阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第15号
大学生のうけた家庭教育に関する追路調査

教育社会学班 池田秀男、尾上和代、山本美恵子、他

 この調査は、徳島市にある大学および短期大学に在学している学生たちが、これまでどのような家庭で育ち、またそこでどのような家庭教育をうけてきたかについて追跡研究したものである。

I.問題の所在
 家庭教育に関する調査研究は、その「被教育者」についてなされる場合、生活の中心を家庭にもつ児童、生徒を対象としてとりあげるのが普通である。しかしこの調査においては、大学生を対象として、彼らのうけてきた家庭教育および彼ら自身の家庭に対する態度についてとりあげている。この点、普通の家庭教育についての研究とは、対象と問題意識を異にしているので、まずこのことについて述れておきたい。
 われわれの調査研究も、もともと徳島市内の児童、生徒を対象に考えたのであるが、調査準備をすすめていく過程で、現在、在学中の大学生をとりあげ、彼らがこれまでに受けてきた家庭教育を検討することによって、今日の家庭教育の問題はよりよく明確に描き出せるのではないかということになった。その主な理由は、今更のべるまでもなく、今日の教育的問題の一つの中心は、家庭教育も学校教育も含めて、進学競争とか、成績至上主義とか、有名校への集中や高学歴への熱狂にせよ、いわゆる日本社会における学歴主義に根をもつ教育の硬直化現象にあるといえるからである。現代の児童・生従は多かれ少なかれかかる学歴取得に方向づけられた教育体制下で生活することを余儀なくされており、彼らの学校生活は勿論、学校外の生活や家庭教育育もこの影響下に組みこまれているのが実状である。こうした影響を真正面から最も大きくこうむっているのは、大学進学者であるといえる。
 われわれはこのような問題意識に立って、大学生を対象に、彼らの受けてきた家庭教育をあとづけることによって、受験体制下における家庭教育の実態と問題点を明らかにし、今日の家庭教育のあり方を考えて見ようとしたわけである。その場合、当然予想されることだが、同じ大学でも、彼らの出身や専攻や性別などによって、問題は異なるかもしれない。われわれは学部別、男女別、出身階級別、あるいは家庭における人間関係や権力関係の型式などの面からも問題を特徴づけ、同じ大学生においても、どの層のどの学生群はどんな問題をもっているかについて研究をすすめていくことにしている。この報告書は、その一部(教育学部学生102人に対する調査結果)を用いて、全体的傾向を概観したものである。したがって、本調査全体の報告書は近い将来に、別に発表する予定である。

II.調査方法
 これは徳島大学四学部、すなわち教育学部、工学部、薬学部および医学部の昭和43年度卒業予定者と、徳島市内の某女子短期大学の同年度卒業予定者を対象に質問紙調査した結果である。卒業予定者を調査対象として抽出した理由は次のようである。すなわち、彼らは経済的にも社会的にも今まで家庭に依存していた生活から自立化しようとする過渡期にある。これは家庭教育という点からみれば、その完成期にあるといえるのである。われわれはこの調査で、家庭教育の完成期にある彼らを抽出することによって、彼らの今まで受けてきた家庭教育の実態と彼ら自身の家庭に対する態度や評価などを明らかにしようとしたわけである。
 調査内容は次のような三つのグループの同題で、合計37の質問項目から成り立っている。
 まず第一グループの問題には、この調査の基準項目として、被調査者の両親の学歴、職業、家庭の月収入など、彼らの出身階級や家族関係の指標となる諸条件に関する質問項目が含まれている。これらの家庭的諸条件は、それぞれ調査結果の分析基準として利用されると同時に、全体として家庭教育の行なわれた文化的、社会的、経済的な背景をも構成するであろう。第二グループの問題は、家庭教育の実態に関するもので、家庭教育の担当者、家庭内における教育的な人間関係、家庭教育の内容、家庭教育の様式および重点のおきどころ、両親の子どもにかける期待の度合などに関する質問項目からなっている。第三群の問題は、学生自身の立場から自己の受けた家庭教育をふり返って見た場合の意見や評価、および彼ら自身の将来の家庭像や、それに対する態度などに関する質問項目を含んでいる。
 上記調査対象に対して、われわれはこのような問題群からなる西洋紙3枚に印刷した調査票を配布し、昭和43年10日から11月にかけて調査を実施した。回収率は90%であった。

