ(リュウキュウマメガキ)
 西アジア原産といわれ、支那・日本に古くから栽培される。果実は径1.5センチメートルほどで、熟すと黄色となり食べられる。未熟の青い果実から柿渋をとるため栽培され、信濃に多く見られるのでこの名がある、果実が丸くやや大きいものをマメガキといい栽培される。
(5)イヌザクラ
 サクラと同じバラ科であるがサクラでないのでこのようにいう。本県では冷温帯に多い落葉高木で、4月新葉と同時に白色花を開き花序の基部に葉がない。
(6)ミズニラ
 池沼や小流中にまれに生育し、形がニラに似ているというのでこの名があるが、むしろラッキョウに似た軟弱な草本。極めて珍らしい水生のシダ植物。
(7)セトウチホトトギス
 ヤマジノホトトギスに似るが花柱に紫点が多いのが特徴。稀。


(8)ヤマナンバンギセル
 オオナンバンギセルともいう。ハマウツボ科でススキなどに全寄生する。ナンバンギセルに似るがより高所に生え、全体大形で、がくの先が丸く、花冠の裂庁はふちに細かなきよ歯がある。
(9)ヒキヨモギ
 日当りのよい草原にはえる半寄生のゴマノハグサ科。高さ30〜50センチメートル。葉は対生で羽状に裂け、細毛がある。夏から秋にかけて黄色の花を咲かせる。
(10)テイショウソウ
 暖帯林下にはえるキク科で、本町のような内陸地にまではいり込んでいることは珍らしい。一方にかたよって頭花をつける。
(11)ヒメヒゴタイ
 大形のキク科で、秋に茎の上部で多数の紫色の頭花を密集して美しい。
(12)ウスバヤブマメ
 ヤブマメに比べ葉質は薄く下面は著しく白色をおび、頂小葉の先端は少し伸びるなどの点で区別される。稀。
(13)特異な帰化植物
・ケイヌホオズキ
 南米原産のナス科で、イヌホオズキはほとんど無毛であるのに、本種は全草に腺毛が多くべたつく。1950年神奈川で採り、その後開港地などで採られているが余りふえない。極めて珍らしい。
・アレチウリ
 北米原産のウリ科。吉野川堤防に局部的ではあるが大群生して強害草花しつつある。茎はつる性で長さ数メートルになり、まきひげで他物にからまる。葉、茎、果実は著しくざらついたり、鋭い軟らかい刺がある。種子は輸入大豆に混って豆腐屋を中心に広がったといわれる。

 10.タワヤモリ(トカゲ目ヤモリ科)
 阿讃山麓の香川県大川郡多和で発見されてから25年目、本町にもその生息を確認する。昭和55年7月28日、泉谷川の標高約200メートルの岩の割目で卵を発見、9月23日幼体よりタワイモリであることを確認する。人里離れた岩壁の割目や人家にも生息し、人目につきにくく、個体数も少ない上、行動が敏捷なので見つけにくく、捕獲しにくい。昔からトビハミ、シチブチャなどの異名を持ち恐れられているが毒性はない。日本にだけ生息し瀬戸内の一部と四国、大阪にしか見られない。分布上貴重な八虫類である。

 

上板町植物調査目録
  博物同好会班 阿部近一・木村晴夫・高藤茂・木内和美・木下覚

 

 裸子植物
ソテツ科−ソテツ(栽)
イチョウ科−イチョウ(栽)
イチイ科−カヤ
マキ科−イヌマキ、ナギ(栽)
イヌガヤ科−イヌガヤ
マツ科−モミ、クロマツ、アカマツ
スギ科−スギ
ヒノキ科−ヒノキ、ネズ、イブキ(栽)

 

