阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第23号

牟岐町の方言

言語学班 川島信夫・森重幸

I.調査の方法
 昭和51年8月、阿波学会の牟岐町総合学術調査に参加したわたしたちは、まず調査の目標を次のようにきめた。
 1.方言の実態
 牟岐町のことばには、どんな特徴があるか。他の地域との交流関係はどうであろうか。
 2.方言の変遷
 テレビ時代になって約20年、そのうえ交通の発達や社会状勢の変化で■■村との交流の激しい現在、古来の方言はどの程度、存続あるいは消滅しているであろうか。
 3.中学生の方言観
 地方の生活の中から生れた貴重な文化遺産として、方言の復権が唱えられている昨今、牟岐の中学生は、郷土のことばに対して、どのように考えているであろうか。
 4.調査の方法
 「1」は、調査期間内は、以前の調査を参考としながらテープコーダーの録音作業を主とし、西又、橘、西、東、古牟岐、出羽の各地点で、50〜80才の生えぬきの男女の会話や、調査者との対話を採集した。「2」「3」は、調査期間中に、対象生徒の登校がなかったので、9月になって牟岐中学の先生にお願したアンケート調査である。

 

 II.牟岐のことばの特徴
 ふつうに方言というと「長崎バッテン、江戸ベラボウ」のように、ある一つの言葉(単語)が、他の地方と異っている場合をさして言っている。こんな意味で「牟岐の方言は」と尋ねられたとき、「これだ」と示せるようなものは見当たらなかった。
 だが、牟岐の人同志が、気安く話し合っているときは、やはり牟岐弁というものがある。それは会話全体の調子であり、話される全ての単語からかもし出す気分である。そんな牟岐弁のなかから特徴と思われるものをいくつか挙げてみることにする。
 1.やわらかな終助詞
「ネー」
 はじめての土地へ来て、最初に方言を意識するのは、会話ことばの中で、最も頻繁に使われる間投助詞、または終助詞としての「ナー」「ノー」「ネー」の類である。
 本県では、従来、山分は「ノー」平地部は「ナー」が主であるが、牟岐町を中心として、海部郡は「ネー」の多い地域である。県下全体が、共通語化しつつあるなかで「ネー」は着実に勢力を増大しているが、牟岐の「ネー」は、以前からのもので、東京語のそれとは、アクセントは違うが、あたたかい語感の助詞である。
 「ケ」
 疑問の「か」は、本県では「カ」「コ」「ケ」の三大勢力があるが、海部の特徴とされるのが「ケ」で、もちろん牟岐町も同じである。
「ジェ」「ゼ」
 詰問の意味の「ぞ」に相当する語である。
   ソラ ナンジェ(それは何ぞ)
 これはまた場によっては、単なる疑問の助詞ともなる。
 「ウェ」「エ」
 念を押す意味の「よ」に相当する語
   オテヤ シランウェ(私は知らんとよ)
 「ヨネ」「ヨイネ」
 断定助動詞の「だ」のようでもあるが、それほど強くなくて感動助詞的である。
   トンダナー ボラヨネ(跳んだのはボラだよ)
 これら「ネー」「ケ」「ジェ」「ウェ」「ヨネ」等がみな e 音で終わるのはおもしろい、牟岐のことばが、単語は荒っぽいのに、やわらかく感じるのは、この e 音のなせるわざだと思うのはどうであろうか。
 ここで、最近発表された牟岐町出身の作家木本正次氏の小説「日本暖流」の中から用例を少し挙げさせていただく。
 三人も一諸とは弱ったわいねえ(忠明)
 ほんなみっともないことやめてくれんけ(桃代)
 ほのうち、ちゅうたら、いつのことぜ?(むめ)
 ほら、ほのうちに、よい(忠明)
 この機会に、おたや東京へ行くうえ(小枝子)
 2.大阪弁の影響
 「大阪サカイに阿波ケンド」という誰でも知っていることわざがある。「ケンド」は徳島の代表的な接続助詞であり、これは中国方言の「ケン」「ケニ」の影響と言われている。もちろん弁岐町でも盛んに使われているものである。しかし牟岐ことばの特徴は、もう一方の「サカイ」と、これから派生した「サカイニ」「サカイデ」または、「ヨッテ」「ヨッテニ」など、明らかに大阪から渡って来たと思われる接続助詞の多用である。
 断定の助詞に「ヤ」を使うのも、本県ではこの辺が中心であり、これも大阪弁である。
 前項で述べた「ケ」ももとは大阪弁で、現在はその周辺に残存しているものである。“今日の競馬は取れたんケ。今日はよう荒れたのワレ。ワイは全然さっぱりあかんだヤンケ”と歌い出す「河内のオッサンの唄」にも近しいものが指摘される。
 表現法では、「向うへ行け」というような命令の場合に動詞の命令形「行け」を使わず「ムコ、イキ」と連用形を使ってやわらかな表現をとる。
 また、打消しの助動詞「まい」も県下でも、ふつうは「有るまいと思う」のように動詞の終止形に接続させて言うところを、「アリマイ オモウ」と連用形に続けていう。
 一音節の歯、目などを「ハー」「メー」などと長音化するのは県下全般であるが、大阪を「オサカ」東京を「トーキョ」のように多音節の語の長音を短呼するのも、特色である。
 語彙では「アマエタ」(甘えっ子)「イケズ」(意地悪、強情、気まま)「エーシ」(財産家)その他、大阪方面から入って来たと思われるものは、無数である。
 これは陸路の交通不便であった頃、船路によって、直接大阪に通じていたことと、明治から昭和初期まで、殆どの主婦が嫁入り資格として娘時代に上方の女中奉公を体験したということによるものと思われる。
 もう一度「日本暖流」を引用させていただく。
 ほやさかい原則としては獲れるが…(忠明)
 ほやけど、わしは博奕は強いよってになあ(忠明)
 ほんなら破産やないと思いますが…(忠明)
 うん、世間の商人は、ほないに言うやろ(竜平)
 3.海のことば
 上方のことばが入ったのも海からであるし、町の人々の暮しが海をぬきにしては考えられない本町では、海の彼方から、また海の生活からきた言葉が多いのは当然であろう。
 海の彼方からきたもの
 「オセンゴロシ」和名を「すずめだい」といい、鱗の硬い、小骨の多い小魚である。オセンという女がこの魚を喰って骨がのどにかかって死んだので、この名がついたという。いかにも、当地で生れた作り話のようだが、実は、ちゃんと魚類図鑑にも載っている。流通範囲の広い名前である。
「テンヤ」、寒天の材料になる「てんぐさ」のことである。何となくここだけの名前のようだが、遠く寒天工場のある山梨県からきたもの。
「デキ」三人称「彼」の意であり特異な感を受けるが、山陰などにもあり、大阪の「テキ」の変形である。
「ゴーヘイ」主として船の前進の意味でよく使われる言葉である。ゴーという誰でも知っている外来語に、「舳へ」という語が加わって合成されたものかと思えば、go aheadという英語から来た航海用語である。このように思いの外に広い流通域をもつ方言が多いのも、海によって遠くの土地に接続しているからだと思われる。
