阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第20号
宍喰町の読書調査について

読書調査班 猪井達雄・布川文次

 本学会の読書調査班による調査をはじめましたのが、今から5年まえであります。
  第1回  木頭村   (昭和44年)
  第2回  美郷村   (昭和45年)
  第3回  西祖谷山村 (昭和46年)
  第4回  脇町    (昭和47年)
でありまして、最初は山村ばかりいたしておりましたが、昨年脇町につづきまして今年は宍喰町と平野部にやってきたわけであります。4年を経たので、調査項目にも大分現状にあわなくなったものがありますので若干手なおしをいたしました。十年ひとむかしといわれますが、電気機器などは、2〜3年もたてば大分かわってまいります。たとえば、電子レンジとかガスレンジについては、文化調度品の中にいれていなかったのですが、大分所有者もいるようなのでいれました。また、応接セットも同様にいれました。また昨年ごろから週休2日制の問題がかなり大きくとりあげられ、その余暇活用が話題になっておりますので、余暇の活用ということで1項目とりあげました。
 あれこれ考えまして時勢に即応した問いを案出したと思っておりますが、むずかしいもので完壁とはいきかねますがご了承願いたいと存じております。読書調査に何の関係があるのかと思われるふしもあろうかと思いますが、文化調度品と生活程度、ひいては教養の向上、生活の向上、仕事の向上、等々といった面からの読書、あるいは県立図書館・公民館などとのかかわりあいをみたいための問いであります。以下調査項目順に結果をみてまいりたいと思います。
 

〈調査表の回収および回収率〉

 調査区を設定するため宍喰町教育委員会と交渉し47地区1,227世帯を、海岸沿いの宍喰浦と久保をあわせた33地区を第1調査区にし、残りの全地区を第2調査区としました。第1調査区では漁業、商業が主であり、第2調査区は農業林業が主であります。調査表を配布した時期が非常に暑い時であったためか、回収率が28.44%にとどまりましたが、調査についてご協力いただきました各位にこの席上より厚く御礼申しあげます。お世話になりました方からお伺いしたのでありますが、調査表に氏名を記入させるから回収が悪いということでしたが、無記名とするのが良いかどうか今後の調査について検討をいたしたいと思っております。回収率が28.44%ですから約3割の世帯につき、1世帯1人を調査しえたということで、みていただきたいと思います。なお調査区ごとの比較は結果表にはくわしく集計しておりますが時間の関係で発表は省略させていただきます。


〈調査結果の概要〉
1 地域の就学状況
 本調査を実施するための背景として宍喰町の世帯主の子弟の就学状況を調べましたが、高校、高専、短大、大学をかなりの子弟が卒業しており、高校への進学率は高いということがわかりました。調査の結果の百分比はつぎのとおりです。


2 情報(知識)を得る手段
 情報をインフォーメーション、知識をインテリジェンスとして、情報と知識は、相互に作用をしあうといわれます。たとえば住民は情報媒体を通じて図書館のことを知るとしますとこれはインフォーメーションであり、この住民が図書館に意見とか要望をいうことになりますとそれはインテリジェンスとなります。


 私たち利用者は、情報を得て、この図書は良いから読もうとして、図書館に希望図書を申し込む、図書館は、申し込みに応ずるよう希望図書を整備する。この間に利用者対図書館の交流がなされ、インフォーメーションとインテリジェンスの交換が行われます。これはほんの一例ですが、私たち日常生活は、すべてこれによって営まれているということで、情報源の活字媒体と電気媒体を五区分し、1.2.3の順にチェックしてもらいました。その結果第1位にランクされたものをみますと
  テレビ 56.9%
  新聞 41.9%
  書籍 0.6%
  雑誌 0.3%
  ラジオ 0.3%
という順になっております。
 第1位、第2位、第3位にランクされたものを合計した百分比をみますと
  テレビ 38.4%
  新聞 35.2%
  雑誌 18.1%
  ラジオ 4.8%
  書籍 3.5%
の順になります。
 第1位のみをみますと電気媒体と活字媒体は五分五分でありますが、第1・2・3位を合わしたものは、電気媒体よりも活字媒体が高くなっております。活字によってたしかめたいという人々の意欲は、本調査からもわかります。
3 県立図書館の利用状況
 県立図書館では、さきの情報の項で申しましたように利用者のみなさんに、図書館の利用についてお知らせしたり、ご希望をお聞きしたりするため、新聞、テレビ ラジオ、各種印刷物、読書会等を通じインフォーメーションに力を入れていますが、なかなか思うようにまいりません。
 この調査は、みなさんと県立図書館とのかかわり合いをみたわけでありますが、
  巡回図書の利用 8.4%
  図書の借用 6.9%
  読書グループ 2.2%
  読書会 1.1%
  図書の閲覧 0.7%
  参考奉仕(文書) 0.4%
   〃 (口頭) 0.4%
  その他 2.6%
   計 22.7%
となっております。


