<はしがき>
昭和44年度木頭村、昭和45年度美郷村、昭和46年度西祖谷山村と本年度は第3回目の読書調査を実施いたしました。総合学術調査の行なわれました地域をえらびましたが、たまたま県南、県中央部、県西と3か所の読書についての貴重な県民の声が得られ調査を企画いたしました一員としてよろこんでおりますとともに、この調査を基調として今後の図書館活動が県下全域、ことに山間部にまで手の届いた施策が樹立することを祈念してやまない次第であります。
調査は、別添実施要領により3回とも同じような方法で行ないました。今後この3調査を比較検討することも考えておりますが、今回の報告は、西祖谷山村のみについてご説明申しあげます。
<図書館活動の図式>
読書調査を分析するまえに図書館活動はどのように行なわれるか?図式で解明し分析のたすけにしたいと思います。紙面中央に中心線を引きます。そしてその左を内、右を外にします。内(図書館)外(利用者)との情報の交換を考えていきます。破線で円形に示してある内側は、いわゆる教育行政プログラム(ライン活動)が内から外へ情報を流し内へはねかえってくることを示します。
すなわち、一例をあげますと本年度は図書館車が何回あなたの村へいきますということを流します。そうしますと利用者は、これに対処する心構えとか意見を内へむかってはねかえします。
Aから実線で示してありますのが図書館活動のPRプログラム(周知)(スタッフ活動)であります。そしてBにおいて種々協議し、Cにおいて外へ出むいてまいります。このCという時点利用者の団体の責任者、すなわち配本所などへまいります。この配本所がどううけとめるか、県の図書館車が本をつんでいつ、どこへ、どういう目的できますよ、おこしくださいという文書を流す、広報をするそしてそのうえへ前日には電話をかけて利用者へのよびかけをする。ということになりますとうんと良い成果があがります。そしてDで読書をし、Eで図書館側へ対する意見要望をのべるところまで発展する。こうして、このラセンが何回も何回もまわることによって、図書館と利用者のラセン的向上がはかられると思うのであります。
図書館と遠隔の地のため館外活動をとりあげたのでありますが、館内活動においても図書館と利用者の間のこのラセン的相互作用によって、図書館もよくなるし、利用者にも便利になると思うのであります。図書館と利用者の対話、図書館からの文書をはじめて手にせられた方もあろうかと思います。こういった意味からも本調査の意義がありますし、こういう観点からも本調査を今後に生かしていただきたいと思います。
![](1815/18dokusho_fig01.gif)
<調査表の回収および回収率>
調査区は、西祖谷山村を6地区に区切り、南から1 有瀬2 吾橋3 西岡4 櫟生5 善徳6 小祖谷というようにジグザグ型に設定いたしました。調査区の人口、面積を考慮に入れて細分するのが常識ですが、山間のこととてやむなく学校区を利用したわけであります。調査票は、村教育委員会を通じて主として中学生の方に配付回収をしていただいたわけでありますが、結果は次のようになっております。
![](1815/18dokusho_tab01.gif) ![](1815/18dokusho_fig02.gif)
<調査結果の概要>
1 地域の就学状況
非常に辺地という感を強くし高校への進学は少なく、中退の多いのが目立ちます。
![](1815/18dokusho_tab02.gif)
2 情報(知識)を得る手段
新聞、雑誌、書籍、テレビ、ラジオの5媒体をあげましたが、1位としたものは
テレビ 78.8%
新聞 17.8%
ラジオ 1.6%
書籍 1.3%
雑誌 0.9%
100.0%
となっております。
第1位、第2位、第3位としたものの100分比を合計しますと
テレビ 99.3%
新聞 68.6%
雑誌 60.5%
ラジオ 51.5%
書籍 20.1%
計 300%
となり、電気媒体のテレビは最高であるが、活字媒体の新聞、雑誌などもみのがせないものがあります。
3 県立図書館の利用状況
この問は、県立図書館から最も遠隔地にある村の人々に発するものとしては、多少考慮の必要があったのではないかと思いましたが、過去2回の調査のとおり設問しました。
利用したことがない 85.2%
巡回図書館車の利用 5.2%
図書の借用 4.4%
図書の閲覧 1.1%
となっております。
4 文化調度品の所有状況
文化調度品の所有状況は、
自分の家 93.0%
電気洗濯機 90.3%
テレビ 83.5%
冷蔵庫 83.3%
電話 74.6%
ラジオ 64.5%
本立 59.2%
本箱 38.7%
ステレオ 23.3%
乗用車 21.6%
カラーテレビ 19.0 %
書架 6.8%
オルガン 4.4%
ルームクーラー 1.9%
書籍保管庫 1.9%
ピアノ 0.6%
別荘 0.2%
となっております。
少し比較資料としては古いのですが、昭和44年2月総理府の世論調査によりますと、人口10万未満市の、その当時の所有状況をはるかに上回っており、都市部の水準に達していることがわかります。
5 文化調度品購入の意向
