この調査は、美郷村周辺の青石―正式には、塩基性片岩と呼ぶ―の分布を追跡し、その厚さを測り、その厚さから、青石の層が堆積したときの堆積盆地を推定したものである。
青石の地層は、美郷村周辺で、主なものでも、数枚あって、ここで扱うのは、野口脇鉱山で習慣上、G3と呼んでいる塩基性片岩層である。
G3は、神山町の焼山寺山の北の釘貫から延々と連なり、美郷村の別枝山・大平谷・小竹・ぼろぼろの滝を経て、穴吹川の方にのびている。
塩基性片岩層G3の特徴は、他の青石とちがって、その層の中に、紅れん石方解石以外の他の種類の岩石のはさみが、全くといってよいほどないということである。その上、はんれい岩起源の塩基性片岩を含むことも特徴である。
付図には、このG3の分布と、厚さの測点と厚さ、およびそれから堆定した等層厚線が記入してある。この結果から、推定されることは、つぎのようなことである。
青石G3の堆積盆の形は、その100mの等層厚線からわかるように、変形した楕円形である。
青石―塩基性片岩が変成作用を受ける前の原岩は、本州地向斜の海(古生代後期)に活動した海底火山の噴出物(火山灰やよう岩等)だと考えられている。
付図の100mの等層厚線の形は、この海底火山の噴出物の堆積盆を示すことになる。
そして、はんれい岩の分布をしらべてみると、G3の100mより厚い部分に分布している。
はんれい岩のような完晶質の火成岩は、火山の根であるマグマ溜りから、そう遠くないところに貰入してきたものだと考えると、G3の厚い部分に、火山の噴出の中心があったと推定できる。
もし、このような調査を、他の青石―塩基性片岩層についても行なったら、本州地向斜内の古い海底火山を一つ一つ復原することができるであろう。
さらに、この青石の鉱物を、くわしく検討すると、これら火山のよう岩の性質を明らかにすることができるであろう。
これが、今後のわたし達の課題である。
参考文献
剣山研究グループ(1963)「四国東部結品片岩の層序と構造」:地球科学69号
通商産業省:昭和43・44年度吉野川地域広域調査報告書 |