 海の生活から来たことば。
「シオ」、内陸地方では、「しお」と言えば食塩を指すばかりであるが、ここでは塩と潮両方の意味がある。海水(うみのみず)などとは言わないでも、会話の文脈から、塩と潮の混同はまず起らないのである。
「シオバラ」陣痛のこと、出産が潮の干満に関連すると信じられている当地らしい語である。
「ナブラ」魚の群のことで流通範囲の広い漁業用語であるが、「カブシ」(撤き餌)カブス(撤き餌を撒く)など漁業用語から、日常生活に及んでいるものが多い。
 4.古語の残存
「イオ」魚のこと。これは県下全般の方言であるが、当地では改まった場合のほか「さかな」とはいわない。「うお」の訛ったものではなく、平安時代からの「うを」である。
「ウケ」魚網や、釣り道具につける「うき」である。これも訛語というよりは、奈良時代の万葉集以来の伝統語と考えられる。
「アコ」「ワコ」二人称(きみ)、もともとは「和子」と書き貴人の子供を呼ぶ古語であったもののなれの果てと思われる。
「ウタテイ」(うるさい、困った)よく使われる形容詞である。源氏物語にも見える「うたてし」の残存である。
「ウカ」沖(海)に対する「陸」をさす語で現在は消えかかっているものである。これは丘(おか)の転訛ではなく陸(くが)の変ったものと思われる。
 このような例は他にも多いが、これらは老年層だけの語彙になりつつあるものである。
 5.音韻変化の多いこと。
「ニカ ナイケ」(肉は無いかな)親しい食料品店へ買物に来た男のあいさつである。
「ニカ」は nikuwa→nika で uw が脱落して、このように短かくなったのである。
 牟岐の言葉で短かく約まったものが多いのは、音の脱落現象が頻繁だからである。
また「ダシキ」(ざしき)のような訛音も比較的多い地方となっている。
これらの現象を一例ずつ挙げてみる。
略音(音節の抜けるもの)
「キ」ぬけ ヨーユーテカシタノニ(言うてきかした)
「シ」ぬけ ミナトラレテモータ(取られてしもうた)
「ナ」ぬけ アメフランダライクワ(降らなんだら)
「ナイ」ぬけ アルヤカ(有るやないか)
「ラ」ぬけ フーセンフクマシタ(風船ふくらました)
「ル」ぬけ エーモンモットンヤケンド(持っとるん)
「ワ」ぬけ カマン(構わん)
「ウモ」ぬけ カマンカ(構うもんか)
約音(単音の抜けるもの)
 a ぬけ オメ(お前)ome−omae
 i ぬけ コイテヤ(来いて言や)koiteya−koiteiya
 u ぬけ ワリコト(悪いこと)warikoto−waruikoto
 e ぬけ ヒヤシタッタ(冷してあった)hiyasitatta−hiyasiteatta
 o ぬけ マドテクレ(償うてくれ)madote−madoote
 n ぬけ ドナイスル(どんなにする)donai−donnanisuru
 s ぬけ アイタ(明日)aita−asita
 w ぬけ マース(回わす)masu−mawasu
 d ぬけ イヌアッタ(犬だった)inuatta−inudattaこれはyぬけとも見られる。
音韻添加
 フッキン(布巾) オッキョイ(大きい)など促音化するもの。
 シンガツ(四月) イッケン(親戚、壱家)など撥音化するものが目立つ。
 特殊なものとして、フクト(海豚)ミゾゴ(溝)などがある。
訛音としては
( b→r )くだもの→クラモノ
( r→d )ろうそく→ドーソク
( z→d )ぞうきん→ドーキン
( d→z )なでる→ナゼル
 のように、ダ行音とラ行音、ダ行音とザ行音の混合がまだかなり残っている。
 6.語彙
 よく耳にする俚言で、他郡市の人には珍しいと思われるものの一部を列挙してみる。
 アコ(ワコ)  二人称 君(きみ)
 アノホラ(助)  間投助詞、次の言葉をさがす気味のとき
 アワエ  露路
 ウカ  陸地
 ウケ  釣具や、魚網につけるうき
 ウトウトシイ(形)  不如意な、めんどくさい。
 ウドマス(動)  ひどい目にあわせる。
 ウラマツリ  豊漁を祈る臨時の祭り
 エイエ(感) 応答、あいよ「ユキチャン」「エイエ」
 エド 餌、主として釣りのえさ
 オタ(オタイ)(オテ)  一人称、私
 オタヤイヤカシラン(句) あれまあ私としたことが…(恥かしいよ)
 オマー(オメ)  二人称、お前、きみ
 オンシ(ノンシ)  二人称、君(きみ)
 カウェー(句)  「買いに来たよ」店に入るときの挨拶語
 ガゼ  海胆(うに)
 ガネ  蟹(かに)
 カバエル(動)  ふざける
 カブシ  撒き餌
 クッツラ(副)  たっぷり、沢山、いっぱい
 ケブライ(副)  わずか、気配程度に
 コイヤゲル(動)  困り果てる
 コラ(助)  間投助詞これ 
 ザイゴー  農村、山村、海浜に対する語
 ザマクナ(連)  無作法な
 シオバラ  陣痛 シオバラがイタム
 シガッツオ 島の近辺で常時つれる鰹(かつお)
 シッタリ(副)  いつでも、常に
 シナギ  腐った魚 主に肥料用
 シンゾー  新造船
 シンダイナラン(句)  進退ならぬ、どうにもならぬ
 スガケ  床下(ゆかした)
 セギル(動)  釣針にかかった魚が泳いで糸を引く
 セタゲル(動)  いじめる
 セチベン  けちんぼ、倹約
 セッパイ(ヘッパイ)(副) たくさん
 センキョー  先日
 ソエル(動)  走る
 ゾンザ(ドンザ)  綿人羽織の仕事着
 ダー(感)  そうですよ「エライメニオータナ」「ダー」
 タケル(動)  魚が盛んに餌につく カッツオがタケットル
 タデル(動)  舟底を焼き害虫を殺す。
 チョケル(動)  ふざける
 デキ(レキ)  三人称、彼、あいつ
 テッショ  小皿
 テンマズレ  子供を連れていくこと。
 ドテッパイ  頂上
 ナブラ  群れ、主として魚の群
 ヌケル(動)  潜水する
 ネジボシ  干し大根
 バーヤン  小母さん(バァヤン)おばあさん(バアヤン)
 ハイ  岩礁
 ハラク  腹下り、下痢
 ヒガッシャ  東浦
 ボート  大きな機械船、小さなものは「コボート」
 ボッコナ(連)  仰山な、誇張した
 ホラクリ  放置すること
 ホル(動)  投げる
 ホン(助)  間投助詞、アノオトコラ、ホンホラクリヤモンナー
 マナゴ  砂、小さな貝殼
 マンドロ  明々、オツキサンがマンドロヤ
 ミザワ  水悼
 ミゾゴ  溝
 メンドイ(形)  恥しい、かっこうが悪い
 モッパン  めんこ
 ヤッシャレノ(ヤッシャー)(感)  いやらし
 ヤマ  太い糸 細いひも
 ロップ  ロープ
 ワタイ  ー人称 私
 ワヤクナ(連)  乱暴な、いいかげんな
 ワレ  二人称 お前、同輩又は目下に
 ンネヤン  姉さん、よその人をさして