<4>で文化調度品の所有状況をしらべましたが、購入の意向は、
乗用車 84件
カラーテレビ 62件
ステレオ 34件
電話 28件
別荘 19件
自家 14件
というところで、その他は、若干ずつということになっており、一番先に買いたいものに対して山間として乗用車ということはむべなるかなと思うところであります。実のところをいうと図書館においてもこうした山地へ自動車で図書を手軽に配本ができるようになればということは常に考え、先般もこれに対する対策をたて、池田町をセンターとして自家用車による協力を願っているわけであります。
6 最近の読書状況
これにつきましては、4項目にわけて書いてもらったわけですが、
週刊誌 29.1%
雑誌 13.1%
書籍 11.3%
読んでいない 45.7%
でありまして、重読である書籍は少なく軽読の週刊誌、雑誌が手ごろで読みやすいという結果がでております。
7 読書の動機
これについては、14項目をあげたのですが、
○書店・駅の売店など実物を手にしてからというのが 35.4%
○新聞の広告をみてからというのが 11.3%
○テレビをみてからというのが 10.3%
などが主なものであり、読書施設のものというのは3.3%と低くなっております。
8 本を読む動機
これは7項目にわけて調べましたが、
○娯楽のため 21.2%
○なんとなく 18.9%
○趣味のため 17.5%
○職業上の必要から 15.9%
○教育のため 14.4%
ということになっており、いろいろな動機にわかれております。
9 本の入手先
この項目については考えられるもの9に分けましたが、自分で買うのが圧倒的に多く65.6%、友人から惜るというのが11.4%、学校から借るというのが6.8%で、公民館とか図書館から借るというのが1.4%、2.0%ときわめて低い数値になっております。
10 蔵書と年間購入図書
蔵書は99冊以下というのが90.2%、年間購入冊数19以下というのが76.8%という数値で、蔵書、年間購入図書とも貧弱であります。
11 希望の購入図書
これは15項目にわけてしらべましたが、10%以上のものが、
○政治経済法律社会関係が 13.0%
○文学、古典、小説、詩歌関係が 12.4%
○家事、家庭、育児関係が 11.8%
○保健衛生健康関係が 11.0%
で社会問題、生活に便益となるものの図書を購入するよう希望しております。
12 読書グループ所属状況
読書グループは加入しているというものが2しかなく、グループがつくられていないと考えてもよいくらいでしょう。
13 感想希望意見の要約
役場近辺だけでなく県の図書館車は各地区をくまなくまわってほしいというもの32件、山間へも図書館車をというもの10件、山村にも図書館を、あるいは分館をつくれというもの6件などで合計61件の意見が書かれていましたが、図書館網の不足、図書館広報の不足を痛感した次第であります。
<むすび>
以上読書調査結果の概要にふれましたが、当初調査企画の際、余りにも図書館とはなれているため調査票の収集すら困難ではないかと思いましたのに反して、回収分については13項目、各項目項目についてお答えいただき、巡回図書館車の増設、ないしは図書館、あるいは分館を建設せよという貴重な声、意見がおよそ60件もあったということは、調査を企画した一員としてよろこびにたえないところであります。この調査がきっかけとなって読書活動、ひいては図書館活動が大きく発展することを念願し、報告を終わりたいと思います。
昭和46年度読書に関する世論調査実施要領
本年度阿波学会の総合学術調査が祖谷・松尾川流域を対象にして実施されるので、それに呼応して西祖谷山村の教育文化を背景とした読書生活の実態や世論を知り山村における県立図書館活動を今後どのように展開してゆくか等の問題点を究明するため本調査を企画した。
この調査は、全体調査の方法をとり西祖谷山村全域にわたって行なうもので、読書実態や世論の拡がりや頻度を全体にわたって観察し、その結果は阿波学会での発表に用い、今後の県立図書館活動の資料として活用する。
1 目的
この調査は、西祖谷山村の教育文化を背景とした読書生活の実態や世論を分析して、読書に対する興味の傾向および欲求をとらえ、その要求をもとに今後の山村における県立図書館活動を展開するために実施する。
2 調査地域と対象
西祖谷山村全域の世帯主を対象として行なう。(昭46.4.1現在 1,023世帯)
3 調査方法および期日
(1)調査表は別添のものを用い、調査区ごとに中学生の手により各世帯に配布し、世帯主の記入したものを回収する。
(2)調査時点は昭和46年8月1日現在とする。
(3)調査表は10月(中)にとりまとめ審査し集計のうえ結果表を作成する。
(10月20日回収)
読書に関する世論調査表
(昭和46年8月1日現在)
徳島県立図書館
調査区番号( ) 調査区名( ) 世帯番号( ) 世帯主氏名( ) 男女別(男 女)○印を入れる 年令(満 才) 職業( )なるべく具体的に 家業( )世帯員数 男( )名、女( )名 計( )名
