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阿波学会研究紀要 |
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| 郷土研究発表会紀要第17号 | |
| 近郊鴨島の生産と流通に関する地域的展開 |
地理学班 四宮武 |
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目 次
2 鴨島町概観
鴨島町は、主として地形的に3地域に分類することが出来、それぞれの地域は、特色ある発展を示している。1つは、北の吉野川沿自然堤防地域、次に南の前山(四国山地)北麓沿いの山麓地域、そして、前2者の中間に位置する国道192号線沿いの中間地域(地形的には吉野川の氾濫原)の3地域である。先づ自然堤防地域は、畑地で、大根、蔬菜などが栽培され、又それを原料とする漬物工場が多数立地している。又最近では、工業団地の用地として計画されており、すでに牛島の先須賀には大根畑の中に長尾テキスタイルが操業を開始している。
次に山麓沿いは、今、麻植パイロット地区の中心として、山麓一帯が開発されており、将来観光農業地域として期待がかけられていると同時に、麓一帯の深田は、住宅地域として、すでに、呉郷住宅団地など、土地造成が進められている。
最後に、国道192号線沿いは現在、目ざましい市街地化をとげつつあり、国道は、鴨島町の動脈の役割を果たしている。(国道は、徳島より約20km、町内延長7.5km)
宅地転用上から見た鴨島町の発展状況は、やはり、前述3地区の特性をよくあらわしている。即ち、中間地区の国道沿い(上浦、牛島、麻植塚、内原、中島、鴨島、上下島、西麻植)に面する宅地化が最も著るしく、第2図の如くである。国道沿いは、現在、市街地化の動きが顕著であり、ガソリンスタンド、ドライブインなどが軒を並べるように出来ており、現在(昭和45年)鴨島町内の国道192号線の延長距離7.5kmの間に、ガソリンスタンドが11軒、ドライブイン(モーテル)が8軒、大手自動車メーカーの販売店が5軒、その他、自動車修理店、飲食店、各種商店等が、次々に立地している。(上鮎喰以西の国道192号線沿いのガソリンスタンド立地状況を見てみると、徳島市国府町―上鮎喰―石井間―2.8kmの間に7軒、又石井町6.5kmの間に5軒立地している)将来この国道192号線と318号線(鴨島―大内間)との交差点付近を中心に、ますます発展していくことが予想される。
次に、北の自然堤防を主とする地域であるが、ここで注目すべきは、知恵島の宅地化が群を抜いて多くなっていることである。その理由として考えられることは、1つは、地形的に自然堤防上に位置し、高燥であり、畑地が多く、宅地化が簡単であること。2つは、交通上より、国道318号線が、北の吉野川中央橋へ向けて貫通していること。(特に国道沿いの千田須賀の宅地化は著るしい)3つ目に、鴨島駅ヘ近い位置にあることなどが挙げられる。当地区は、転用件数118件のうち、畑地からの転用が105件で、約90%を占めており、自然堤防上にある高燥性を示している。又、畑作地域であり、農業関係への転用(鶏舎、漬物置場など)も多い。
次に転用件数の多い西麻植、知恵島、鴨島、牛島、上下島、上浦の6地区の転用状況を見てみると、第3図の如くである。これらの地区はすべて国道192号線か318号線が通っている地域にあたり、やはり道路沿線の発展状況を示している。その中でも、特に中心(町心)鴨島は、商店の増加が著るしく、又アパート貸家等も比較的多い。そして地形的にも高燥で畑地からの転用が多くなっている。
上浦、牛島、上下島地区は、国道沿いではあるが、水田からの転用件数が多く、低湿であるため特に国道沿いにかたよっている傾向がある。その中で、牛島地区は、北の自然堤防沿いをも多く含み、そのため、鶏舎などの農畜産関係の転用も比較的多く含まれているのである。最後に、自然堤防上の知恵島地区では、前述した通り、畜舎、鶏舎等の多いのが目立つ。又最近は、各種工場の進出も目立ち、第2表に示す如く、300坪以上の面積転用のうち、約50%を工場が占めている。