 被子植物・単子葉植物
ガマ科−ヒメガマ
ヒルムシロ科−ヒルムシロ、コバノヒルムシロ
オモダカ科−ウリカワ、アギナシ
トチカガミ科−ヤナギスブタ、クロモ、ミズオオバコ、トチカガミ
イネ科−オカメザサ、メダケ、カニツリグサ、ヤマカモジグサ、カモジグサ、キツネガヤ、カモガヤ、ササクサ、トウササクサ、ツルヨシ、ニワホコリ、オヒシバ、ネズミノオ、メヒシバ、トダシバ、チカラシバ、エノコログサ、アキノエノコログサ、チジミザサ、ハイヌメリ、イヌビエ、チゴザサ、アブラススキ、チガヤ、ススキ、イタチガヤ、モロコシガヤ、コブナグサ、メリケンカルカヤ、オガルカヤ、メガルカヤ、ジュズダマ、ハトムギ(栽) コメガヤ、スズメノヤリ、ネズミムギ、シナダレスズメガヤ、カズノコグサ、シマスズメノヒエ、スズメノヒエ
カヤツリグサ科−ハマスゲ、トラノハナヒゲ、ヒメクグ、カワラスガナ、イヌクグ、カヤツリグサ、タマガヤツリ、ヒナガヤツリ、ヒンジガヤツリ、ホタルイ、モエギスゲ、マツバイ、マスクサ、ジュズスゲ、ヒメシラスゲ、アオスゲ、ケスゲ
ヤシ科−シュロ(栽)
サトイモ科−コンニャク(栽)、カラスビシャク、ムサシアブミ、ユキモチソウ、マムシグサ、セキショウ
ウキクサ科−ウキクサ、アオウキクサ
ホシクサ科−ホシクサ
ツユクサ科−ツユクサ、イボクサ
ミズアオイ科−コナギ
イグサ科−スズメノヤリ、イ、ハリコウガイゼキショウ
ビャクブ科−ナベワリ
ユリ科−シライトソウ、ヤマジノホトトギス、セトウチホトトギス、ウバユリ、コオニユリ、オニユリ、キチジョウソウ、テッポウユリ(栽)、ツルボ、ナルコユリ、ヤマホトトギス、オモト、ソクシンラン、ヤブラン、ジャノヒゲ、シオデ、サルトリイバラ
ヒガンバナ科−ヒガンバナ、スイセン(栽)
ヤマノイモ科−ヤマノイモ、オニドコロ、カエデドコロ、ヒメドコロ
アヤメ科−シャガ、ニワゼキショウ、アヤメ(栽)、ヒオウギ
ミョウガ科−ミョウガ(栽)、ハナミョウガ
ラン科−ムカゴソウ、ツチアケビ、キンラン、カキラン、ネジバナ、シラン(栽)、コクラン、フウラン(栽)、オオバノトンボソウ、シュンラン

 