III.家庭教育の背景と実態
 まず、現在、徳島市内の大学在学中の学生がどういう家庭で、どういう教育をうけてきたかを考えるにあたって、その家庭的背景について概観しておきたい。その1つとして、親との続柄や家族構成についてみると、両親との続柄は全学生のうちの60〜70%が長子ないし二番目の子で、子どもの数は一家庭平均して2人ないし3人となっている。家族構成の面では、祖父母のいる家庭を拡大家族と考えた場合、これは40%を占めており、残りの60%の学生は、いわゆる核家族の成員である。ここで拡夫家族というのは、父系ないし母系の親夫婦と既婚の子夫婦が同居している家族形態を指し、核家族とは夫婦とその間にできた未婚の子女とからなる家族のことをさす。拡大家族においては、当然ながら、家庭教育に祖父母など古い世代の影響があるのではないかと考えられる。われわれは両家族形態を区別することによって、それぞれの家庭教育の問題点を明らかにすることができるであろう。(本報告書ではこれにふれるには至らなかったが)
 次に出身家族の地城性という点から、環境の家庭教育に及ぼす影響を考えた。彼らを出身地域別にみると、農山村漁村地域の者が70%と圧倒的に多く、都市部出身者は30%にすぎない。この結果からいえば、農山漁村地域の特色である近隣性(地)と同族性(血)に基礎をおく伝統的な「家」の観念がそこで受けた彼らの家庭教育にも、かなり影響していることが予想されよう。親の職業は農林漁業が37%と最高位を占め、公務員15%、会社員14%となっており、医師、弁護士、サービス業などはわずか6%となっている。またこの報告書で取り扱っている学生の父親のうち、その12%は学校教員であるが、これは、教育学部学生の出身家族の特色であろう。
 両親の学歴構成は家庭教育に大きな影響をもつであろう。われわれは学生の両親の学歴水準について、初等教育、中等教育、高等教育という三群に分類して考えた。これら三つの学歴水準によって学生の父親をみると、初等教育だけしか受けていない者は全体の53%で、中等教育卒業者は25%となっており、さらに高等教育を受けている者は20%である。これに対して母親の学歴構成については、初等教育卒書者は全体の53%で、父親と同率であるが、中等教育卒業者は40%もいる。しかし母親のうちで高等教育を受けている者はわずかに4%しかいない結果となっている。大学生の両親のうちの半数以上(53%)が初等教育だけしかうけていないということは、親子の世代間における学歴の上での移動が、かなり大幅になされていることを表わしている。この移動の状態が、わが国の全体的状況の中でどのような位置にあるのかについては、さらに同世代者の学歴構成との関係で検討の余地を残しているが、次のことだけは言えるであろう。すなわち、相対的にいって、現在、その子弟を大学に送っている家庭の親子間の学歴の上昇的移動率はひじょうに高いということである。親は初等教育しか受けていなくても、その子どもには大学教育まで受けさせているのである。たのたとは、今日、大学生をもつ家庭の両親が、いかに教育熱心であり、したがって、そのもとで受けた家庭教育が今日のいわゆる受験体制と深いかかわり合いをもっているだろうという、われわれの仮定を裏書きするものだと考えられる。さらに家庭での教育は、その家庭の経済的状況と深い関係があるであろう。われわれはこの点で各家庭の経済的基礎として、それぞれの家族の月収入について調査した。その結果によると、月収入5万円ないし8万円と答えた者が最も多く、全体の40%を占め、次いで3万円ないし5万円という者が35%で、3万円以下というのは7%となっている。またこれとは反対に15万円以上の月収入があるのは、わずわに1%にすぎない。
 また家庭のあり方について、民主的、放任的、専制的という3つのパターンに分類して、自分の育った家庭の帰属を求めたところ、民主的であると答えたのが全体の56%で、放任的というのが32%、専制的というのが16%という結果を得た。民主的な家庭に育ったという人が全学生の中の約半数を占めている。以上は彼らの育った家庭的条件の概略であるが、われわれはこれらによって彼らがどんな家庭で、どんな親のもとで教育を受けたかを知ることができたのである。
 それでは、こういった家庭的条件のもとでなされた家庭教育はどんなものかその実態について次にみていきたいとおもう。
まず家庭教育の担当者を知るために、成長過程において最も大きな影響を与えた人を尋ねた。
 表1は「最も影響をうけた人は誰ですか」という質問項目に対して、「大学入学前」と「大学入学後」の場合について答えてもらった結果である。まず大学入学前の場合をみると、最も大きな影響をうけたのは母だと答えた者は全体の52%で、約半数を占めている。次いで父が全体の30%、祖父母12%、兄姉5%となっている。他方、「大学入学後」の場合をみると、友人の影響が最も大きく、全体の57%の者がそう答えており、両親からというのは16%と低くなり影響を受ける人はいないという者も15%いる。そして教師からというのが全体の10%となっている。大学入学前と大学入学後をくらべてみると、大学入学前においては、とりたてて影響をもたなかった友人から、入学後には大いに影響をうけるようになっている。入学前、母親一辺倒であったのが、大学入学後においては母親から影響を受ける人はいなとなる。その代りに、約1割くらいの学生の場合であるが、教師からという新しい傾向がでてきている。大学入学前の頃は、家庭において母親の果たす役割は特に大きく、母親が多くの家庭で教育の主たる担当者となっているということが、この数字からいえよう。一方、さきに述べたように、拡大家族は40%もあり、ここにおける古い世代の影響というものも予想されたが、この表によると、家庭における祖父母の影響は少ないといえる。また人学前、高校時代まで家庭に依存するころ、特に母親の影響が大きいのにくらべて、大学に入学したころから同世代の友人による影響が大きくなっていることは、彼らの生活圏の家庭から学校杜会への実質的拡大と、それに伴う家庭からの精神的独立化ということがいえるであろう。