III.方言の変遷
 戦後、とくにテレビの普及以後、方言は急速に消滅しつつあると考えられている。果してそれは、どの程度のものであろうか。それを知る一つの手がかりにと思って次の調査を行ってみた。
 調査語は昭和9年の「海部郡郷土資料」中の牟岐方言と「牟岐読本」によって選び、対象は牟岐中学校2、3年生191名で、昭和51年9月中に、実施したものである。
 アンケート(1)方言について知っていること
 次のカタカナの言葉のうち自分がいつも使っているか、または今までに使ったことのある言葉には◎、年寄りなどが使っているのを聞いた言葉は○、聞いたこともない言葉には×印を、それぞれの言葉の次の( )の中に記入して下さい。
 1.「自分 のことをオラ( )またはオタイ( )という。
 2.「相手」のことをノンシ( )またはアコ( )という。
 3.「彼」「あの人」のことをアイツ( )またはデキ( )あるいはレキ( )という
 4.「お父さん」のことをトトー( )またはトッツァン( )という。
 5.「お母さん」のことをカカー( )またはタッツァン( )という。
 6.「兄さん」のことをアンニャン( ) 「姉さん」のことをンネヤン( )という。
 7.「おじさん」のことをオッサン( ) 「おばさん」のことをバーヤン( )という。
 8.「目」のことをメー( ) 「歯」のことをハー( )という。
 9.「海」のことをオミ( ) 「溝」のことをミゾゴ( )という。「正月」をションガツ( )という。
 10.「親類」をイッケ( )という。 「手拭」をテノゴイ( )という。 「蛇」をグチナ( )という。
 11.「ふざけること」をホタエル( ) 「なぐること」をウドマス( ) 「叫ぶごと」をトエル( )という。
 12.「捕えること」をトンマエル( ) 「走ること」をソエル( )という。
 13.「汚すこと」をキサガス( )という 「よく働くこと」をヨーイゴク( )という。
 14.「ばからしいこと」をタッスイ( ) 「くたびれたこと」をシンドイ( )という。
 15.「大きいこと」をザマナ( ) 「小さいこと」をコンマイ( ) 乱暴なことをワヤクナ( )という。
 16.「それだから」というのをホヤサカイ( )またはホヤヨッテ( )という。
 17.「そうです」というときダー( )という。 「そうですか」というのをホーケ( )という。
  アンケート(2)人称について
 あなたが、気安い人と、普通に話すとき、どんな言い方をしますか)次の1 〜3 について( )内に書きこんでください。〔例えば、1 (おら、わたし、うち)など〕
 1 自分のこと( )
 2 相手のこと( )
 3 「あの人」のこと( )