4 文化調度品の所有状況
 県民生活の向上は、最近いちじるしいものがあり、徳島県から昭和48年3月に発表されました県民生活実態調査の中の耐久消費財の項目と本調査のこの項目をあてはめてみますと、つぎの表のとおりとなります。多少、パーセントの違いはありますが、文化度、生活度が向上しているということがいえるのではないでしょうか。


 また文化調度品としてあげました18品目について所有率をみますと、順次つぎのようになります。
  冷蔵庫 98.8%
  電気洗濯機 97.4%
  自家 88.0%
  電話 73.4%
  ラジオ 63.5%
  カラーテレビ 59.4%
  本立 57.3%
  本箱 45.3%
  乗用車 36.0%
  ステレオ 32.8%
  オルガン 17.8%
  書架 17.0%
  レンジ 13.2%
  応接セット 8.8%
  ルームグーラー 6.1%
  ピアノ 5.3%
  書籍保管庫 4.7%
  別荘 0%
ということで、宍喰町は全県平均とよくにたレベルをいっているということがわかります。かって食糧事情の悪かった戦後、エンゲル係数をもって生活のバロメーターとしていた時代を思いおこしますと、最近は県民所得も向上し、電気機具等はかなりそろい、「衣食たって礼節を知る」とかいわれますが、文化調度品のゆたかさが、文化生活―ひいては読書ということにもつながるのではないかとよろこんでおります。
5 文化調度品購入の意向
 夕食時、家族のみなさんと「今度は何を買うか?」ということで話し合いをすることが、よくあると思いますが、これが、その質問です。4の項目であげました18品目について、つぎに何を買うかを1品目書いてもらいましたが、つぎのとおりでした。
  レンジ(電子・ガス) 15.9%
  ルームクーラー 14.8%
  カラーテレビ 14.3%
  乗用車 12.7%
  自分の家 12.2%
  電話 11.1%
  別荘 4.2%
  冷蔵庫 3.7%
  ステレオ 2.6%
  書籍保管庫 1.6%
  ピアノ 1.6%
  本箱 1.1%
  電気洗濯機 0.5%
  オルガン 0.5%
で、この数字からみましても、ほとんどの人が文化調度品を、それ相応に持ち、購入希望としてあらわれているものは、あれば便利だが、なくてもいけるといったもの、使いふるしたもので買い替えようとするようなものにうけとれます。
6 最近の読書の状況
 最近3か月に本を読みましたかという調査ですが
  週刊誌 32.0%
  雑誌 24.3%
  書籍 20.3%
  読んでいない 23.4%
という百分比になっております。週刊誌、雑誌といった軽く読めるものの数が多く、書籍というのは少ないようです。
 手近に本の手に入るような施設、たとえば図書館があったり、公民館の図書室がうんと充実されていたりすると、この数もふえてくるでしょう。まえまえの調査から考えますと、宍喰町は環境をよくすればうんと読書人口はふえると考えられます。
7 読書の動機
 読書をするのにいろんな動機があります。朝の新聞の広告欄をみて読みたくなるという人、テレビの番組をみて読みたいという人などを考えてこの問をつくりました。その結果、つぎのようになりました。
  書店・駅の売店 24.4%
  新聞広告 20.2%
  新聞雑誌書評 14.9%
  人にすすめられて 5.8%
  図書館・公民館 5.4%
  雑誌広告 5.4%
  テレビ 4.6%
  寄贈 3.3%
  カタログ 2.0%
  ラジオ 1.2%
という状況で、やはり手にとって本をみてからというのが多いようで案外新刊図書をみたいというのが1位で新聞広告によるものというのが2位に多いようでした。
8 本を読む目的
 昨年、ある新聞にこの調査と同じような調査がのっていましたが、男性は、仕事に役立たせるため、女性は生活を向上させるためというのが多く、「女性は生活、男性は仕事―(それが)健全といったらいいのだろうか」とむすんでありましたが、この宍喰町の結果は、娯楽と趣味がウエイトをしめており、つぎのようになっています。
  娯楽のため 24.5%
  趣味のため 19.6%