 家庭における影響と、発言力の関連性を見てみたい。表2は、家庭内における発言権の主たる所有所が誰であるかを百分率で示している。これによると発言権の所有者は父親が圧倒的で、全体の60%の家庭では父親の権力に支配されている。これに対して、さきに見た家庭教育担当者である母親は、全体の20%しか発言権をもっていない。これは、家庭教育の担当者は、家庭における発言権の所有者と必らずしも一致しないことを意味する。また今日、父権喪失ということがいわれているが、家庭における父親の座は、子どもの目から見ると、そんなに失なわれていないといえよう。一方、母親は、多くの家庭において直接、子どもの教育担当者でありながら、家庭での発言権、すなわち重要な事柄に対する決定権が弱いといえる。これは、母親の経済的な力がないことに帰因すると思う。
 親子の間の対話や人間関係はどうであろうか。われわれはこの点について親子間のコミュニケーションの頻度とその傾斜について検討した。家族間の意志疎通の手段、言いかえると家族全員が一つの集団としてまとまった生活をしていくために家族間の話し合いや、対話は欠くべからざるものである。今日過激な学生運動の一因として家族間の対話の欠如があげられているが、本調査の対象学生の88%は、家庭において「よく話し合いをもってきた。」し「現在もある」と答えている。これは一方で彼らの親の配慮と、他方で各学生個人の自覚から、この様な現実がもたらされているものと言える。
 しかし、親子間における意見の対立や、また子どもが親に異なった意見をさしはさみ、逆に親を説得するというような関係は別問題である。われわれは、この親子のコミュニケーション過程における意見の対立と同時に、子による親の説得という両面について分析した。親子間の意見の対立は、「時々ある」または、「ひんぱんにある」と答えたものが全体の81%に達している。これによると、親子間に対立葛藤のあるのが普通であり、ない方がめずらしいというのが実状である。両親に対する説得の割合も、男子の50%、女子の60%と、かなり多くの者が親子間におけるコミュニケーションの送り手と受け手の間の関係の一様でないことを示した。この時期になると親子間の教育関係は、コンパニオンシップとよばれる水平的関係ないし、逆教育の関係さえ出現するのである。これは大部分の家庭で見られる現象で、その原因は二側面からとらえることができよう。すなわち、第一に、両親と子どもとの間に大きな学歴差があること、第二に学生生活の終了期は親からの心理的離乳の完成期であるということである。ここでいう離乳とは、親から精神的、社会的に子どもが独立していく過程を指す。この両面の裏づけとして、私は、親の学歴は初等教育のみが50%であることと、学生の側における主体制がこの時期までに確立されることがあげられると思う。しかしながら、これら親子関係での対立と説得の両面において、強調すべき問題点として、世代間のズレが考えられよう。「あなたは世代間のズレを感じることがありますか。」との質問項目に対して、「時々ある」と「よくある」と答えた者は全学生のうちの73%にも達している。これは、急激な社会生活の変動に帰因するが、とりわけ我国の伝統的な文化や価値規範の中で権威主義的教育を受けた両親と、戦後の創意性や自主性を尊重する、いわゆる民主的自由主義教育をうけた子どもとの間の差異に、その一つの原因を見つけることができる。
 次に、過去、現在の両親の子に対する教育態度を見ていきたい。まず、受験体制下で、一種の危機的場面に直面させられる高校時代に大学受験生をもつ親が家庭で最も強調するのは何かについて取りあげた。表3を見ていただきたい。これによると、家庭教育における重点のおきどころは、「勉強」というのが、最も多く全体の40%で、「健康」は24%、「しつけ」というのは20%となっており、いわば「健康で勉強せよ」という今日の両親の気のくばり方が約65%の家庭で見うけられるのである。学校外の学習内容をみても教養的なものは少なく、ソロバンなどの実用的学習か、そうでなければ知的な学力本位の勉強のみに専念していたことがうかがわれる。余暇活動が中心になっている欧米にくらべて、わが国では、学力のみを強調する知育のかたよりが、いえそうである。
 勉強を重視している両親の関心は、ある意味で、子どもの学業成績に対する関心や、その取り扱は方に最も端的に表われている。親は子どもの学業成績をどのようにとらえているか、あるいは、いかに過敏に反応しているかについて1 「成績のあがった場合」と、2 「変わらない場合」と、3 「さがった場合」の三つの場合について反応を求めた。成績のあがった場合「ほめてくれた」というのが全体の57%で、成績の変わらない場合、さがった場合に、あまりいわなかったという者が、それぞれ65%、68%となっている。これらの結果は、一見して親の学力偏重的な教育態度と矛盾するかに思えるかもしれないが、次のようなことが考えられる。すなわち、親は子どもの学力に対し、あまりにも神経質であるが故に、むしろ、悪は結果の成績にとやかくいうのではなく、子どもに対しては「はれものにでもさわる」様な親の心の使い方が、ここに出ていると解釈できるのである。
 さて、家庭における勉強の学習担当者はだれなのか、親から直接教育をうけることの最も多い小学生を、低学年と高学年にわけてとらえてみた。表4のごとく、低学年では母親が40%をしめ、教育担当者と、学習担当者とは一致している。これに対して高学年では、71%の者が自力でやっており、母親の役割は少なくなっている。理由は、学習内容が高度になったため、母親の学力がついてゆけなくなったこと。依存心が独立心に移行した結果であると意味づけできよう。
 以上は、本調査の対象となった学生の受けてきた家庭教育の実態である。この様な家庭で養育された学生は、現在家庭をどのように評価し、将来の自己の築く家庭に対してどのような家庭像をもっているか。これが次の間題である。われわれがこれまで受けてきた家庭教育と現在の受験の上に築かれるはずである。だとすれば、これも現在の問題点を解明する一つの手がかりを与えるかもしれない。