 双子葉植物・離弁花類
ドクダミ科−ハンゲショウ、ドクダミ、フウトウカズラ、センリョウ、ヒトリシズカ、フタリシズカ
ヤナギ科−アカメヤナギ、ネコヤナギ、ヤマナラシ、ハシカエリヤナギ(栽)
ヤマモモ科−ヤマモモ
クルミ科−ノグルミ、オニグルミ(栽)、イヌシデ、アカシデ
カバノキ科−オオバヤシャブシ、ヒメヤシャブシ、ハンノキ
ブナ科−アラカシ、アカガシ、ウラジロガシ、シラカシ、ウバメガシ、コナラ、アベアキ、クヌギ、クリ、オオバコナラ、タイワンコナラ、ツブラジイ
ニレ科−アキニレ、ケヤキ、エノキ、ムクノキ
クワ科−カジノキ(栽)、コウゾ、イタビカズラ、ヒメイタビ、カナムグラ
イラクサ科−サンショウソウ、カラムシ、コアカソ、オニヤブマオ、ヤブマオ、メヤブマオ
ビャクダン科−カナビキソウ
ウマノスズクサ科−ナンカイアオイ、ウマノスズクサ
タデ科−スイバ、ギシギシ、ボントクタデ、ミチヤナギ、ミズヒキ、イシミカワ、ママコノシリヌグイ、ミゾサデクサ、ミゾソバ、シロバナサクラタデ、サクラタデ、イヌタデ、イタドリ、オオケタデ、エゾノギシギシ。
アカザ科−コアカザ
ヒユ科−イヌビユ、ノゲイトウ
ツルナ科−ザクロソウ
スベリヒユ科−スベリヒユ
ナデシコ科−ツメクサ、ウシハコベ、ハコベ、カワラナデシコ
スイレン科−コウホネ
ヤマグルマ科−ヤマグルマ
フサザクラ科−フサザクラ
キンポウゲ科−ボタンヅル、センニンソウ、キツネノボタン、アキカラマツ、ヒメウズ
アケビ科−ミツバアケビ、アケビ、ムベ、
メギ科−ナンテン
ツヅラフジ科−ツヅラフジ、ハスノハカズラ
モクレン科−シキミ、タイサンボク(栽)、モクレン(栽)
クスノキ科−クスノキ、ヤブニッケイ、タブノキ、ホソバタブ、オオバケクロモジ、ヤマコウバシ、クロモジ、カナクギノキ、シロダモ、カゴノキ
ケシ科−タケニグサ、ムラサキケマン
アブラナ科−マメグンバイナズナ、タネツケバナ、イヌガラシ、ナズナ
モウセンゴケ科−イシモチソウ
ベンケイソウ科−オノマンネングサ、コモチマンネングサ
ユキノシタ科−ユキノシタ、ノリウツギ、ツルデマリ、ガクウツギ、イワガラミ、ウツギ、マルバウツギ、ズイナ
トベラ科−トベラ
バラ科−ヤマブキ、ヘビイチゴ、オヘビイチゴ、キジムシロ、ダイコンソウ、ホウロクイチゴ、フユイチゴ、クマイチゴ、ナワシロイチゴ、ワレモコウ、キンミズヒキ、ノイバラ、テリハノイバラ、ウラジロノキ、ウシコロシ、ヤマザクラ、リンボク、ニガイチゴ、イヌザクラ、カナメモチ、ミツバツチグリ、ナガバモミジイチゴ
マメ科−ネムノキ、ジャケツイバラ、カワラケツメイ、クララ、キハギ、マルバハギ、ツクシハギ、メドハギ、ハイメドハギ、ネコハギ、ヤハズソウ、ミソナオシ、ヌスビトハギ、カラスノエンドウ、スズメノエンドウ、タヌキマメ、ヤブツルアズキ、ノササゲ、クズ、ツルマメ、ヤブマメ、ウスバヤブマメ、コマツナギ、ナツフジ、ミヤコグサ、ゲンゲ、シロツメクサ
フウロソウ科−ゲンノショウコ
カタバミ科−カタバミ
ミカン科−フユザンショウ、イヌザンショウ、カラスザンショウ、コクサギ、サンショウ、ミヤマシキミ、マツカゼソウ
センダン科−センダン
ヒメハギ科−ヒメハギ
トウダイグサ科−ユヅリハ、エノキグサ、アカメガシワ、シラキ、オオニシキソウ、コニシキソウ
ウルシ科−ハゼ、ヌルデ、ヤマウルシ
モチノキ科−イヌツゲ、ナナミノキ、ソヨゴ、クロガネモチ、モチノキ
ニシキギ科−ツルマサキ、マサキ、ツリバナ、コマユミ
ミツバウツギ科−ゴンズイ
カエデ科−イロハカエデ、イタヤカエデ、ウリハダカエデ、エンコウカエデ
トチノキ科−ムクロジ
クロウメモドキ科−クマヤナギ
ブドウ科−アマズル、エビズル、ノブドウ、サンカクズル、ヤブガラシ、ツタ
シナノキ科−カラスノゴマ
アオイ科−ムクゲ(栽)、フヨウ(栽)
マタタビ科−サルナシ
ツバキ科−チャノキ、ヤブツバキ、サカキ、ヒサカキ、サザンカ(栽)
オトギリソウ科−ヒメオトギリ、オトギリソウ
スミレ科−ヒナスミレ、スミレ、シハイスミレ、タチツボスミレ、ナガバタチツボスミレ、ニヨイスミレ、アオイスミレ、ニオイタチツボスミレ、ヒメスミレ
イイギリ科−クスドイゲ
キブシ科−キブシ
ジンチョウゲ科−ジンチョウゲ(栽)、ガンピ、コガンピ
グミ科−ツルグミ、アキグミ
ミソハギ科−ヒメキカシグサ、キカシグサ、ミソハギ
アカバナ科−オニビシ、アレチマツヨイグサ、ミズタマソウ、アカバナ
アリノトウグサ科−アリノトウグサ、フサモ
ウコギ科−タラノキ、ウド、トチバニンジン、キズタ、ヤツデ(栽)、カクレミノ、ハリギリ
セリ科−チドメグサ、ノチドメ、オオチドメ、ツボクサ、ヤブジラミ、ウマノミツバ、ミツバ、セントウソウ
ミズキ科−アオキ、クマノミズキ

 

