阿波学会研究紀要


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郷土研究発表会紀要第15号
徳島市の植物とその移動

博物学班(植物)

阿部近一、木村晴夫、加藤芳一

(一)植物概要
 徳島市は東西に伸びる眉山を中心とした広大な地帯で、背後には標高773mの中津峯や東竜玉山などの山々があり、平野部は吉野川のデルタ地帯がその大部分を占め、さらに鮎喰川や園瀬川・勝浦川なども流れて、その水は紀伊水道に注いでいる。気候は昭和26年以降10カ年の平均気温が16.3℃で、降水量も年1804mmと多い。
 このように地理的環境が複雑で気候が温暖なため、山地にはアカマツ林が多く、山麓はシイやカシ類などの暖地性厚葉樹林がよく発達している。ことに新旧の市内には社寺の社叢が多く、それらの樹林には巨樹や老木に交って古い分布を示すヤマモガシやホルトノキなど、南方系の植物も少くない。
 また中津峯一帯にはカツラやシデ類などの温帯要素も多く、海岸地帯には塩性植物に混ってウシオツメクサやクロカワズスゲなどの北方系分子の南下もまれに見られ、多彩な植物分布を示している。
 一方戦後は都市開発が急速に進み、眉山の観光開発を始め八万町一帯の産業開発や宅地造成の外海岸線の防潮築堤や低湿地の埋立による工場化などで自然の姿は日一日と一変し、固有の植物が次第に消滅するとともに、園芸的にも観賞的にも外来植物の導入が盛んで、海外との往来の頻繁さに伴って帰化植物の侵入も多く、質的にも量的にも植物の移動が目に見えて活発化している。
(二)特記すべき植物
(1)暖亜熱帯性要素
1.ヤマモガシ Helicia co-chincninensis Lour.
 上八万町天王神社・渋野町 八多町両八幡神社
2.シリブカガシ Pasania qlabra Oerst.
 一宮町国中神杜・西名東町久光山麓
3.バクチノキ Prunus zippeliana Uiq.
 一名ビランジユ 徳島城山
4.トキワガキ Diospyros morrisiana Hance.
 一名クロガキ 上八万町天王神社外
5.ホルトノキ EIaeocarpus sylvestris Poir. var. ellipticus Hara.
 一名モガシ 徳島城山外市内社叢各地
6.タマミズキ Ilex microc-occa Maxim.
 建治滝一帯
7.テンダイウヤク Lindera strychnifolia F. Vill.
 眉山南面雑木林中多数
8.ヒカンザクラ Prunus campanulata Uaxim.
 台湾原産、県庁前・端巌寺・新浜邸内
9.マテバジイ Pasania edulis Uakino.
 県立図書館裏登山口(植栽)
10.キミズ Pellionia scabra Benth.
 建治滝・上八万町花房
11.カラタチバナ Ardisia crispa DC.
 徳島城山(稀)
12.キキョウラン Dianella ensifolia DC.
 大神子(稀)
13.チャボホトトギス Tricyrtis nana Yatabe.
 中津峯
14.コゴメカゼクサ Eragrostis japonica Trin.
 名東町地蔵院池畔
15.アオイゴケ Dichondra repens Forst.
 眉山麓(ホテル建設により絶滅?)
16.タキミシダ Antrophyllum obovatum Bak.
 眉山佐古水源地上部渓間(絶滅?)
17.シロヤマシダ Diplazium hachijoense Nakai
 中津峯渓側大繁茂
18.クルマシダ Asplenium wrightii Eat.
 中津峯渓側
19.コウザキシダ Asplenium ritoense Hayata.
 眉山新町裏山
(2)温帯性要素
1.カツラ Cercidiphyllum japonicus Sicb. et Zucc.
 八多町五滝入口
2.アカシデ Carpinus laxiflora Blume.
 イヌシデ C. tschonoskii Uaxim.
 中津峯如意輪寺一帯
3.ウリハダカエダ Acer rufinerve Sieb. et Zucc.