  職業上の必要から 19.3%
  教養のため 16.0%
  なんとなく 12.4%
  こどもの教育 5.9%
  その他 2.3%
というわけで、なぜ、こうした傾向がでたのか、今までの調査ともちがった結果がでておどろいております。人間の本来的なレジャーとして本をみるという傾向がこの町に強いのかともうけとれます。
9 本の入手先
 本を読みたいときどこから手にいれるかということですが、61.3%が自分で買うと答えております。
  図書館公民館で借る 8.6%
  移動図書館車で借る 4.7%
  学校から借る 4.1%
  職場の文庫から借る 0.9%
で、自分で買うというつぎは、まずまず読書施設から借りるということがいえますが、この項目からみても本を買うのが好きなといわれる日本人ですが、6分は買い4分は借りたいという結果がでております。立派な読書施設さえできれば、うんとその利用がふえることと思います。
10 蔵書と年間購入図書
 蔵書冊数の平均的な一世帯の数は50冊ぐらいといわれています。いわゆる読みすてしないで残している本というわけですが、この調査ではつぎのようになっています。
  99冊以下 72.3%
  100冊以上 10.3%
  200冊以上 8.4%
  300冊以上 4.5%
  400冊以上 4.5%
で、400冊以上の本になりますとおよそ1間分の書架以上に本がつまるということになりますから、かなりな読書家ということがいえると思います。
 本調査をみているうちに、かなりな蔵書数があるものについて調査表を詳しくみていきましたが、自由・管理職の人達で、なるほどと思いました。
 年間購入冊数をつぎに調べたのですが、つぎのようになっていました。
  19冊以下 71.6%
  20冊以上 23.2%
  40冊以上 4.5%
  100冊以上 0.7%
となっております。
11 希望の購入図書
 十進分類を加味して15項目にわたって購入希望の図書をしらべました。その結果
  1  文学古典小説詩歌関係 15.2%
  2  歴史伝記地理関係 12.4%
  3  政治経済法律関係 10.0%
と10%以上をこえ、ついで
  4  郷土関係 9.6%
  5  健康保険衛生関係 9.4%
と9%代の結果がでております。
 この結果から専門図書館をのぞいては、かなり図書購入について多方面から意見をききあらゆる分野の図書を満たす必要があろうかと思われます。
12 余暇の活用
 最近、週休2日制などがとりあげられ余暇をどう過ごすかということが、大きい問題となっています。そこで本調査にこの項目をとりいれたわけでありますが、余暇の過ごし方として読書は3位になっております。
  ラジオ・テレビ 42.2%
  ごろ寝、休息 20.6%
  読書 15.3%
  スポーツ 4.1%
  日帰り旅行 4.1%
  買物 3.7%
  1泊以上旅行 3.1%
  その他 6.9%
となっており、かなり良く働く人々にはテレビを見たり、ごろ寝をしたりという休息が、必要かかなりウエイトをしめるということになっています。
13 感想希望意見について
 24人の方から、ご意見がありましたが、その多くは、県南地方のために巡回図書館車の巡回をふやせというもの、図書館の実状を知らなさすぎるというもの、あまりにも県都から遠すぎるというもの、図書館を建てよというものなどいろいろありました。つぎに、調査表の中の一枚を原文のまま朗読させていただきます。この一文こそ宍喰町民のナマの声を代表するものでなかろうかと思います。
 宍喰町は、県立図書館からは非常なへき遠の地なので殆んど今まで無関係の状態であり、町民各位には図書館の在存すら知らない人が多いのではなかろうか。私自身も家の前か公民館で巡回図書が来ている事は知っているが、殆んど利用した事が今までない夏休み等にたまに一・二冊読ませて載く程度である。出来れば県立図書館と名のつく建物が出来ていくような御配意を願いたいものです。(金がかかるのでむつかしい事とはわかっていますが)ご静聴を感謝するとともに、1日も早く図書館がたつことをお祈りして発表を終わります。