<お願い> 県立図書館では、読書に関する世論調査を行なっています。この調査はいろんな面から読書について調査し、その結果は、今後の図書館運営や公民館の読書活動の改善などに役立てるもので、個々の調査表記入事項については秘密を守り、統計上以外の目的に使用いたしませんので、どうか趣旨をご理解のうえ、つぎの問いにお答えを記入してください。(世帯主がご不在の場合は世帯員の方が、また家族ご相談のうえ、記入くださっても結構です)
問1 現在、あなたのご子弟で就学中の方がありますか。また、すでに卒業されている方や、中退された方がありますか。ありましたら、該当の項目の数字を○でかこんでください。
就業中(1小学校 2中学校 3高校 4高専 5短大 6大学)
卒業(7小学校 8中学校 9高校 10高専 11短大 12大学)
中途退学(13小学校 14中学校 15高校 16高専 17短大 18大学)
問2 人間は、社会生活を営むうえにいろいろ新しい情報(知識)が必要ですが、あなたは、その情報(知識)を得られる手段としてつぎのどれによっておられるか、該当のものの頭に○印をつけ、その○の中に、あなたが利用されている順に1、2、3のように番号をいれてください。
新聞 雑誌 書籍 テレビ ラジオ
問3 県立図書館は、みなさんに情報(知識)を提供するセンターとしての役割りを果たしていますが、あなたまたはご家族のかたの利用状況について、該当のものの数字を○印でかこんでください。
1 図書の閲覧
2 図書の借用
3 図書館へ電話で照会(口頭を含む)
4 図書館へ文書で照会
5 巡回図書(移動図書館車)の利用
6 読書会に参加
7 読書グループに所属
8 その他( )
9 利用したことがない
問4 あなたのご家庭で持っているものの項目の数字を○でかこんでください。
1 冷蔵庫
2 自分の家
3 電話
4 ステレオ
5 乗用車
6 電気洗濯機
7 ラジオ
8 カラーテレビ
9 テレビ
10 ルームクーラー
11 ピアノ
12 オルガン
13 別荘(他市町村に)
14 本立
15 本箱
16 書架(何段式かになっているもの)
17 書籍保管庫(何段式かになっているもの)
問5 あなたは、問4の項目のうち、一番さきに購入したい、または持ちたいと思うもの一つをつぎに記入してください。
No.( ) 名称( )
問6 あなたは、最近3か月間に本を読みましたか、該当の項目の数字を○印でかこみ、読んでいる方は書名等を下欄に記入してください。
1 週刊誌 2 雑誌 3 書籍 4 読んでいない
![](1815/18dokusho_tab03.gif)
問7 あなたが本を読む動機となったのは、つぎのどれですか。該当の数字を○印でかこんでください。
1 新聞の広告をみて
2 雑誌の広告をみて
3 新聞、雑誌の書評をみて
4 書店、駅の売店などで実物をみて
5 ポスターをみて
6 ダイレクトメールで
7 カタログを見て
8 図書館、公民館、読書グループなどから
9 テレビをみて
10 ラジオをきいて
11 映画を見て
12 人にすすめられて
13 寄贈されて
14 その他( )
問8 あなたが本を読む場合、おもにどんな目的で読みますか。つぎの該当する項目の番号を○印でかこんでください。
1 職業上の必要から
2 趣味のため
3 教養のため
4 娯楽のため
5 こどもの教育のため
6 なんとなく
7 その他( )
問9 あなたが読みたい本は、おもにどこから入手されますか。該当する項目の番号を○印でかこんでください。
1 自分で買う
2 図書館、公民館で借る
3 移動図書館車を利用する
4 学校から借る
5 職場の文庫から借る
6 友人から借る
7 貸し本屋から借る
8 家にある
9 その他( )
問10 あなたのお家の蔵書冊数は、およそ何冊ですか。また過去1年間で何冊ぐらい書籍を購入しましたか。つぎに記入してください。
家庭蔵書冊数( )冊
年間購入冊数( )冊
(注)該当のない項目については、なしと記入してください。
問11 図書館の蔵書を充実するうえにおいて、みなさんのご希望を参考にしたいと思いますので、あなたが興味をおもちの本、または購入希望の本がありましたら、つぎの該当する項目の番号を○印でかこんでください。
1 哲学、倫理、宗教関係
2 歴史、伝記、地理関係
3 政治、経済、法律、社会関係
4 教育関係
5 自然科学(物理、化学、生物)関係
6 保健衛生、健康関係
7 工業、工学(土木、建築、機械、電気)
8 家事、家庭、育児関係
9 農林、水産関係
10 商業、商店経営関係
11 交通、通信関係
12 音楽、演劇関係
13 スポ−ツ娯楽関係
14 文学、古典、小説、詩歌関係
15 郷土に関するもの
問12 あなたは、読書グループに所属していますか。
1 いる
2 いない(その理由 )
問13 県立図書館についてお気づきの点、感想、希望をつぎに記入してください。
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集計表
![](1815/18dokusho_tab05.gif)
問1 問2 問3 問4 問5 問6 問7 問8 問9 問10 問11 問12 問13 |