 東竜王山々頂
4.ヒメナミキ Scutellaria dependens Uaxim.
 沖洲町高洲イナ池附近(稀)
5.ウシオツメクサ Spergularia marina Griseb.
 沖洲町高洲イナ池附近(四国初記録)
6.エゾウキヤガラ Scirpus planiculmis Fr. Schm.
 沖洲町湿地水溝
7.クロカワズスゲ Carex arenicola Fr. Schm.
 川内町・沖洲町高洲(稀)
(3)襲速紀要素
1.ユキワリイチゲ Anemone keiskeana T. Ito
 上八万町花房山麓、緑弁 f. viridis のものもある。
2.ナンカイアオイ Asarum nankaiense F. Uaek.
 眉山(ミヤコアオイが多く稀)八多町
3.ナンカイギボウシ Hosta tardiva Nakai.
 名東町山麓、明治年間の二階重楼氏の採集品がタイプとなり命名。
4.シコクヒナノウスツボ Scrophularia shikokiana Kitam.
 眉山・上八万町
(4)海浜植物
1.ハマボウ Hibiscus hamabo Sieb. et Zucc.
 沖洲町高洲
2.ハマグルマ Wedelia pr-ostrata Hemsl.
 大海子
3.ハマヨモギ Artemisia fukudo Uakino.
 論田町篭(絶滅)勝浦川新浜川口
4.ハマサジ Limonium te-tragonum. A. A. Bull
 論田町篭
5.マツナ Suaeda asparagoides Uakino.
 末広町・論田町篭(絶滅)
(5)その他
1.エドヒガン Prunus pendula Uaxim. for. ascendens Qhwi.
 徳島城山護国神社裏下り口、祖谷一帯に自生のもの、植栽、老木にて枯死寸前。
2.ヤマホオヅキ Physalis. chamaesarachoides Uakino.
 不動町吉野川堤内
3.カリガネソウ Caryopteris divaricata Uaxim.
 八多町五滝
4.タコノアシ Penthorum chinense P-ursh.
名東町地蔵院
5.マツカサススキ Scirpus mitsukuria na Uakino.
 不動町吉野川堤内池畔、最近農耕地が拡がり絶滅寸前。
6.センダイスゲ Carex lenta var. se-ndaica T. Koyama
 大神子松原砂地、最近野菜畑を林内に作り絶滅寸前。
(三)徳島市の巨樹老木
 古来日本には天体宗教とか高山宗教が生れているように、自然を崇拝し、人力の及ばない偉大な自然に帰依する風習があり、森厳な森や林にはよく社寺を設けてその保護と保存に努めている。したがってそこには巨樹や老木が多く、それらには古い歴史の跡や伝説を語り伝えるものが少くない。
 徳島県の巨樹老木については、故横山春陽氏の「阿波の名木物語」があるが、徳島市内には社寺の森が多く、それらに漏れているものも少くないので、その六十数ケ所について凡そ36種の樹木、延200本余りの太さを測定したので、以下その番付表を記録したい。
 尚これらの中には巨樹に類しないものも少くないが、将来の候補木としてその保護と保存が望まれる。
巨樹番付
(1)クロマツ 瑞巌寺天狗松 6.48m 県下1位
  佐古椎宮八幡社 4.47 県下4位
  中津峯登山道 4.45
  下町伏拝神社根上松 4.40
  渋野天王の森古墳 4.14
  論田町籠 403
  川内町若宮神社 3.91
  眉山観光道雲水庵 3.73
  八万町八幡神社 369
  仝 3.59
  国府町国分寺 3.58
  仝 常楽寺 3.54