IIII 家庭教育の理念と評価
 子どもの成長発達のために、彼らに対する親の保護と配慮は不可欠であるがそれが度をこすと、逆に子どもの自主性や自律化を阻止する。これは家庭内における子どもの社会化という点で問題である。このことに関連して、今日、教育ママの問題がある。われわれはこの問題について検討するために、両親が子どもに対して、どの様な配慮の仕方をしたか、言いかえると、子どもから見て自分は親にどのようにかまわれたかについて調査した。われわれはこのような問題に対して、(イ)非常にかまわれた(ロ)かなりかまわれた(ハ)あまりかまわれなかった(ニ)まったくかまわれなかった、という四つの選択肢を用意して、学生の反応を求めた。「かなりかまわれた」と「非常にかまわれた」に対する反応を「過保護型」と名づけるなら、男女あわせて全体の27%がこの型に含まれる。そして「まったくかまわなかった」という放任型は30%で、「あまりかまわれなかった」という平常型は43%であった。これらは、各家庭の教育方針、続柄にも影響をうけていると考えられる。
 また親の配慮は子どもに対する期待と密接な関係があると予想される。この点については、全体の42%の者が大きな期待を寄せられてきたと答えたが、自己の能力以上に期待されこまったと答えたのは5%であった。両親は、子どもに大きな期待をかけ、そのために子どもの家庭教育を重要視するのは、昔も今もかわらないであろうが、現代家族の特徴は、それが特に学業に向けられている所にある。
 学生自身がもっている家庭の理念については、表5を参照されたい。これによると、現代思想の特徴として言われているように、家庭を「いこい」や「娯楽」の場と見る者が全体の63%である。個人的な平和の場として家庭に重点をおき、社会における人間形成の場としての家庭観は、今日のいわゆるマイホーム主義の傾向と軌を一にするものであろう。続いて家庭を「教育・しつけ」の場として見る者が45%で、「衣食住を充たす場所」というのは、11%となっている。これらは家庭中心主義的な生活態度を示すものであり、それがもし社会的な視界の中で考えられていないとすれば、今日のいわゆる「小市民的性格」を反映するものだと言えよう。
 最後に、われわれは現代の学生は親孝行をどのように考えているのか親をだれが扶養すべきかについて調査した。その結果によると、子どもが養うべきだというのが全体の78%であった。今日家族間の孤立化が進んでいるといわれているが、現代の学生にも親は子どもが扶養すべきであるという伝統的道徳感が潜在的に定着しているといえよう。また、男子では、4人に1人の割合で、親の老後は国が保障すべきだと答えているが、積極的に社会保障の必要性をとらえている。これに対して女子は、愛情による結びつきを大切に考えている。親孝行そのものについては、全体の99%の学生が、それはすべきであると支持している。その内わけは、自分を犠牲にしてまで親孝行すべきだというのが9%である。親孝行はすべきだとの道徳的観念は、存在しても、自分自身の幸福の追求を優先するのは、現代学生の特徴の一つとしてあげられよう。
 なお、彼らが今までうけた家庭教育をどう評価しているかについて見ると、客観的判断から、表6で示しているように、よかったというのが52%で、よくなかったというのが15%となっている。

