阿波学会研究紀要

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第三回郷土研究発表会  
阿部の通婚圏からみた人口動態 工藤豊利・近藤武晴
〔研究テーマ〕   阿部の通婚圏からみた人口動態
〔研究者と所属〕 工藤豊利・近藤武晴  徳島県高等学校地歴学会
〔発表者〕     工藤豊利

〔要 旨〕
 陸の孤島と呼ばれる阿部村落は、北西に明神山が縦走し南は太平洋を控え、岩礁海岸に囲まれた地形的障碍によって隔絶された漁村である。過去80年間の人口動態について資料を戸籍台帳から収集し、明治―大正―昭和の時代区分によって通婚圏の歴史的変遷を調査した。更に伊島との比較対照を行いたかったが、このたびは阿部のみを対象とし、次の項目に従い調査した。

一、通婚圏の分布状態

 1.通婚圏の時代的区分

  a.自部落内の通婚圏(阿部・伊座利) 明治を主とするもので村内通婚

  b.県内他町村との通婚圏  大正時代を中心とし爾来隣接町村との通婚

  c.県外との通婚圏  九州、四国、中国、近畿、北陸、関東、中部その他との通婚

 2.通婚圏分布の東西性と南北性

  a.県内に於ける通婚圏は南北に外延的成長性を持つが、自部落内では統計上孤立性を持つ通婚圏

  b.県外では東西性として成長発展した通婚圏

二、通婚圏の歴史的変遷

 1.明治を中心とする内婚制時代 地形的障害による隔絶性と生業から規制せられる人口支持力から生じた内婚制

 2.大正時代から隣接町村との遠方婚姻 自部落内の通婚と村外通婚との比率が相半ばして来た事及び人口増加の影響

 3.昭和になって最も多い遠方婚姻制 7割まで県内外の他町村と通婚が行われている。この現象は行商と村内人口支持力の限度から生じたものである。

三、通婚圏からみた阿部人口動態の特殊性

 1.内婚制が崩壊して遠方婚姻へ

 2.村内でも伊座利と阿部の通婚不振 最大の原因は漁場水利権争奪に伴う両部落の反目と考えられるが一面生産の自由競争が発生する

 3.伊座利と阿部の通婚拡大の反対現象

四、阿部及び伊座利漁民の将来対策

 1.陸路の開発で由岐と結ぶか或いは地形的障害を克服して羊腸路による福井及び椿との直結

 2.人口支持力増加のための水産、林業の振興
 


 



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