  蔵本町八坂神社 3.52
  仝 3.46
  方上町弁天神社 3.38
  名東町八万宮 3.34
  佐古町諏訪神社 3.33
  名東町松尾神社 3.12
  八多町八幡神社 3.12
  国府町常楽寺 3.07
(2)アカマツ 丈六町ケサカケ松 3.43 県下3位
  中津峯如意輪寺 3.39
  八多町八幡神社 3.25
(3)モミ 中津峯如意輪寺 3.33 県下5位
  国府町常楽寺 2.45
  一宮町一宮神社 2.42
(4)ヒノキ 丈六町丈六寺 3.83
  一宮町一宮神社 2.73
  八万町八幡神社 2.59
  名東町八幡宮 2.07
  仝 2.04
(5)イブキ 常三島町神明社 2.32 県下2位
  福島町天神社 1.76
(6)スギ 如意輪寺夫婦杉 6.19
  眉山大滝山夫婦杉 5.53
  如意輪寺 4.80
  仝 3.71
  上八万町宅宮神社 3.55
  如意輪寺 3.54
  仝 3.53
  一宮町一宮神社 3.23
  八多町八幡神社 2.53
  国府町常楽寺 2.40
(7)マキノキ 徳島城山西登口 2.47 県下(イヌマキ)1位
  中津峯如意輪寺 2.23 〃 2位
  国府町御寄神社 2.16
  仝 蔵珠院 2.15
  応神町八幡神社 2.02
(8)ナギ 丈六町丈六寺 2.59 県下4位
  国府町芝原八幡神社 1.78
  仝 蔵珠院 1.35
  田宮町天神社 1.22
(9)イチョウ 国府町芝原八幡神社 6.00 県下6位
  蔵本町八坂神社3.92
  南蔵本町八幡宮3.82
(10)クスノキ 津田町八幡神社 9.90 県下5位下部2岐
  応神町八幡神社 9.47 〃 6位
  八多町雨宮大樟 9.22
  島田町蔵王大樟 8.88
  入田町春日の大樟 8.77
  徳島公園竜王の樟 8.26 倒れて生育
  八万町八幡神社 7.51 極めて老朽
  徳島城山北斜面 6.22
(11)タブノキ 島田町蔵王権現 1.70
  福島町天神社 1.62
(12)ホルトノキ 徳島城山西下り口 4.23 県下2位老朽
  仝 北面 3.53
  仝 2.60
  大道国瑞神社 2.59
  国府町芝原蔵珠院 2.42
  佐古椎宮八幡宮 2.41
(13)クロガネモチ 名東町地蔵院 2.53 県下2位
  国府町大御和神社 1.64
  上八万町天王神社 1.53
  島田町西幡神社 1.50
  福島町光明庵 1.44
(14)シイノキ 渋野町八幡神社 5.47 県下1位寄合
  仝 5.19
  仝 2.97
  上八万町天王神社 2.87
  佐古椎宮八幡宮 2.86
(15)アラカシ 島田町西八幡神社夫婦樫 2.64
  国府町常楽寺 2.25
  渋野町八幡神社 1.72
  眉山大滝山石割樫 1.60
(16)オガタマノキ 佐古町諏訪神社 2.30 県下1位
  一宮町一宮神社 1.57 県下2位
(17)モッコク 南蔵本八幡宮 1.60 県下2位
  中津峯如意輪寺 1.12
(18)ヤマモガシ 渋野町八幡神社 1.13 県下1位
  上八万町天王神社 1.06
(19)ムクノキ 国府町芝原天神社夫婦椋 4.35
  徳島城山北面 4.21
  南蔵本町峰薬師堂 3.70
  佐古町諏訪神杜 3.53
  徳島城山北面 3.22
(20)エノキ 国府町芝原八幡神社 3.87 県下1位
  応神町高良神社 2.35
  津田町水神社 2.17
  二軒屋町金比羅神社 1.95
  応神町高良神社 1.86
(21)ニセアカシア 徳島公園内 3.51 県下1位
  仝 1.61
  佐古町椎宮八幡宮 1.55
