生物学班 小林実
I 調査概況
神山町は徳島県の中央部よりやや東寄りに位置した人口12,129名（49年10月１日）人口密度69,6人（平方キロメートル）の山村で過疎問題と取り組んでいる。
地形については、南は中部山溪県立自然公園の雲早山（1496m）で境されていて、西は東宮山（1001m）、東は高鉾山（1020m）、そして北は東山溪県立自然公園の竜王山（494米）で囲まれた形となっていて、南高北低型の地形で、その中央を鮎喰川が流れている。神山町の総面積は174.18平方キロメートルでそのうち耕地面積は、1053haで全面積の６％で残りは山林が殆んどである。
今回の総合学術調査のうち、筆者の分担した野鳥の調査は鮎喰川に沿ってさかのぼり、広野、福原、阿川、中津、今井、川又、府殿と調査しながらのぼって行った。そして川又を拠点に雲早山、川井峠附近を調査し、再び鮎喰川を下りながら調査を続けた。
本調査が総合学術調査のため調査期間が、昭和50年７月29日から８月４日までの１週間と定められていたため、季節によって移りかわる野鳥（特に冬鳥）についてのデーターは不充分である。しかし神山町へは毎年府殿にある県青少年野外センターを訪れているので周辺の野鳥を継続調査してきたこと、また、冬期にも調査してきたのでこのデーターも加えて記すことにした。
調査結果については、神山町の鳥層はかなり濃いと思われた。これは本町の自然がまだ豊かである証拠でもある。
これを実証するものの一つに次の報告がある。これは昭和50年８月１日より10日間、「徳島、人間と自然を守る会」の青年五百名が筆者とともに県内１万１千戸のツバメの実態を調査した。その一部を名西郡と関係あるものについて記載して参考にしたい。
ツバメの帰巣率は県平均が58.1％で名西郡が62.2％（神山町を含む）、これを徳島市内の47.6％と比較すると帰巣率が高いことがわかる。換言するとツバメなど野鳥の住む環境が良いという結果にもなる。（ツバメの実態調査の結果は50年10月に発表し毎年継続調査をする予定である）
本県の野鳥の種類は218種と思われるが神山町の調査では79種が確認された。これを県全体と比較すると36.2％にあたる。内訳けは夏鳥、24種、冬鳥、19種、留鳥35種、旅鳥、１種となっている。
これは県全体としては種類が少ないようであるが上述の通り調査期間が夏の１週間に限られたこと、及び、山間部のため水辺の鳥が殆んど見られなかったためである。このため時間をかければ増加する可能性がある。
以下列記した分類は日本鳥学会の採用している方法である。夏と記入してあるのは夏鳥の略、冬は冬鳥、留は留鳥、旅は旅鳥の略である。
II 調査結果
カイツブリ科 Family
podicipitidae
カイツブリ Podiceps ruficollis 留
サギ科 Family
Ardeidae
ゴイサギ Nycticorax nycticorax 留
アマサギ Ardeola
ibis 夏
ダイサギ Egretta albo 夏
チュウサギ Egretta
intermedia 夏
コサギ Egretta garyetta 夏一部越冬
ガンカモ科 Family
Anatidae
オシドリ Aix galericulata 冬
マガモ Anas
platyithyncha 冬
カルガモ Anas poecilorhyncha 冬
ワシタカ科 Family
Accikitridae
トビ Milvus migrans 留
サシバ Butastur
indicus 夏
キジ科 Family phasiamidae
コジュケイ Bambusieola
thoracica 留
ヤマドリ Phasianus Poemmerringii 留
キジ Phasianus
colchicus 留
クイナ科 Family Rallidae
バン Gallinula
chloropus 夏
チドリ科 Family charadriidae 夏
コチドリ Charadrius
dubius
イカルチドリ Charadrius placidus 夏
タゲリ Vaneellus
vanellus 冬
シギ科 Family Scolopacidae
ヤマシギ Scolopax
rusticola 留
タシギ Gallinago gallinago 冬
ハト科 Family
columbidae
アオバト Sphenurus sieboldii 留
キジバト Streptopelia
orientalis 留
ホトトギス科 Family cuculidae
ジュウイチ Cuculus
fugax 夏
