阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第19号
脇町大滝山のガ類

永井洋三

 脇町の昆虫を論ずるにあたって、昆虫の分布上最も特異な場所をあげるとすれば、それは大滝山であろう。是近かなり破壊され、小面積ではあるが、阿讃山脈としては古くからの自然環境が残された少数の場所の一つで、標高も1000mに近い。このような環境に恵まれて、ガ類についても阿讃山脈の中では最も種類数も多い場所ではないかと思われる。
 筆者は1963年8月の調査結果により、ガ類の採集品のリストを発表したことがあるが、今回の学術調査で4回にわたり大滝山またはその付近を調査することができた。
 今回の調査の採集品の中で、特に注目すべきものが2種あるので報告する。
1.キシタケンモン Apatele catocaloida GRAESER
 後翅の内半と外縁が黄色の大型のケンモンガ(ヤガ科)である。最近筆者が四国で始めて剣山で採集した。四国のほか、本州・北海道から東シベリアにかけて分布し、本州では山地でとれる。寒地系の種類ということができよう。
2.スカシオビガ Prismosticta hyalinata BUTLER
 前翅の先端近くに透明な部分がある。やや小型の特異なガである。稀な種類で、四国でも愛媛県皿ケ嶺で採集されたことがあるだけである。日本特産種。


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