 合弁花類
リョウブ科−リョウブ
ツツジ科−ウンゼンツツジ、ナツハゼ、オンツツジ、アセビ、ネジキ、カイナンサラサドウダン、シャシャンボ、カクミスノキ、コバノミツバツツジ、ヤマツツジ
イチヤクソウ科−イチヤクソウ
ヤブコウジ科−イズセンリョウ、ヤブコウジ、マンリョウ
サクラソウ科−コナスビ、オカトラノオ
カキノキ科−リュウキュウマメガキ、ヤマガキ
ハイノキ科−タンナサワフタギ、サワフタギ、クロバイ
エゴノキ科−エゴノキ
モクセイ科−ネズミモチ、イボタノキ、ヒイラギ、マルバアオダモ。
フジウツギ科−フジウツギ
リンドウ科−センブリ、リンドウ、ツルリンドウ、アケボノソウ、アサザ
キョウチクトウ科−テイカカズラ、キョウチクトウ(栽)
カガイモ科−イケマ
ヒルガオ科−マルバアサガオ、マメアサガオ、ネナシカズラ
ムラサキ科−ハナイバナ、タビラコ、チシャノキ(栽)
クマツヅラ科−コムラサキ、ヤブムラサキ、クサギ、ビロードクサギ、ムラサキシキブ
シソ科−ニガクサ、タツナミソウ、カキドオシ、ウツボグサ、メハジキ、ホトケノザ、アキノタムラソウ、ヒメジソ、トウバナ、ヒキオコシ、ヤマハッカ、アキチョウジ、ナギナタコウジュ、クルマバナ
ナス科−クコ、センナリホオズキ、イヌホオズキ、ヒヨドリジョウゴ、ハダカホオズキ、ヤマホロシ、ケイヌホウズキ、アメリカホオズキ
ゴマノハグサ科−アゼナ、キクモ、ムラサキサギゴケ、アブノメ、アゼトウガラシ、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ、ヒキヨモギ
ハマウツボ科−ナンバンギセル、ヤマナンバンギセル
タヌキモ科−タヌキモ
キツネノマゴ科−キツネノマゴ
ハエドクソウ科−ハエドクソウ
オオバコ科−オオバコ
アカネ科−ハシカグサ、フタバムグラ、アリドオシ、ヘクソカズラ、アカネ、ヤエムグラ・キクムグラ・ヤマムグラ
スイカズラ科−ソクズ、ニワトコ、ガマズミ、ツクバネウツギ、コツクバネウツギ、コバノガマズミ、スイカズラ
オミナエシ科−オミナエシ、オトコエシ
ウリ科−キカラスウリ、モミジカラスウリ、カラスウリ、アマチャズル
キキョウ科−ツリガネニンジン、キキョウ、ツルニンジン
キク科−ハハコグサ、チチコグサ、ヤブタバコ、サジガンクビソウ、ガンクビソウ、コウヤボウキ、モミジガサ、キッコウハグマ、テイショウソウ、オナモミ、ヒヨドリバナ、ヌマダイコン、ヒメジョオン、オオアレチノギク、ヒメムカシヨモギ、シュウブンソウ、フキ、ハンカイソウ、トキンソウ、ベニバナボロギク、リュウノウギク、オトコヨモギ、ヨモギ、コメナモミ、タカサブロウ、アメリカセンダングサ、センダングサ、コバノセンダングサ、コセンダングサ、ノアザミ、ヒメヒゴタイ、コウゾリナ、カンサイタンポポ、ニガナ、アキノノゲシ、ノゲシ、オニタビラコ、ヤクシソウ、ジシバリ、ヤマアザミ、ヤマシロギク、キクバヒヨドリ、ムラサキニガナ、シラヤマギク、オオバニガナ、アスター1種

 

 シダ植物
マツバラン科−トウゲシバ、ヒカゲノカズラ
イワヒバ科−クラマゴケ、カタヒバ、イワヒバ
ミズニラ科−ミズニラ
トクサ科−スギナ、トクサ(栽)
ハナワラビ科−フユノハナワラビ、オオハナワラビ
ゼンマイ科−ゼンマイ
フサシダ科−カニクサ
ウラジロ科−コシダ・ウラジロ
コケシノブ科−コウヤコケシノブ
イノモトソウ科−イヌシダ、ワラビ、イノモトソウ、アマクサシダ、タチシノブ、ホラシノブ、イワガネゼンマイ、イワガネソウ、タチシノブ、ハコネシダ
シノブ科−シノブ
オシダ科−ジュウモンジシダ、イノデ、イヌワラビ、ヤブソテツ、クマワラビ、ベニシダ、サイコクベニシダ、ハリガネワラビ、イブキシダ、ヤワラシダ、ホシダ、ヘラシダ、ナンゴクナライシダ、シシガシラ、トラノオシダ
ウラボシ科−ノキシノブ、マメヅタ
サンショウモ科−サンショウモ


徳島県立図書館