 調査結果についての考察
 残存度とは筆者が仮につけた名称で、残存度「大」は◎で示し、生徒の過半数が現在使っているもの、「中」は○で、その語を聞いて知っている生徒が過半数以上のものとした。
 ▲は消滅度「大」とし、その語を知らぬ生徒が 2/3 以上のもの、△は消滅度「中」でその語を知らぬと答えた生徒が 1/2 以上のものとした。
この結果で考えられることは、
 1.残存度の高いもの
 「シンドイ」「タッスイ」「コンマイ」「ハー」「メー」など広く、しかも頻繁に使われる形容詞や名詞。つぎには
 「オッサン」「バーヤン」「ダー」「ホーケ」「ホヤサカイ」「トエル」「ホタエル」「ミゾゴ」
など、通用範囲は、それほどでなくても、牟岐町で使われる基本語彙のようなものである。
 2.消滅度の高いもの
 「タッツァン」「イッケ」は筆頭であるが、これは、昭和初期から勢力の弱いものであったようである。
 「ノンシ」「アコ」は、語彙は「お主」「和子」で敬意のあるものであったが「貴様」のような感じに成り下り、やわらかな「オマエ」「オマー」などに変わったものであろう。
 「テノゴイ」は訛音と考えられ、しかも矯正のたやすいものであったからと思われる。