  国府町大御和神社 1.32
(22)チシヤノキ 徳島公園内 1.30
  国府町黒田王子神社 1.00
(23)ムクロジ 蔵本町八坂神社 1.69
  国府町池尻八幡神社1.56
(24)イロハカエデ 中津峯如意輪寺 3.27 県下2位
  仝 2.13
  入田町建治寺 1.43
(25)カツラ 八多町五滝入口 3.77 寄合
  仝 3.22
  シンパク 千秋閣園内 2.33 県下1位
  ソテツ 住吉町蓮華寺 9.40 約20株根廻り 県下1位
  クヌギ 国府町池尻八幡神社 2.10
  カシワ 中吉野町山王神社 0.80
  ハゼノキ 八多町速雨神社 2.76
  キツネヤナギ 一宮町一宮神社 2.26
  タマミズキ 入田町建治滝 1.39
  イヌシデ 中津峯如意輪寺 2.60
  アカシデ 仝 1.99
  ケンポナシ 仝 1.72
  フジ 国府町大御和神社 0.96
  ストローブ松 一宮町一宮神社 1.13 北米原産
  ラクウショウ 鮎喰町農学校 2.62 北米原産
  ボダイジュ 丈六町丈六寺 2.51 中国原産
  フサアカシア(ミモザ)徳島市役所 0.95 豪洲原産
(四)緑地帯と街路樹
 徳島市は戦後道路や緑地帯の設定計画に基いて、年々その整備と緑化が進められ、日一日と近代都市へとその姿を変えつつある。
 昭和28年県庁構内から徳島駅前に移されたワシントンヤシは、南国情緒をよく表徴するとともに高層化する建物ともよく調和し、他に類例を見ない一偉観を呈している。しかしやや疎植に過ぎるきらいがあり、この木の性質上余り交通障害ともならないので、さらに補植を加え並木としてその特徴を今一層活かすべきものと考えられる。
 また街路樹は、冬街路とも異種との混植を改めて一街一種とし、より一層市民の愛護活動を高めて、もっとすっきりした並木とその美観の育成に努めるべきではなかろうか。
現時点におけるそれらの樹種を記録すると次の通りである。
(1)緑地帯
1.徳島駅頭並新町橋中央筋
 ワシントンヤシ・カナリーヤシ・トウシュロ・ニオイシュロラン(誤称ドラセナ)・ユツカラン・ニュウサイラン・トキワギョリュウ・イチョウ等
2.新町川北側沿岸緑地帯
 ワシントンヤシ・カナリーヤシ・ニオイシュロラン・カミヤツデ・キョウチクトウ・ニワウルシ・トキワギョリュウ・クスノキ・シダレヤナギ・ウンリュウヤナギ・ナガバカワヤナギ・ヨシノヤナギ・コノテガシワ・イロハカエデ・ユツカラン・リュウキュウツツジ・ラクウショウ・フサアカシア・ニセアカシア・ヒマラヤスギ・イヌマメツゲ・ギンドロ・ヤマモモ・ナンキンハゼ・フウ・トベラ・ソメイヨシノ等
(2)街路樹
1.新町橋北側通り アオギリ
  南側通り アオギリ・プラタナス
2.徳島駅前寺島通り ニワウルシ
3.八百屋町通り ヤナギ
4.出来島町通り アメリカヤマナラシ
5.佐古町6番町まで ラクウショウ
  6番町以西 ニワウルシ
  佐古駅前通り ポプラ・メタセコイア
6.蔵本駅前通り イチョウ・メタセコイア
7.徳島本町交叉点西 ナンキンハゼ
  仝 東 ニワウルシ
  仝 堀川通り シダレヤナギ
8.カチドキ橋北通り ユリノキ・プラタナス・アオギリ・アメリカフウ
   南通り アオギリ・アメリカフウ
9.昭和町通り アメリカフウ
10.中昭和町通り アメリカフウ・ニセアカシア
11.仲之町通り ニセアカシア・プラタナス
12.富田橋南通り アメリカフウ
   北通り ニセアカシア
13.両国橋南通り ニセアカシア・アオギリ・プラタナス
   北通り ニオイシュロラン
14.秋田町通り アオギリ・ニセアカシア・プラタナス
15.大道 プラタナス・ニセアカシア・アオギリ・ヤナギ