    読書に関する世論調査表
   (昭和48年8月1日現在)
    徳島県立図書館
調査区番号(  ) 調査区名(  ) 世帯番号(  ) 世帯主氏名(  ) 男女別(男 女)○印を入れる 年令(満  才) 職業(    )なるべく具体的に  家業(   )  世帯員数 男(  )名,女(  )名  計(   )名
〈お願い〉県立図書館では,読書に関する世論調査を行なっています。この調査は、いろんな面から読書について調査し、その結果は、今後の図書館運営や公民館の読書活動の改善などに役立てるもので、個々の調査表記入事項については秘密を守り、統計上以外の目的に使用いたしませんので、どうか趣旨をご理解のうえ、つぎの問にお答えを記入してください。(世帯主がご不在の場合は世帯員の方が、また家族ご相談のうえご記入くださっても結構です。)



問1 現在、あなたのご子弟で就学中の方がありますか。また、すでに卒業されている方や、中退された方がありますか。ありましたら、該当の項目の数字を○でかこんでください。
  就業中(1小学校 2中学校 3高校 4高専 5短大 6大学)
  卒 業(7小学校 8中学校 9高校 10高専 11短大 12大学)
  中途退学(13小学校 14中学校 15高校 16高専 17短大 18大学)


問2 人間は社会生活を営むうえにいろいろ新しい情報(知識)が必要ですが、あなたは、その情報(知識)を得られる手段としてつぎのどれによっておられるか、該当のものの頭に○印をつけ、その○の中に、あなたが利用されている順に1.2.3のように番号をいれてください。
  新聞  雑誌  書籍  テレビ  ラジオ


問3 県立図書館は、みなさんに情報(知識)を提供するセンターとしての役割りを果たしていますが、あなたまたはご家族のかたの利用状況について、該当のものの数字を○印でかこんでください。
  1 図書の閲覧
  2 図書の借用
  3 図書館へ電話で照会(口頭を含む)
  4 図書館へ文書で照会
  5 巡回図書(移動図書館車)の利用
  6 読書会に参加
  7 読書グループに所属
  8 その他(    )
  9 利用したことがない


問4 あなたのご家庭で持っているものの項目の数字を○でかこんでください。
  1 冷蔵庫
  2 自分の家
  3 電話
  4 ステレオ
  5 乗用車
  6 電気洗濯機
  7 ラジオ
  8 カラーテレビ
  9 電子レンジ及びガスレンジ
  10 ルームクーラ
  11 ピアノ
  12 オルガン
  13 別荘(他市町村に)
  14 本立
  15 本箱
  16 書架(何段式かになっているもの)
  17 書籍保管庫(何段式かになっているもの)
  18 応接セット


問5 あなたは、問4の項目のうち一番さきに購入したい、または持ちたいと思うもの一つをつぎに記入してください。
   No.(   )  名 称(     )


問6 あなたは、最近3か月間に本を読みましたか、該当の項目の数字を○印でかこみ、読んでいる方は書名等を下欄に記入してください。
  1 週間誌  2 雑誌  3 書籍  4 読んでいない。


問7 あなたが本を読む動機となったのは、つぎのどれですか。該当の数字を○印でかこんでください。
  1 新聞の広告をみて
  2 雑誌の広告をみて
  3 新聞、雑誌の書評をみて
  4 書店、駅の売店などで実物をみて
  5 ポスターをみて
  6 ダイレクトメールで
  7 カタログをみて
  8 図書館、公民館、読書グループなどから
  9 テレビをみて
  10 ラジオをきいて
  11 映画を見て
  12 人にすすめられて
  13 寄贈されて
  14 その他(    )


問8 あなたが本を読む場合、おもにどんな目的で読みますか。つぎの該当する項目の番号を○印でかこんでください。
  1 職業上の必要から
  2 趣味のため
  3 教養のため
  4 娯楽のため
  5 こどもの教育のため
  6 なんとなく
  7 その他(  )


問9 あなたが読みたい本は、おもにどこから入手されますか。該当する項目の番号を○印でかこんでください。
  1 自分で買う
  2 図書館、公民館で借る
  3 移動図書館車を利用する
  4 学校から借る
  5 職場の文庫から借る
  6 友人から借る
  7 貸し本屋から借る
  8 家にある
  9 その他(   )


問10 あなたのお家の蔵書冊数は、およそ何冊ですか。また過去1年間で何冊ぐらい書籍を購入しましたか。つぎに記入してください。
  家庭蔵書冊数(     )冊   年間購入冊数(     )冊
  (注) 該当のない項目については、なしと記入してください。


問11 図書館の蔵書を充実するうえにおいて、みなさんのご希望を参考にしたいと思いますので、あなたが興味をおもちの本、または購入希望の本がありましたら、つぎの該当する項目の番号を○印でかこんでください。
  1 哲学、倫理、宗教関係
  2 歴史、伝記、地理関係
  3 政治・経済 法律、社会関係
  4 教育関係
  5 自然科学(物理、化学、生物)関係
  6 保健衛生、健康関係
  7 工業、工学(土木、建築、機械、電気)
  8 家事、家庭、育児関係
  9 農林、水産閧係
  10 商業、商店経営関係
  11 交通、通信関係
  12 音楽、演劇関係
  13 スポーツ娯楽関係
  14 文学、古典、小説、詩歌関係
  15 郷土に関するもの


問12 あなたは、余暇をどう過ごしますか。
  1 読書
  2 ラジオ・テレビ
  3 ごろ寝、休息
  4 日帰り旅行
  5 1泊以上の旅行
  6 スポーツ
  7 買物
  8 その他


問13 県立図書館についてお気づきの点、感想、希望をつぎに記入してください。
  〈記 入 欄〉


徳島県立図書館