ツツドリ Cuculus saturatus 夏
ホトトギス Cuculus
poliocephalus 夏
ヨタカ科 Family Capimulgidae
ヨタカ Caprimulgus
indicus 夏
カワセミ科 Family Alcedinidae
アカショウビン Halcyon
coromanda 夏
ワセミ Alcedo atthis 留
キツツキ科 Family picidae
アオゲラ Picus
awokera 留
コゲラ Dendrocopos kizuki 留
ヒバリ科 Family
Alaudidae
ヒバリ Alaude arvensis 留
ツバメ科 Family
Hirundinidae
ツバメ Hirundo rustiea 夏
セキレイ科 Family
Motacillidae
キセキレイ Motacilla cenerea 留
ハクセキレイ Motacilla
alba 冬
セグロセキレイ Motacilla grandis 留
ビンズイ Anthus
hodgsoni 冬
タヒバリ Anthus spinoletta 冬
サンショウクイ科 Family
Campephagidae
サンショウクイ Pericroeotus roseus 夏
ヒヨドリ科 Family
pycnonotidae
ヒヨドリ Hypsipetes amaurotis 留
モズ科 Family
Laniidae
モズ Lanius bucephalus 留
レンジャク科 Family
Bombycillidar
キレンジャク Bombycilla garrulus 冬
ヒレンジャク Bombycilla
japonica 冬
カワガラス科 Family cinclidae
カワガラス Cinclus
pallasii 留
ヒタキ科 Family Muscicapidae
コマドリ Erithacus
akahige 夏
ルリビタキ Erithacus cyanurus 夏
ジョウビタキ Phoenicurus
auroreus 冬
アカハラ Turdys ckrysolaus 冬
ツグミ Turdys
naumanni 冬
ヤブサメ Cettia sguameiceps 夏
ウグイス Cettia
dighone 留
オオヨシキリ Acrocephalus arundinaceus 夏
メボソムシクイ Phylloscopus
borealis 夏
センダイムシクイ Phylloscopus occipitalis 夏
セツカ Cisticola
juncidis 留
キビタキ Muscicapa narcissina 夏
オオルリ Muscicapa
cyanomelana 夏
エゾビタキ Muscicapa griseisticta 旅
コサメビタキ Muscicapa
Iatirostris 夏
シジュウガラ科 Family Paridae
コガラ Parus
montanus 留
ヒガラ Parus ater 留
ヤマガラ Parus Varius 留
シジュウガラ Parus
major 留
エナガ Aegithalos caudatus 留
ゴジュウガラ科 Family
Sittidae
ゴジュウガラ Sitta europaea 留
キバシリ科 Family
Certhiidae
キバシリ Certhia familiaris 留
メジロ科 Family
Zosteropidae
メジロ Zosterops palpebrosa 留
ホオジロ科 Family
Emberiyidae
ホオジロ Emberiza cioides 留
カシラダカ Emberza
rustica 冬
ミヤマホオジロ Emberiyo elegans 冬
アオジ Emberiya
spodoophala 冬
アトリ科 Eamily Fringillidae
アトリ Fringilla
montifringilla 冬
カワラヒワ Carduelis sinica 留
イカル Eophona
personata 冬
シメ Coccothraustes Coccothraustes 冬
ハタオリドリ科 Family
ploceidae
スズメ Passer montanus 留
ムクドリ科 Family
Sturnidae
ムクドリ Sturnus cineraceus 留
カラス科 Family
Corvidae
カケス Garrulus glandarius 留
ハシボソガラス Corvus
corone 留
ハシブトガラス Corvus macrorhynchos 留