IV.中学生の方言観
 アンケート(3)
 牟岐弁(牟岐の人同志で話すことば)について、次のうち、あなたの思っているところの記号に○をつけてください。
1 あなたは都会(徳島や大阪など)へ行ったとき次のどちらですか。
 a.平気で方言(牟岐弁)で話す。
 b.その土地で使っている言葉をまねて話す
 c.標準語(教科書やテレビなどに出てくる東京弁)で話す。
 d.なるべく話をしないようにする。
2 あなたは牟岐弁についてどう思いますか。(A、Bどちらかと、その理由のそれぞれに○をつけてください。)
 A.いつまでも残したいと思う。
  a.自分の気持や考えがよく表わせるから
  b.牟岐弁は聞いてみて感じがよいから
  c.古くから伝わっているから
  d.その他(           )
 B.標準語に変えていくのがよいと思う。
  a.標準語は日本中の人によくわかるから
  b.標準語は聞いていて感じがよいから
  c.牟岐弁ではよその人に恥かしいから
  d.その他(           )

  アンケート(3)の集計

  a. 平気で牟岐弁で話す(78名)
  b.その土地のことばで(16名)

  c. 標準語で話す(63名)
  d.なるべく話をしない(14名)

(2)牟岐弁についてどう思うか

 A.いつまでも残したいと思う。(123名)
  a.自分の気持や考えがよく表わせるから (61)
  b.牟岐弁は聞いてみて感じがよいから(6)
  c.古くから伝わっているから(48)
 B.標準語に変えていくのがよいと思う。 (59名)
  a.標準語は日本中の人によくわかるから(24)
  b.標準語は聞いていて感じがよいから(30)
  c.牟岐弁ではよその人に恥かしいから(10)
 

 調査結果についての考察
 1 の言葉づかいについては、都会へ出ても平気で牟岐弁で話すというのが、圧倒的に多く、第2位が標準語で話すで、これら二つが群をぬいている。これは牟岐の中学生が、方言について、健全な認識を持っていることを示していて、心強いことである。
 2 についても、1 と同じように、言葉の価値、広く、正しくのうち、正しく伝えることに優れている方言を愛護する姿勢がよく表われていて頼もしい。
 また、男女とも同じ割合を示していることも注目したい。
 

 V.結語
 調査の主眼を牟岐の言葉の特徴においたため、調査対象が、老人層にかたよったきらいがある。また地域的には、人口の密集した海岸地帯にかたよったものであるが、現在の牟岐町の大体の傾向は示しているものと思う。
 ことばは生きものであり、生活環境や時代の変化とともに推移していくものである。
 牟岐のことばも、その例外ではなく、たしかに大きな変化を起しているが、それは、主に表面的な語彙面の現象である。そして骨格となる語調や、語法には、その変化はほとんど見られない。これは方言のために心強いことである。
 方言は無形の「文化財」である。他の文化財と同じように消滅してしまってから復活させることは、なかなか難しいものである。
 中学生の方言観調査の結果からも意を強くしたのであるが、「標準語を身につけるとともに、方言に対する理解と愛情も失わない。という態度は、いつまでも続くであろうし、また続けなければならぬと思う。
 この小文を終わるに当り、今回の調査に、ご協力くださった多くの町民の方々、中学校の先生方や生徒諸君、町当局、とくに教育長小林滋先生、富田重雄先生、喜田典子先生に深い謝意を捧げます。


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