V むすび
 以上家庭教育について概観したが、これらの研究結果から、次のようなことが導きだされる。
(1)家庭の権力構造を発言権からみると、父権喪失といわれるが、父権は存在し、それらは必らずしもあてはまらない。この点では、さらに今後父親上位の家庭での家庭教育や親子関係のパターンと母親上位の場合のそのパターンなどの比較研究の余地が残されている。
(2)学生としての意職から、両親と子どもの間にはかなりのコミュニケーションがなされているが、また対立や、子どもが親を説得するという関係もあり今後それぞれの内容分析が必要である。
(3)進学者をもつ家族での教育は、勉強にかたより、欧米などの家庭での子どもの生活の実態とはかなりちがったわが国独自の問題的状況といえよう。
(4)母親の座が非常に子どもに影響を与え、家庭で子どもは対し最も大きな影響をおよぼすのは母親である。すなわち母親の生活態度や教育水準、子どもの取り扱い方は、ほとんどの家庭において、家庭教育のあり方をある程度まで決定しているといえる。これが大学進学者の家庭の特徴で教育ママに関連させるのかどうか、今後さらに研究を進めたい。
(5)現代世相の特色であるマイホーム主義がこの調査対象となった学生にも見られるが、それは社会と家庭を断続的に見るのか、あるいは両者の連続性において見るかなどについて、さらに検討を加えたい。
(あとがき)
 この調査研究は、次のメンバーの共同研究によって進められている一部である。この報告書は、その共同研究において共同討議されたものを、尾上和代、山本美恵子の両名がまとめたものである。

 共同研究のメンバーは次のようである。
  責任者 池田秀男
  市原正子  奥田文子  尾上和代  鎌田たみ子  川上寿夫  松田淳子  山本美恵子  勝浦文子  橋野義治


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