次に年令別、男女別人口構成からみると、第○図のような変遷を示しているが、昭和40年の図からみて、鴨島町は、農村型(老人と子供が多く、生産年令人口が少ない。女子が多い)に属することを示している。しかし、その中で30〜40才代の年令層が、いくぶんのふくらみを示すが、これは、鴨島町の今後の発展を示すあらわれで、徳島の Hinterland である鴨島が、国道192号線沿いに finger 状の Urban fringe がしのびよっているあらわれであろう。しかし全般として、阪神へ生産年令人口を供給している地域であることに変わりはない。
次に産業別人口構成では、第5図の如く、第3次産業の機能を強く持ち、その中でも、卸売り、小売業が37.5%、サ−ビス業が35.2%、運輸通信業が13.9%と多く、麻植郡を中心に、吉野川中流域を後背地(Hinterland)にもつ1Urban zone 的存在をなしているといえるであろう。この点で、鴨島町は、徳島市の Hinterland であり、その Hinterland の中での新しい1つの核として徳島市の New town 的存在へと歩むことが可能であろう。
人口の動態面よりさぐってみると、第5表の如くである。即ち昭和42年度における自然動態の出生率を、全国、徳島県に比較すれば、全国19.3パーミリ、徳島県14.7パーミリに対し、鴨島町は更に低く、13.9パーミリである。一方死亡率を見ると、全国6.7パーミリ、徳島県8.7パーミリに対し、鴨島町は10.4パーミリと高くなっている。これを総合した自然増加率で見ると、全国12.6パーミリに対し、徳島県は6.0パーミリと低く、更に鴨島町は3.5パーミリと一層低く、大きく差が出てくる。このことは、再生産年令層が少なく、高年令層の多いことを示していると解される。これは、次の社会動態とも大きく関連しており、第6表の如く、転出のうち、阪神へ出ていく数の多いことからもうかがえるのである。即ち、昭和42年度の転出超過は379人であるが、県外移動だけを取り出すと、473人の転出超過となり、その不足分94人を県内他町村からの転入で補っているのである。しかし、こういう2重構造があるとはいえ、昭和44年度に348人の転入超過を示したということは、国道192号線沿いに、徳島市の Urban fringe が finger 状に Sprawl してきているあらわれであると言えよう。
最後に、人口の生産的要素を、労働力人口と、非労動力人口、15才未満の人口の割合からみてみると、第7表の如くである。 通婚より鴨島町の傾向をみてみると、やはり吉野川平野を中心に、その周辺の町村との関係が強く出ている。第6図で見る如く、徳島市、名西郡、麻植郡、板野郡との関係が強く、この四市郡で、婚出では、県内全体の73.1%、婚入では69.3%を占めている。そして婚入は上流各地よりが多く、婚出は下流の徳島市へ向いて多く流れているという一般的傾向がみられる。又山村美郷と比較してみると、第8、9表の如くであり、美郷の場合、婚入よりも、一方的に村外婚出の方が多くなっており、このことは、人口の向都離村に伴なうものであり、村を離れた青年が、結婚適令期に達し、再び村の女性を都市ヘ呼び寄せる為である。婚入が少なく、婚出が多いのは、男子が先に就職等で転出し、あとから村内の女子を呼び寄せているからである。即ち、村外へ出て、村内の人と結婚(村外における村内婚)しているのである。この傾向は、鴨島町の県外婚出にもあらわれている。
―漬物工場よりみる関心共同圏―
漬物の原料は、白瓜(塩漬)大根(塩漬)胡瓜(塩漬)生姜、らっきょお、茄子、れんこん等で、福神漬、奈良漬、生姜漬、らっきょお漬、胡瓜漬などを製造している。
次に野菜の出荷状況より、徳島との関係をみてみると、第13表の如く、キャベツ、白菜などは、徳島市場へ多く出荷されているが、胡瓜、茄子、里芋などは圧倒的に阪神への出荷量が多くなっており、この点では、阪神の輸送園芸(Truck farming)地域である。
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| 徳島県立図書館 |