16.大工町東通り ニセアカシア・アオギリ
   西通り ニセアカシア・プラタナス
17.春日橋南通り アメリカフウ
   北通り ニセアカシア・ポプラ
18.助任橋通り ニセアカシア・プラタナス
19.中吉野町通り ニセアカシア・プラタナス
(五)外来植物の今昔
(1)徳島市の外来樹
本県に移入せられた外来樹を概括的にみると、
 明治以前(明治11年完成の阿淡産志による)
  果木類12 花木類16 山木類6 計34種
 明治以後大正末期まで 52種
 昭和以後終戦まで 14種
 戦後から今日に至る 37種
  計157種
 明治以前のものはほとんどがイチョウ・モクレン・サルスベリ・カイドウ・コウヨウサンなどの中国産で、如何に中国との交流が盛んであったかがうかがわれ、今日ではそれらは全く日本化して到る所の庭園や林野に定着している。その後は中国の外北米や欧州のものがこれに交り、戦後は当初わずかに国内産の棒樫(アラカシ)が利用せられた程度で、南北米の外豪州や欧阿産のものが大部分を占め、広く全世界のものが取入れられている。
 なかでもそれらの移入の中心は徳島市で、市内にはワシントンヤシが広く行きわたり、カナリーヤシやニオイシュロラン(誤称ドラセナ、一名センネンボク)アメリカフウ・ユリノキ・メタセコイア・モクマオウ(トキワギョリュウ)ラクウショウ・ミモザ・ライラツク・マロニエ等々、新参の外来樹が到る所の街頭や緑地帯、庭園などに見られ、洋装の建築様式と相まって市内の景観を一変してきたのがその一特徴ともいえる。

戦後市内に植えられた主な外来樹
1.ラクウショウ 北米 農学校前・佐古街路樹
2.メタセコイア 中国 徳島公園外
3.センペルセコイア 北米 城東高・佐古庭園
4.カリビアマツ 豪 眉山外
5.ドイツトウヒ 欧 各地庭園
6.ローソンヒノキ 北米 緑地帯外
7.アローカリア(ブラジルマツ) 南米 各地庭園
8.カプレサス(ホソイトスギ) 地中海 仝
9.モクマオウ(トキワギョリュウ) 豪・マレーシア 徳島駅前外
10.ワシントンヤシ 北米 仝
11.ビロウ 足摺岬以南 専売公社外
12.フェニックス(カナリーヤシ) カナリー島 緑地帯外
13.トウシュロ 南支 徳島駅前外
14.ニオイシュロラン ニュージーランド 仝
15.ミモザ(フサアカシア) 豪 市役所・城東高・緑地帯
16.ギンバアカシア 豪 庭園
17.トゲナシニセアカシア 北米 街路樹
18.アメリカデイコ 南米 附属小学校
19.スイートローカス 地中海 各学校
20.ユリノキ(ハンテンボク) 北米 街路樹
21.フウ 中国・台湾 不動町屠畜場・緑地帯
22.モミジバフウ 北米 街路樹
23.ネグンドカエデ 北米 内町小外
24.ナンキンハゼ 中国 街路樹・新町小外
25.ニワウルシ 中国 公園・街路樹
26.アメリカヤマナラシ(ポプラ)北米 街路樹
27.ギンドロ 南欧・西亜 緑地帯
28.ユーカリノキ 豪 城東高外
29.マロニエ 南欧 県警本部前
30.ライラック 欧・コーカサス 徳大薬学部前外
31.オリーブノキ 南欧・北阿 自治会館横外
32.キョウチクトウ 印・ペルシャ 緑地帯
33.カミヤツデ(ツウダツボク) 台・南支 仝
34.マキバブラッシノキ 豪 徳大学芸学部
35.キミガヨラン 北米南部 緑地帯
36.トウネズミモチ 中国 児童公園
37.タチバナモドキ 中国 蔵本公園生垣外
38.オウバイ 中国 県中央病院生垣外
39.ペカン 北米 各地庭園
40.ポポー(アケビガキ)北米南部 仝

(2)帰化植物
 帰化植物とは人間でいう密航者のようなもので、種々の貨物に附着したり、農産物の種子などに混入してこっそり侵入するものが多い。したがってそれらが渡来するのは、船着場や飛行場・鉄道駅構内・海外農産物を取扱う加工場や苗圃・牧場などが多い。その後は気候や風土の適否によって盛衰はあるが、一応適応すると既存のものとの間に生存競争が起こり、それに勝ると大繁茂して次第にその周辺に脚を伸ばす。伝播は鉄道や道路に沿って行われ、また気節風に乗って一挙に山間部に達するものも少くない。
 戦後市内の焼跡に大繁茂したオオアレチノギクなどがそれで、当時戦災草など呼ばれたこともある。市内ではその後幾多の消長盛衰があり、今日その空地を風靡するものにコセンダングサやオオオナモミがある。また低湿地ではオオホウキギク、吉野川堤防地帯ではイタリアンライグラスなどが優位にその地歩を固めつつある。
 本県の帰化植物は現在凡そ183種で、
  阿淡産志による明治以前のもの 2種
  明治以後大正末期まで 51種
  昭和以来終戦時まで 33種
  戦後23年間 97種
となっている。徳島市内はその中119種とその6割6分を占め、ことに戦後はその侵入度が著しく激増し、空地や路傍などでは質的にも量的にも断然帰化種が優占して既存種を圧倒し、海外との交流の頻繁さを如実に物語っている。
徳島市帰化植物一覧


(六)自然の保護と市民の森の育成
 徳島市は戦災にあいながらも幸、城山を始め多くの社寺の森を残したが、またそれらの森の緑が市内をもっと焦土化することからこれを守り得たものともいえる。戦後町村合併によってその地域を拡大し、新産都市や観光都市計画によって日一日とその姿を一変しつつあるが、反面自然の姿が次第に破壊せられ、その長い歴史の軌跡が損われつつあることは憂慮にたえない。
 元来自然やその森林は祖先から受けつがれた国民的資産で、それらの果たす経済的、公益的機能は実に大きいものがある。最近の科学技術文明の急速な発達はまことによろこばしいことではあるが、それのみが人間の豊かさや幸福につながるものではない。人間は自然の子として、自然の温かさや大らかさに抱かれることによって、豊かで潤いのある本性が育まれまたその中においてのみ真の幸福も生れるものであって、最近自然に還れと叫ばれる所以も亦ここにある。ことにそれらの中には人類以前の古い歴史を物語り、その貴重な資料を蔵するものも少くない。しかもそれらは一度損われると再び返ることのないものであって、こうした恵まれた自然を保護し、後世にこれを伝えることは、現代に生きるものの大きな義務であり責任でもある訳であって、徒に目先の得失にのみとらわれて、悔を将来に残さないことが肝要である。
 そうしたことからここに自然保護とその公益機能の促進を図るため、市民の森や海浜自然公園の創設を堤案し、識者の検討を得たいと考える次第である。
(1)市民の森
 眉山の一角、忌部神社附近から瑞巌寺の裏山を経て神武天皇の銅像に至る一帯の暖帯林、或は中津峯如意輪寺から頂上に至る一帯の樹林、もしくは八多の五滝一帯の何れかに市民の森を設定し、その自然を保護し、ここに市民の憩いと保養の場を設ける。
(2)海浜自然公園
 大神子海岸一帯は景勝地として既に各種の施設が設けられているが、さらにその豊富な海岸植物の保護と育成に務め、日峯をも含めた海浜自然公園の強化を図る。また沖洲町高洲のイナ池一帯は沿海の景勝地に近く、吉野川のデルタ地帯の一遺跡として貴重な海浜植物もあるので、その水を利用し今後周辺に植樹など必要施設を加えて沖洲海浜自然公園とする。

ハマボッス(大神子)


(3)徳島城山の保護強化
 徳島城山は今日に残された稀に見る暖帯林で、既に各種の施設も整えられているが、そうしたことにも基因してか、その景観は内部から日々荒廃の一途にある。したがって今後一層その保護と保存の強化を図る。


徳島県立図書館